輝星決戦・〖星は煌々たる主を思い、土は地上の民を思い願う〗No.7 解放の時
『ヘル・デアル』大館・外部
ヘル・デアル大館の内部が混乱の最中、神無月 恵とディエース・アウェンティヌスは大館の入口前に立っていた。
「此処の建物に末裔の子の手懸かりが隠されてるの?ディエース」
「はい、『ロマ・テレシア』支教会の資料やヘル・デアに住む方々からの聴き込みの結果。紛争地に集められる資金、商品、重要な品はこの場所に集められる予定になっていますから」
「そう‥‥(この子の事をまだ、私は何も知らない。これが罠という事も考えられる‥‥‥) 神成君達の魔力の気配もこの中からするし、奇しくも目的の場所が被るなんてね。ビックリね」
「そうですね‥‥‥‥‥それに先程まで晴れていた夜空は、雷雲が立ち込め始めてるし、何だが私、怖くなってきました」
ディエースはそう言うと身体を震えさせ始めてしまった。
「(な、何?この女の子らしい反応!凄く可愛いわ!)そ、そうね。私も怖いわ‥‥‥‥でも、この紛争地で暮らす人達の為にも。末裔の子を探して、この国を開放してあげるべきじゃないかしら?だから、一秒でも、一分でも早く私達のやるべき事をやるべきじゃない?ディエース」
「やるべき事‥‥‥‥‥そうですね。それが贖罪になるとは思いませんが‥‥‥‥私は私のできる事をやらないと‥‥‥‥‥いけません!」
「(もう大丈夫そうね)‥‥‥‥‥‥‥そう、なら中へ入りましょう。何でか分からないけど警備の人達はいないみたいだしね」
「はい!神無月さん!行きましょう!」
『ヘル・デア』・紛争統治地区‥‥‥‥地下収容部屋
「お、大きいくて、広い場所ね。紛争統治地区とか言ってるだけあるわね。地上じゃあ見つからないわけよね。こんな場所が『大龍脈』の近くに誰もあると思わないし。盲点だわ」
「‥‥‥‥‥眠いですの‥‥‥‥‥ラファエル」
「アヤネ‥‥‥‥あんた、夜中に起きるの弱かったのね‥‥‥‥‥ほら、しっかりしなさいよ!」
「そ、そこの女の子!何故、外に入るんだ?脱走できたのか?」
「‥‥‥‥‥はぁい‥‥‥‥‥」
「そ、そうか!なら、此処から出してくれないか?鍵は恐らく上の看守が持っていると思うんだが、私はフレイヤ地方の『金の洞窟』のドラドと言う支配人でな。何故か『オアシス』に商談に来た時に捕まってしまったな」
「‥‥‥ふぁい‥‥‥」
カチャカチャ、ガチャンっ!キィーー
「な?開いた?何で?それに看守は?」
「そこの商人。助けてあげたんだから感謝しなさいよ」
「天使族‥‥‥‥‥始めて見たぞ!いったい何処から現れた?」
「そんなの今、どうでも良いのよ!看守は私とこの子で対処してあげるから。この牢屋の鍵を使って他の子達も開放してあげなさい‥‥‥‥‥いえ、この場所以外で捕まってるエリアの子達もかしら?‥‥‥‥‥確かこの場所の奥に幻獣、霊獣の子も掴まってたわね。行くわよ!アヤネ」
「‥‥‥‥‥了解ですわ‥‥‥‥」
「お、おい!待ってくれ!開放ってどういう事だ?それに看守は?‥‥‥‥‥‥誰もいない?」
「このお眠の子が水幻魔法で全部眠らせて無力化したわよ、そんで違う場所にぶち込んであるわ」
「ぶち込んである?こんなか弱そうな子がか?」
「あんた、あんまりこの子を舐めんじゃないわよ!この子は天才よ。私を使いこなせる様になる位のね‥‥‥‥分かったんならさっさと行きなさい。上に居た子達もあんた達を助けに来たみたいだし。捕まって多分の鬱憤を『ヘル・デア』開放にぶつけなさいよ。じゃあね」
「‥‥‥‥‥サヨウナラですわ~‥‥‥‥」
「アヤネ、シャキッとしなさい。私達は私達でこの奥に捕まってる子達をスカウトに来たんだから‥‥‥‥」
「スカウト?何との事だ?‥‥‥‥いや、それよりも早く他の牢屋の奴等も助けなくては‥‥‥‥‥」
ドラドがそう言って牢屋の鍵を取ろうとした時である。地上に通じる階段から次々と人が降りて来たのだ。
「おーい!助けにって‥‥‥‥誰か居るぞ?看守か?」
「いえ、あれは‥‥‥‥フレイヤ地方のドラドさんよ!私達に食料を分けてくれた‥‥‥」
「ん?黄金屋のか?」
「うん」
「君達は‥‥‥‥今日の『市場』に連れていかれた子達か?何故、鎖が付いていないんだ?」
「ガリア帝国に居た元勇者が助けに来てくれたのだ。ドラド殿」
「あ、貴方は‥‥‥‥ガリア帝国の王族の方?」
「話しは後にする。先ずはこの地下牢の者達を開放する。その後、闘える者はヘル・デア国内に点在する収容地を解放していくぞ」
「「はっ!セシルスさま!」」
「セシルス様?ガリア帝の第三王子?‥‥‥‥‥そんな方まで捕まってたのか?」
『ヘル・デアル』大館おおやかた・深部
〖大龍脈・水晶〗
ピシッ‥‥‥‥‥‥‥ズズズズ
「‥‥‥‥‥‥‥エン‥‥‥‥‥‥ケラ‥‥‥‥‥‥ドス」
誰かが目覚め動き出す‥‥‥‥‥‥‥。