輝星決戦・〖星は煌々たる主を思い、土は地上の民を思い願う〗No.1 星は空と土は地へ
『ヘル・デアル』大館・深部
シリウスは静かに歩く。七色に光る龍脈の通路を一人静かに歩く。
カツン‥‥‥‥‥カツン‥‥‥‥‥‥カツン‥‥‥‥‥‥
「これが『ヘル・デア』一帯を狂わせている『大龍脈』か?」
「‥‥‥‥‥此処への立ち入りまでは‥‥‥‥‥許るされていない筈ですが?‥‥‥‥シリウス様‥‥‥‥‥」
「それは全て、【教皇】様が決める事だ。土星サータ・エンケラドス。それとも、お前は【教皇】様に反逆する気なのか?」
「‥‥‥‥‥そんな事はあり得ない‥‥‥‥‥私はただ、このヘル・デアの『大龍脈』さえ‥‥‥‥護れさえすれば良い‥‥‥‥‥‥」
「だろうな‥‥‥‥‥‥これが『大龍脈』の中心部。水晶か?‥‥‥‥中に‥‥‥‥何だ?‥‥‥‥じょ‥‥‥‥」
「‥‥‥‥済まないがそれ以上は見ないで頂こう。いくらロマ・テレシアの『東星』とは言え、護られ、見られては困るモノがこの地にもある‥‥‥‥‥ここは『ヘル・デア』国。宗教国家『ロマ・テレシア』では無いのです‥‥‥‥‥‥」
言葉を荒げ、『ロマ・テレシア』の五芒星である〖サータ・エンケラドス〗は水晶とシリウスの間に割って入った。
「あ、あぁ‥‥‥‥‥失礼したな。この私とした事が配慮に欠けた行動を取ってしまった。済まない」
「‥‥‥‥‥‥‥此方も【教皇】様の腹心であるシリウス様に失礼な事を言ってしまった‥‥‥‥‥どうぞ、この事は【教皇】様に包み隠さず御伝えして下さい‥‥‥‥‥そして、この土星は潔い罰を‥‥‥‥‥」
「いや、今回は私の配慮に欠けた行動が原因。この事は【教皇】様に報告する必要もなかろう。この話はこれで終わりとする。では、済まなかった木星殿‥‥‥‥‥‥‥‥失礼する」
「‥‥‥‥‥‥はい‥‥‥‥」
カツン‥‥‥‥‥‥カツン‥‥‥‥‥‥カツン‥‥‥‥‥‥‥
「‥‥‥‥‥‥『星』が堕ちる時、水の晶は割れ、龍脈は放たれり‥‥‥‥‥か‥‥‥‥‥‥その様な事‥‥‥‥‥いつ起こるのだろうな?‥‥‥‥‥ルア‥‥‥‥‥‥」
▽▽▽▽▽
『ヘル・デアル』大館・敷地部
「ヘル・デアル大館の敷地内には入れましたけど何ですか?あの広い屋敷?それにあっちこっちに手入れが行き届いた庭は?ここは本当にあの有名な紛争地『ヘル・デア』なのですか?ナルカミさん」
「‥‥‥‥‥しーっ!静かに話してくれよ。パーシヴァル卿」
「あっ!ごめんなさい。聞いていた情報と違い過ぎて少し動揺してしまいました」
「‥‥‥‥‥この広大に広がる館は優待地何だよ」
「優待地?」
「そう‥‥‥‥ここには紛争地帯で集められたあらゆる金銀財宝、優秀な人材(奴●)、情報が集められる。『ロマ・テレシア』や紛争地の貴族達の資金源になる場所なんだ」
「資金源?‥‥‥‥‥賄賂?‥‥‥‥いえ、裏金と言うやつですか?」
「‥‥‥‥‥何でそんな単語知ってるんだ?パーシヴァル卿」
「アヤネさんが教えてくれましたよ。この様な場所には汚いお金が集まるとか、もの凄く詳しく教えてくれました」
「‥‥‥‥‥‥あの腹黒お嬢様め、なんつう事を『円卓の騎士』に教えて込んでんだ」
「そんな事よりもです。どうしますか?流石に庭の中には、警備の信徒や獰猛な魔獣『グレイルウルフ』の群れも番犬みたいに彷徨いていますけど?以前のアグラヴェイン領の時の様に大魔法で全て破壊するのですか?」
「いや、今回はしない。つうか、そんな事できないよ」
「できないですか?それはいったい?ナルカミさんならここいら一帯を更地にする事くらいの所業は息を吸うのと同じ様に簡単でしょう?」
「パーシヴァル卿の目からは俺がどんな風に写ってんだよ!」
「人の形をしたいつ暴走するとも分からない神煌具ですかね?」
コ、コイツ。『妖精国』では命を助けてやったというのに、その恩も忘れて言いたい方だい言いやがって!
‥‥‥‥‥‥いやいや、あの時の事を今更、恩着せがましくあーだこーだと言うのも可笑しな話だ。
あの時はパーシヴァル卿の命が懸かっていたんだ。良くない。この様な事を考える事態良くないのだ。
「‥‥‥‥‥まぁ、俺の事は良いとして。この『ヘル・デア』地域一帯には『大龍脈』が流れているんだ。そんな場所で大魔法何て放った日にはどうなると思う?」
「‥‥‥‥‥‥『大龍脈』を経由してここいら一帯‥‥‥‥‥いえ、ヘル・デア‥‥‥‥いえ、シルテア、ゲルオラを含んだ紛争地帯が大規模災害に見回れますね」
「あぁ、その通りになる‥‥‥‥‥だから、この中に居るであろう『星』は俺がやる」
「そして、空で闘い、土星は地下で私でしたね」
「‥‥‥‥‥‥‥無理そうなら、誰かを喚んで時間を稼いでもらおうか?そしたら俺が『星』を倒した後でも‥‥‥‥」
「いえっ!やります!やらせて下さい!〖ロンギヌス〗が私を喚んだのも何かしらの考えがあっての事。腕を失くした時のトラウマも『セルビア』へ帰る前に克服しなければいけないのです!だから、やります!やらせて下さい!ナルカミさん」
パーシヴァル卿はそう言って、自身の両手を強く握った。
‥‥‥‥‥あぁ、何て強い『神気』だろうか!これが『地球』伝承にも残る『円卓の騎士』パーシヴァルその人なのだろう。
「そうか!よしっ!なら、こんな場所でのんびりしてる場合じゃないよな!雷魔法+転移魔法『転移雷針』」
「『転移雷針』?何ですか?その黄色の針は?」
「あぁ、これを警備やグレイルウルフに向けて放つとだな‥‥‥‥」
「放つと?」
プスリッ!
「ん?首元に‥‥‥‥何か刺さっ‥‥‥ギャアアア!!痺れ!!!‥‥‥‥」
シュン!
プスリッ!
「グルル!!キャンイイインン?!」
バタリッ!シュン!
俺は次々に警備の信徒とグレイルウルフの群れに転移雷針を容赦なく指していく。
「‥‥‥‥‥次々に消えていく?」
「雷魔法と転移魔法の複合魔法だ。刺さった相手は電撃で痺れて、その後は魔法の袋(黄金の宝物庫)内にある牢獄に入れられる。一度刺せば二度の地獄を味わう。それがこの『転移雷針』だ」
「‥‥‥‥‥‥私、ナルカミさんだけは一生、敵に回さないと今、固く決めました。はい、決めました!」
パーシヴァル卿はそう言って、またも両手を強く握った。
その後、敷地部を警備していた信徒とグレイルウルフの群れを全て排除し、『ヘル・デアル』大館内へと無事に進入する事ができたのだった。