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金髪妖精『シャナ』とクエレブレの妖精竜の洞窟 ・①劇場開幕~⑤妖精竜と金髪妖精の思い出の場所



①劇場開幕


隠れ妖精の里『シャナ』


知っている者は知っている。


知らない者は死ぬまで知らない。


そんな不思議な洞窟『クエレブレ』がこの隠れ妖精の里『シャナ』にはありました。


そこには獰猛(どうもう)だけど気に入った相手には面倒見が良い妖精竜と。


求婚がしつこい婚約者から逃げてきた金髪の妖精『シャナ』が仲睦まじく静かに住んでおりました。


その平穏な二人の時間を終わらせるは。『王様』の数滴の悪意。


‥‥‥この日。始まるは二人の惨劇の劇場かそれとも祝福の巻く引きか、それを選ぶは魔王とエルフの国の王子なり。


‥‥‥‥いざ、劇場の始まり。始まり。




隠れ妖精の里『シャナ』



私とアルディス王子はブラックキャットで急ぎ。『シャナ』へと向かっていた。


「そろそろ着くよ。ユナちゃん。油断しないでね」


アルディス王子が強張った顔で私に話しかけた。


「‥‥‥‥分かりました。アル先輩」


セツナは嫌な予感がすると言った。

それは多分。あの妖精達の異様さにより出た言葉なのだと思った。

実際に、私もあの気持ち妖精達の異様な光景を目の当たりにして少し気分がわるくなった。


「ユナちゃん!あそこ!あそこが『シャナ』の入り口だ!!‥‥‥あれ?」


アルディス王子が不思議そうな顔で『シャナ』の里の入り口を見ている。


「どうしました?アル先輩!」


「先に派遣していたエルフの人達がいないんだ。それに里にいる筈のエルフや妖精達の声が少ない。‥‥‥‥何で?」


アルディス王子の顔色が一気に悪くなる。


「アル先輩」


「‥‥‥急ごうか。ユナちゃん。ごめん。急いでくれるかい。クロ!!」


「ニャオン!!」


アルディス王子は私にそう言うとクロと呼ばれたブラックキャットに急ぐ様に指示を出した。



隠れ妖精の里『シャナ』


「フフフフフ、妖精とエルフの体は美味しい?『クエレブレ』!」


「うん!うん!美味しいよ!!『シャナ』!!もっと殺して食べたいよ!!」



私達は『シャナ』の入り口から里の中へと入るとそこには惨劇が広がっていた。


燃え盛る里の家々、泣き叫ぶエルフの子供や妖精達

エルフの亡骸

妖精のあられもない姿

エルフと妖精の死体を貪り食べる竜とそれを嬉しそうに見ている金髪の妖精


「なんだこれは?」


「酷すぎる!出鱈目(でたらめ)だよ!!」


アルディス王子が叫びながら怒る。無理もない。自国の民が目の前で悲惨な目に合っているのを見せられているのだから。


「あら?あら?あら?ねぇ!『クエレブレ』!!あのお方は確か!フフフ」


金髪の妖精が不気味に笑う。


「なんだい?『シャナ』?‥‥‥‥おぉ、やったね!次の御飯があちらから来てくれた!!」


「良かったわね。『クエレブレ』!あなたの日頃の行いが良いからよ。愛しの貴方」


「本当かい?じゃあ、早く殺して一緒に食べようね!僕の『シャナ』!」


「ええ、私の『クエレブレ』」


「‥‥‥‥あのお二人は‥‥‥!」


アルディス王子が金髪の妖精と妖精竜を見てはっとなる。何かに気づいたのだろうか?


「貴方達は隠れ妖精の里の守護者『シャナ』殿『クエレブレ』殿ではないですか!!何故、どうして自国の!それも自身の守るべき民を食っているのですか?!!!『クエレブレ』殿!!!」


アルディス怒りの形相で妖精竜『クエレブレ』に話しかけた。


「んーーー?!なんだい?君は?随分と偉そうだね?ねえ『シャナ』」


「ええ、その通りね『クエレブレ』!!でも‥‥‥あのお顔‥‥‥何処かで‥‥‥あぁ、そうだわ。以前、王都でお会いした。アルディス王子だわ。貴方」


「ふ~ん!ムカつく顔だね。『シャナ』あの子殺して食べて良いの?」


「良いわよ。良いわよ。貴方。全ては王様の為に。行いましょう。行いましょう。惨劇を」


『王様』?なんの事なのだ?さっきの兵隊の様な妖精達も『王様』がどうのとか言っておったが。


「‥‥‥‥許さない。許さない。いくら長年使えてくれた『シャナ』殿と『クエレブレ』殿であっても許される筈がない。‥‥‥‥ごめんね。ユナちゃん!「セルビア」に来て初めての里の姿がこんななんて‥‥‥なんて謝れば良いんだろうね」


アルディス王子はうつむき。悔しそうに顔を歪ませた。


「アル先輩‥‥‥‥とりあえず、先にこの者達を大人しくさせましょう。これ以上の被害を出さないためにも!」


アルディス王子ははっとした顔になり。自身の顔の両頬をおもいッきり叩いた。


「うん!うん!そうだったね。まずは彼らを大人しくさせなくちゃね。ユナちゃん!ありがとう。‥‥‥じゃあ!やろうか!!お二方!」



「フフフフフ、何だか分からないけど凄い怒り様よ。貴方!」


「そうなのかい?ならば殺して食べて大人しくさせようね。『シャナ』!!」


「はい!貴方。フフフ殺してあげるは王子様」


「来るよ。ユナちゃん!気をつけてね」


「‥‥‥ええ、アル先輩も」


血の惨劇が開幕した。









②連携遮断


セツナ&メリュジーヌ・サイド


その光景は虐殺に近かった。可愛らしメイド服を着た可愛らしい藍色の乙女がファンタジーならば妖精達を鏖殺(おうさつ)していく。


「どうしたのかな?君達!逃げてばかりだとつまらないんだけど?やる気あるのかな?」


「怖いよ♪怖いよ♪殺される♪」「王様♪王様♪に報告だ♪」「でもでも♪絶体逃げられない♪」「僕達私達♪終わりだね♪」


怖えーーよ!マジで!メリュジーヌ卿!良くあれに勝てたな。過去の俺。


そして、この状況で楽しげに殺されてる一般妖精達はなんなんだ?あっちもあっちで不気味過ぎるぞ。


「おっと!俺も戦わないとな。‥‥‥‥雷魔法『雷撃散崋』」


俺の放った『雷撃散崋』が妖精達へと流れていく。


「ぎぁああ♪」「痺れるよ?」「楽しい♪楽しく♪」


俺の雷魔法を受けても尚。笑いながら焼け焦げ死んで逝く。

不気味過ぎるな。隠れ妖精の里の妖精達は。


俺は心の中でそう思いながら。メリュジーヌ卿と共に一般妖精達の数を減らしていった。


場面戻り『シャナ』



「じゃあ、行くよ。君達。殺してあげるからね。神代魔法(黒)『黒の伊吹』」


「私も行くわ!貴方。神代魔法(青)『金色水脈』」



くっ!どちらも神代魔法の使い手か。


「アル先輩!!!来ます!!(りょく)魔法『新緑の盾(稔)』」


「分かってるよ!!ユナちゃん!!!氷魔法『氷雪氷層』」


‥‥‥‥久しぶりに見た。アル先輩の得意魔法。扱える者が限られている『氷魔法』とても美しいクリスタルの様な造形の『氷雪氷層』が目の前で展開される。


そして両者の神代魔法と現代魔法がぶつかり合う。


『シャナ』の『金色水脈』は私の魔法が受け止め。


妖精竜『クエレブレ』の『黒の伊吹』はアル先輩の『氷雪氷層』が受け止めた。


「おぉ、なかなかやるねえ!君達」


「本当ね。貴方!でも私達の敵では無いわ」


「うん、そうだね。『シャナ』食べ応えがありそうだよ!」


「‥‥‥‥貴様!!!さっきから聞いていれば!!なんだ!その言い方は!!自国の民を何だと思っている!!!それでも我が『セルビア』が誇る。上位精霊の姿か?恥を知れ!恥を!!」


アルディス王子は『クエレブレ』の発言に耐えきれず。怒りをあらわにする。


「何を切れてるんだいあの子は?『シャナ』、分かるかい?」

「いいえ!貴方、まったく」


『シャナ』は邪悪な笑みを浮かべ薄ら笑う。


「おかしい!以前、お会いした時の『シャナ』殿は慈愛に満ちた優しいお方だった。しばらく会わない間に何があったんだ?」


アルディス王子が目の前の変わり果てた二人の上位精霊を見て(いきどお)る。


「‥‥‥‥分かりませんが。先ほど遭遇した一般妖精達が話していた『王様』という存在が原因ではないでしょうか?」


「『王様』‥‥‥『王様』?分からない。何の事だ?くそ」


「もう。お喋りは良いかい?君達。そろそろ食べられてよ!」


「そうね。そろそろ殺されなさい。私達は『クエレブレ』の洞窟に戻って愛を育むのよ!!」


不気味に笑い合う『クエレブレ』と『シャナ』である。


「‥‥‥‥‥分かった。もういい!喋るな。魔に落ちた2人よ。『セルビア』が王子アルディス・セルビアが宣告する。貴様達は殺す!!」


アルディス王子は目の前の二人のようにそう宣言した。


「ごめん!ユナちゃん!!あの『シャナ』を頼めるかな!」


「‥‥‥了解です。アル先輩。ではアル先輩は!」


「うん!僕はあの妖精竜‥‥‥いや、魔竜を倒すよ」


「はい!では、参りましょう」 


「ありがとう!‥‥‥‥‥まずは奴等を分断させる。‥‥‥‥‥氷魔法・神代・回帰『氷雪・極楽浄土』」


私は初めて見た。アル先輩‥‥いや、アルディス王子の神代・回帰『氷雪・極楽浄土』


あっという間に魔竜『クエレブレ』を呑み込み。大きな氷の空間を作り。隔離した。


「あれ?『シャナ』?何処だい?なんだいこれは?氷の壁に天井も氷‥‥‥‥おい!お前?何をした?」


『クエレブレ』はアルディス王子を見たのか。先ほどの温厚そうな喋り方を止め。大地を震わせる様な声で喋り始めた。


「終わりだ『クエレブレ』殿。あの世で死んで行った者達に詫びろ」


「『クエレブレ』!『クエレブレ』私の『クエレブレ』!‥‥‥‥‥己!!!くそ女!!早く『クエレブレ』を解放しなさい!!」


「断る。貴様の相手は私だ!さっさとかかってこい!上位妖精よ!!」


「ふん!!神代魔法(青)『金色水歌』」


(りょく)魔法「森羅万象・祈」」


私は目の前の上位妖精『シャナ』との闘いを始めた。







③現代魔法対神代魔法


隠れ妖精の里『シャナ』


「すまぬが、場所を変えさせてもらうぞ。アルディス王子の邪魔をしたくないのでなあ!!!行け『森羅万象・折』」


「何を偉そうに『金色水歌』」



お互いに出した技がぶつかり合う。


(神代魔法にしては威力が無いのう?あちらも様子見と言うことか)


「では、こちらは最初から全力で行かせてもらう!(りょく)魔法『森羅転生・緑』」


私が詠唱を終えた瞬間。目の前の上位精霊『シャナ』へ草木が伸び捕縛する。


「ちょっと!!何なのよ!!この枝は!!邪魔よ!!くっ!!助けて貴方!!」


「すまぬが!少し開けた場所へ向かうぞ!着いてこい!『シャナ』とやら!」


私はそう言い終えると『シャナ』を捕縛している枝木を操り里の広場へと移動した。



『氷雪・極楽浄土』内


「あの声は『シャナ』の声!!!おい!!お前ええ!さっさとここから僕を出せええ!!じゃないと食い殺すよ!」


「‥‥‥‥あの強暴と慈愛の『クエレブレ』殿がこのような発言を‥‥‥‥おいたわしや」


僕は涙した。長きに渡り。この南方地方を守護してきた妖精竜『クエレブレ』殿と金髪の泉の妖精『シャナ』殿の変わり果てた姿に。


「この惨状は貴女方が本意にやったわけではないと分かります。何者かに操りられているのは、得体のしれないこの魔力に触れれば察しがつきました。」


「‥‥‥‥君はいったい何を言っているんだ?おかしな奴だな!」


「そうですね。今の貴方では理解出来ないでしょう。『クエレブレ』殿。‥‥‥どうか安らかな死を与えてあげます」


僕は涙を拭い。目の前の魔竜『クエレブレ』へと向き直った。



隠れ妖精の里『シャナ』広場


「ここまで来ればアルディス王子の邪魔にならんじゃろう!良いぞ。そろそろ解放してやろう。ほれ!」


私がそう言うと捕縛していた『シャナ』を解放した。


「くっ!己!!!お前!私を捕縛されている間に、私に束縛魔法をかけたな?!貴様との対決が終わるまでこの広場から出られないように私の身体に刻み込んだな!!よくも!よくも!」


「‥‥‥貴様!さっきから五月蝿(うるさ)いぞ!静かにせよ!(りょく)魔法『緑木の槍・乱』」


私は『シャナ』に向かって無数の枝木を矢のように浴びせた。


「くっ!この!いきなり!!何なのよ!!まったく。」


「悪いが、連携や合流は絶体にさせぬ。それがお主達の強味なのだろう?だからアルディス王子も早々に奥義である。神代・回帰を発動しお主と『クエレブレ』を速やかに分断したんだろうよ。違うか?」


「‥‥‥‥‥ふん。ガキの割には頭が切れら様だわね。まぁ、いいわ!さっさと貴方を殺して。私の『クエレブレ』の元へ向かうから。だから‥‥‥‥邪魔なのよ貴方!!神代魔法(青)『水華遠来』」


私、目掛けて波の様に大量の水脈が押し寄せて来る。

「‥‥やはり、腐っても上位精霊!神代魔法も並み以上か」


「何を余裕ブッコイてんのよ?!さっさと逃げないと流されて溺死するわよーー!!」


『シャナ』はそう言いながら波に乗って私に向かって突撃してくる。


「ふむ、そうじゃな!では、(りょく)魔法『緑色結界・束縛の陣』」


詠唱を唱え終わると近くにあった木々が反応し私を守るように枝葉を伸ばし始め、『シャナ』の『水華遠来』を防いでくれた。


「はぁ?なにそれ?」


「最初に戻って来て闘ったラニーの方が強いのう。‥‥‥‥お主、多分。気づいておらぬだろうがその身体‥‥‥‥殆どボロボロじゃな?魔力の循環もデタラメじゃ!何があった?」


「意味が分からない。貴方、さっきから何を言っているのよ?」


「そうか!では、少し調べさせてもらうぞ!行け『緑色結界』!!」


私がそう叫ぶと私を守っていた。枝葉達が『シャナ』に向かって伸び始める。


「くっ!同じ事を何度も何度も!芸が無いのよ小娘!!!」 



『シャナ』が大声で叫んで抵抗しようとしたが。魔力の限界が近いのか直ぐに私の『緑色結界』に捕らえられた。


「く、よくも!!!」


凄い睨まれたが私は気にしない。


ゆっくり近づき『シャナ』の近くまで来た。


「‥‥‥殺すなら早く殺しなさい。」


「‥‥失礼するぞ。治癒魔法『魔力回航』」


「?!貴方いったい私に何をする気?!」


「お主を死なせない為に治癒魔法をかけた。しばらく続ける故、許せ。今のお主ならまだ助かる筈じゃ!」


「今の私なら?何?何を言っているの貴方?良く分からないわ!」


「まぁ、少し大人しくしておれ。色々調べてやるゆえ。(りょく)魔法『身体造成』」


「ちょ、ちょっと!!」


「‥‥‥‥‥?!なんじゃ?!これは身体の構造がおかしくなっとるぞ。これでは人格や行動にまで影響するではないか!こんな無理矢理なつぎはぎだらけの意味不明な治癒魔法が合ってたまるか!!」


「‥‥‥‥ねえ?私の身体おかしいの?私、死ぬの?」


『シャナ』はだんだんと大人しくなり。彼女の顔はさっきよりも青くなり変な汗を滴り落ちていた。


(これは?!何か契約者の指示に違反した時に死ぬように呪いをかけられておるだと?めちゃくちゃな治癒魔法に死なせる為の呪い魔法まで使うとは)


「お主に魔法をかけた者は常軌を逸しているな。‥‥‥しょうがない。あれを使うか」


「‥‥‥あ‥‥‥れ?」


『シャナ』はさっきの威勢は何処へやらどんどん衰弱していく。


「ほれ、『シャナ』とやら。神成製の回復ポーションじゃ。良く効くぞ」


「い‥‥‥き‥‥‥なり‥な‥‥に?」


はんば無理矢理『シャナ』の口に押し込み回復ポーションを飲ませる。


「後は解呪じゃな。少し待っとれ。準備する」


私はそう言って収納魔道具入れからある特別な魔道具を取り出した。








④二人の思い出


数百年前の『セルビア』国内。ある妖精の里


「待ってくれよ『シャナ』!!!俺と結婚しよう!!絶体に君を幸せにするから!!!」


「助けて!誰か助けて!!」


彼はスクイブ。この『ウンディーネ』地域のエルフの社会では上流階級の1人息子だ。

性格は最悪で。囲いの女性を何人も囲い。○○させ、自身の都合が悪くなると捨てる等を繰り返している。

そんな噂が色んな所から聞こえてくる。


そんな彼に私、妖精『シャナ』は求婚をせがまれ。今は何処か分からない森の中へと逃げ込ん出来たのだ。


「待つんだ!!『シャナ』!愛しの『シャナ』!!早くベットヘ行って2人で楽しもう。美しい金髪の『シャナ』!!!!!捕まえた~!!!さあ、おいで!!俺様の『シャナ』」


逃げ惑うこと数刻。ある洞窟の前で私は遂にスクイブに捕まった。


「嫌、嫌よ!離してよ!!スクイブ!!貴方なんかに触られたくな!!汚らわしい!!」


バチン!!


私はいきなり叩かれて。数秒間、意識が飛んだ。


「この俺が汚らわしいだと『シャナ』?」


「‥‥‥‥えぇ、そうよ!貴方、悪い噂しか聞かないもの。私の友達も貴方に○○されて酷い目あったって泣きついて来たもの」


「あぁ、あのいらなくなったエルフのバカ女か!!ちっ!!忌々しい!ちゃんと殺しとくんだった!!」


その顔はとても、とても。邪悪な笑み浮かべていた。


「貴方は最低なエルフだわ。皆と全てが違うもの」


「‥‥‥ふん!上位妖精になれるからって良い気になるなよ。『シャナ』今、お●してやる!!それ!!」


「いやーーー!!何するのよ!!」


スクイブがそう言った瞬間。私の着ている服を力強く破いた。


「くくくく!!美しい!やはり美しいよ!金髪妖精の『シャナ』!!!僕の玩具(おもちゃ)!!今、壊してあげるからね!!!」


「は、離して!!!」


抵抗も虚しく。私の四肢はスクイブに羽交い締めにされ乱暴に扱われる。


「さっきから五月蝿いね?君達。殺そうか?」


とてもエルフや一般妖精とは思えない。低い声が洞窟の奥から聞こえてきた。


「誰だ?今、良い所なんだ!!邪魔するなよ!くそ妖精!!」


「だ‥‥‥‥れ?」


私は地面に這いつくばりながら洞窟の方を見た。


「糞?!妖精だと?!貴様!!『セルビア』の守護を担う我ら妖精達を糞だと申したな?」


「な、なんだよ?!いきなり現れたかと思えば切れやがって!!さっさとどっか行けよな!!」


「『セルビア』初代国王『オーディン』様が見たら嘆き悲しむ光景だな!」


「『オーディン』ああ!!あの下らない『オーディン』か?エルフと妖精を同じ国に住ませるなんて‥‥ガバッ?え?え?」


それを洞窟の主が聞いた瞬間。洞窟の奥から鋭利な竜の尻尾がものすごい早さでスクイブの心臓を貫いた。


「もう良い!聞くに耐えぬは!!我の前で妖精を襲い。あまつさえ、おかそうし。それに加え『オーディン』様への侮辱!万死に値する。死ね虫けら!」


「カエ?エラネ?‥‥‥‥」バタン!


洞窟の主がそう言い終わるとスクイブに刺されていた尻尾を抜き取った。

そして、尻尾を抜き取られたスクイブはその場で絶命した。


私は目の前の光景に付いていけず。ただただ、眺めていることしか出来なかった。


ドスンドスンと洞窟の奥から大きな者が歩く音がする。

私も覚悟を決めた。次に殺されるのは私なんだと!


「おお、大丈夫だったか?妖精殿?!‥‥‥‥」


その竜はとても大きく、勇ましい、とても強い目の輝きを放っていた。


「え?あっ!はい!助けて頂きありがとうございます。上位精霊様!!」


思いのほか、優しい声音で私を心配してくれたのに驚きつつ。私は咄嗟(とっさ)にお礼の言葉を述べた。


「‥‥‥‥‥おお!済まん!済まん!ソナタのその美しい金髪に見いってしまった。自己紹介が遅れたな。我は南の守護者『ウンディーネ』様に昔から御使いしている。『クエレブレ』だ。よろしく頼む」


「『クエレブレ』様?」


「まぁ、妖精竜と言うやつだな。まぁ、余りお主と変わらぬよ。‥‥‥お主の名前は?」


「『シャナ』です。一般妖精の『シャナ』!さっきは助けて頂きありがとうございました。『クエレブレ』様」


「あぁ、余り気にするな。とりあえず、そこに転がっているエルフを埋めてやろ。死体を見ているだけで腹の虫が収まらぬでな」


洞窟の主はそう言うと何かの魔法であっという間に土を掘り。スクイブの遺体を丁寧に埋葬してくれた。


「『クエレブレ』様。スクイブの遺体を埋葬していただきありがとうございました。」


「あぁ、気にするな。勝手に我がやった事だ。‥‥‥‥それよりもあっちで最近の『ウンディーネ』の都市について教えてくれぬか?我はこの姿。故に祭典以外でなかなか人里に行けないのでな。頼めるか?」


先ほどの怖い声ではなく。とても、とても優しい落ち着いた声で彼は話しかけてくれた。


「はい!はい!喜んで『クエレブレ』様」


「ありがとう!『シャナ』殿!ではお話ししようか‥‥‥‥‥」



薄れ行く意識の中で、私は『クエレブレ』と初めて出会った時を走馬灯の様に思い出していた。


『氷雪・極楽浄土』内


「『シャナ』の魔力が暴れている?おい!貴様!!そろそろ、ここから僕を解放しろ!『シャナ』に『シャナ』に何か起こっている筈なんだ」


「‥‥‥‥‥逃がしませんよ。『クエレブレ』殿。貴方は魔に落ち。妖精竜から魔竜へと変貌した。そのどす黒い竜のお身体がそれを決定付けています。‥‥‥どうやら『シャナ』殿も貴方から離れたことによってだんだんと意識が戻ってきたようですね。魔竜殿」


「何なんだ?さっきから訳の分からない!本当に分からない!事ばかり言い出して?!‥‥‥もう、いいや!殺して食べて行くからさ」


「では、僕も貴方を殺します。氷魔法『氷殺の陣』」


僕は鋭利な氷の刃を魔力で作り。『クエレブレ』殿の翼へと展開した。


「ギャああああ!!くっそう!!僕の羽があああ!!許さない!許さない!」


『クエレブレ』殿の動きを封じる為。両翼の翼を氷魔法で貫いた。


「もう。とっくに終わっておりますよ。『クエレブレ』殿‥‥‥‥」


「お前は?!何を言っているんだ?闘いはまだ始まったばかりだろう?‥‥‥神代魔法(黒)『竜爪の黒碗』」


『クエレブレ』殿は自身の腕に黒い魔力を帯びさせ。僕へと突撃してくる。


「‥‥‥‥‥氷魔法『氷層多元』」


幾重にも重なる頑丈な氷の柱を僕の目の前に出現させ。『クエレブレ』殿の『竜爪の黒碗』を防ぐ。


『竜爪の黒碗』と『氷層多元』がぶつかり合い。

黒い魔力と氷の破片が『氷雪・極楽浄土』の中で綺麗に溶け合っていく。


「もう、とっくに終わっているのです。『クエレブレ』殿。貴方の心臓は‥‥‥‥‥残念です」








⑤妖精竜と金髪妖精の思い出の場所


「黙れ!黙れ!黙れ!僕は!我は!僕は!!!!終わっていない!!!」


『クエレブレ』の咆哮が『氷雪・極楽浄土』の中に響き渡る。


「『シャナ』!『シャナ』!『シャナ』何処に入るんだい?また追われてないかい?また君の話を聞かせておくれよ!『シャナ』‥‥‥」


『クエレブレ』の心の中


(なぜ?防がれる!なぜ?僕は闘っているんだ?)



(この状況は何なんだ?我の民が皆死んでいる?)


(なぜ?隠れ妖精のみんながいないんだ?)


(僕は何をしている?)


(いきなり現れたアイツは誰なんだ?)


(『シャナ』『シャナ』君は今、何処にいるんだい?)


(我は、僕は‥‥‥‥君に今すぐに会いたいよ)



百年前の隠れ妖精の里『シャナ』


「『シャナ』れ君と出会ってもう数百年位になるね」


僕は彼女に優しく語りかけた。


「ええ、『クエレブレ』!最初に出会った時の貴方の怖い顔は今でも覚えてるは。それに一人称が我なんですもの!フフフ。今では僕ですものね『クエレブレ』」


「それは言わない約束だよ。『シャナ』。この言葉遣いだって君の影響だろう?全く」


「あら?怒ってしまって?『クエレブレ』様?フフフ。ごめんなさい貴方。‥‥‥愛しています。いつまでも、これからも永遠に」


「『シャナ』‥‥‥‥あぁ、僕も君を愛しています。心の底から。出会ったその瞬間から。君に永遠の誓いを」



『氷雪・極楽浄土』の中


「‥‥‥‥‥‥‥」


「‥‥‥‥‥‥‥」


『クエレブレ』はお互いの魔法がぶつかり合った後、ただただ微動だにしない。


(生き絶えたの?分からない。さっきの邪悪な覇気が全く無い)


「済まなかった。我が初代主である『オーディン』様の血を引くものよ。‥‥‥悪いがこの氷層を解いてくれないか?もう時間が無いんだ。済まない。」


「‥‥‥‥‥『クエレブレ』殿。意識が戻られたのですか?」


僕は演技ではないかと疑い。『クエレブレ』殿に聞いた。


「あぁ、迷惑をかけた。王族の方。悪いが洞窟に行かねばならない。彼女と最初に出会った洞窟に。じ、時間が残っている間に」


あぁ、そうか、彼も悟ってしまったのか。この『氷雪・極楽浄土』に入れられたから。身体の内側の心臓から徐々に凍りついて行くことに。

本当は静かに終わらせてあげたかったのに。


「‥‥‥分かりました。『クエレブレ』殿。『極楽浄土』凍結解除」


僕がそう唱えると『氷雪・極楽浄土』が崩壊し始めた。


「ありがとう。名も知らぬ王族の方。これで僕の恋人に。『シャナ』に会える。正気のまま最後の時を共に過ごせる」


「‥‥‥‥‥行って下さい。『クエレブレ』殿。」


僕は静かに目を(つむ)り静かに涙した。自国の民も救えない悲しみで涙したんだ。


「あぁ、行ってくる。そして心から感謝する‥‥‥‥では、去らば」


『クエレブレ殿』はそう言うと飛べない筈の両翼を広げ。空へと飛んだ。だが、上手く飛べず。低空のまま。里の建物にぶつかりながら森の方へと向かって行った。


『隠れ妖精の里・広場』


「‥‥‥‥‥貴方、もういいわ、ありがとう」


私が治癒魔法で『シャナ』の治癒をしていると。弱りきった声で私に話しかけてきた。


「もういいとはどういう事じゃ?もう少し治癒を続ければお主は助かるのじゃぞ」


「そうかも知れないわね。フフフ。優しい子ね貴方。とても優しいわ。その心ずっと大事にしなさい」


「‥‥‥‥わかった。わかったから余り喋るな。傷に響くぞ」


「いいえ、もう、良いのよ優しい子。私はこれからちょっと行かなくちゃ行けない所があるの。だから、もう治癒魔法はいいのよ」


『シャナ』はそう言うと。彼女の綺麗な金髪を(なび)かせて歩き出す。


「お、おい!何処に行くきじゃ!お主の治癒はまだすんでおらぬ」


「‥‥‥‥‥そうね。‥‥‥‥でも行かなくちゃ。あの人が待ってる。‥‥‥私の大切な人。‥‥‥私の最愛の人‥‥‥『クエレブレ』が待ってるの」


「‥‥‥‥‥」


私は何を言えばいいのか分からなくなり。口を閉じてしまった。


「貴方も大切な人ができれば。いずれ私の気持ちが分かるわ。‥‥‥だから止めないでね。優しい子。治癒ありがとう、さようなら」


『シャナ』はそう言い終えると里の広場を出て森の奥へと消えて行った。


「大切な人ができればか‥‥‥‥」


私はそう言うと空を見上げた。


「『クエレブレ』『クエレブレ』今、行くわ!貴方と最初に出会った場所へ」


「『シャナ』『シャナ』君に会いに行くよ。もうすぐだ」


「もうすぐ行きます。貴方」


「もうすぐ着くよ。『シャナ』」


『クエレブレ』の洞窟


「シャナ!!!」


「クエレブレ!!!」


1人の妖精竜と1人金髪の妖精がある洞窟の前で再開しお互いを抱き締める。


「シャナ!ごめんよ。君を1人にして僕は、僕は!」


「‥‥‥いいえ、いいのよ貴方。もういいの!だからもう自分を責めないで。ねぇ、貴方」


「シャナ‥‥‥‥‥う‥‥ん。‥‥‥‥シャナ」


「なぁに貴方」


「僕は里の民をいっぱい殺したんだ」


「私もよ。貴方」


「知らない人も沢山傷つけた」


「それは私もよ。貴方」


「君に酷い思いをさせてしまった」


「ええ、それは私もよ。貴方」


「‥‥‥‥‥僕は‥‥‥僕はもう死ぬんだ!シャナ」


「ええ、大丈夫よ。貴方。私も貴方に着いて行くもの」


「‥‥‥シャナ」


「ええ」


「ありがとう」


「ええ」


「愛しているよ」


「ええ、私も愛しています。クエレブレ」


「僕といてくれてありがとう」


「私を愛してくれてありがとう」


そして二人の時間が少しずつ減っていく。


「‥‥‥‥‥もう、じ、かん、みた、いだ」


「‥‥‥‥‥わ、たしも、よ、あ、な、た」


「‥‥う、ん、お、やす、み、シャ、ナ、‥‥‥‥」


「え、え、お、やす、なさい、く、えれ、ぶれ、、さ、いあ、いの、ひと‥‥‥」


そして二、人は旅に出る。1人は美しい金髪の妖精『シャナ』


そして、もう1人は強暴と慈愛の妖精竜『クエレブレ』


2人は愛し合い。最初に出会った『クエレブレ』の洞窟で愛を確め最後を終えた。


金髪妖精『シャナ』と『クエレブレ』の妖精竜の洞窟


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