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何度も、何度も見た光景なんだ


ベルフェゴールを倒した俺はアフロディーテに案内され、『ブラック・チャペル』へと急ぎ向かっていた。


「マスター‥‥‥‥‥着きました‥‥‥‥ですが‥‥‥」


「‥‥‥‥‥あぁ、今は静かに見守っておこう」


俺とアフロディーテが見た光景。


ルドルフさんとリップが血縁者である『殺人鬼』ジャック・ザ・リッパーの遺体の両手を握って必死に叫んでいる光景だった。


あぁ、あんなに涙を流している。いや、当然と言えば当然なのだ。彼等は家族なのだから‥‥‥‥‥‥‥最後の別れ際に和解したのだろうか?


‥‥‥‥‥‥俺はこんな光景を何度も見てきたし、味わってきた。魔術院での修行の時、勇者時代の時、和国での旅の途中でもそうだった。


最近、一緒に旅をしたエスフィールや、現在、一緒に旅をしているアヤネや委員長には言えない言える訳がない悲しい別れも経験した事が幾度もあった。


「『殺人鬼』は確かに人を殺し過ぎた」


「‥‥‥‥はい」


「だけど。そんな『殺人鬼』にも‥‥‥‥‥ジャックにも。ああやって、涙を流してくれる《家族》がいたんだな」


「‥‥‥‥はい」


「‥‥‥‥‥‥ここを離れよう、アフロディーテ。魔法の袋(黄金の宝物庫)の中に避難させた住民の人達を出してあげないと。ここだと色々と不味い」


「‥‥‥‥はい、マスター」


「‥‥‥‥うん。 (『ロンギヌス』!後は任せて良いか?)」


(はい‥‥‥‥此方にはパーシヴァル卿と龍族の方々も居るので大丈夫です。主様)


(なら、後は任せたよ。パーシヴァル卿の事は後で何とか帰してあげよう)


(後程。反転・召喚術で『セルビア』に返還します)


(返還って‥‥‥‥‥‥凄い言い方だな)


(まぁ、パーシヴァル家とは神代の頃からの縁ですので)


(神代‥‥‥‥ねぇ‥‥‥永い縁なんだな。『ロンギヌス』とパーシヴァル家って)


(はい。ですから、有事の際は直ぐに喚べる奴‥‥契約関係なのです)


‥‥‥‥‥‥コイツ。奴◯とか言いそうになったか?


「いや、今は止めておこう。‥‥‥‥早く『オアシス』の住民の手当てをしないと。行こう、アフロディーテ」


「了解です。マスター」



‥‥‥‥‥‥‥正直な話。この場から早く去りたいという気持ちが強かった。


ルドルフさんとリップがあの光景をずっと見ているのが辛かった‥‥‥‥‥これは単なる俺、自身の憶測に過ぎないが悪霊・ベルフェゴールは『好色』の力を持っていた。


その力を使い、ジャックの感情を支配していたんじゃなかろうか?


「ジャック・ザ・リッパーは‥‥‥‥ジャックは精神操作の類いで操られてたと思うか?アフロディーテ」


「ベルフェゴールは『暗黒大陸』の上位貴族の悪魔種です。『魔都』からの命を受ければ何をしても可笑しくはありません」


「『暗黒大陸』?‥‥‥‥あの黒雲に覆われた侵入不可能、不可侵の大陸に‥‥‥‥‥『魔帝』?‥‥‥‥‥都市があるのか?」


「えぇ、ですが私は此方の世界。エウロペ大陸しか知りません。ですので気になる様でしたら、マスターは以前。『黙示録の獣』と契約した筈です、かの獣は『暗黒大陸』の出身。詳しい事はかの獣の方が詳しいでしょう」


「ドラゴに?‥‥‥‥‥分かった。時間がある時にでも喚んで聞いてみるよ」


「ごめんなさい。マスター、私にも伝えられる事と伝えられ無い事があるのです。その様に‥‥‥‥‥なっているのです」


「そうなのか‥‥‥いや、教えてくれてありがとう。アフロディーテ」


「‥‥‥‥はい」


『世界の理』か‥‥‥‥‥暗黒大陸にはそれ程までの秘密があるという事か?

ラインバッハの観光ガイド (裏)の本では妖精国の結界と繋がっていたと書かれていた。


いや‥‥‥‥今はそんな状況じゃないな。それに他大陸に行くなんて余りしたくない。

そんな余裕は無いのだ。


行くにしても『和国』の将軍か、アルトネ大陸の治癒師であるアイツが居れば何とかなりそうだが‥‥‥‥アイツらはアイツらで忙しいだろう。


‥‥‥‥‥‥‥‥‥。



その後、黄金の宝物庫へ避難させていた。『オアシス』の住民達を安全な場所で解放し。

怪我や精神汚染を受けた人達をガブリエルとウリエルに治療してもらている。



中央特区(セントラル)・大広場』


「うぅぅ、悪夢の様な夜だった‥‥‥‥」


「ハイハイ、もう大丈夫ですよ。治療しましょうね」


「白い羽が生えた方が?天使様?」

「ありがたや、ありがたや」


「愛くるしいでしょう~、可愛いでしょう~?治療しようねぇ~!皆さん~」


ガブリエルとウリエルの治療を受ける列には長蛇の列ができている。

一方の俺は‥‥‥‥‥


「先生。手に怪我をしてしまって」


「あ、あぁ、今、治すからね‥‥‥‥‥‥俺の列よりスゲー並んでだけど?何だ?この人気の差は‥‥‥‥」


「偽装魔道具で老人の姿をしているからではないですか?マスター、気になる様でしたら、偽装を解いては?」


俺の真上でプカプカ浮かんでいるアフロディーテにそう言われる。


「いや、こんな大衆の目前で小隊を晒したくないだよ。若返って以前とは容姿が全然違うとはいえ、『オアシス』には知り合いも多いし、勇者は行方不明扱いになってるんだしさ」


「ですがそれではマスターの可愛らしい容姿が大衆に理解されません」


出たよ!最高美神の美的意識。アフロディーテは昔からこうなのだ。何でも俺に着いていく決め手となったのは、俺の童顔が気に入ったらしいからだと後から聞かされた。


「‥‥‥‥俺の可愛らしい容姿を知っているのは君一人で十分だよ。アフロディーテ」


「まぁ、マスター!それはもしや口説き‥‥‥‥‥」


「見つかましたわ!セツ君!!!誰を口説こうしているのですかあぁぁぁ!!!」


「また、ナンパしてるわけ?気絶しなさい!!神成君!!!」


「この声は?!アヤネと委員長?!あぁ、そうか。契約者には偽装魔道具の効果が無いんだった」


‥「安心してください。私の姿は私の任意によって見えるものを選べます」


‥‥‥‥‥との事だ。


そして、俺の目の前に立っている治療中の人物はというと。


「先生‥‥‥‥手の傷は治りますか?」


可憐な美少女が俺の治療魔法を絶賛受けている。つうか、この子。ヘファイストス地方で有名な歌い手の踊り子じゃないか!おぉ、だからこんなに可憐なのか!

‥‥‥‥‥これは何時ものパターンになりかねない。


「どういう事ですか?セツ君!!」

「観念しなさい!!神成!!!」


「《契約者よ!我が袋に戻り奉る》」


「なっ?!これは!」シュン!

「ちょ、ちょっと!」シュン!


俺は彼女達を強制的に魔法の袋(黄金の宝物庫)へと移動してもらった。


「‥‥‥‥‥問題を先送りしただけでは?」


「誰のせいだと思ってる。最高美神・アフロディーテ様」


「自業自得では?」


「‥‥‥‥‥今は『オアシス』の人達の治療が最優先だ。うん‥‥‥‥‥拷問はその後、受けるさ‥‥‥‥‥うん‥‥‥はぁー」









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