魔都決戦・『殺人鬼は苦悩し狂喜する』No.13 狂喜は晴れ殺人鬼は思い出す
飛散するは黄金の粒子。
悪霊・ベルフェゴールは最高美神・アフロディーテの『金星』の力により塵と化し、姿の一切を地上から消した。
「‥‥‥‥‥これが七聖―女神―と同じ力‥‥‥‥地球側の神々【地聖七星】の力なのか‥‥‥‥‥『金星』の力」
俺は上空に優雅に浮かぶアフロディーテを見ながら彼女の力。『金星』の力の一端について色々と考え始めた。
地球には魔力が神聖が残っている地域以外、無い。誰かがわざとそうしたのかと言いたくなる位に不自然に存在しないのだ。
地球側で何が起こり、神々は何かの依り代となる道具や建物に入り難を逃れ。それらが永い年月の果てに神社仏閣や名所等と呼ばれる地域になったのだろうか?
「‥‥‥‥‥神煌具は‥‥‥‥簡易的な『ノアの方舟 』。身を護る為の社。フィルターだったりするのか?‥‥‥‥‥いやいや、考え過ぎかな?‥‥‥‥‥地球に戻ったら『天領高校』の地下図書館に侵入するか。それかこっちの魔法中央国の『魔法大書庫』に行ってみるしかないか?」
そんな事をブツブツと言っていると不意に金木犀の良い香りと共にアフロディーテが現れた。
「‥‥‥‥‥マスター、探究は殆んどにした方が良いですよ。好奇心は身を滅ぼすかと」
「うわぁ!!アフロディーテ。いきなり現れないでくれよ!びっくりするだろう!」
「あの方々は私を透して視ているのですよ。お忘れなく」
「‥‥‥‥‥分かってるよ。俺も元『勇者』。原始側のルールはある程度は察してる。だから、使う技も『神代・回帰』までしか使わないように心がけてる。じゃなきゃ‥‥‥‥‥ベルフェゴールみたいに『世界の理』から外されるだからな」
「良い回答かと。もし、その天領高校とアテナ地方の『魔法大書庫』に行く時は私も同行させて下さいね。そうすれば、閲覧の良し悪しも‥‥‥」
「原始側が判断を下してくれるのか‥‥‥‥‥‥それなら大蛇も『草薙の剣』も持って行った方が良いかな?アフロディーテ」
「東国の『黒龍』様ですか?‥‥‥‥‥それが賢明かと。神の目は1つでも多ければ幸いですので」
「分かった。天領高校か魔法大書庫のどちらかに行く時が来たら、2人には相談するよ」
「はい!マスター!」
アフロディーテはその美しい顔で俺に忠告してくれた。
禁忌に触れるべからづか‥‥‥‥‥たかだか一人の魔法使いが『神話魔法』使用や地球側での神々の成り立ちについて調べるのにも原始側の監視と許可が必要とは‥‥‥‥‥あの方々は神からしても恐ろしい存在なんだと俺は感じ取った。
「‥‥‥‥おっと!色々と考えちまったけど。表の人格のジャック・ザ・リッパーの方はどうなったか見に行かないと!」
「あぁ、黒い鐘がある広場に入る、意識が消えかけている方ですか?それならば私が案内しましょう。マスター、着いてきて下さい」
「表の人格の奴『ブラック・チャペル』に飛ばされたのか?!あぁ、行こう!アフロディーテ」
『中央特区・ブラック・チャペル』
大広場
「ぼ、僕は!僕は!僕ははは!!!‥‥‥‥‥‥アアアア?!‥‥‥‥‥リップ!!ルドルフ!!!」
「‥‥‥‥‥‥どうやらあっちの闘いも終わった様だな。裏の人格の魔力残滓の気配が無くなりつつある」
「マジかよ!ルドルフの爺。良く分かんな!」
「誰が爺だ!バカ孫!」
「はぁ?!誰がバカ‥‥‥‥孫?」
リップは首を傾げて頭の上に疑問符を浮かばる。
「僕は‥‥‥‥‥僕は‥‥‥‥‥今まで何を‥‥‥‥していたんだ?」
「‥‥‥‥‥裏の人格『悪霊・ベルフェゴール』の『好色』が消えたみたいですね。ルドルフさん」
「『ロンギヌス』は‥‥‥聖槍は邪気を払うか。あぁ、救いに感謝する。パーシヴァル殿‥‥‥‥‥ジャックよ!俺が分かるか?ジャック‥‥‥‥‥」
「その声は?‥‥‥‥‥‥ルドルフお爺ちゃん?‥‥‥‥‥と誰?隣の大きなお兄さんは?」
「なっ?僕だよ!ジャック兄さん!弟のリップだよっ!」
「リップ?‥‥‥‥‥あぁ‥‥‥‥リップなのかい?‥‥‥‥僕の弟のリップ‥‥‥」
「そうだよ!兄さん!!正気に戻ったんだな!なら手当てを!!」
「‥‥‥‥いいえ、リップ殿。この傷ではよもや数刻しか息が持ちませぬ」
「はぁ?何言ってんだ!夜叉巫女!セツナなら!セツナや天王洲とかなら治せるんだろう?早く呼びに行かないと!!って!離せよ!クロ!!!」
「リップ!!‥‥‥‥もう時間がないのだ。悪霊に取り憑かれたものが力を得る代償に捧げるのは自らの命。ジャックとやらは無理矢理だったかもしれないがな。『契約』というものは絶対なのだ。それが原始の‥‥‥‥」
「よせっ!黒竜の子供!!それ以上の発言は死を意味する。―女神―の眷属ではないのだ。慎め!!」
ルドルフは怒気を含んだ言葉でクロの言葉を遮った。
「‥‥‥‥了解した」
「ハハハ、久しぶりに聞いたよ‥‥‥‥ルドルフお爺ちゃんの怒鳴り声‥‥‥‥‥市場で迷子になった時も遠くから聴こえたんだよ。お爺ちゃん‥‥‥‥」
「ジャック!‥‥‥‥済まん。お前をもっと見てやれていればこの様な事にはならなかったのだ。全てはこの凡夫の爺が招いた過ちだった」
「うん‥‥記憶が曖昧なんだよ。ルドルフお爺ちゃん‥‥‥‥‥‥でも、僕も突然居なくなってごめんなさい。お爺ちゃん‥‥‥‥僕はあの後‥‥‥‥ブラッドに会って‥‥‥‥最初は酷い目に遭ったけど」
「あぁ、済まん。本当に済まん。ジャック!ジャックよ!」
ルドルフは意識薄れるジャックの両手を握り。大粒の涙を流し始めた。
「あれ?その後、どうしたんだけ?‥‥‥でも、もう良いや‥‥‥‥今は気分が良いんだ。凄く‥‥‥色々なものから解放された感じかな‥‥‥」
「兄さん!!!僕は!!」
「リップ‥‥‥ルドルフさんは僕達の血の繋がった本当のお爺ちゃんだからさ‥‥‥‥もし僕が居なくなったらさ、ルドルフお爺ちゃんを頼ってね‥‥‥‥後、あの日勝手に居なくなって本当に本当にごめん。ごめんよリップ」
「良いんだよ!兄さん!!もう良いんだ!!分かった!わがったよ!!頼る!!ルドルフの爺に頼るよ!!だから、行かないでぐれよ!!俺を!爺さんを残して行かないでくれよ!!!ジャック兄さん!!!」
「あぁ!!!行かないでくれ!!!俺の大切な孫よ!!俺はワシは!!!お前に謝りたかったんだ!!!悲しませた!!あの時は目を離して済まなかった!!!お前にもっと愛情を注ぎたかった!!ジャック!!ジャックよ!本当に済まなかった!!!だから死なないでくれ!!!ジャック!!!」
「‥‥‥うん‥‥うん‥分かってるよ‥‥リップ‥‥‥ルドルフ‥‥‥うん‥‥‥僕は‥‥‥その言葉だけで‥‥‥‥救われてるよ‥‥‥‥うん‥‥‥うん‥‥もう大丈夫‥‥‥‥苦悩は無い‥‥‥‥狂った笑いも‥‥‥‥もうしなくて良いんだ‥‥‥‥‥僕を‥‥‥‥正気に戻してくれてありがとう。リップ‥‥‥ルドルフお爺ちゃん‥‥‥‥本当に‥‥‥‥‥ありがとう‥‥‥‥‥さようなら‥‥‥‥二人共」
「兄さん?」
「ジャック?おい!ジャック!!!」
二人の肉親は『殺人鬼』を泣きながら抱き締める。
すれ違いの3人だった。
だが、最後に運命は交差し、話し合い、和解したのだ。
『殺人鬼』の表情は苦悩と狂喜ではなく、安らぎの表情をしながらその生涯を後にし、去って行ったのだった。
『殺人鬼は苦悩し狂喜する』編
終
以上で魔都決戦は終わりとなります。
永い間お読み頂ありがとうございました。




