『オアシス・サウス』No.2 人面蝙蝠
『オアシス・イースト』
「‥‥‥‥‥なんととか勝てましたね。リップ殿」
「お、おいっ!なんだよ!このお姫様抱っこは、それにこれ空から落ちてるだろう!!!お前もあのセツナ仲間で!!出鱈目のお馬鹿の一人なのかよ!!!落ちる!!死ぬ!!」
ヒュウウゥゥゥゥンンン!!
ドゴオオオオンン!!
夜叉巫女とリップは凄まじい勢いで地上へと落ちて来た。
「‥‥‥‥ニャー、ニャー、無事に勝てたか?夜叉?」
「クロ、そっちも無事でしたか?」
「くそ~!後で覚えとけよ!夜叉巫女!!つうか、何であんな高い所から落ちて平気なんだよ」
「おぉ、リップもいたのか?」
「『おぉ、リップもいたのか?』じゃねえよ!黒猫。お前の変な提案のせいで俺はだな‥‥‥‥」
「本物の殺し合い‥‥‥‥夜叉と傀儡者との生死を分けた死闘はちゃんと『視れたか』?リップ」
クロは真剣な眼差しでリップに問いた出す。
「『視れたか』?って‥‥‥‥‥あの意味不明な闘いのことか?それがどうしたってんだ‥‥‥‥」
クロに質問されたリップは思い出す。
このオアシスで『案内人』をしているだけでは、視ることが叶わなかった強者同士の闘いを。そして、その中で使われていた技や闘い方の数々を。
「つまり‥‥‥‥黒猫。お前が俺に見せたかったのは夜叉巫女や、あの傀儡者の技って事か?それと闘いの空気とか、それを見て自身の闘い方に取り入れろって事だな?」
「‥‥‥‥少しずれているが、まあ、概ね、その様な感じだ。リップ、お前には人を『見定める』才能がある。自身のもて余している才能に気づけば色々と変われるだろう。良い方へな‥‥‥‥これがダダの黒猫が言えるただ一つのアドバイスだ」
「『見定める』才能?俺に?」
「リップ殿。夜叉は‥‥‥‥‥貴方のお悩みを少しでも軽くできましたか?」
「夜叉巫女‥‥‥‥‥今はまだ分からないけどな。さっきの戦いで‥‥‥‥‥新しい何か掴めたかもしれない。多分だがな」
「そうですか、それは夜叉にとっても喜ばしいです。リップ殿」
「後な‥‥‥‥俺をあの『トルソー』から守ってくれてありがとうな。感謝する」
「リップ殿‥‥‥‥はい!貴方を守れて夜叉も嬉しいです」
「お‥‥‥おぉ、そうか。そーなのか‥‥へへへ」
「ニャー、ニャー、何を顔を赤くしているんだ?リップ」
「はっ?俺が何時、顔なんか赤くしたんだよ!黒猫!!」
「黒猫ではない。クロだ!」
「猫がついて無いだけじゃねえか!もう、いいわ。全く」
「クロとリップ殿がいつの間にか仲良くなれた様で良かったです。では、少し落ち着いたら『オアシス・ノース』へと向かい、アヤネ殿と恵殿の元へ参りましょう」
「お、おう!ってノース?」
「ニャー、ニャー、了解した」
夜叉巫女はそう言って次の闘えと備えるのだった。
‥‥‥‥『オアシス・イースト』の闘いは終わり。再び、『オアシス・サウス』では。
「アハハ‥‥‥‥‥」
バタリ‥‥‥
「アバババ‥‥‥‥」
ドガァァン!
「アアアアア!!」
グシャア!
「‥‥‥‥スフィンクス達が」
「自滅していってるな。どうやら『ノース』か『イースト』のどちらかの闘いが終わったみたいだな。カミナリ!」
「スフィンクス達の死体に糸と黄金の虫か?あれは?」
俺は『魔眼』の認識眼の能力を使い、スフィンクスの体内を覗いていた。
「黄金の虫だと?‥‥‥‥そうか、最初に殺られたのは『イシスの民』とか名乗ってた傀儡者の女か‥‥‥あの女には2人も弟子を殺されててな」
「ルドルフさんの弟子?」
「あぁ‥‥‥‥カウス、アルカ。どうやら、お前達の仇を龍族の娘が取ってくれた様だ‥‥‥‥その娘に会ったら、お前達の変わりに礼を言っておいてやるからな」
ルドルフさんはオアシスの夜空の上に向かって語りかけていた。
「ルドルフさん‥‥‥‥」
「よし!では、残りの魔獣共もこの鎚で屠るとしよう!手伝ってくれ!カミナリ」
「残りって。もうほぼ倒したろう‥‥‥‥?!って空から何か落ちてくる?」
「ふんっ!相手もどうやら馬鹿ではないらしいな」
「ギギギ!!」「ギィギィ!!」「キキィィ!!」
空から舞い降りたのは蝙蝠の羽を羽ばたかせ人の顔をした化け物であった。
「スフィンクスの次は人面蝙蝠かよ。『トルソー』とか言う殺人鬼共らなんつう、悪趣味な連中なんだよ」
「‥‥‥‥‥悪趣味か‥‥‥‥そうだな。アイツは昔から変な趣味をしていたな。アイツがあんなに品曲がったのは俺のせいでもあるかもしれん」
「?ルドルフさん?」
「いや、済まん。昔の話だ!では、戦闘の続きを再開するぞ!カミナリ!!『大槌・圧』」
「ギギギ?!」ズズズ!!グシャ!
「グギィ?!」ズズズ!!グシャ!
「ギャバ?!」ズズズ!!グシャ!
夜空を舞う人面蝙蝠達は何か強力な圧力に上から押さえつけられ、原型を止めること無く。押し潰されたのだった。




