夜叉巫女 対 イシスの使い No.5 自我を残したままで
『観客席』
「嘘だろう?あの強そうな女の胴体が‥‥‥変な竜の口に喰われた?‥‥‥これがあの娘の力なのか?俺とそんなに歳は違わなさそうなのに、何であんなに強くて残酷な闘い方ができるんだよ‥‥‥夜叉巫女」
『天空遊戯場』中央
「はっ?わ、私の胴体が?私の下半身が?!無い!無いわ!何処にも無いのおおお!」
コツン、コツン、コツン
静かに夜叉は彼女に近づきます。
「て、てめえ!!私の胴体を返せ!!私の!!身体!美しい胴体をををを!!」
「‥‥‥‥‥貴女方。『殺人鬼』は、同じ様に泣き叫んでいた職人方を殺してきたとここに来る旅の先々で聞き及んでいますが?」
「だからなんだっていうのよ!!それが私やアイツ等に与えられた使命。契約よ!契約者達との約束は絶対。あんただってそのくらい分かるでしょうがぁ?!クソ小娘!!」
「ならば、夜叉はその契約者達と縁を切り、姿を眩ませまする。貴女方の様な使命や快楽、愉悦に浸るような殺人鬼に成り下がりたくありませぬ」
「綺麗事を抜かすんじゃねえよ!!!‥‥‥‥あんたは龍族!!はなっから恵まれた血筋と力を持って産まれた勝ち組だろうが!!私は!私は!『イシスの民』でも最下層のカーストで産まれ落ち存在なんだよ!そんな私が這い上がるには強者に従い。じゃくしゃを殺すしか無いんだ!!分かったかっ?!小娘!!!」
「貴女にも色々な事情がおありなのは分かりました。‥‥‥‥それでも‥‥‥‥それでも人を‥‥‥『オアシス』に生きる職人方や一般人を殺していいという話にはなりませぬ‥‥‥」
「ふー、ふー、ふー、小娘風情が私に同情?あの方から認められたこの私。『イシスの使い』が?屈辱よ!‥‥‥‥屈辱‥‥‥いいえ、あんたは入らない。私にここできっちり殺されない。神代・回帰‥‥‥『黄金虫の母体』」
「ここにきて神代・回帰?‥‥‥‥貴女はいったい?何を?」
「フフフ、死になさい。小娘!!!」
ズズズズズ!!!
ゴキッ!ゴキッ!ゴキッ!
ズザアアアアア!!!!!
スカラの切断された胴体から虫の足が生えてきた。その虫の足の色は黄金色の輝きを放つ。
「醜い姿になるけど、完全に死ぬよりましよ。合体しましょう?スカラベの母体。『クイーンスカラベ』よ」
「ギチギチギチ!!!ハアァァァ!!!」
「フフフフ!そう!元気ね!目の前の小娘を喰い殺すのよ!上半身の私と共にね」
スカラは立ち上がった。新たな胴体を得て‥‥‥‥新しい魔獣とかして生命を繋いだのだ。
その姿は異形と化した。
胴体からしたは黄金の足が生え、胴体には幾つもの虫の目が夜叉巫女を捕らえて離さず。
上半身はスカラだった虫が長い舌を出し、夜叉巫女を睨み付けていた。
「完全な異形へと変わるとは‥‥‥‥残念です。今宵の『天空遊戯』がこのようにして終わるとは」
「はっ?終わる?終わるのはあんたの命よ!ギチギチギチ!!フフフ」
「貴女の意識もその胴体の母体に乗っ取られつつありますね。何処か別空間での気配はその面妖な虫だったのですね」
「ギチギチギチ?あんたはさっきから何を一転のよ」
「以前、スパイング山脈で黒騎士殿と闘った時も何処か違う次元の魔を召喚されていましたし、その虫もそうなのでしょう」
「小娘!!それ以上喋れば殺す!ギチギチギチ」
「いえ!ご心配無くとも殺し差し上げます。害悪を呼び起こす『虫』よ!!‥‥空間魔法・神代・回帰『天空遊戯・絶空』」
子供の遊びは何時かは終わる。
勿論、夜叉巫女と虫との遊びも終わりを迎える時が来る。
今がまさにその時であった。
虫を何処にも逃がさない為の『天空遊戯(結界)』は縮小を始める。
この地上とは別の空間から現れた。『虫』を外に逃がさない為に。
変わり果てる前に。人としての自我が彼女に残っている前に倒すのだ。
それがせめてもの『イシスの民』を救う為の最後の手段なのだから。
「ギチギチギチ?!これは?空間が小さくなって‥‥‥」
「さようなら。綺麗なお姉さん。貴女とは別場所で、別の出会い方をしてお話がしたかったです。数々の暴言をお許し下さい。天空では安らかに‥‥‥‥去らば‥‥‥‥『龍一閃」
スパンッ!
「わ、私は‥‥‥‥‥『イシス』様の‥‥‥‥為に‥‥‥生きて‥‥‥‥」
ガコン、ガコン、ガコン
縮小し、畳まれるは『天空遊戯』。
その中で潰されるは異界の『虫』。
スカラは夜叉巫女の救いの一閃により。人の自我のまま、意識を止めたのだった。
夜叉巫女 対 『イシスの民』
勝者。夜叉巫女




