夜叉巫女 対 イシスの使い No.4 天空遊戯
「今回の結界は『天空遊戯場』‥‥‥‥遊戯。つまりは遊びでありまする」
「遊びだぁ?何をふざけた事を抜かしているのよ?小娘」
「玩具は‥‥‥‥悪趣味殿。貴女です。そして、そんな貴女と遊ぶのは‥‥‥‥この夜叉巫女なり」
「はぁ?あんた。いったい何を言って‥‥‥‥」
「黒竜は魔獣達を玩具にして狩りを覚える。黒竜魔法『魔狩鯉』」
天空遊戯場内の空間が割れ、その中から黒腕の爪が現れる。
「また、異空間から何か出すわけ?ちっ!空間魔法だかと龍族の魔法を上手く使いこなしてるじゃない!!でもね。そんな技当たらなくては意味ないのよ!闇魔法『黒色虫』。さぁ、私の居場所が分かるなら、当てて見なさいよ!」
スカラの掌の召喚門から黒光りの虫が大量に出て来た。
そして、その虫達をスカラは自身に纏まり着かせ。周りの風景と同化した。
「‥‥‥‥また、虫達を使っての技ですか。貴女、自身は闘わぬとは」
「傀儡者っていう者は皆そうなのよ!小娘。闘い方なんて千差万別。いちいち、正々堂々何ってやってらん無いのよ!!フフフ」
スカラの姿は何処にも見えないが声だけは何処からか聴こえてくる。
(‥‥‥‥何処にも気配を感じられないなんて。それに何でしょう。この空間とは別の空間から何かに見られているような感覚は?)
「さっきまでの威勢は無くなってきたじゃない?私の気配が分からなくなってきて焦り始めたのかしら?なら、喰らいなさいよ!闇魔法『毒癌虫』」
(紫色の虫?あれは‥‥‥‥絶体に近づかせてはいけませぬ)
「フフフ!ヤバイと思ってるわね。小娘!それもその筈よね、その『毒癌虫』一匹にでも刺されれば。数分も経たずに天界行き。さぁ、さぁ、何とかしないと龍のご先祖様達とご対面よ!フフフ!アハハハ!!」
「‥‥‥‥何とも。嫌なものを放って来られますね。悪趣味殿は‥‥‥‥空間魔法・『零箱』」
「ん?あれ?あいつらの周りに入る虫達‥‥‥‥何か可笑しな動きを始めたか?」
夜叉巫女が唱えた『零箱』の効果に一番最初に気づいたのは、スカラではなく。何と観客席に居たリップだった。
彼には相手が繰り出した技を瞬時に見抜く才能があった。
これは彼が幼少期から『案内人』として長く人を導き、その者を見て、その者が所持している武器を観察してきたことで培ってきた技術である。
『鍛冶師の里』では才能がある者に必ず。『案内人』という役目を長く勤めさせ、何かを見抜く力を付けさせる。
そして、リップは10年以上の歳月を『案内人』として勤めてきた。
彼には才能がある。戦闘の才能。人を見抜く才能。そして、鍛冶師としての至高の才能を。だがそれを本人は全く気づいていないのだ。
昔、彼が慕っていた兄の影をずっと追い続けている為、立ち止まり進めないのである。
『天空遊戯場』中央
「馬鹿ね!そんな、技。私の可愛い虫達に聞くわけ‥‥‥‥」
「空気も空間を隔離りし無くしてしまえば吸えませぬな?悪趣味殿。それがいかに傀儡者が操る強力な虫達であろうと」
「はぁ?空気って‥‥‥‥あんた!まさか?!って!私の虫達が落ちて行く?ていうか、死んでる?」
「おや?その様な所に居たのですね?随分と遠い場所に‥‥‥‥黒竜魔法『龍顎』」
スカラの居場所を特定した夜叉巫女は瞬時に黒竜魔法を発動し、スカラの胴体へと竜のアギトを喰らわせた。
「い、居場所が分かった位で何を偉そうに‥‥‥‥」
「ガアアアアア!!!!!」
グシャリッ!
「はっ?」
スカラが言い終える前に夜叉巫女の容赦ない魔法。スカラの胴体を喰らう音が『天空遊戯場』内に聴こえたのだ。
それはあまりにも一瞬で食いちぎられたスカラでさえまだ認識できず。痛みも分からず。『天空遊戯場』に残った身体が床へと誘われたのだった。




