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『森ノ大賢者・ガルド』~幕間・魔神イフリートの回想


①『森ノ大賢者・ガルド』



『双星の大洞窟』・古代竜の根城


「み、皆さん!落ち着いて、落ち着いて下さい!!こちらへこちらの出口へ避難して下さい」


観光ガイドの女性(結構可愛い)が大声で観光客を避難口へと誘導するが、皆、パニック状態で我先に避難口へ向かうため、古代竜の根城の広場は大パニックになりつつあった。


「‥‥‥これは不味いのう、もしこの騒ぎが『双星の大洞窟』中に広がれば怪我人や下手したら、死人も出るかもしれんぞ」


エスフィールが広場の騒ぎを見て慌て始めた。


「そうだな。‥‥‥‥仕方がない。あれをやる!」


「あれ?あれとはなんじゃ?」


エスフィールが疑問符を頭に乗せ首を傾げた。 


「いや、あれはあれだろ?これだよ!幻術魔法「睡眠」」


俺が逃げ惑う観光客に向け。幻術魔法の技「睡眠」を喰らわせた。


「き、貴様!!!この馬鹿者がぁ!!」


その瞬間、エスフィールのボディーブローが俺の腹部へといつも通りクリーンヒットする。


「がっはぁ!!!痛てえぇ!!」


「こんな緊急時に何をしておるのだ?貴様は、馬鹿なのか?本当の馬鹿なのか?」


エスフィールがぶちギレる。


「いや、テストの成績は俺の方が上で‥‥‥」


「この馬鹿者があぁぁ!!!!」


またもや、エスフィールのボディーブローが俺の腹部へといつも通りクリーンヒットする。


「ぐおぉおぁあぁ!!水落に‥‥‥」


「貴様、この責任どう取るつもりじゃ?!」


エスフィールがぶちギレるを通り越して、氷の女帝見たいになっている。


「‥‥‥‥‥こ、このように責任を取るつもりじゃ、パチン(指パッチン)」


俺が右手で指パッチンすると、俺の幻術魔法で動けなくなった観光客の周りに簡易転移用の魔方陣が浮かび上がった。

その瞬間、魔方陣が光を放ち。光が消えると同時に観光客の姿が何処にもいなくなっていた。


「おい、セツナ!お主、何をしたのじゃ?」


「簡易の転移魔法で『双星の大洞窟』南側出口の案内所に全員飛ばしたんだ」


「‥‥‥お主、以前は転移魔法は使えなくなったと言っておらんかったか?」


「ヒスイのお陰だ。アイツを形式上だが使い魔にしてるお陰でヒスイからの魔力が供給され。魔法増量が6割から7割に戻す事ができた」


「それでどうなったのじゃ?」


「本当に簡易だが、転移魔法が少し使えるようになった」


「なるほど、それで観光客達を感電させ、『双星の大洞窟』の外へと避難させたのか。」


「そうそう、そう言うこと、そう言うこと」


「な!」


「な?」


「なら?」


「奈良?奈良県か?」


「ならば最初に説明せんか?このアホオオ!!!」


そして、今日、一番思いボディーブローが俺の腹部へとクリーンヒットした。



場面変わり「古代竜の根城」ヒスイ&セシリアサイド


「ナンニャ?あれ?炎の妖精ニャア?」


「分からねえが!ここの観光資源は、貴重なエウロペ大陸の歴史資料そのものだ!!破壊したくねえ、‥‥‥‥仕方ねえ。結界魔法を張るかあぁ!アホ猫!!少し時間を稼いでくれ」


「オニャエ!時間を稼げって言われてもに、わっちは妖精ニャんかと戦うのニャんて初めてニャゾ!!それニャラ、セツニャかメイエスのどっちかに加勢してもらってだニャア」


「いや、それは止めとけぇ!」


「ニャ?ニャンでニャア?」


「こういうなあ!訳が分からねえ、何が起こるか分からねぇって時はなるべく仲間を1人にしねえ方がいいんだよ!!片方がトラブルになっても、もう片方が、助けや仲間を呼びに行けるからなぁ!!1人行動が一番不味いんだぜ!!子猫ちゃん!!」


「ニャ、ニャニが!!子猫ちゃんだニャア。アホ騎士!」


アホ猫はそう言うと自身の尻尾で俺の顔面を叩きつけた。


「ぐおぉお!!けっこう痛んだぞ!!その尻尾攻撃よお!!」


「オニャエが変なこと言うからだニャア!!ニャったく!」


その時である、今までは大きな炎をゆらゆらと揺らし此方の動きを観察していたかのように静かだった妖精が動き出し、俺とアホ猫へと向かって来る。


「な、なんニャ?いきニャリ?」


「観察か分析が終わったんだろうよ!!アホ猫頼むぞお!!!数秒で良い時間を作れ」


「く、しょうがニャイニャア!風魔法『風壁・守円』」


アホ猫が唱えた風魔法は火の妖精を円形の風の檻へと捕えた。‥‥‥しかし。


「おい!!アホ猫!!風魔法はダメだぁぜ!!相性が悪りいし、逃げられちまう!!やるなら水魔法か氷魔法だ!!気をつけろ!!!」


それでもアホ猫の風魔法の威力が高いのか相性が悪くても数分は動きを封じ込められそうだ。


「水魔法に氷魔法ニャア?わっち、どっちも使えにゃいニャア」


「なにぃ?氷魔法は珍しいが水魔法が使えないっつのはどういうことだぁ?お前ぇ、仮にも『森ノ大賢者・ガルド』の娘だろう?なんぜ使えねえんだ?」  


「『森ノ大賢者』?誰のことニャア?」


「お前の父親だよ!!」


「わっちのパパニャア?」


「パパ?よくわかんねえが、そう、そのパパだよ!!先代魔王カシア様や死の国の霊王と並ぶ。エウロペ大陸を代表する七大賢者の1人がお前のパパだろうがよぅ!!」


「は、初めて知ったニャア。そんニャこと」


「‥‥‥‥お前、今まで何を学んで来やがったんだぁ?勉強は?!」


「‥‥‥‥‥サボってたニャア‥‥‥‥」


「‥‥‥‥まじかよぉ?!『始まりの大森林』だぞ?『キャッツアイ』、エウロペ大陸三大叡知の一つだぞ?『七大賢者』のパパがお前だぞ?学者や学生が泣いて羨む最高の環境でサボってたニャア!だと?!!!あり得ねえだろう!!!」


「‥‥‥‥‥そ、そんニャ事はいいから早く結界魔法を発動させろニャア!!!仕事が遅いのニャア!

全く」


「もういい、この騒動が終わったら。俺がお前に勉強を教えてやる。分かったな!!!」


「ニャア?ニャンでニャア?嫌だニャア。わっちが勉強しないことにオニャエは関係ニャイニャア」


「‥‥‥‥俺が尊敬してやまない『森ノ大賢者・ガルド』の娘がこんなお馬鹿さんじゃ困るんだよ!!!分かったな!!!お馬鹿さんよおぅ!!!」


「‥‥‥‥パパの名前を出すのはずるいニャア‥‥‥分かったニャア」


「よし、それでいいんだよ!!拳王姫さんよぅ!!、いくぞ!!!夜○術『参の型・夜の帳・(かこい)』」


俺がそう唱えると。風壁に封じ込められた炎の精霊の上にに黒い箱の様な空間が表れる。


アホ猫、俺、炎の精霊を巻き込み。夜の帳・圍は部屋中へと広がり。異空間を作り出した。




②炎の正体



『夜の帳・圍』の中


「なんニャ?この技?中は暗いのにわっちはオニャエや炎の妖精がはっきり見えるニャゾ」


アホ猫が慌てながらそう言ってくる。


「夜の帳・(かこい)はなあ!敵と認識したやつ、以外は俺の采配次第で圍の中でも外と変わらねえ様に動けんだぜぇ!!逆にあの妖精野郎は、暗闇の中で何も見えねえ状態って事だぁ!」


「ニャ、ニャるほど」


(まぁ、妖精だけあって俺達とは感覚のそれが全然、異なる訳だからな。この圍が効いてるか正直分からねぇがな。それよりもなんだぁ?カミナリに取られてた魔力が完全に戻ってやがるぞ。カミナリとメイドの方は何とか片付いたって事か?)


「で、でもニャア。こんだけの結界魔法。相当な魔力を使うんじゃニャいのか?わっちらセツニャの奴‥‥‥「契約の輪」で魔力制限かかってるニャゾ」


「‥‥‥‥アホ猫!!お前、まだ気づいてねえのかあぁ?!」


「気づいてニャイ?何がニャア?‥‥‥あっ魔力が戻ってるニャア!!」


「アホ!炎の妖精との戦闘が始まった少し後、俺達にかかってやがる。すべての魔力、肉体制限は解除されてんだろうが!!大方、カミナリのやろうが観光客の避難を終えたかなかでこっちに気を使って解除したんだろうよ!なぁ、カミナリのキツネ!!!」


「カミナリのキツネ?ってなんニャア?‥‥‥って、この獣はニャア?」


俺がそう言うとさっきからフヨフヨ周囲を飛んでいたであろうキツネが話し出した。


「全く、失礼ですね。御二人ともうちの名前はタマキ。―女神―アテナ様の眷属でカミナリ セツナ様と契約するものです」


「タマキニャア?それにアテナ様って?どういうことニャア?‥‥‥‥たまに変な気配がする時があったのはもしかしてオニャエかニャア??」


「あぁ、多分、コイツだなぁ!!おそらく、俺の(かこい)と一緒だ。コイツが、認識を認めねえ限り俺達にコイツの姿は見えねえなんだろう!!それとたまにあるんだ。神代の魔道具が―女神―と契約して神獣か眷属になる場合がな。違うか?キツ‥‥‥タマキさんよう?」


「だから、キツネでは、ありません。タマキです。ええ、あなたのご説明通りですよ。ヒスイさん。‥‥‥‥『契約の輪』のお仕置き決定権はご主人様が握っているので。今、電撃と雷撃が出せないのが残念です。いつもあなた方がピカピカ光るのを笑い転げながら見てますのに。はぁ、残念!!」


「‥‥‥おい、アホ騎士!!このタマキとか言うキツネ!!絶対、腹黒いにゃあ!!セツニャと同じかそれ以上に絶対、腹黒いのニャア!!今の発言で黒確ニャンだがぁ!!!」


アホ猫がそう騒ぎ始める。


「‥‥‥‥ペットは飼い主に似るとよく言うからな!!性格もかなり似てるぜえぇ!!それでタマキさんよぅ!!なんで普段姿を現さねえ、あんたが俺達の前に現れたんだあぁ?!!」


俺はタマキに詰め寄る。


「それはですね。心優しいご主人様から頼まれました。すまないタマキ。後でこのチータラをあげるから、あの2人のサポートをしてあげてくれと。2人は強いが後衛がいないのはキツいから頼むとの事でした」


「このキツネ!!チータラとか言う。食い物に釣られてわっちらを助けに来たのニャア!!!」


また、アホ猫が騒ぎ始める。うるさいアホ猫だぜ。


「‥‥‥‥ふん!!流石だ!!良く分かってやがるぜぇえ!!!カミナリ!!!‥‥‥これでどうにかなりそうだぜぇ!!」


「ンニャア?おかしくニャいかニャア?」


「何がだ?」


「オニャエの粗暴な性格なら助けニャンかいるかあぁぁ!!!!くそカミナリ!!!!!!位言いそニャロウ?」


「まぁ、普通の敵だったらなぁ!!」


アホ猫が首を傾げる。


「普通の敵ニャア?その言い方だとあの妖精が普通じゃニャい言い方ニャゾ!」


「あぁ、ご名答だ!!!‥‥‥そろそろお喋りは終わりだな。あの妖精野郎。この異空間に慣れて来てやがる。さっきみたいに攻撃してくるぞ!!‥‥‥そぉおら!!来やがったんだぁぜぇ!!」



それは一瞬にして燃え広がる。極炎の炎!!火柱が業火の如く燃え広がる。


「やはり、上位妖精ですか」


「あぁ、流石は『セルビア』の近くだあ!!初っぱなからヤベーのと遭遇だなぁ!!」


「なんニャア?あの炎の妖精は!」


「‥‥‥ここからは、本当に気をつけろ!!拳王姫セシリアさんよおぉ!!!炎の妖精・最高位の一角『イフリート』だぜえぇぇぇ!!」



「はあぁぁぁぁ!!!!燃え広がれぇぇ!!ハッハッハッ消し炭にしてやろうかあ?!!!ガキどもよ?」


『炎の魔神・イフリート』あらわる。






③上位魔神・イフリート



その魔神は妖艶な女性の様な妖精であった。


炎の球体に乗り。地球の中東等で着られている踊子の様な容姿をし。


周りには火柱の業火を従える。


「話にしか聞いた事がなかったが、もの凄いプレッシャーだなぁ!!おいぃ!!!」


「美人でエロそうな姉ちゃんが炎に包まれて出てきたニャア!!」


この状況でアホ猫が興奮している。パニックってた割にはまだまだ余力がありそうだ。


「貴様ら‥‥‥この『双星の大洞窟』に集まった有象無象とは違うな?‥‥‥成る程、それなりの場数はこなしておりそうだな」


イフリートはそう言い終えると少しの間。何か考えているようだった。


「失礼した。強者達よ。自己紹介もしなんだ。申し訳ない、セツは、炎の魔神・イフリート以後よろしく頼む」


「なんだ?おい!めちゃくちゃちゃんとしてる妖精じゃあねぇか!!なぁ、アホ猫!!」


俺はアホ猫を見てそう叫ぶ。


「黙れニャア!!アホ騎士!!」


「騒がしいところ悪いが、そろそろいかせてもらうぞ!!!神代魔法(赤)『極炎・火蕾』」


俺達は油断していた。イフリートとのその妖艶な姿に。


間違っていた最初の行動からして。


凄まじい勢いでイフリートとから、大人の人間位の大きさの火球が何発も、何発も繰り出される。


「うおぉぉ!!お前ら!!避けろ!!!一発でも喰らえば!焼け死ぬぞおぉ!!!」


「あ、熱いニャア!!!黒焦げはいやニャア!」


「早く逃げて下さい。セシリア嬢。頑張って!!」


「オ、オニャエ!!!!いつの間にわっちの服にしがみついて!!は、離れるニャア!!!自分でどうにかするニャゾ!!!」


「良いんですか?そんな態度で?全ての事が終わり次第。ご主人様に報告しますよ。うちとご主人様への暴言とか」


「くぅ~!!揃いも揃って本当にろくでもニャい性格ニャア!!!!!!最悪だニャア!!!」


(アイツら、なんか大丈夫そうだな。)


そして、矢の様に襲い掛かるイフリートの技『極炎・火蕾』凄まじい高温と熱波を帯。『闇の帳』内の異空間を蹂躙する。


「くそがあぁぁ!!上位妖精の力がここまでとはなあぁ!!おもしれえぇぇぜえ!!‥‥‥いくぞおぉ!!!闇霧!!!!夜○術『一の型・百鬼夜行・行脚(あんぎゃ)』!!!!」


俺は襲い掛かる火球に向け。刀を振るう。そうすると闇霧から黒い死魎(しりょう)達が沸き起こる。


「いくぜえぇぇ!!てめえら!!「百鬼の行軍」」


死魎達は飛び交う火球へと突っ込み。ぶつかり合い共に消える。


「?なんだ?その面妖な技は?我も長く生きているが、初めて見るな」


イフリートが火球に座り、脚を組み、質問してくる。


「俺の夜○術は消滅の特性も兼ね備えてんだよ。悪いが、自慢の火球は死魎共と共に消させてもらったぜ。上位妖精のあんたを相手にわざわざ、消火活動なんてしてたらあっという間に丸焦げだろうからな!」


「成る程、成る程、頭も切れるな。これはいい。これなば『セルビア』も救え‥‥‥」


魔神イフリートとは何やら考え事に更け始めた。


「なに?余裕噛ましてるのニャア?!!隙だらけニャア!!!『水麗棍・天夢』(すいれいこん・てんや)喰らうニャア!!!」


「バカやろ!!!アホ猫!!!だから、風魔法は効きにくいって!!ん?!なんだ?あの武器はよお?!」


セシリアが魔神イフリートに『水麗棍・天夢』をぶち当たる。

その瞬間、『水麗棍・天夢』から水魔法「水燕爆破(すいえんばくは)」が発動する。


「くっ!!!これはなかなか‥‥‥効くなぁ!!!」


魔神イフリートは先ほどまでの余裕そうな顔を崩し。セシリアの攻撃に困惑している。


「どういう事だあぁ?アホ猫は水魔法が使えないはずじゃあねえのか?!」


俺は当然の疑問を口にした。


「それはですね」


「ん?おぉ!!タマキさんよう?!火傷はねえかあ?ちゃんと躱せよ!!」


「‥‥‥ヒスイさん。貴方、やはりご主人様が言っていたとおり。凄い方ですね。あのセシリア嬢とは違い。うちへの接し方が全然違います」


「あんた、相当、高位の神獣だろう?見てて分かるぜ。すげえオーラだしな。そんな、奴に敬意を払わねえのは失礼だからな。カシア様に申し訳ねえ」


「許容もおありで素晴らしい。セシリア嬢にも見習って欲しいものですね」


「これからだろう?あの、アホ猫は!まだまだ若いしな!!どうにでもなる。それに俺とは違う。‥‥‥身体の方かぁ?凄まじい才能があるぜぇ!!俺は魔力全降りだからよおぅ!!!正直、羨ましいぜぇ!だが、今は上手く使えないみたいだかなぁ!!上手くやれば俺やカミナリ以上の強さになるだろうよ」


「そうなのですか?うちには全然、そのようには見えませんが?」


「昔なぁ、俺が魔王軍に居た時、何度かやりあったが。その片鱗は微かにあった。現に今、あの上位妖精に気づかれずに背後をとって対等にやりあってるのが、いい証拠だ。あれはいつか化けるぜぇ!!」


「先代魔王のNo.2がそう言うのでしたらそうなのでしょう。うちにはそう見えませんが」


「それで?タマキさんよう!あの武器はなんなんだ?何であのアホ猫が水魔法を使えてんだ?!」


「あれは、セシリア嬢がご主人様から昔、盗んだ。ご主人様製作の『水麗棍・天夢』です」


「『水麗棍・天夢』だあぁ?」


「はい、水麗棍の先にある。くぼみに火、水、雷、地、風等の『麗石』と呼ばれる。各属性を宿した魔石を埋め込めば。あのように」


「行くニャア!行くニャア!!『水斬刃』」


「使い手の魔力を糧に、あの各属性の魔石を通して、そいつが使いたい属性魔法に変換できるのか!!」


「はい、その通りです、素晴らしい」


「おぉ、なかなかのずるじゃねえか。ん?カミナリから盗んだ?」


「はい、昔、セシリア嬢はご主人様の目を盗んで。各魔石と『水麗棍・天夢』を取っていきました。ヒスイさんの闇霧と同じように」


タマキが俺の愛刀を凝視している。


「‥‥‥‥カミナリ!!!は俺にこの闇霧を託したんだぜぇ!!そんな目で見ないでくれ!」


「はい、そうします」


「んで?何で今の今まで使わなかったんだ?」


「セシリア嬢が『水麗棍・天夢』をご主人様からパクったにもかかわらず。戦闘の度に普通に使っていたのです。それをずっと見ていたご主人様はぶちギレて、魔王城の決戦前に偽物と本物を交換して『水麗棍・天夢』を取り返したそうです」


「そしてまた、盗んだと?‥‥‥本当にあの、アホ猫!昔からどうしようもねぇ性格してんなぁ!!」


「はい、その通りです」



しかし、スゲー事に武器を持っただけのセシリアはあの魔神イフリートと対等にやりあっているとい事だ。

伊達にカミナリの従者をしていただけの事はある。


だか、そんな、イフリートとセシリアの攻防も、イフリートの一言を切っ掛けに変わることになる。


「‥‥‥ふぅ、噂に違わぬな!『始まりの大森林』の姫よ!戦えるのはあの闇魔法の小僧だけかと思ったが、なかなかどうして‥‥やりおる」


「おお、上位妖精に、誉められるニャンてなんだか照れるニャア!」


「‥‥‥‥では、本番といこうか、姫よ!」


「本番ニャア?」


「神代魔法○『神代・回○・黒帝火炎』」


「黒い太陽」そう形容するしかない程に巨大な黒い火炎球がセシリアの上空へと表れた。


「さて、どうする?若き戦士達?」


『黒帝火炎』の下で妖艶に魔神イフリートは笑う。


「これ位超えてもらわねば困るでな‥‥‥‥」







④神代・回帰『八咫烏・黒天』



『神代・回○・黒帝火炎』


「ヒスイさん!あの技は!!」


「‥‥‥‥あぁ、不味いな。タマキさんよぉ!おい!!!アホ猫おお!!!下がれええ!!!焼き焦げるぞぞお!!!こっち来い!!」


「わ、分かったニャア!!!」


「おや、逃がさぬよ。神代魔法○『火人・生誕』」


イフリートが、そう唱えるとセシリアの周りに人を模様した人形の炎が表れセシリアを囲む。


「ニャア!!なんニャア?こいつらはニャア!!!めちゃくちゃ熱いニャア!!助けるニャア、アホ騎士!腹黒タマキ!!」


「アホ!だから言ったのによおぅ!!‥‥‥‥だがよう、よく1人であの魔神イフリートを押さえ込んだ。流石がは拳王姫セシリアだぜえぇ!!!‥‥‥‥準備はとっくに終わってる!!」


セシリアが1人で魔神イフリートを足留めしている間に、何も俺はタマキさんと仲良く、セシリアについて話していたわけではない。


「夜○術・奥義『諸行無常・闇』‥‥‥出番だぜえぇぇぇ!!(からす)。」


「‥‥‥‥なんだ?この違和感は‥‥‥」


魔神イフリートは、静かに『黒帝火炎』の更に上を見ている。


「気づいたかあぁぁ?!!だが、もう遅せえええぇ!!!○○解放・『神代・回帰』‥‥‥‥崩来せよ。八咫烏(やたがらす)・黒天!!!」



魔神イフリートの技・『黒帝火炎』が黒い太陽ならば、夜霧のヒスイの技『八咫烏・黒天』は黒い暗黒物質そのものに見るものには見えるだろう。


「ヒスイさん‥‥‥この黒くて重そうな塊は?!いったい?」


「あぁ、この右手に着けてる魔道具の力でなあぁ‥‥‥重力ってやつか?!まぁ、詳しくは知らねえがなあぁ!!さっき魔道具一式渡された時軽く説明されただけだしなあ。しかし、これだからよおぉ!!!カミナリの作る魔道具はやめらねええぇ!!」


「中毒者の言い方ですよそれ。いっちゃってます。」


「そうかい!!そうかい!!まぁ、良い。今は気分が良いからなあぁ!!‥‥‥‥落ちな『八咫烏・黒天』」


俺が静かにそう言うと。魔神イフリートの真下へと『八咫烏・黒天』が落ちていく。


「待つニャア!!まだ、わっちがいるニャアアーー!」


「わかってますよっと!!簡易転移門!」



「なんニャア?目の前にいきなり門ニャア?こ‥‥」


セシリアとタマキの前に似たような門が表れ。扉が開くとセシリアはそれに吸い込まれ。タマキの方へとやって来た。


「おぉ、珍しいなぁ?転移魔法か。初めて見たぜ!!」


「‥‥‥このエウロペ大陸で使える方はいませんからね」


(はぁ?嘘だな?タマキさんよぉ!どうせ、カミナリかあのメイド辺りは使えそうだな)


「はぁ、はぁ、助かったのニャア!!死んだひいじいちゃんがこっちに来るなセシリアって行ってたのにゃあ!!!」


セシリアが息を荒くして表れた。


「アホ猫!!良くやったぜええ!!今回はお前と相手との相性が悪すぎたな!!だが、もう安心しなこれで終わりにする。夜○術『八咫烏・黒天』崩来。潰れな。魔神イフリート!!」




魔神イフリートは天を仰ぎ、驚愕することになる。


「‥‥‥よもや。あの闇魔法の小僧が『神代・回帰』の技まで使えようとは思わなんだ。‥‥‥決まりだな。こ奴らで決まりだ。『セルビア』をいや、我が妖精族を救うのは‥‥‥‥」


「タマキさんよぉ!悪いがさっきの門を出してくれえぇ!!!脱出しないと俺達も潰れるぞおぉ!!!」


「お任せを簡易転移門!」


そして俺達はタマキさんの門をくぐり抜け。「闇の帳」の外へと脱出した。


『八咫烏・黒天』は崩壊する。『黒帝火炎』とその技の主人、魔神イフリートを巻き込んで。


黒く、黒く、黒く、崩壊する。


全てを巻き込んで行く。魔神イフリートの技の全てを魔神イフリート自身も含め、闇へと費える。


『神代・回帰』一握りの上位妖精、上位個体が幾年も修行し

身に付ける。最古の技。


今、それがぶつかり合い黒天が勝利した。




⑤新たな『契約者』


『双星の大洞窟』南側出口付近


ドガアァアア!!!!と音がした後、『双星の大洞窟』全体が地震の様に揺れる。


「こ、これは?いったい、中はどうなっとるんだ?」


俺とエスフィールは怪我や催眠で寝てしまった観光客とガイドさん(結構可愛い)に治癒魔法をかけて周りを介抱していた。


「観光客の人達も全員。意識を取り戻したし、「古代竜の根城」に戻って見るか!じゃあ、メルさん!気をつけてここにいてくれ!」


「は、はい!カミナリ君!皆さんを助けて頂いてありがとう。行ってらしゃい」


観光ガイドのメルさんに声をかけ。俺とエスフィールは

‥‥‥


「おらあぁ!(ドカアン)」


「ぐわぁ!!」


エスフィールの強烈な手刀が俺の肩にぶち当たる。


「貴様、こんな大変な時にフラグを建ておって!こちらに来てからは暫くないと思って、油断しておれば全く。ほれ、行くぞ!天然タラシ!!」


そ、そして、俺はエスフィールに引き面れながら。「古代竜の根城」へと戻ることになった。



「古代竜の根城」


「凄い、揺れたのニャア」


「あぁ、闇の帳が無かったらまず間違いなく。『双星の大洞窟』の一部は崩壊していたな」


「ヒスイさん。『神代・回帰』の技。使えたんですね。驚きました」


「ん?あぁ、山籠りの時に身に付けた。スゲー威力だろう?この技。カミナリとの闘いの時も使ってただろう?」


「そうなんですか?ですが、ご主人様との時とは、威力そのものが違うような?」


「あぁ、迷彩開示だ。詠唱と同じだな。唱える時間や魔力を貯める時間が長いとその分、威力や魔力が増す。今回はアホ猫がいたから通常の『鴉』を『八咫烏』まで威力を底上げできた。助かったぜ。アインズさんよぉ!」


「ンニャア?!アホ騎士が素直にわっちの名前を‥‥‥まぁ、感謝されてるニャらいいかニャア。素直に受け取っておくニャヨ」


「‥‥‥そうかい」


「おーい!!大丈夫かぁ~?3人とも!!」


「ご主人様の声です。ご主人様~!タマキはここにおりまーす。」


タマキさんは嬉しそうに大声で俺達の方をカミナリに教えた。


数刻後


「セシリア、ヒスイ、タマキ!大丈夫だったか?「契約の輪」スイッチオン!!」


「うおぉ!」「ギニャア!」


2人は一瞬、苦虫を噛み潰したような顔をした様に見えたがにしたが気にしないことにした。


「おぉ、ちゃんと勝ったぜえぇ!!カミナリ!!!お前がくれた新魔道具の一式スゲーな!!使ってて気持ち良いぜ!!!」


「おぉ、そうか、ヒスイ。何なら他にも昔作った奴があるから後で見せてやるよ。気に入ったらそれもやろう」


「マジかよぉ!カミナリ様よぉ!!!楽しみに待ってるぜぇ!!」


「おぉ、ちゃんと勝ったニャア!!!セツニャ!!!オニャエがくれた新魔道具『水麗棍・天夢』スゲーニャア!!使っててすっごく手にニャじむニャア!!」


「‥‥‥おぉ、そうか。‥‥パチン!!(指パッチン)」


「ギ、ギニャアアアアア!!!ニャンでニャア!!!痺れるニャア!」


「‥‥‥‥セシリア、貴様!いつの間にまた俺の『水麗棍・天夢』を盗み出した?それにお前のじゃないからなこれ」


「ンニャン、ンニャン、痺れるニャン。仲間の明かしに昔、くれたんニャロウ?(ウルウル)」


「‥‥‥貴様、いつ頃、これを盗みだした?」


「はい、ご主人様、以前、ユグドラ街道の2日前に泊まった宿でヒスイさん用の魔道具をご主人様が一生懸命選んでいる時にこっそりと」


「おい、アホ狐!!余計なこと言うニャア、ギニャアアアアア!!!やめるニャアアア!!電撃は嫌ニャアアアア!!」


「とんでもねえ、奴だな!おめえは、アインズさんよおぅ!!」


「セシリア、今回はお主が悪いぞ」


ヒスイとエスフィールは哀れみの目でセシリアを見ている。


「ウニャア!!ひ、久しぶりに泊まった宿でわっちの相棒『水麗棍・天夢』と運命の再開を果たしたのニャア!!魔が差したのニャアアアア!!ギニャアアアアア!!」


「たく、昔から何回目だ?欲しいなら初めからそう言えば、君にあげたのに毎回、毎回。盗みやがって。ほれ」


俺はそう言うとセシリアに『水麗棍・天夢』を手渡した。


「ニャア?どういうことニャア?くれるのかニャア?セツニャ?!」


「あぁ、それは昔、君、専用にあの人と一緒に作った武器だ。いつか、渡そうとしようとする度に勝手に持ち出すから渡すのを諦めたんだ。たく」


「マジかニャア?わっちの為に?それは知らなかったニャア。今度からは大事に使うニャア、セツニャ!!!ギニャアアアアア!!!!ニャンでニャア!!!」


セシリアが抱きついてこようとしたので反射的に指パッチン(電撃)をしてしまった。


「いや、君よりメイエスに抱きつかれたくてな。反射的にならしてしまった。すまない。(指パッチン)!!」


「ギニャアアアアア!!!オニャエ!!!やめろニャア!!!わっち、死んじゃうニャアアアア!!絶対、まだ怒ってニャアアアアア!!」


「おっと、セシリアへのお仕置きはこの辺にしてヒスイ!どうだった?」


「あぁ、いちを勝ったぜ!!相手は魔神イフリートだったぜ。‥‥‥『神代・回帰』まで使ったがな」


俺とエスフィールは魔神イフリートの名前を聞いた瞬間。驚愕する。


「おい、セツナ!魔神イフリートとは‥‥‥」


「あぁ、上位妖精だな。あっちの世界でも数々の伝記で名前が残っている。まさか、イフリートとはな。よく勝てたもんだ」


「あぁ、なかなかギリギリだったぜぇ!!そこのアインズさんが頑張ってくれたお陰だぜぇ!!」


「ギニャアアアアア!!!しび、痺れるのニャアアアア!!!悪いことはもう懲り懲りニャアアア!!」


ヒスイはセシリアを指差して言った。


ん?アインズさん?俺はエスフィールは目でアイコンタクトした。


(どういうことじゃあ?)


(‥‥‥‥そういうことじゃないか?)


どうやら俺達がいない間にセシリアとヒスイの距離が数ミリ近づいたらしい。

その時である。

「古代竜の根城」の天井から声が掛けられた。


「おうおう、話の途中ですまないが、セツも話の輪に加えてくれ」


天井に焔の様なかがり火が表れ。妖艶な女性へと輪郭を表した。


「お、おまえは、魔神イフリート!!消滅してなかったのかあぁ?」


「おぉ、先ほどの闇魔法の小僧。いやいや、あの時はセツも消滅仕掛けたがな。最後の力を振り絞り。黒天と闇の帳とやらから抜け出した次第だ」


「なんつう、生命力と執念だ。これが上位精霊って奴か!!!」


ヒスイがそう呟く。


「だがな、このままでは、直にセツは、この世界アリーナから消滅してしまう。貴様の『神代・回帰』の技のせいでな」


「‥‥‥そうかい」


魔神イフリートは何故か俺の方を見る。


「お主がこの拳王姫と闇魔法騎士の飼い主か?」


「はい、その通りです。魔神イフリート様」


「何で敬語に様付けなんじゃ?」


「美人だから」


「このアホがあぁ!!」


エスフィールに腹部を手刀で小突かれる。


「そうか、すまぬが主殿よ!セツも御主と契約してくれぬか?御主と契約できれば、御主の魔力供給でセツも助かるのでな」


「はい、喜んで。我、カミナリ セツナ。契約者名はかの上位妖精・魔神イフリート殿なり。この誓い、この奇跡をここに我と共に契約を結ばん!!」


「おい、セツナ!貴様早口で!!相手は魔神イフリート殿だぞ?!分かっておるのか?!神級クラスの大妖精だぞ?!それをこんな、魔力濃度が少ない場所で!失礼に、値するぞ!!!おい、聞いておるか?貴様!!!」


無駄だ。エスフィール、一度、契約の儀が始まれば終わるまでは何人も邪魔は出来んからな。

契約魔法を知らない貴様には最初から何も出来ないだろうがな。わっはっはっは!!

妖艶な上位妖精が自ら、契約してくれと頼んで来ているんだ。邪魔は絶対にさせん。


「‥‥‥‥感謝する。新しき主よ。この力、この知識、この魔力、汝に託す」


そうして「古代竜の根城」の広間は赤色の光に包まれたのだった。




⑥正体を明かす


「古代竜の根城」


「このアホめ!本当に速攻て魔神イフリート様と契約を交わしおった」


しかも何でじゃ?何故、セツナの奴は精霊契約の魔法を知っておるんじゃ?


「様!魔王さま!」


意識が精霊契約にいってしまっていたせいで、ラベルが横で話しかけてきている事に気づくのが遅れた。


「お、おお、なんじゃ?ラベルよ。こんな、時に」


「魔王様。魔神イフリート様、程の方が『双星の大洞窟』まで来ていらっしゃるということは、『魔法族の里』や私の故郷『幻獣の楽園』でも‥‥‥」


「!!‥‥‥異変が起きているかもと申すか?」


「いえ、確証は持てませんが‥‥魔王様!私は一度『魔法族の里』と『幻獣の楽園』へ行き。様子を見てこようかと思います。故郷が心配になってきました」


「‥‥‥そうじゃな、その方がいいかも知れぬ。私も故郷『魔法族の里』が心配になってきた。何かあれば報告してくれ。頼むぞ、ラベルよ!」


「はっ!魔王様のおうせのままに。では、私はこれにて」


「ああ、セツナの下心は丸見えだが、今後は常に魔神イフリート様が傍らに居てくださるだろうからのう。何かあったら直ぐに呼ぶゆえ故郷を頼む」


「はっでは!」


ラベルはそう言うと魔方陣を開き、静かにその中へと消えて行った。


「ふう、これで契約は結ばれました。魔神イフリート様」


「寛大な心に感謝を我が主、殿。セツの事も魔神イフリート様ではなく。イフリートと呼んで欲しい。主殿の名前はいかに?」


「はい、イフリート様。俺の名前はカミナリ セツナと言います。よろしくお願いいたします」


今まで聞いたことが無い位の元気な声で挨拶を交わしたぞこの男!!もしやセツナの奴、ああいう妖艶な美女が好みだったりするのか?


「ん?カミナリ セツナ殿?‥‥‥もしや?セツナ殿は行方不明になった勇者殿か?」


「はい、良くご存じで。魔王城での闘いの後、故郷に飛ばされまして」


そして、セツナは私の事や地球の事は上手く隠し、イフリート様にいままでの経緯を説明した。


「なるほど。勇者殿‥‥セツナ殿が行方不明になったのにはそのような理由があたのか。理解した」


「理解、感謝します。イフリート様」


最早、どっちが主人で、どっちが従っているか分からなくなってきたな。

おっと。雰囲気に流される所だったが聞くことはちゃんと聞いておかんと。


「失礼ながら。お初にかかります。私は‥‥‥」


私はセツナに小声で話しかけた。


「どうする?偽名を名乗るか?」


「‥‥‥いや、上位妖精に失礼な事は出来ない。後で何が起こるな分からないしな」


「では、どうする?」


「幸い、ここには俺達しかいない。4人での旅も結構長くなって親しくもなれたしな、セシリアとヒスイに君の正体がバレてももう平気だと思うぞ」


「‥‥‥そうか、了解なのだ」


私は意を決して魔神イフリート様に自己紹介しをした。


「ゆっくりで良いぞ。可愛らしきメイドよ」


「あ、ありがとうございます。わ、私は魔王領で現魔王をしている。ユナ・エスフィールと申します。魔神イフリート様にお会いできて光栄の至りにございます」


セシリアは驚いた顔をしていたが、それとは対象的にヒスイはやはりなと首を縦に降っていた。


「エスフィール‥‥‥あぁ、貴殿は魔法族でも有名なエスフィール一族ですか。先代魔王様カシス様の側近だったメイ・エスフィール殿の娘さんか?」


「イフリート様はお母様をご存知なんですか?」


「えぇ、数年に一度ユグドラシル地方で行われる。『ユグドラの奇跡』の際、先代魔王カシス様のお付きで来られたその時に数回お会いした。知己に飛び、明瞭な方だと今でも記憶している」


「そ、そうだったのですか。それは存じませんでした。教えて頂きありがとうございます」


「いいえ、‥‥‥あぁ、なるほど。最近、魔王領で貴女が消えたと聴いていたが、セツナ殿と一緒に行動していたのか。なるほど。なるほど。これもユグドラシル様の導きか?‥‥‥」


魔神イフリート様は何か思案し始めると。静かになった。

それを私達は暫く待った。


「ふむ、すまない、若き少年少女よ。少し考え事をしていた」


「失礼ながら。イフリート様!それはもしや、エルフの国『セルビア』に付いてでしょうか?」


私が魔神イフリート様にそう聞くとイフリート様は驚いた様な顔をした。


「おぉ、母君に似て。賢き子ですね。ユナ殿」


「い、いいえ!上位精霊のイフリート様にそう言って頂けるとは‥‥光栄にございます」


「そして、とても謙虚とは現在の勇者殿といい。礼儀正しい者が多いようですね」


「ありがとうございます。イフリート様。『セルビア』に付いてなのですが?」


「あぁ、ごめんなさい。現在の『セルビア』は世界樹にエルフ達が住み。セツ達、妖精達は『妖精の湖』という強大な湖がある国に住んでいるのは知っていますね?」


「はい、エルフと妖精は共に手を取り合い。今日まで続く巨大国家『セルビア』を守って来たと習っております」


「それが最近になってからというもの。一般的な精霊達が『セルビア』各地でイタズラ‥‥‥いいえ、あれは最早違いますね。「セルビア」内で反乱を起こす。者が後をたたなくたなってきたのです」


「反乱ですか?」


セツナが魔神イフリート様に質問した。


「はい、上位妖精のセツや名持ちの精霊達には何も起こりませんが、一般妖精は数も多く。セツ達、上位妖精とエルフ達では手に負えなくなり。その」


「『双星の大洞窟』まで来て。騒ぎを起こし助っ人を呼ぼうとしたわけか?魔神様よおぉ!」


ヒスイがそう言う。


「その通りです。闇魔法騎士よ。全ては数ヶ月前に表れた魔竜ジャバオゥックが原因と言われていますが、確証は持てません」


「魔竜ジャバオゥックですか」


「魔竜、竜かまた厄介なのが出てきたな」


セツナが苦虫を噛み潰したよう顔になる。


「ニャニが不味いのニャア?セツニャ?」


「君も俺との旅の時、たまに退治しただろう?竜と呼ばれる存在を」


「ニャア、思い出したくも無いのニャア。わっちの尻尾が竜の炎で焦げたのニャア」


セシリアが何かを思い出し自身の綺麗な尻尾を見ている。


「ンニャア!それよりもメイエス!、ニャンで現役の魔王で本名がユナ・エスフィールってもっと早く教えてくれなかったニャア?セシリアは悲しいニャア~」


とても悲しそうに見えないが嘘を付いた事は事実なので謝らなくては。


「すまない。セシリア、お主はセツナの元仲間で勇者パーティーの1人じゃからな。少し警戒した。本当にごめんなさい。夜に御主の好物の海苔をやるから許してくれぬか?」


「ニャニ?海苔をくれるのかニャア?許すにゃあ!完璧に許しちゃうニャア!!」


セシリアが大喜びで私の頬にすり寄ってきた。


「うわ、単純猫め!!まぁ、俺は最初からメイドが現役の魔王とは薄々気づいてたがな」


「本当かあ?うわ、あんなに尻尾降ってるぞ‥‥」


セツナとヒスイはセシリアを見て哀れんでいた。


「おっと、すみません。魔神イフリート様。お話の続きを」


「いいえ、ありがとう。ユナ殿。では。改めて。我が新しき主。セツナ殿どうかセツと一緒にエルフと妖精の国『セルビア』に行き。魔竜ジャバオゥックの討伐に力を貸して下さらぬか?」


「はい、喜んでお引き受けします。全ては魔神イフリート様の仰せのままに」


即答だった。何にも迷いがない。真剣な眼差しで次の目的地『ジャバオゥック』討伐が決まったのだった。




⑦『双星の二人』


『双星の大洞窟』南側出口


「ふぅ~!やっと『双星の大洞窟』を抜けられたな」


空は快晴である。『双星の大洞窟』での出来事が嘘だったかのように南側観光地は落ち着きを取り戻しつつある。


上位精霊・魔神イフリート様と契約を交わし。次の目的地である『セルビア』にて魔竜『ジャバオゥック』の討伐を頼まれた後。


「では、若き少年少女達よ。よろしくお願い申し上げる。セツは、暫く『7の秘宝』事、タマキ様の中で休ませてもらう」


「ん?タマキ様とは?」


「そちらにいらっしゃるだろう?先ほどは戦闘で気づかなかったがな。七神が一柱よ―女神―の眷属○○○様、現在は違う名前のようだがな。よろしくお願いいたします。タマキ様」


「はい、喜んで。よろしくです。イフリートさん」


「それでは、セツは弱っているので、これで失礼する」


イフリート様はそう言うと。俺が腰に巻いている魔法の袋の中へと静かに入って行った。



「よし、行くか!!次の目的地、エルフと妖精の国『セルビア』へ!」


俺は力強く言い、駆け出そうとした。


「待て、セツナ!『始まりの大森林』での約束。よもや、忘れてはおるまいな?」


エスフィールが俺の前を塞ぎ。何かやら言ってくる。何の事だ?


「何の事だ?」


「とぼけるなよ。貴様、『始まりの大森林』を出る前に『双星の大洞窟』で宝石を数個。私にプレゼントしくれると固く誓ったではないか?」


「ふ、ぶざけんなよ、エスフィール!!あの時は、君が俺を脅して‥‥‥」


するとエスフィールが自身のスマホを取り出し。スマホの画面を見せてスライドさせていく。


「彩音にこの写真を‥‥‥タマキ経由であちらに送ることが出きるのだぞ?

その写真には先ほどの観光ガイドの可愛い(メルさん)と良い感じになってる場面や上位精霊・魔神イフリート様を見てにやけきっている俺の写真が大量に写っていた。


「き、貴様!!!エスフィール。いつの間にそんな写真を!」


「だから、セシリアにも五感を磨けと言われるのだ。貴様は!油断大敵じゃな。ほれ?指先1つで彩音いきじゃぞ?良いのか?」


「ふ、そんなこんと主人であるタマキが許すわけないだろう?」


「魔王領名物。ドエム豚の肉を食わせると言ったら。二つ返事て了承したぞ。うちの簡易転移門でしたらスマホならいくらでもと言っておった」


あんのくそ狐め!だからさっきから姿を表さなかったのか?俺に怒られると思って。


「観念しろ、セツナ!それにほれあれを見てみろ」


俺をエスフィールが指差す方へ身体を向けた。


なんとそこには


「おぉ、どれが良いんだ?アインズさんよおう?‥‥‥なんだ!案外どれも安いじゃねえか!!好きなの選びな!!」


「マジかニャア?!アホ騎士嬉しいニャア!!」


セシリアの為にあのヒスイが宝石を買ってあげている、ありえへん世界がそこには広がっていた。


「お、おい!!ヒスイ!!!」


俺は慌てて、ヒスイに話しかける。

「なんだあ?カミナリ!!!今は女性をエスコート中だぁぜぇ!!!後でにしな!!」


「‥‥‥お前、今何って言った?」


「あぁん!!だから、女性をエスコート中だってんだ!!邪魔するなあぁあぁあ!!!痺れ!!!」


「セシリアが女性を?お前がエスコート?何、訳の分からんことを言ってんだ!ヒスイ」


「わけ、分からねえのは、お前の方だぜぇ!!!カミナリ!!!エウロペ大陸じゃあ!!!女性と一緒にいる時はなるべくその女性を尊重するのが常識だろうが?冒険パーティーで複数の男女がいる時は別だがな。今、俺はようアインズさんと一対一だろう?エスコートしないなんて―女神―に対して失礼この上ないぞ?」


長々とヒスイが説明してくれた。


「そうか、それは俺が間違っていた。教えてくれてありがとう。ヒスイ助かったよ」


「おおう!分からないことがあったら何でも聞けよ!!カミナリ!!!」


流石は、先代魔王政権の陰の立役者だ面構えが違う。

というか、存外、物知りで常識があり、許容もある。

だんだん、ヒスイがイケメンに見えてくるのが不思議だ。(いや、実際。イケメンなんだが。)


そして、俺は観念してエスフィールのところまで戻って来た。


「用は済んだのか、セツナ?」


「あぁ、覚悟は決まった!今日は君が欲しいものは何でも買ってやる」


そして俺はエスフィールの前に右手を出す。


「ふふふ‥‥そうか、分かれば!良いんじゃよ」


エスフィールは嬉しそうに笑い。俺が前に出した右手を自身の右手で掴み、一歩踏み出す。


「では、参ろうか元勇者殿!!」


快晴の空である。


『双星の大洞窟』は今日も色々な種族で賑わい続ける。


それは明日も明後日も同じなのだろう。


そんな『双星の大洞窟』の様な関係が君と俺とでも長く、長く、続く事を願いたい。


これまで、歩いてきた長い長いユグドラ街道のように


そしてきらびやかな宝石軍を抜けた綺羅星の様な『双星の大洞窟』の様に。


俺達の関係が双星の様に末長くありますように。


俺は笑顔の君を見て。そう願った。



『双星の大洞窟』編






⑧幕間・魔神・イフリート


この『七の秘宝』の一つ。―女神―の眷属である。○○○様の中はとても安心する。


深い、深い眠りに付ける。『セルビア』のとある場所にある。『ペレアス湖』では考えられない事だ。


昔は違ったのだ。数ヶ月前までは、皆が笑い、歌い。エウロペ大陸でも有数の平和な土地だった。


あの時までは


『ペレアスの湖』・「地下大空洞キャメロット城」


「モルガン陛下!今日も一般妖精による。エルフ側の被害が‥‥‥」


「また、ですか!エルフ側の‥‥‥セルフィーユに謝罪の文を速やかに送って下さい。お願いいたします。」


「‥‥‥畏まりました。モルガン陛下」


「日に日に私の支配力も落ちてきていますね。いずれ、名持ちの妖精達も。かの魔竜の影響を受けるやも知れませんね。どうしたものでしょうか‥‥‥」


モルガン陛下と呼ばれる女性妖精は城ノ外に広がる。桃源郷とも思える広い地下大空洞をジーッと見ていた。


「陛下!先ほど、魔竜が妖精達の住む。レアンへ進行したとの報告が」


「‥‥‥‥メリュジーヌ卿を派遣して下さい。もし、留守なのであれば、賢者殿にお願いして」


「はっ、畏まりました。‥‥‥」


「どうかしましたか?アース?」


「陛下!ちゃんとお休みになられておられますか?顔色が優れませんが?」


「えぇ、私は大丈夫ですよ。それよりもアースの方は大丈夫ですか?ちゃんと休めていますか?」


「は、はい、自分はこの通り!!」


アースはちからこぶを作り。モルガン陛下へと見せた。



「ふふふ、頼もしいですね。アース。ありがとう。元気が出ました。行ってください」


「はっ!了解しました」


「‥‥‥エルフ達は、‥‥‥セルフィーユは大丈夫でしょうか?無事だと良いのですが」


そして数刻経つ。



「モルガン陛下、魔神イフリートここに馳せ参じました。今回はどのような、後用事でしょうか?」


「遠路遥々ありがとうございます。将軍イフリート!!」


モルガン陛下は嬉しそうにセツの両手を掴む。こういうことを自然にするからセツ達。妖精は皆、モルガン陛下への忠節を誓えるのだ。

この、か弱き女性。モルガン陛下を守りたいと思うのだ。


「恐縮にございます。モルガン陛下。本日は如何様なことがおありで?」


「将軍イフリート。貴女にお願いしたいことがあります。」


「セツにお願いしたいことですか?」


「はい、我がエルフと妖精の国『セルビア』が妖精達の反乱と魔竜ジャバオゥックの進行により存亡の危機にあることは分かりますね?」


「‥‥‥はい、モルガン陛下。先日もかの魔竜『ジャバオゥック』に挑む者が今したが、帰らぬ者へとなりました。‥‥‥」


「そうですね。カロアのことは私も残念に思います。ですから、ですから、お願い!将軍イフリート!!外の世界に!外の世界から強い方達を連れてきて欲しいの」


「外の世界からですか?それは‥‥‥少し危ないのではないでしょうか?」


「わかっています。わかっているのだけどね。もう時間が無いわ。魔竜が各里に住む妖精達を襲うことで私の支配力も落ちてきているの」


「‥‥‥‥では、このセツも時期に一般妖精と同じように‥‥」


「えぇ、快楽に身を委ねて、エルフや他の妖精達を襲う様になるでしょう。ですから将軍イフリート、いいえ、私の大切なイフリート!!貴女にしか頼めないの!!お願いします」


モルガン陛下がセツに頭を下げる。


「お、お止め下さい。モルガン陛下。仮にも一国の王が頭を下げるなど、あってはいけません。‥‥‥畏まりました。このイフリート!!早急に『セルビア』を旅立ち。強き者を探して参ります」


「えぇ、えぇ、ありがとう。イフリート!!本当にありがとう。」


モルガン陛下は涙する。


そしてセツも涙する。


それはお互い幼き頃を知っているから。


モルガン陛下が優しいお方と知っているから。


頑張ります。モルガン陛下、貴女の為に。


か弱き1人の女性の為に。


この魔神イフリート!!必ずや強き者を連れてきます。


全ては親愛なる友の為に。


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