『オアシス・サウス』No.1 ルドルフの鉄槌
『オアシス・サウス』・競り場
「人が一仕事終えたばかりで一息着いている時に、突然、転移魔法なんぞ使うとはな。しかも、俺を巻き込んでこんな危ない場所まで連れて‥‥‥‥全く」
刀匠ルドルフが鍛冶様の大きな槌を持って俺に抗議する。
「いや、何言ってんだよ。ガリア帝国。元お抱え鍛冶師にして大将軍『闘将のルドルフ』さん」
「‥‥‥‥良くも。まあ、そんな、大昔の話を持ち出して何百年前の話だ?それを何故、知っている?カミナリ」
「ガリア帝国の威光って本に堂々と載ってるじゃんか。長く生きすぎて忘れてるじゃないか?ルドルフのおっさん」
「いやいや、俺はまだまだ齢700歳のピチピチピッチだぞ」
「‥‥‥‥‥十分なお歳だよ。ルドルフさん」
『七刀鍛冶師』刀匠・ルドルフ。
東の大陸『アルトネ大陸』で有名な鍛神・『アーンドラ・エルダム・アマルダ』と対をなす。魔法世界『アリーナ』でも有数の鍛冶師だ。
妖精族と人族のハーフでかれこれ何百年を生きる長命種でかつては色々な国の鍛冶師と武将を歴任。
自身の鍛冶の腕と武将としての知恵を未来ある若者達に惜しげもなく教えて来たため、彼を慕う者は国を超えて多いと言われている。
実を言う俺も基本的な魔道具と鍛冶の扱い方は彼からカンナと一緒に学んだ恩人でもある。
今は一線を退き、大都会『オアシス』で若手鍛冶師の育成を手掛けていると本人は言っているが、かつての力は未だに健在である。
「あ、あれは?ルドルフさん?ルドルフさんが何でここに?」
「え?ルドルフさんが来てくれたのか?マジかよ!」
「なら?さっきの電撃も刀匠様がやったの?」
ルドルフさんの登場により、ざわつく『オアシス・サウス』の競り場。
「ルドルフさん。そんな事よりあのスフィンクスをどうにかしないと競り場が火の海になる」
「‥‥‥‥全く。人使いの荒い『担い手』様だな。カミナリは‥‥‥神代魔法・『蛮行の槌』」
ルドルフさんがそう唱える。
すると彼が手に持っている、大槌『鉄槌の槌』が肥大化していく。
「アハハハ、アバババ、アバババ!!!!」
先ほどまで陽気に笑っていた。スフィンクスは立ち上がった。だか、その顔は俺が放った電撃によって怒り狂っている。
「先におっ始めたのそっちだから。怒る通りが何処にある?‥‥‥‥所詮は魔獣畜生か‥‥‥カルロス!!!近くに入るんだろう?!!!『オアシス・サウス』の業者達を避難させろ!!!」
「は、はい!ルドルフ様!!!」
遠くの方から一人の男性が大声を上げている。
あの人がそうだろうか?
「そんな訳だ!!近くに入る奴等はさっさ避難しろ!!!じゃなきゃな!」
「アバババ、アアアアアアア!!!!コロジュア!!!」
「『蛮行遊戯・大判』」
肥大化した大槌はスフィンクスの頭上目掛けて振り上げられた。
「アバババ?!アバ?!アアアアアアア!」
グシャッ!
「‥‥‥あのスフィンクスを一撃かよ。ルドルフさん」
「フンッ!たかだか一匹倒しただけだ‥‥‥‥来るぞカミナリ。ほれ、『雷光鞭』は完璧に直してある。受け取れ」
ルドルフさんはそう言うと鉄の大きな箱を俺に渡してきた。
「おお、流石、仕事が早い」
「もう、壊すなよ‥‥‥‥さて、本番いくか。スフィンクス共、まさかこれ程の数が一般人に紛れ混んで入るとはな」
「‥‥‥‥人が魔獣に‥‥‥‥スフィンクスに変わっていく?俺のやった事の腹いせか?」
「アバババ」
「アバババ」
「アハハハ、アアアアアアア」
「カルルル」
スフィンクスの攻撃をくらい、先ほまで倒れていた一般人が化物へと変わる。
「「「「「「アハハハ、アバババ、アバババ、アアアアアアア!!!ゴルジュ!!ゴルジュ!!アハハハ!!!!!!」」」」」」
「楽しいか?‥‥‥‥ならよう!!潰れな!!魔獣共!!!『万力の鉄槌』!!!」
ドゴオオオンンン!!!!
「俺は攻撃と同時に火を消して行くか‥‥‥水魔法『水流雨』雷魔法『雷雲』」
俺は空に雨雲を作り、雨を降らせ炎上する『オアシス・サウス』の鎮火を行い始めたのだった。




