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『カミナリ VS ヒスイ ROUND5(決着)』~『幕間・三騎士ヒスイと先代魔王カシア』



カミナリ VS ヒスイ ROUND5(決着)



『極・雷霆将来』発動。数分後



「セツナアァァ!!」「大丈夫かニャーー?」


ラベルの背中に乗せられて、エスフィールとセシリアがやって来た。


「な、君達!!何で来た?まだ闘いは終わってないんだぞ!!」


「馬鹿者!!貴様、あんな、顔をした。お主を見て追わないわけがなかろう」


「わっちは怖かったけどニャア。ニャが一度、見失うと見つからニャイ気がして急いで来たのニャア」


「‥‥‥‥後で言うことがあるが、今はコイツの方が大事だ」


俺はヒスイへと向き直る。


「夜霧のヒスイか。こやつは何故、電撃を浴び続けておるのだ?」


「わっちがいつも受けている。数倍の威力っぽいニャア!!」


「俺の雷魔法での奥義を使った。そうしないと勝てないと思ったから」


そして俺は、2人と別れた後の事を詳しく説明した。


「なに?あれだけの雷撃を喰らって。まだ襲って来るというのか?」


「あぁ、おそらくな、だから2人は少し離れたところで闘いが終わるまで見ていてくれ。頼む」


「だが、もし、貴様がやられた時‥‥‥」


エスフィールが言い終わる前に、セシリアがエスフィールの腕を掴み。首を横に振るう。


「無駄ニャア。メイエス。この2人の闘いは昔から一体一の闘いだったのニャア。他人が口を挟むものじゃ無いニャア」


「セシリア、しかし」


「ンニャア~!大丈夫ニャアヨ!いつも、銀髪聖女がそんな風に心配してたがニャア。最後に勝つのは勇者様だったのニャア~!ニャア、セツニャ!!

「ああ、その通りだ。セシリア!!今回も俺が勝つさ!!だから君も安心してくれ。エスフィール(小声)。だから頼む」


俺はエスフィールの肩に手を置く。


「‥‥‥‥絶対に勝てこい。セツナ。‥‥‥‥セシリア、ラベル行こう」


そうしてエスフィールとセシリアはラベルに乗って遠くへと避離れた。



「く、くぞがあぁぁぁ!!!」


雷雨も晴れ『極・雷霆将来』の魔法が解け。そこには、黒焦げたヒスイの立ち尽くす姿があった。


「‥‥‥まだ、意識があるのか?化物かお前?」


「とんだ、隠し球を持ってやがって。お陰で久々に死にかけたぜぇ!魔力もそろそろ底をつきそうだしなあぁぁぁ!!!身体も全身ボロボロだぜえぇ、くそったれれれれれええ!!」


ヒスイがぶちギレ。刀を地面に突き刺す。


「そうか、‥‥‥お互い満身創痍だ!そろそろ決着を着けよう」


「満身創痍だあぁぁ!!カミナリ!!!てめぇ!オレガ雷撃を喰らってるさなか、何か飲んでたろうがあああぁぁぁ!!とぼけんじゃねえよ!!」


見られていたらしい。ぶちギレてる理由もそれなのか?


「いちいち、魔法使い共みたいな闘い方しやがって!!!昔のパワーゴリ押しのてめえは何処に行きやがった!!!」


ヒスイが吠える。


「それは、女神に言え。それに俺は元々、魔法使い型だ」


「クソガァ!ち、そうかい。‥‥‥決着つけるか!!」


あれだけ、騒いでいた。ヒスイが静かになり。自身の魔力を練り始める。


「?!、ど、どういう事だ?!!魔力が上手く練れねえぇぇ!!」


「タマキの奴、上手くやってくれたようだな」


「カミナリ!!!てめぇ!俺が動けねぇ間に何しやがった?!」


ヒスイが困惑した顔で俺を見てくる。


「ヒスイ。お前と同じだよ。『夜の帳』とな」


俺がそう説明するとヒスイの眼光が鋭くなる。


「‥‥‥‥魔法阻害の結界か。くっ!!!やってくれるな。魔法使いがぁ!!」


「これで夜○術は使えないぞ。いや、その言い方は違うか。闇魔法『夜』はもう使えない」


「‥‥‥‥知ってやがったか」


「あぁ、闇魔法『夜』は闇魔法を使う奴でも限られた人しか使えない。高位魔法だからな。昔、文献で読んだ事がある」


「そうかい‥‥‥。まぁ、いい!!俺にとっては闇魔法なんてオマケみたいなもんだ!問題ねえ!!いくぜぇ!!カミナリ!!!」


ヒスイは数秒、動揺したが、気持ちを切り替えたのか刀を上段に構え。俺に向き直る。


この素早い気持ちの切り替えようがヒスイの強さに直結しているのだろう。


「あぁ、俺も魔力も体力もギリギリだ!!いくぞ、ヒスイ!!」


「ふん!!」


ヒスイが嬉しそうに鼻を鳴らす。


「俺が魔力が使えなくてもコイツには多少の魔力残量が残ってるぜ。なぁ、闇霧(やみぎり)


「つうか、その刀そろそろ返せ。元々は俺が作った物だろう?」


「‥‥‥‥覚えてねえな」


「なに?お前が昔、魔王軍駐屯地でどさくさ紛れて俺の道具箱から盗んだのは今でも覚えているぞ」


「‥‥‥‥覚えてねえな」


「共同制作した。ヤイバさんにも申し訳ないしな。そろそろ返却しろ」


「‥‥‥‥闇霧は俺のだ!!」


「闇霧じゃない、カミナリシリーズ『No.4』の」


「よっしゃあぁぁ!!!!!!いくぜぇ、闇霧!!!『夜桜一刀』」


ヒスイはこれ以上の会話は不利になると思ったのか、闇霧に残っていた。魔力で攻撃してきた。


「‥‥‥‥相変わらず。人の話を遮るな。『雷光鞭(らいこうべん)』」


俺は第2の武器。雷光鞭をヒスイの攻撃に向けて。鞭を叩いた。


「なんだあぁぁぁ?!鞭だと?!このクライマックスになに?出てんだ!!てめぇええ!」


ヒスイがぶちギレる。


俺はそんなヒスイを気にすることなく、目の前に迫る。『夜桜一刀』に向けて鞭をしならせる。


「吸収しろ、『雷光鞭』!!」


『雷光鞭』の鞭の先が光出し。『夜桜一刀』の魔力を吸収する。


「なに?俺の技が消えただと?!」


「迫れ!『雷光鞭』ヒスイに巻き付け」


俺が『雷光鞭』に命じると勢いをそのままに鞭の先がヒスイを捕らえ、束縛する。


「何の真似だカミナリ!!!!!!こんなんで俺を捕まえられると」


「誰がお前を捕まえると言った?」


「あぁ?!なんだと?!」


「これで本当に終わりだ。『放雷・極雷』」


「なに言ってんだ!!があぁぁああああ!!!」


『放雷・極雷』相手の魔力すら吸収し。相手の身体全身ではなく、脳や心臓等に電撃を送り続ける技。


「ヒスイ!!今回もギリギリ、俺の勝ちだな?‥‥‥て?もう意識がないか」


そこには、『雷光鞭』をくらい意識を失った。闇霧のヒスイが立ち尽くした状態で白目を向いていた。








カミナリ VS ヒスイ ROUND6(戦慄と戦利品)


「‥‥‥‥ふぅ、今回もギリギリだ。まさか、『雷光鞭』まで使う事になるとは」


俺はその場で尻餅をつき、地面に倒れ込んだ。


「ご、ご主人様ーーー!!大丈夫ですか?」


「おぉ、タマキ~!ここだ、ここ」


俺を探しているタマキに声をかける。


「そこでしたかご主人様。‥‥‥‥!!」


タマキが少しずつ近づいて来たかと思ったら。仁王立ちで意識を失っているヒスイに驚く。


「どうした、タマキ?」


「ご、ご主人様!この方、もの凄い魔力総量ですね。すばらしい!!」


「‥‥‥‥‥‥好きにしていいぞ」


俺はタマキにそう言うとタマキはもの凄いいい笑顔になり。


「本当ですか?!!では、早速、『契約の輪』を首に‥‥‥この魔力総量‥‥‥3つくらい入っときましょう」


どんどんタマキのテンションが上がっていく。


「それに、契約の魔法、監視魔法、その他諸々の特典を添えて」


「おい、さっきから何を興奮してんだ?」


「はい、ご主人様。今後、ヒスイさんですか?この方の自由にはご主人様のものになるように何重にも束縛魔法をかけております」


「‥‥‥‥そうか、ならば念入りに頼むよ。お礼といってはなんだが、ほら久しぶりのチータラをあげよう」


そう言って魔法の袋からチータラを取り出しタマキにあげた。


「わぁ、ありがとうございます。ご主人様。それにこの方、今、凄く弱りきっていたのでご主人様の使い魔にしておきました。今後は召喚術でいつでも呼び出せます」


タマキはそう言うとヒスイに束縛魔法の数々をかけながら。ちいたらを美味しそうに頬張った。


俺はその光景に戦慄を覚えながら事のいく末を見守っていた。


数刻して


「おーーーい!!セツナアァァ勝ったのかあぁぁぁ、?」


「無事かニャアーーー?!!セツニャアァァ!!」


避難させていた。エスフィールとセシリアが戻って来た。


「あぁ、何とか勝てたよ。二人ともーーーー!!!」


俺は近づいて来る2人にガッツポーズをしながら勝利宣言をした。


「夜霧のヒスイの奴はどうした‥‥‥‥おい、セツナ!!」


「なんだ?エス‥‥‥メイエス?」


エスフィールもヒスイを見た瞬間。戦慄した。


「なんだ、ではない。なんだあの、束縛魔法の数々は?!監視に無制限の魔力供給、制限魔力にあれは?『契約の輪』か?それを3つも?、貴様、いくら殺されかけたとはいえ、やりすぎではないか?」


「いや、俺じゃない。あれはタマキが‥‥‥」


「ご主人様を殺そうとした。当然の報いです。えっへん!!」


タマキがそう言って魔法の袋の中へと入っていった。


「しかしあの束縛魔法の数々があるうちは、セツナと闘う前の状態ではもう闘えないだろうよ。哀れなヒスイじゃな」


「ンニャア~?!そんなにヤバイのかニャア?」


「セシリア。お主にかけられておる。その『契約の輪』が3つも、あのヒスイには付けられておる。あれでは魔力コントロール以前に魔力回路が駄目になり。魔法等、まともに使えん状態だろう。それに+して阻害魔法の数々じゃ」


「‥‥‥‥‥それは最悪だニャア」


セシリアは自身に付けられている『契約の輪』を右手で擦りながら。哀れみの目でヒスイを見ていた。


「しかし、あの岩場だった所が俺達の闘いで荒野と化したな」


周りは更地とかして荒野の状態になっている。


「ンニャア~!爆音に次ぐ、爆音のオンパレードだったのにニャア!あれを聞いた時は、さすがのセツニャもやられたかと思ったニャア」


「‥‥‥‥私もだ!!よく無事でいられたな?」


「ん?『(からす)』の攻撃を、喰らった時か?それはタマキの‥‥‥‥」


俺はエスフィールとセシリアの2人に闘いの初めから終わりまでを丁寧に説明した。



数時間・夕刻


二人に説明し終わると。ヒスイをそのままにするのも不味いので、ヒスイが起きるまで更地と化した荒野で待つことにした。


「しかし、このカップラーメンとか言うのかニャアお湯を入れるだけでこんニャに美味しくなるものにゃのかニャア?(ズルズル!!!)」


と、勢いよくカップラーメンの麺を啜るセシリア。


「おお、それは同意見じゃ。私も地球に飛ばされ。一番の衝撃はこのカップラーメンだったな。特に赤いキツネは私の好みだ。(ズルズル!!!)」


(‥‥‥現代魔王と『始まり大森林』の拳王姫が仲良くカップラーメンを食っている風景は中々、シュールだな)


その時である。


「はっ?!!俺は今まで意識が‥‥‥!!カミナリのやろうは何処に?!」


ヒスイが意識を取り戻した。


「おぉ、ヒスイ!!!やっと目が覚めたか?!お前もカップラーメン食うか?!」


俺は手元に持っている。カップラーメンをヒスイに見せた。


「てめえ、カミナリ!!!何を呑気に飯なんて食っているやがる?今すぐにでも殺して?!!!!」


騒ぎ始めた。ヒスイがあることに気がついた。


「な、なんだこれは?!魔力の制御が?それになんだこの?首元の黒いチョーカーは?束縛魔法のオンパレードはあぁぁあ!!!くそがあぁぁ!!てめえの仕業かあぁぁぁ、カミナリ!!!!!!ぎゃあぁあ!!!」


その瞬間、ヒスイの首元についている『契約の輪』から『雷霆将来・極』と同じ威力の電撃が放たれた。


「ヒイィィ!!あの雷撃、わっちがいつも受ける。電撃とは何もかも違うニャア。メイエス!!わっち、怖いのニャア」


セシリアがヒスイの雷撃の威力を見るや。エスフィールへと抱きつき、震えている。そして俺も雷撃の余りもの威力に持っていたカップラーメンを地面に落としてしまった。


(ヒスイが強いとはいえ。凄まじい威力の雷撃だな)


ちなみにこの電撃の魔力もヒスイからの魔力供給で発動しているので自身の魔力でダメージを喰らうという最悪な構図だ。


「ぐ、ぐぞが、また、意識が飛びそうだ」


「おーい!ヒスイ、後な!今後はお前は俺の使い魔になったから、何かしらピンチになったら呼ぶからな。その時はよろしくな」


俺はタマキに言われたことをそのまま、伝えた。


「なんだと?何を勝手に決めてやがる?カミナリ!!!!!!てめえぇえ!!!、!!!!!!ぎゃあぁあああ!!!」


「そうか、そうか、嬉しいか。今後ともよろしくな。契約者君」


そうして、また、意識を失ったヒスイを横目に俺達はカップラーメンをすすりながら。夜を過ごした。


ある街の宿屋の一室


そこには、2人の女性が泊まっている。


テーブルには透明な水晶が置かれ。ヒスイの姿が写されていた。


「あぁ~。ヒスイ君負けちゃったよう?スカサハお姉様~」


「‥‥‥‥‥そうね。まさか、あのヒスイ君が負けるなんて思わなかったわ」


そして、スカサハは数秒、思案し。


「カミナリ君が強いと言うよりも。あの『7の秘宝』の一つ『アテナの宝物庫』のサポートのお陰の勝利ね」


「前に霊王様が言ってたおとぎ話の『7の秘宝』この事?あれは作り話でしょ~?スカサハお姉さま?」


「いや、作り話じゃないのよマリー。これが、一つは現、魔王がもう二つは勇者の彼が持っていたのだけど‥‥‥剣の方はもう無くなったみたいね。この闘い方を見ているとね」


「スカサハお姉さま。残りの4つは何処にあるの?」


「それは行方知らずよ。エウロペ大陸の裏の有力者も血眼になって探しているんだけどね」


「そうなんだ~。もしかして、この女顔の勇者様が持ってたりしてね~(笑)」


「ふふふ、それは、流石にあり得ないわよ。欲張り過ぎよ。‥‥‥さぁ、夜も遅いしもう寝ましょうね。マリー」


「は~い、お姉さま。おやすみなさい」




『襲来・夜霧のヒスイ編』










幕間・三騎士ヒスイと先代魔王カシア




その男は若くして数々の武功を上げていく。


物心つく頃には、3才の頃には他の雑兵に混ざり。毎日が生きるか死ぬかの瀬戸際で戦っていた。


そんな、生活を送りながら、3ヶ月たったある日の午後。兵士宿泊


「聞いたか?おい!!今日は魔王様、直々に、この魔王軍の駐屯地の視察に来るそうだ」


「おぉ、聞いた。聞いた。何でも魔王様の側近秘書エスフィール様まで連れてとのことだな。ヒー坊も聞いてるかい?」


「おいおい、今は寝かしといてやれよ。ヒー坊は戦争孤児でいく宛がねえってことで、この若さで俺らと一緒に戦場に連れて来られてんだぞ!寝れる時はしっかり寝かしといてやろうぜ」


「‥‥‥だな。俺達、根なし草にとってはヒー坊は自分の子供みたいなもんだしな。‥‥‥‥なぁ、ヨロイよ!」


「な、なんだよ、シュール?!真剣な顔をして?」


「今日、確かに魔王様が視察に来るんだったな?!」


「あぁ、その話題で駐屯地は大騒ぎだぜ!」


シュールは少し思案する。


「なぁ、ヨロイ!」


「なんだ、シュール?」


「ヒー坊を魔王様に引き取って貰うってのは難しいと思うか?」


「はぁ?!お前、何、訳の分からん事を言い始めてんだ?」


シュールはすやすやと寝息をたてているヒスイを見る。


「ヒー坊には高い闇魔法の適正がある。それに力だって他の老兵達よりも上だ」


「た、確かにそうだが、いきなりの話過ぎて。着いていけねえよ、俺は‥‥‥」


「ヒー坊には才能がある。そんな奴をミスミスいつ死ぬか分からない戦場にいても言いと思うか?ヨロイ」


「‥‥‥‥まぁ、そりゃあ、そうだが、でもどうやって魔王様とヒー坊を会わせるんだ?」


「そうだな、‥‥‥‥俺達がいる兵士用テントを魔王様が兵士の視察を通る時に俺達とヒー坊が前に出て直談判しよう」


「それ、下手したら俺達が殺されないか?」


「やってみないと分からないが、現代の魔王様はお優しい方だと聞いている。殺されるということまでは無いだろう。‥‥‥多分な」


「多分、かよ、シュール!!まぁ、かわいいヒー坊の為だ。一か八かやろうじゃねえか!!相棒!!」


「あぁ、恩にきるよ。相棒」


そして魔王軍・兵士視察の時。



「魔王様、こちらが我が軍の屈強な兵士達です」


「おぉ、ありがとう。ラベル将軍。案内感謝するよ」


「はっ、有り難きお言葉感謝致します。エスフィール補佐官殿もお久しぶりですな」


「えぇ、お久しぶりです。ラベル将軍。将軍もお元気そうですわね。それにいつ見てもお美しい羽です」


「おぉ、分かってくれますかな?エスフィール補佐官殿。この翼の良さを分かるとは貴殿とは話が合いそうだ」


「‥‥‥‥ラベル将軍。案内を頼むよ」


「‥‥‥おっと、申し訳御座いません。魔王様。こちらから一兵卒のテントになります」


「あぁ、ありがとう。では、行くとしよう」


その時である。


「お、お待ち下さい。魔王さま、是非に、是非に、お会いしていただきたい、才能のある。子供がおります」


「お、おります」


一兵卒のテントから中年の男2人と3才位の男の子が、魔王カシアの前に現れたのだった。


「何者だ貴様らあぁ?!魔王様の前にあるぞ!!」


「ヒイィィ、ラベル将軍!!!!すいやせん」


ヨロイはラベル将軍の放つオーラに怯え。ガタガタと震え始めた。


すると魔王カシアはラベル将軍の前に手を出し。


「余り、兵士を怖がらせてはいけないよ。ラベル将軍」


「しかし、魔王様!!この者達は‥‥‥‥」


「ラベル!」


カシアが強めに言葉を発するとラベル将軍は静かになった。


「さて、驚かせて済まなかった。君たち、名前は?」


「は、はい私はシュールと申します。こちらがヨロイと、この幼子がヒスイと言います」


「‥‥‥‥ヒスイか」


「は、魔王様、この者は幼いながらも闇魔法の適正があり。弱い3才にして老兵を越える力を持っております」


「ほう、それは凄いですね」


エスフィール補佐官がビックリした顔でカシアに話しかける。


「ですので魔王様、私達はどうなっても構いません。何卒、何卒!このヒー坊を‥‥‥ヒスイを魔王様のお側においていただけないでしょうか?!!!」


「ないでしょうか!!!」


シュールがそう言い。ヨロイが頭を地面に擦り着けて土下座する。

カシアはそれを見て少し驚き。


「‥‥‥‥エスフィール君。君はどう考える?」


「はい、闇魔法はとても貴重です。それに、目の前のヒスイという幼子ですがあの赤髪と翡翠色の目は恐らく影の国との戦争の時の‥‥‥‥」


「本当かい?レイド家の?!‥‥‥なるほど」


魔王カシアは少し驚いた後。


「シュール君とヨロイ君だったかな?」


「はっ!」「へ、へい!」


「君たちの願いを聞き入れよう。ヒスイ君は僕の養子として引き取ることにする。それと君達も私の城。‥‥魔王城へ来てくれないか?」


「わ、私達もですか?」「お、恐れ多い」


「ヒスイ君は君達以外の知り合いがいないのだろう?それではヒスイ君がとても可哀想だ。幸い魔王城には色々な仕事がある。勿論、賃金も今の数倍は出そう」


「ですが、私達はただ、ヒー坊の事をお願いしただけの何も取り柄がない一兵卒です」


「です」


「いいじゃないか一兵卒でも、僕もただ魔力が高い1人の魔族に過ぎない。君達と僕に何の違いがあるんだい?」


「そ、それは‥‥‥」


「では、決まりだ。ラベル将軍!!」


「はっ!ここに」


魔王カシアとラベル将軍が誰にも聞こえない声で話し合っている。


「誠ですか?!魔王様!!‥‥‥なるほど。分かりました。直ぐに手配致します」


ラベル将軍はどこか嬉しそうにシュールとラベルに話しかける。


「おい、お前達二人!!」


「はっ!ラベル将軍!」「ゆ、ゆるじでぐだざい」


「ゆるじでぐだざい?!何を訳の分からん事を言っとるんだ?ヨロイは?まぁ、良い!!本日付けでお前達2人は魔王軍を退役しろ」


「クビですか?」


「馬鹿者、話しは最後まで聞け。退役後、お前達はヒー坊とか言ったか?ヒスイの護衛役だ。心してかかれよ。二人共。じゃあな」


ラベル将軍はそう言うとカシア、エスフィール補佐官と共にヒスイを連れ。去っていった。


「何がなにやら」


「わかんねえな」


そして時は進み16年後


「ヒー坊の奴。また、武勲を上げたってよ。シュール!!」


「あぁ、聞いた。聞いた。昔はそそっかしかったが。まさか、あの若さで三騎士の1人にまで上り詰めるとはな。後兼任の俺達からしたら誇らしいな」


「だな、だが、何でヒー坊が手柄を上げても表に公表しないんだろうな?」


「‥‥‥‥数年前にな、エスフィール補佐官が言っていたよ。ヒー坊のいや、ヒスイ殿の元々の実家は高名な貴族だったらしくてな。それが影の国との戦争の時に霊王側の軍に滅ぼされちまったんだと」


「‥‥‥その話、ヒー坊にはしたのか?!」


「できるわけ無いだろう!」


「だよなぁ!安心した。ヒー坊の苦しいん出る顔なんて俺は見たくないぜ」


「俺だってそうだ。だからな、その事もあってヒスイ殿が黒い鎧を纒い、いくら活躍しても表では公表されないんだ」


「‥‥‥なるほどな。だから、魔王様、側近の懐刀として表には名前すら出てこなかったのか。納得したぜ。で?そのヒー坊は何処に行ったんだ?」


「ん?あぁ、朝方、魔王様に呼ばれたとかで俺が作った朝食を食ったら魔王城へ向かったぞ」


「おぉ、そうなのか。なら良かった。シュール、俺は仕事に行ってくるからヒー坊によろしく言っといてくれ」


「あぁ、行ってらっしゃい。気をつけて行けよ」


場面変わり魔王城『魔王寝室の間』



「カシア様、夜霧のヒスイ。今、参りました。遅くなり申し訳ありません」


「あぁ、ヒスイ。丁度いい時間だよ。良く来てくれたね」


最近の魔王様は弱っていた。


「お身体は大丈夫ですか?父上‥‥‥すみません。魔王様。昔の癖で」


「いや、とても、とても嬉しいよ。僕はね‥‥君みたいなすばらしい息子を持てたことが、僕が魔王になってから一番嬉しい事だったよ」


そう言ってカシア様は俺に手招きして、カシア様の入るベッドまで近づいた。そして俺の頭に優しく手を置き。ゆっくりと撫で回した。


「‥‥‥本当に大きくなったね。ヒスイ」


「全ては魔王様と俺の親父達。シュールとヨロイのお陰です」


俺はカシア様の目を見る。


「そうだね。あの二人にもとても感謝している。魔王様城に来た後も。(魔王様とヒー坊の為に)と日頃、口癖の様に言いながらがむしゃらに働いてくれた。本当に感謝しているよ」


「‥‥‥親父達にも魔王様が親父達を褒めていたことを伝えておきます」


「ありがとう。ヒスイ!‥‥‥それでね。今日、ヒスイを呼び出したのには訳があるんだよ」


「訳ですか?」


「うん!‥‥‥‥僕はね、もう、‥‥そんなにもう生きられないんだ」


「えっ?今なんて魔王様?!」


俺は鳩が豆鉄砲を喰らった様に驚く。


「もう一度言うね。僕は、そんなに生きていられる時間が無いんだ。だから‥‥‥‥」


「嘘です。嘘ですよね?!父上‥‥お父さん!!嫌です。嫌だあ!」


俺は子供の様に言葉を発する。


「‥‥お父さんか!懐かしいなぁ。何もかも懐かしいよ。昔に戻りたいなぁ。覚えているかいヒスイ。エスフィール補佐官に内緒でシュールとヨロイと君を連れて魔王城の城下町に行ったことを」


「覚えています。全て、このヒスイは憶えています。魔王様」


「僕と君でユグドラ街道の夜桜を見に行ったこともあったね」


「はい、はい、覚えています。だから、だから、」


「ありがとう。ヒスイ。沢山の思い出をありがとう」


「だから、死なないで下さい。お父さん。僕は、僕は」


俺は、魔王様‥‥お父さんの前で人目もはばからず大泣きをした。


「‥‥‥‥ヒスイ」


とても優しい魔王様の声


「‥‥‥はい」


俺は父上を見る。父上は俺の両手を優しく握っている。


「ヒスイ、今までこんな僕に‥‥‥魔王カシアに17年もの長い間使えてくれてありがとう。だから‥‥‥だから、これからの人生は君の、君の為の時間に費やしてくれ」


お父さんはそう言った。


「俺の為の時間ですか?」


「あぁ、君はまだ若い。それに僕と違って身体も丈夫だ。君なら色々な世界や色々な人達と交流できるし、見聞き出来るだろ。だから、だからね。僕の分まで広い世界を観てきてくれないかな?それが僕の最後の魔王としての頼みだ。頼めるかい?」


「魔王様の頼み。‥‥‥‥はい、僕は、‥‥いいえ、俺はその魔王様の頼み。絶対に叶えます。任せて下さい」


俺は魔王様の両手を強く握り返す。


「そうか、‥‥‥最後にそれを聞けて良かった。ありがとうヒスイ。僕の可愛い子。ありがとう」


魔王様はそう言って寝落ちしてしまった。


その数ヶ月後、魔王様は老衰と聞かされたが、本当かどうか分からないがただひとつ分かったことは俺の親父の1人がいなくなったことだ。


その後、俺は密かに魔王軍を抜け旅に出た。残してきた。親父達もそろそろ歳だが。昔からの貯蓄が溜まりあるらしく。余生は平和で静や田舎に引っ越すらしい。

そして、

俺は魔王様の最後の言い付け通り。色々な奴と交流し、今、現在。


「おーい!ヒスイ、そろそろ観念して一緒にカップラーメンを、食おうぜ」


「ふざけんな!!カミナリ!!!しび、痺れれ!!」


宿敵の雷撃をくらっている最中だった。




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