出発と世界の動き
子供達を無事に『魔術院』へと送り届けてから数日が経った。
新都市『ガルクドウルク』の忙しさも落ち着いてきたある日の朝、俺はライトニング商会の建物で魔法新聞を読んでいた。
「『数週間振りの被害か?霧の都市オアシスにて8人目の鍛冶師の死体が見つかる。』‥‥‥‥『悪魔の淑女』を消した事で身動きが多少は鈍ると思ってたんだけどな‥‥‥‥合理できないことに痺れを切らして、鍛冶師狩りを再開したか」
俺はヘファイストス地方の記事欄を見て1人考えを口に出す。
「ミー、ミー、どうすんだ?そろそろ向かうのか?そのオアシスとか言う場所へよう?カミナリ様」
「えぇ、その方が良さそうですね。鵺様。ヘファイストス地方の南東地帯に蔓延っていた奴等もラインバッハとグレイの活躍で居なくなり。中立地帯になってきましたしね」
「こないだの話し合いでモニュメント荒野一帯ははラインバッハの姉ちゃんが、『テンプル』とエウクレイア神殿一帯は各部族と神殿の神官達が治める決まりになったんだろう?」
「えぇ、エウクレイア神殿の人達は元々は各部族の代表らしいですし、『テンプル』は元々、ペルシャ族やガルシ族の領地。管理は彼等に任せるのが最適だろうと、ラインバッハも言ってましたから」
「そうか‥‥‥そのペルシャ族とガルシ族も元の領地に戻れて良かったなぁ」
「そうですね。これもグレイの暴走のお陰です」
「その剣聖さんは今、何してんだい?」
「身体と魔力を酷使しすぎて、ガルクド病院のベッドで入院中だそうですよ」
「ミー?入院中?それはどういう事だ?」
「グレイいわく、拙者の使う魔法は威力は高いが燃費が悪いとかで、使用した数日後に反動が来るとか言ってましたね」
「‥‥‥‥諸刃の剣ってやつかい?」
「みたいですね。本人はあんまり気にしてないみたいですけどね‥‥‥‥」
俺と鵺様はグレイについて話している一方で隣の部屋では‥‥‥‥
『アヤネと惠』の部屋
「す、凄いは身体の疲れが本当にひいてるわ。アヤネ」
「は、はい!凄いですね。セツ君はこの数日間。私と惠の身体をあんなに触ってたくせに、私達に何もしてこなかったですわ!どういう事ですか?これは‥‥‥もしかして私達。魅力が無いんでしょうか?」
「そ、そんな事ないわよ!アヤネは可愛いし、魅力的よ。あの変態には勿体くらいよ」
「け、惠‥‥惠も十分魅力的ですよ‥‥‥フフフ、では、セツ君を無理向かせる為に今から少し練習しますか?色々と」
「ア、アヤネ?か、顔が赤いわよ‥‥‥‥ちょ、ちょっと‥‥‥‥ど、どうしたのよ?私の手を掴んで‥‥‥」
「フフフ、惠‥‥‥‥」
「ア、アヤネ?‥‥‥」
『神成の部屋』
「そうだ。あの二人にここをそろそろ旅立つ事を伝えとかないとな」
「ミー、ミー、なら、俺は夜叉の嬢ちゃんとクロの坊に伝えに言ってやるぜ!後、剣心聖殿にもな」
「ありがとうございます。鵺様、では、明日の明朝には出発するので皆に伝えといて下さい」
「ミー、了解だ!!行くって来るミー」
鵺様はそう言い残すと部屋の窓から飛び出して行った。
「‥‥‥‥‥何かどんどん兎ぽっくなってきてないか?鵺様‥‥‥気のせいか?おっと!それより、あの二人にも明日の事を伝えておかないとな」
俺は部屋から出て隣の部屋で寛いでいるであろう、少女2人の部屋に向かった。
再び『アヤネと惠の部屋』
コンッコンッ!
「2人共。いるか?明日の予定について少し話したいことがあるんだけど。ちょっといいか?‥‥‥って鍵が掛けられてない?‥‥‥‥不用心な奴等だな‥‥‥入るぞ」
ガチャ‥‥‥‥
「おーい!居るのか?2人共」
そうして、俺は2人が居るであろう部屋の中に静かに入る。そして、部屋の中の光景を見てビックリする。
「け、惠!い、行きますよ!フフフ、可愛いですわ!惠」
「ア、アヤネも可愛いわよ‥‥‥‥綺麗な身体‥‥‥好きよ!アヤネ」
「フフフ、私も好きですよ。惠の身体‥‥‥」
「アヤネ!!!!」
「惠!!!」
裸の美少女二人が『ナニ』かをやっていて、お互いを好きと言い合っていた。二人の世界に入っている為、此方の存在に気づいていない。
「‥‥‥‥」
キイィィ‥‥‥ガチャ。
俺は2人に気づかれる前にそっと扉を閉めた。
「‥‥‥‥知らなかった‥‥‥あの二人がいつの間にかあんな関係になっていたなんて‥‥‥‥最近の地球は多様性の世の中とか聞くし無くもないのか?‥‥‥うん、なくわないわな、うん!なくわない」
俺は2人の新たな関係に納得して自室に戻って行った。
『ガルクドウルク』難民キャンプ
「はーい!新しい居住区は此方になりまする~、食事も十分にありますし、元、部族の方は帰還の申請所まで御越しくださいまする~」
ガヤガヤガヤガヤ。
見渡す限り続く。一時期、ヘファイストス地方を終われ、難民と化した人達が列を作っている。
「あ、まさか、また、この地に住めるとはおもわなんだ」
「しかも、新たな家と仕事も用意してくれるとは、ありがとう、ありがとう」
「魔王領を救った『担い手』様も駆けつけてくれたらしいぞ」
「子供達には『ライトニング商会』が臨時で手配した学校も入らせてくれるそうだ。何でも、ライトニング商会の社長のお陰らしいわ」
「いやー、まさか、ラインバッハ様の帰還により、『シルクド旅団』『十字軍』そして、各部族を荒らしていた野盗まで滅ぼしてくれるとは思わなかったな」
「これもラインバッハ様、剣聖様、救国の担い手様のお陰じゃ」
「順番、順番をちゃんと守って下され~、物質はちゃんとありまするので~」
「ミー、ミー、いやー、忙しそうだな。夜叉の嬢ちゃん」
「えぇ、中にはヘスティア地方からの難民もおりますので。おや、その可愛らしいお姿は‥‥‥‥鵺殿?どうしました?何かありましたか?」
「ミー、ミー!おぉ、あった、あった。カミナリ様がよう!明日の明朝にここを立つとよ。それを夜叉の嬢ちゃんとクロの坊やに伝えにきたのさ!」
「明日ですか?‥‥‥‥まぁ、確かになんだかんだでこの地には数週間。滞在していましたから、そろそろだとは思っておりましたが‥‥‥そうですか、明日ですか。了解しました。クロと共に身支度を整えておきます」
「あぁ、よろしくなー!夜叉の嬢ちゃん。じゃあな」
ピョーン、ピョーン!
「‥‥‥‥いざ、新天地へですか!‥‥‥‥しかし、ヘスティア地方からの難民がこんなに多いのはどうしてなのでしょうかね?疑問です」
『ガルクド病院』
「剣聖様!どうか、家の娘を貰って下され!」
「いえ、我がラテ族の娘を!!」
「いやいや、我がバブル商会の令嬢を‥‥‥」
「ワハハハ!皆の衆。済まぬ!拙者には心に決めた御方が入るのでは!見合いの話しは全て断らせてくれ!ワハハハ!!」
「ミー、ミー、こっちはこっちで見合い話で長蛇の列かい!流石は、『十字軍』を撃ち破った。英雄様だな!おいッ!」
「おーい!剣聖様よーう!」
アテナ地方『ガリア帝国』
王の間
「ヘファイストス地方の様子はどうだ?大臣よ」
「はい、陛下。我が国から離反した『十字軍』は滅び、ヘファイストス地方の南東一帯は七大賢者・ラインバッハ・エゴルが手中に治めたとの事」
「‥‥‥‥古い伝説のラインバッハ・エゴルが、今さら表舞台に出てくるとはな」
「そ、それとですが‥‥‥陛下にもう1つご報告がありまして‥‥‥‥」
「何だ?大臣よ」
「はい、ガルクドウルクのラインバッハが我が国に資金援助をすると書簡が届きまして」
「何?新都市を設立したばかりだというのにそんな事を伝えてきただと?」
「は、はい、今、あの地帯にはエウロペ大陸中の富が集まっておりますので‥‥‥どうされますか?陛下」
「‥‥‥受けよう。何故か我が国の金が減っているからな」
「は、はい!畏まりました。陛下」
『ガリア城・金庫』
ジャラジャラジャラジャラ‥‥‥
シュン!シュン!シュン!
ガリア皇帝や貴族達はまだ知らない。勇者の恨みを買い、密かにガリア城の金庫や各都市の腐敗した貴族の家に自動転移魔道具が設置され。日々、摂取されている事を彼等はまだ知らないのである。
○○○○○地方・海底都市『バミューダ』
「何?あの冒険家が動き出したと?」
「はい!嬢王様。いかが致します?」
「‥‥‥‥『人魚族』のアリアとマリアナを使者に向かわせなさい。ラインバッハには昔、お世話になりましたからね失礼の無いように」
「はっ!では、早速、あの二人に到達致します」
ヘファイストス地方『鍛冶屋の里』避難所
「おぉ、見てみろ!カンナ。新都市『ガルクドウルク』だと!ライニング商会が関わってるという事はアイツもヘファイストス地方に来てるかもな」
「‥‥‥‥ルドルフさん。そんな事よりも‥‥‥私、武器を造りたい!外に出ていい?」
「駄目だ!駄目だ!馬鹿もん。今、出ていったら、ゾンビ共に襲われるぞ!」
「イヤだー!武器を造らせて!!!うえぇぇん!!!」
『影の国』
「ほう!‥‥‥ラインバッハがヘファイストス地方を掌握し始めただと」
「は、はい!霊王さま。つきましては、ラインバッハ殿から食料等の贈り物が‥‥‥‥それと伝言も賜っております」
「何?伝言だと?読み上げよ」
「はい‥‥‥‥では、』レイよ!どうせ、不毛の土地で食料不足だろう?俺の新都市は人や食料が集まり過ぎて困ってるから分けてやるよ!とりあえず、此方が落ち着いたら遊びに来い!そうすれば、影の国の再興も手伝ってやるよ!ハハハ!絶対に来いよ!我が旧友よ』との事です」
「‥‥‥‥あの暴力女め!上から目線で何を申すか!!良いだろう。食料の礼もある。アビス・ヒュドラの討伐が終わりしだい、我、自ら赴いてやろう」
「‥‥‥‥では、お父様。私もお供に」
「おぉ、良いだろう。我が娘。スカサハよ!共に行くぞ!あの暴力女の元へ!!」
「‥‥‥霊王様、嬉しそうですな」
「ハハハハハハ」




