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最終決戦でしたが何故か魔王と一緒に元の世界に帰還しました   作者: 雷電
魔法世界・アリーナ編 君の選択を信じている
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世界の強者達~お別れと思い出



①世界の強者達


『始まりの大森林・キャッツアイ』お祭り・2日目


しばらく、この『始まりの大森林』の人達と一緒にいて分かった事がある。猫族‥‥‥いや猫族だけでなく。獣人の人達はお祭りが好きという事に気がついた。


だから、何なのだと言われてしまうだろうが、何処か地球の日本人に似ている様な気がした。



巨大樹・最上階(ガルド低よりも更に上)上空留置場広場


「うわ、高いな。ここ、落ちたら即死だな。エスフィール。暗いから気をつけろよ、ほら」


俺はそう言うとエスフィールに右手を差し出した。


「おぉ、済まぬな。助かる。(パシッ)」


エスフィールは差し出した俺の右手を掴んで俺の近くの足場まで近づいてきた。


「しかし、コイツらどうしたものかな。いちを持ってた魔道具は全部。没収したし、タマキの奴は(ご主人様。新しい魔力供給者ですか?)とか言って。この二人に勝手に『契約の輪』を着けるしさぁ」


「‥‥‥‥だからか。こ奴らが着ている服が魔術院の学生服ではなく、猫族が着る為の普段着になっているのは」


「貰える物は何でも貰うさ。勝者の特権だ」


「お主はこ奴らと闘ってないだろう」


「メーアとか言う男の方は俺が最後仕留めたからいいんだ」 


「セシリアも共に巻き込んでな。黒焦げになっとったな。両方共。」


「あれでもかなり威力を押さえたんだ。それよりもセシリアの耐久力が徐々に上がってきるんだ。そのうち風魔法みたいに雷も纏って闘いそうだよな。」


「肉体に負荷をかけて能力を開花させるのか?そんな魔法聞いたこと無いぞ?」


「いや、セシリアの『神気』の才能があれば出来そうだけどな」


「おぉ、そういえば、その『神気』というか言う単語だが、前々からたまに話しておっただろう?いったい何の事なのじゃ?」


俺が『神気』という単語を口にするした途端、食い入るように質問してきた。

あれ?確か、『神気』って地球でもアリーナ世界でもどちらも『秘技』みたいな扱いだから。ほいほい、教えてもいいんだろうか?


それにもし牢屋にぶちこまれているコイツらが実は起きていて。聞かれでもしたら、魔術院側に『神気』について漏れてしまう危険があるな。


いかん、話題を変えよう。な、何か無いかな?!


「‥‥‥‥‥」


「おい!セツナ、何を黙っておる。早くその『神気』について詳しく教えよ」


エスフィールが徐々に迫ってくる。その幼げで、整った顔立ちが、俺の目の前まできた。


ここ、数ヶ月で更に綺麗になっている。


どんどん女性らしく、俺好みに成長しているだろう。


この異世界の終着地点・魔王領に入る。エスフィールのお母さんにエスフィールが会った後、彼女は俺と一緒に地球へ変えるのだろうか?


それともアリーナの世界に残り魔王として、魔王領の民の生活の為、残るのか?


‥‥‥‥‥‥それは最後に彼女、自身が判断することだろう。


もし仮に俺と一緒に地球へ帰ってくれないかとお願いしたらどうなるだろう?


いや、今は止めておこう。


今はただ、彼女を、エスフィールを無事にエスフィールのお母さんの元へ、送り届けることに集中しよう。


そう、俺は心の中で誓ったのだ。


「おい、貴様!さっきからボーッして何なのだ?早く『神気』について詳しく述べよ」


「‥‥‥‥、あぁ、すまん、すまん。そうだな、君を無事、魔王領のお母さんの元へ送り届けられた時には『神気』だろうが何だろうが、君が気になる質問には俺が答えられる範囲なら何でも答えるよ」


「ほう、言ったな。その約束忘れるなよ!セツナ!魔王と勇者の絶対に破れぬ約束だからな。よいか?!」


「あ、あ!よいよい。君との約束なら何でも良いよ。‥‥‥ほら」


俺は右手の小指をエスフィールの前へ出した。


「ん?なんじゃ?この小指は?!」


「地球の。いや、日本のまじないだよ。指切りげんまん。破った方は針を口から千本飲ますんだ」


「はっ?!針を千本も!それは死んでしまうな」


「あぁ、だから、絶対に破っちゃいけないんだ。ほら、エスフィールも小指を出してくれ」


「うむ」


「こうやって、お互いの小指を結び合って。そうそう、指切りげんまん。嘘ついたら針、千本飲ます」


「こ、これで良いのか?」


「あぁ、これで良い。これで俺が約束を破れば。俺は口から針を千本飲むことになる。だから、絶対に君との約束は守るよ」


そして俺はエスフィールに向けてはにかんだ。


「む、おぉ、そうか、絶対に守るか。ならば、良いうむ」


エスフィールはしどろもどろになりながらそっぽを向いた。

暗がりでエスフィールの表情が見えなかったが、まぁ、いいだろう。今はただ、この二人の時間を楽しめればいい‥‥‥‥。






魔術院『キャスパーリーグ・理事長室』


「ほんの一瞬だったけど‥‥‥あれは間違いない。馬鹿弟子の魔力。やっぱり、こっちに来ているんだね。シーアとラニーの気配も弱くなってるし何かあったから?」


「師匠?兄弟子いそう?」


「サーシャかい?うんうん、微かにだけどね。馬鹿弟子の魔力を感知できたよ。油断して、何処かで大きめの魔法でもうったんだろう」


「‥‥‥そう」


「嬉しそうだね?サーシャ。じゃあ、その嬉しそうなサーシャに頼もうかな?」


「?‥‥‥なに?」


「シーアとラニーの気配が弱くなったから『始まりの大森林』まで行って様子を見てきてくれないかな?多分だけどそこに馬鹿弟子も入ると思うだよね?頼めるかな?」


「‥‥‥‥‥分かった。直ぐに準備する」


「おぉ、流石は私の秘蔵っ子!!話が早くて助かるよ。じゃあ、よろしくね~!」


サーシャは、マーリン理事長からそう言われると静かに理事長室を出た。


「‥‥‥兄弟子、‥‥‥今、行くから」


魔王領よりも更に北のとある土地


『死の大地・影の国』


????城


「霊王様、先ほど、一瞬ではありますが凄まじい魔力を感じました。どういたしましょう?」


「ふん!どうせ、あの『白き獣』が気まぐれで暴れたのだろう。捨て置け」


「‥‥‥ですが、かの『白き獣』は中央大陸に鎮座したままです」


「なに?‥‥‥‥セロよ!スカサハを呼べ。此度の力について調査させよ。


「霊王様の仰せのままに」



エウロペ大陸・西側最奥の龍族の国『ニーズヘッグ』


「龍巫女様、先ほど東の国より。希な魔力を感じました。もしや人族が何か企んでいるのでは?!」


「‥‥‥‥その希な魔力‥‥‥妾も感じました。」


「では、どのように対象致しましょう?!」


「‥‥‥‥妾の息子。夜叉を行かせましょう」


「夜叉様をですか?しかし夜叉様は現在。巫女の‥‥‥」


「‥‥‥良いではないか?‥‥少し旅をさせるのもまた、刺激になるでしょう。‥‥‥夜叉に伝達を」


「はっ!!畏まりました」


○○○○山脈奥地


「おぉ~!久しぶりのこの魔力!!アイツが戻って来てるのかぁ~!!じゃあ、ちょっくら殺しに行くかーーー!!」


『元魔王軍・三騎士が1人・夜霧のヒスイ』









②2人の処遇


上空留置場広場「檻の中」



「がっ?!こ、ここは?僕はいいまでなにを?」


「お?やっと気がついたか。えっと君の名は?」


俺が彼に訪ねると。エスフィールが代わりに答えた。


「こやつは、シーアと言う奴じゃ。そしてそのとなりの檻でまだ寝ておる者がラニーじゃ。貴様の魔術院の後輩なんじゃろう?それ位覚えておいてやれ」


「エスフィールは人の名前を覚えるのが得意なんだな」


「上に立つものとして当たり前の事じゃぞ。私の為に働いてくれる者達の名前位全て記憶しておる」


流石、この若さで魔王になることだけはある。魔力総量、魔法の強さも然ることながら。

上に立つものの心得が、この若さですでに完成されている。


「な、なるほど。しかしだな。悲しい事に彼彼女達とは本当に面識が無いんだ。この二人が魔術院に入学した時には、俺は勇者として旅に出てたしな」


「では、何故こやつが、お主の作ったとかいう。カミナリシリーズを持っておったのだ?」


「ん?あぁ、あれは昔、俺が魔術院に譲った。粗悪品だよ。完成品の方はこの中の奧に眠っている」


「‥‥‥あのレベルで粗悪品なのか?信じられんかったぞ。攻撃魔法の威力を一段階上げとったのに」


「あぁ、あれはたんに、自身の魔力をあの魔道具に貯めて、一気に放出するだけだから。もしそれが闘った後だと。‥‥‥あの様に」



「あれ?僕の魔力が感じられない?無くなったのか!?」


「魔力のガス欠状態になって魔法が一時的に使えなくなるんだ」


「ある意味、一時的に強くはなれるが、その後はちゃんとペナルティがあるのか。なんとも使い勝手が良いのか悪いのか、分からぬ魔道具じゃな」


「製作していた俺でも、扱いに困る魔道具だったんだが‥‥‥シーアの奴、よくあんなの使おうと思ったな。混乱しているようだしそろそろ話しかけてやるか」


「そうしてやれ、私もラニーに訪ねたい事があるからのう。シーアを檻から出して客室へ連れて行くがよい。どのみち、魔力が使えなければ、ここから逃げようなどと思うまいしな」


「了解」


俺はエスフィールに言われたといわれたとおり、シーアを檻の鍵を開け。シーアを外へと出してやった。


「あ、貴方はカ、カミナリ先輩?あれ?でも魔術院の魔昌石の記録で見た人物と随分と体格が違うような?あれ?偽物?」


おぉ、そうか、シーアが今の俺が本物のカミナリ セツナだとは分かる筈もないか。

地球に帰還後、女神の力で若返ったなどと説明しても信じる筈がないしな。‥‥‥‥それならば。



「‥‥‥初めまして、俺はカミナリさんの遠い親戚のナルカミといいますよ、以後、よろしく」


「え?カミナリ先輩の遠い親戚のナルカミさんですか?」


シーアは俺を疑うように観察している。 


「えぇ、カミナリさんには昔、少しだけ魔道具について教えてもらってたんだ。遠い親戚だから魔力の波長も少し似ているし。カミナリさんと俺を間違えたんじゃないかな?」


「魔力の波長が少し似ているですか。‥‥‥‥確かにかの有名な魔法族の一族の方達も、一族皆さん、強い魔力をお待ちになって生まれてくると言われていますし。あながち間違いではないかもしれませんね」


「だろう?それと君達が使っていた。カミナリシリーズの魔道具や魔術院の制服は俺がカミナリさんの技術を真似て、直してある。また使える用にしておいたから後で返えそう。(束縛魔法、魔力感知、魔力供給、情報感知の魔法等がモリモリに盛られたタマキ制に改造したがな)」


「ほ、本当ですか?こちらが攻撃を仕掛けてご迷惑を御掛けしたのに‥‥‥ありがとうございます」


「いやいや、俺達も君達の事情を聞かなかったからお互い様さ。(今後は君達経由で魔術院やガリア帝国の情報をモリモリ頂くがな)」


「あの、ナルカミさん。僕達の処遇はどうなるんでしょうか?猫族の族長の娘にあたる拳王姫様に攻撃したとなるとただでは済まないですよね?」


「ん?あぁ、その事だけど。余り気にしなくても大丈夫だと思うぞ。君たち2人は魔術院から来た留学生ということにして、しばらくの間。猫族の里『キャッツアイ』で奉仕活動をしたら魔法中央国へ帰らせるとセシリアのお父さん。つまり族長さんが言っていたぞ。」


「‥‥‥‥‥随分、軽い処分ですね」


「まぁ、今回の事がきっかけで『始まりの大森林』側と人族の仲が良くならないようにしたいというのが、獣人側の本音だろうな」


「そうなんですか‥‥‥詳しく教えて頂ありがとうございます。ナルカミさん」


「あぁ、良いって、良いって!(今後は君達には馬車馬の様に働いてもらう予定だからな。)とにかく、今はまだ体が弱っているだろうし。客室へ案内するから着いてきてくれ」


「分かりました」


俺とシーアは上空留置場広場の出入口から客室へ向かおうとした。するとエスフィールの奴がシーアに声をかけた。


「シーアとやら。ちょっと待ってくれ。ラニーについて二、三、聞きたいことがある」


エスフィールはそう言うとシーアからラニーの過去の性格や行動等を質問していた。


「よし、分かった。ありがとうのう。メーアとやら助かったもう言ってよいぞ」


エスフィールはそう言うとラニーの元へと戻って行った。


なにかあったのだろうか?まぁいいや。


そして次にセシリアと出くわした。


「ンニャア?シーアとかいったかにゃあ?体はもう大丈夫ニャノか?」


「は、はい!拳王姫様。記憶は覚束ないですが、なんとか立てるぐらいには回復しました。今は、ナルカミさんにこの巨大樹の中にある。客室へ案内してくれところです」


「ンニャア?ナルカミさん?‥‥‥‥!!ニャア~、そうか、そうか、分かったニャア~!!また明日の朝、会おうニャア~!お休みニャア」


セシリアはそう言うと俺に目配せした。


(いちを心配して来てみたニャア~!メイエスの事は見とくから安心するニャア~)


(わざわざすまない。助かるよ、後の事は頼む)


(ウニャニャア~!!)


そうして俺達は上空留置場広場を後にした。



「ニャオーン!メイエス!!メイエスにすごく会いたかったのニャア!」


「おぉ、セシリアか!丁度良かった。今さっき、ラニーの奴が起きたところだ」


「ちょ、ちょっとなによ!!ここ?寒いし、なに?この服?!私の制服は?」


起きたばかりか、ラニーの奴がメーアの時と同様に混乱している。


「ンニャ、ンニャ!落ち着くニャア。猫被り娘。今はオニャエとメイエス、わっちしかいないから本性をさらけ出しても大丈夫ニャア」


セシリアがそう言うとラニーが一瞬、キョトンした顔をしたと思ったらみるみるうちに鬼の形相へと顔が変わった。


「ンニャ、ンニャ、うるさいわよ。誰が猫被り娘よ。私は猫族じゃないっての。自分が猫耳で、しっぽが可愛くて、物凄い可愛い顔立ちだからって調子に乗らないでよね。全く」


「‥‥‥‥メイエス」


「なんじゃ?」


「ラニーのニャツ。わっちの事、メチャクチャ褒めてくれてるニャア~!」


「そうじゃな。あっちの世界ではこれをツンデレと言うらしいぞ」


「あっちの世界?いまいち言っている事がわからにゃいが、まあ、いいニャア!それよりもメイエス。ラニーに言いたいことがあるのニャロウ?さっさと伝えてやるニャヨ」


「あぁ、そうじゃな」


セシリアが急かすように言ってきた。何をそんなに急いでおるんじゃ?まぁ、よいか。私はラニーの顔をじっと見つめた。


「な、なによ?!私の事、じろじろ見てきて」


「お主が私との闘いで使っていたあの杖。確かラニーちゃんのマッチ○か?あれから余り良くない魔力残滓(まりょくざんし)があった」


「私の杖に良くない魔力残滓(まりょくざんし)?」


「うむ、だからな、私の修復魔法を使ってお主の杖を解呪しておいた。体が動くようになったら。ナリカミの奴に返してもらうとよいぞ」


「わ、私の杖に呪いみたいなのがあったって事?」


「いや、今はなんとも言えぬと言うかなんというかのう。お主と闘っていた時。明らかにお主の言動や行動が呪いに強制されている様な場面があったのは事実じゃな」


「呪いに行動が強制?なにそれ?わたし、今、どうなってるの?これからどうなっちゃうの?」


「ウニャア!おいおい、大丈夫かニャア?ラニー?!」


セシリアが心配そうにラニーに近づき、ラニーの頭を優しく撫でている。


「‥‥‥‥まぁ、問題だった杖の方は私が解呪したから。お主の性格も以前の様な性格に戻ると思うぞ。お主が寝ている間にメーアとやらから、お主の過去の出来事を少し聞いた。お主も色々苦労したおったのじゃな」


私はラニーにそう言うとラニーが入れられている牢屋の鍵を開けラニーへと近づいた。


「な、なによ」


私はラニーの両手を自分の両手で優しく包み込む。


「闘いの最中はお主の事もろくに知ろうともせず、罵声を浴びせてしまった。上に立つものとして本当に申し訳ないと心から思う。‥‥‥‥ごめんなさい」


「な、なによ。今さら、謝ってきて」


「お主の性格は呪いから起因しているものじゃ。恐らくだがお主の先生も。ラニーの呪いを解くためにラニーを『始まりの大森林』へと使わしたのじゃろう」


「マーリン理事長が私の呪いを解くために私を使わした?!なに訳の分からない‥‥事を」


「あぁ、この『始まりの大森林』は呪いや邪気等を緩和するユグドラシル様の加護や神秘が、この土地にはあるからのう。そして治癒魔力が使えるナリカミの同行者である私が来ることもそのマーリン理事長には分かっておったんじゃないかのう」


「マーリン理‥‥‥マーリン先生が私の為に‥‥‥」


「そして、これからラニーとメーアとやらはこの『始まりの大森林』の留学生という扱いでここで過ごさせるとセシリアの父上も言っておってのう。のう、セシリア」


「そうニャア~!その方が色々動きやすしニャア」


「私が留学生?」



「あぁ、呪いのリハビリの為にもこの地に住む。獣人達とゆっくり過ごしてみるとよい。お主の本来の明るい性格もだんだん取り戻せるじゃろう。そしてお主の‥‥いや、ラニーの明るい未来も必ず来るはずじゃ」


「私、私、あんたに、‥‥‥貴方にも酷いことをいっぱい言って!!」


「‥‥‥うむ、もう良い。もう良いのだ。ラニー!」


「私、私、」


ラニーは目から一粒の涙を流した。


「分かっておる。分かっておるよ。ラニー、だから、しばらくの間、この地で自分自身を休ませよラニー」


「ンニャア、ンニャア。そうニャゾ!」


「‥‥‥私‥‥‥昔みたいに皆と友達と一緒にいたい、‥‥遊びたい、上手に話したい、悪口なんて言いたくない」


ラニーの目から大量の涙が溢れている。


「うむ、うむ、分かっとるよ。じゃから、じゃからのう。まずは私とセシリアを‥‥‥お主の‥‥‥ラニーの友達にしてくれぬか?‥‥‥のう、優しく、不器用なラニーよ」


そして私とセシリアはラニーの背中をゆっくりと擦った。


「わた、私、(グスッ)、うん、うん。(グスッ)、なる、私、なるよ、2人の、メイエスとセシリアのとも、友達になる。だから、だからね。わた、私と!!!」


少し間を置いてから私達は言葉を発する。


「うむ。これからは仲良くしていこうぞ」


「これから、よろしくニャア!ラニー!」


「う、ん、うん!うん!うぇぇん、わぁ、わあぁぁぁん。うぇぇぇん!!」


そして、ラニーは涙を流し、私とセシリアに自身の体を預け。大声で泣いたのだった……………。







③お別れと思い出



猫族の里『キャッツアイ』に滞在して5日たった。


この土地に来て以降。色々な出来事に遭遇した。


セシリアとの再開と逃亡。『始まりの大森林』に住む。猫族や多種族の人達との交流。魔術院から来たシーアとラニーとの闘い等々。その後、女の子達はいつの間にか和解し、巨大樹の移動用リフトで合流した後はエスフィール、セシリア、ラニーの3人で祭りの出し物等を一緒に見て回っていたのだから。


俺とシーアは目を丸くし驚いたものだ。


5日間の間だけでもこれだけの事があった。


魔法世界アリーナ。俺にとっては異質な存在世界だが。この世界にも色々な人々が住み、色々な考えを持って日々の生活をしているのだと、改めて実感できた5日だっただろう。


そして、この5日間で次の目的地であるエルフが統治する国で、世界樹がある土地。エルフの女王が統べる『セルビア国』へ向かう準備も完了したお昼頃、セシリアの実家であるガルド低でランチを3人で食べながら、次の行き先である。『セルビア国』についての打ち合わせをしていた。


「よし、『セルビア国』へ行くためのだいたいの準備が終わったな」


「ウニャア~!わっちはいつでも出発できるのニャア~」


「うむ、私も準備は終わっておるぞ。‥‥‥‥しかし、ラニーとはここでしばしの別れになるのが辛いのう。せっかく仲良くなれたのだがな」


エスフィールがうつむきながら(つぶや)く。


「まぁ、仕方ニャイニャア~!建前は留学生って事で今回のわっち達への襲撃を許されたんだからニャア~」


「うむ、そうなのだがな‥‥‥‥」


エスフィールの言葉がつたない。


「まぁ、あれだニャア~!魔王領でのセツナの用事が終われば。また、『キャッツアイ』に戻ってラニーとシーアに会いに行こうにゃあ。2人もきっと喜ぶニャロウニャア」


セシリアがそう言うとエスフィールが反応した。


「うむ!そうだな。旅の目的が達成したらもう一度。ラニーに会いに『キャッツアイ』へ帰って来よう必ず。な、セシリアよ!!」


「ウニャ、ニャア~!!必ずニャア~!!」


エスフィールとセシリアの会話を静かに聞いていた俺は、心の中でシーアの事は?

とっ!静かに突っ込んだ事は胸の奧へと閉まっておこう。


「じゃあ、2人共。『セルビア国』への出発は明日の朝と言うことで大丈夫か?」


「あぁ、それで構わない」


「わっちも大丈夫ニャア」


「『セルビア国』への道順だが、『始まりの大森林』の北にある石門を潜って。北の道の大動脈であるユグドラ街道へ向かい。途中にある双星(そうせき)の大洞窟を通って『セルビア国』へ入るんだよな。セシリア?」


「そうニャア、獣人が『セルビア国』へ入国する時はその順路を辿って行くニャア」


「その前にセツナよ!今、双星の大洞窟を通ってと言ったか?」


俺とセシリアが『セルビア国』への行き方を復習していると。エスフィールが会話の間に入ってきた。


「な、なんだよいきなり?!確かに双星の大洞窟を通ると言ったげど。それがどうかしたのか?」


「ば、馬鹿もの貴様、知らんのか?双星の大洞窟と言えばこのエウロペ大陸の中でも有名な観光スポットではないか!!お主の知らないのか?」


「有名な観光スポット?‥‥‥そうなのか?セシリア」


「ンニャ!確かにニャア。このユグドラ地方の中でもかなり人気の観光地にゃあ~。あそこは昔から人でごった返しているから嫌なのニャア」


「あぁ、特に有名なのが双星の大洞窟の中にある大水晶の部屋だな。それから琥珀の壁や聖霊の魔も捨てがたい。うむ、その場所に行けると思うと。楽しみで心が踊るな」


エスフィールは興奮気味に、双星の大洞窟の観光名所を楽しそうに説明していた。


エスフィールの奴。もしかしなくても観光好きが?

彼女こ意外な一面を知れた。昼時のランチだった。



『次の日の朝』


『始まりの大森林』でお世話になった人達には昨日のランチの後。1人1人に会い、感謝を伝えた。


そして現在、俺達3人は『キャッツアイ』猫族の里の出口へ来ていた。送り向かいには『始まりの大森林』を代表する各族長やその護衛。村人が万を軽く越える数で押し寄せていた。


「‥‥‥。なんだこの数は?」


エスフィールがそう呟く。


「‥‥‥分からない」


俺も小さく呟く。


「セシリア様~お気をつけて~!!」「拳王姫様~結婚して!!」「セシリア様は今日も可愛い~!!!」

「セシリアたん、はあ、はあ、!!!」「拳王姫様、俺をぶってくれ~!!」


集まった人達の中には変態も混じっているが気にしないことにした。


「ンニャ~!!みんニャア!!ありがとうニャア~!!行ってくるニャア~!!」


セシリアが集まった万の大群にそう呼び掛けると。大地を裂かんとばかりの声援が帰ってきた。


「うおおぉおーーー!!セシリア様ーーー!!」「結婚シテクレ!!!!」「私も連れてて拳王姫様ーーー!!」「俺を踏みつけて下さいーーー!」


等の声がそこらじゅうから響き渡った。


「セシリアってこんなに人気があったんだな」


「まぁ、うちの娘はあれでも『始まりの大森林』を代表する立場だし、元勇者の従者だ。そりゃあ、人気者にもなるさ」


そう言って俺の隣に居たガルドさんが、どこか誇らしそうにセシリアを見ていた。


「そんな、人気者を貴様は事あるごとに雷撃を喰らわせ丸焦げにしている等と。あの万を軽く越える連中が知ったらどうなるかのうセツナ?」


エスフィールが俺の方に向き。意地の悪そうな笑顔を向けてきた。


「おい、何を考えている。君?!変な行動はするなよ、いいな!絶対だぞ」


「‥‥‥それはお主の誠意次第だのう」


くそ、こいつ、勝ち誇った顔をしやがって。


「‥‥‥‥旅の途中で通る。君が行きたがっている、双星の大洞窟で売っている宝石を何個か買ってやろう。それでいいか?」


エスフィールは少し間を置き答える。


「まぁ、良い。それで手を打ってやろう」


何がまぁ、良いじゃ!得しかしてないだろう。君ーーー!


「あーー!!いたいた、ナルカミさーーん!!」


そんなやり取りをしていると人混みを掻き分けてシーアとラニーが俺達を見つけて、駆け寄ってきた。


「探しましたよ。ナルカミさん。今日、出発ですよね?」


「ん?あぁ、そうだな。しばらく君達共お別れだ。数日だったが色々と話が聞けて助かったよ、ありがとう」


シーアとは二人きりになった後、中央魔法国やガリア帝国の最近の出来事を詳しく教えてもらった。


「いいえ、こちらこそ、僕達の魔道具を返して頂いたうえ直しても頂けるなんて助かりました」


「いやいや、こっちらこそ人族の情報を知れて助かった改めてありがとう。‥‥‥‥あぁ、そうだ。シーア! 君に渡すものがあったんだ」


「僕にですか、何でしょう?」


俺は魔法の袋からある魔道具を取り出しシーアに渡した。


「カミナリシリーズ「改」だ。カミナリさんが昔、欲しそうな人がいたら渡して欲しいと言っていたのを思い出してな。君、カミナリシリーズ欲しそうに話していただろう?だから、君にこれを譲るよ。いらなければ誰かに売って金にするといい」


俺はそう言ってシーアに魔道具を渡した。


「え?これ?え?貰えるんですか?」


シーアがフリーズしている。


「ん?あぁ、上手く使ってくれ。それから、いつか、カミナリさんにあったらシーアの事を話しとくからどこかでカミナリさんにあったら魔道具について質問してみるといいよ。あの人ならシーアに色々な事を教えてくれるはずだからね」


「え?本当にくれる?んですか?それに僕の事、カミナリ先輩に話しておくって」


「ああ、だから君も魔道具作り頑張ってくれ。応援している。‥‥‥‥と、伝えとくよ」


俺はシーアにそう言って彼の肩を叩いた。


「あ、ありがとう、ございます。ナルカミさん。‥‥‥‥おっと、そうだった、つい、感動の余りフリーズしてました。おーーーい!ラニー!!こっちおいでーー!!」


シーアは、そう言うと後ろへ振り向き。大声でラニーを呼んだ。だが、一向にラニーは現れない。


「あれ?恥ずかしがって出て来ないですね。ちょっと、待ってて下さいね」


シーアはそう言うと人混みの中へ入って行った。


「あーー、いたいた、何で隠れてるんだい?ラニー?」


「シ、シーア君?!こ、声、声が大きいよ。恥ずかしからボリューム下げて」


そこに居たのは物陰でこそこそ隠れて居たラニーだった。


「ほら、あの二人とせっかく友達になれたんだろう?ちゃんと別れの挨拶をしないと駄目じゃないか?」


「うぅぅ、そうだけど、恥ずかしいというか‥‥‥‥」

その瞬間。


「何が恥ずかしいのじゃ?ラニーよ?!」「ニャニが?恥ずかしいのニャ?ラニー!!」


「きゃあぁあぁぁ?!な、何でふたりがあぁぁぁ!!」


突如としてエスフィールとセシリアかラニーの後ろへ現れ。ラニーは恥ずかしそうに叫びを上げた。


「馬鹿もの!お主が私とセシリアに挨拶に来ぬから。さっきまで2人でラニーを探しておったのだ」


「ウニャア、ウニャア!そうニャア!」


「わ、私を?!」


「あぁ、お主をじゃ、しばらく、友達と離ればなれになるのじゃから。別れの最後ぐらいちゃんと挨拶したくてのう」


「わっちもそうニャゾ、ラニー!わっち達は友達にゃからニャア。」


「友‥達!」


ラニーは恥ずかしそうに、だが笑顔でそう呟いた。


「ラニーよ!しばしのお別れだが、私達の旅が全て終わったらもう一度、この『始まりの大森林』に戻り、ラニーに会いに行くからのう。‥‥‥しばらく会えなくなるが‥‥‥‥もう一度必ず。お主に会いに来ると約束しよう」


「約束?」


「そうニャア!まぁ、わっちはここが地元ニャからニャア~!どのみち、ラニーには絶対会えるからニャア。まぁ、しばらくのお別れニャア。‥‥‥そうだニャア、色々落ち着いたら。ラニー!!わっちと一緒に旅にでも行こうニャア。メイエスも一緒でわっち達、三人でニャア!」


「私達、三人で?!旅を?」


「うむ、そうだな。双星の大洞窟にでも行くとしよう。約束じゃ」

「ウニャア~!」


エスフィールはそう言い終えると自身の右手をラニーの目の前出した。続いてセシリアも。


「うん、うん!!約束!三人で双星の大洞窟行きたい。絶対に行こう。私、二人を待ってるから」


ラニーは差し出された二人の手を自身の右手と左手で強く握った。

そのラニーの表情は春の新緑の様に輝いていた。






数刻後


「じゃ、行きますか。2人とも!!」


「うむ」「お供するニャヨ」


「では、ガルドさん、レベッカさん、他の皆さんも本当にお世話になりました。行ってきます!!」


「おう、気をつけてけよ!!!」「ケガすんなよーー!!」「ナルカミさん、カミナリシリーズ「改」、大切にします。お気をつけて」「メイエス、セシリアーーまたねーー!」


「お、おっと、セツナ!少し待っていてくれ」


エスフィールはそう言うとラニーの元へ駆け出して言った。



「おーい、ラニー!」


「メイエス?どうしたのお別れの挨拶はもう、したでしょう?」


「いや、お主にはもう一つ言っておかなければならないことがあったのを忘れていてのう」


「もう一つ言っておかなければいけないこと?」


ラニーがそう言うとエスフィールはラニーの耳元へ近づきこう告げた。


「私の本当の名前はユナ・エスフィールじゃ。偽名を使っていて悪かったのう。ラニー!」


「えっと?メイエスは偽名でユナちゃん?ユナ・エスフィールが本名って事?」


「ああ、ラニーよ!もし何か困ったことや事件に巻き込まれる事があったら。私の名前を使ってくれ。何かしらの効果があるからのう。あぁ、それとこれをお主にやろう」


エスフィールはそう言うと数日まえにセシリアが俺からパクった魔力増幅の魔道具(結構、希少+高価)をラニーに渡した。セシリアは後で締める。


「綺麗。いいの?もらって?それに名前を使えって?」


「あぁ、よい。その魔道具がお主を危険や厄災から守ってくれることを私は、ラニーの1人の大切な友として願っておるよ。願っているの中には、先ほどの言った。名前を使ってくれというのも含まれておる。‥‥‥‥だからのう」


「だから?」


「次にラニーに会えるのを楽しみにている。では、行ってくる。サラバじゃ」


エスフィールはそう言ってラニーから離れ。俺達の元へ合流した。 


「終わったかな?」


「ああ、すまぬ、ありがとう」


「‥‥‥じゃあ、行こう。エルフの国『セルビア国』へ」


「ウニャア!久しぶりのセルビア!!楽しだニャア!!」「私は双星の大洞窟だな」


俺がそう言うと二人は思い思いの事を言ったのだった。








ありがとう『始まりの大森林』


この地が最初に飛ばされた場所で本当に良かったと心の中で俺は感謝をし。

俺は前へ歩き出す。



『始まりの大森林』編















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