次の道順~試しの闘い
①次の道順
朝が来たのだ。
私、ユナ・エスフィールは近くで寝ていた。セツナに抱き着きながら寝ていたみたいだ。セツナはまだ。寝ている。
「しかし、セシリアの友人が訪れたと言うだけであんなに色々な種族が集まるとはビックリしたのう」
「そりゃあ、あんた。うちの娘は性格があれでも『始まりの大森林』を代表する拳王姫で勇者様の元仲間なんだから人気者さね」
私が独り言のつもりで発言した言葉を誰が聞いていたみたいで、私は慌てて声のした方へ振り返った。
そこにはセシリアが少し大人になった姿の猫族の女性が立っていた。
「えっと?!あの?」
「あぁ、私かい?私はセシリアの母ちゃんで名前はレベッカ・アインズだ宜しくね。‥‥‥あんたは確か。そうそう、メイエスさんだったね。カミナリさんの従者の」
レベッカさんは自身の自己紹介を終えると。そう訪ねてきた。
「は、はい。メイエスと申します。宜しくお願いします」
私は深々とお辞儀をした。
「いや~!さすがカミナリさんの従者だね~!礼儀作法がちゃんとしているよ。うちの馬鹿娘も見習って欲しいもんだね。っと!そうだった、そうだった」
レベッカさんはそう言って床で寝ている。セシリアに近づいて行った。
「セシリア!!!いつまで寝てるんだい!!この穀潰し娘!!早く起きて、祭の後片付けでも手伝っきな」
「ンニャア~!!朝から騒がしいニャア。まだ、祭中なのかニャア?‥‥‥‥って母ちゃんにゃあ?どうしてここにいるのニャア?」
「あんたを起こしに来たんだよ。いつまでも寝てるんじゃないよ。働きな。それか勉強しな」
「どっちも嫌だニャア。勉強はもっと嫌ニャア」
セシリアはそう言ってもう一度寝ようとした。
「そうかい、そうかい。勉強が嫌なら働いてきな。そ~れ!!」
「ん?ナンニャ?母ちゃん?!って!ニャアァァ~!落ちるニャアァァ!!」
レベッカさんは実の娘。セシリアを力一杯空中へ放り投げた。巨大樹の上から地上までの高さは2~100メートルは有にある。セシリアは大丈夫なのか?
「えっと。セシリアは大丈夫なんですか?」
「ん?あぁ、いつもの事、だから大丈夫。大丈夫。それにあの子は『神気』の天才だから。何かあっても対した怪我はしないからね」
「はっはぁ‥‥‥」
私は少しドン引きしたが。それよりもレベッカさんから、聞かされた気になるワード。『神気』について気になって仕方がない。
たまにセツナの奴も『神気』とか、たまにその単語を言っていたが。いったい『神気』とはなんの事なのだ?
「レベッカさん。その『神気』と言うのはいったい?」
「あれ?てっきり。カミナリさんの従者だから知っているもんかと思ってたけど。知らないのかい?」
「はっはい。そうですね」
「それなら、私に聞くよりもそこで寝ている。カミナリさんに聞いてみな。エウロペ大陸でも屈指の『神気』使いだからね。
それに『神気』は『始まりの大森林』でも秘匿の体技だからね。簡単には教えられないんだ。済まないね」
「‥‥‥分かりました。セツナ殿に後で聞いてみます」
セツナがエウロペ大陸でも屈指の『神気』使い?!そんなこと初めて知ったぞ!
それに秘匿の体技で教えられないとは、どういう事なのだ?『神気』とはそれ程、凄いものなのか?あとで、セツナに後で問い詰めてやろう。
あやつは私に隠し事が多すぎる気がする。
「おっと、私は祭の後片付けがあるから。メイエスさんはゆっくりしていなよ」
レベッカさんはそう言うと。テーブルに置いてある。空いた皿を集め始めた。
「わ、私も手伝います」
私はレベッカさんと一緒に片付けを始めた。
その近くで。まだ寝ているセツナを部屋の隅にどかした。
‥‥‥‥数刻後。
「ふぅ、久しぶりによく寝たーーーー!」
「セツナ、貴様、いつまで寝ておるのだ?もう、昼過ぎだぞ」
「昨日はセシリアと戦闘があったし。地球だ。と君や彩音が、いつも俺にお説教(拷○)するから寝付けないからな。今回は久しぶりに深く眠れた」
「‥‥‥‥今度、永遠に起きれぬようにしてやろう(ボソッ)」
「ん?なんか、言ったかエスフィール?それよりも顔を洗いたいんだが、セシリアの奴は何処に行ったんだ?手洗い場かなんかに案内してもらいたいんだが?」
「セシリアなら。ここから落ちて行ったぞ」
私は巨大樹の下を指差した。
「なんだ?祭の何かの催しか?相変わらず。突拍子もないことをする奴だな」
セツナは、セシリアの心配をすることもなく。祭の催しだと勘違いしている。
セシリアもそうなのだが、どうしてこう。勇者パーティーの奴らは常識的な考えから逸脱しているのだろうか?
私が仮に魔族の仲間が巨大樹から落ちたと聞かされたらいても立ってもいられないものだがな。
変態達に常識は通じ無いのかもしれぬ。
「おー!やっと起きたかい、カミナリさん!寝癖凄いねー!こっちに来な。洗面所へ案内してあげるよ」
「おはようございます。って誰だ?」
「セシリアの母君のレベッカ殿だ。ほれ、シャキッとせい」
私はセツナの脇腹をチョップし、気合いを入れてやった。
「おぉ、すまん。すまん。レベッカさん。おはようございます」
セツナはそう言うと。首をゴキゴキならしながら。レベッカさんに洗面所まで案内され。朝の身支度を整えに行ってしまった。
「ふぅ、あれでもエウロペ大陸に平和をもたらした者なんじゃから。しっかりしてほしいものじゃな。たく」
更に数刻後。
祭の片付けもすっかり終わり。私、セツナ、セシリア、ガルド殿とその奥さんのレベッカさんでお茶を飲んでいた。
「しかし、これからどのルートで魔王領まで行こうか?」
「どのルートとはなんニャア?中立魔法国まで行って。北上するだけじゃニャイのか?」
「いや、そのルートで行くと。、間違いなく。マーリン先生に居場所がバレるだろう」
「ンニャア?バレたら不味い事でもあるのかニャア?!」
「‥‥‥‥いや、特に何もない」
「最初の沈黙は何なのニャア?まぁ、セツニャがそのルートが嫌ならわっちは別のルートでも良いけどニャア」
「おぉ、そうか。それは助かる」
「ふむ、では、魔法中央国を通らないとなると残るルートは‥‥‥‥」
「「始まりの大森林」を北上してエルフ達が統治する国『セルビア』を通り。そこから西のスパイング山脈を通るルートが良いんじゃないか?」
話を聞いていたガルドさんが、そう言ってきた。
「エルフの統治する『セルビア』をですか?」
「あぁ、『セルビア』のエルフの女王とは、うちの母ちゃん。レベッカとはちょっとした知り合いだしな」
「そうなのにゃあ?ママ?!初めてしったにゃあ」
セシリアがレベッカの方へ声をかけた。
「あぁ、なんなら私と主人の紹介文を渡すから。それを『セルビア』の女王‥‥‥セルフィーユ殿に見せれば。エルフの国でも優遇してくれるさね。ちょっと準備するから私は失礼するよ」
レベッカさんはそう言うと部屋から出ていってしまった。
「それになあ。『セルビア』に行くのには何で良いかと言うとなぁ」
「綺麗なエルフが沢山いるのですね」
セツナの馬鹿が答える。その瞬間、私は頭を軽く小突いた。
「それもあるが、魔法中央国の魔法使い連中も安易には手出しできない国なんだ『セルビア』っていう国はな」
「何でなのニャア?パパ?」
「‥‥‥‥何でお前が知らないんだ?セシリア?」
「わっちがエウロペ大陸の地理や歴史の勉強をサボってるかニャア。‥‥‥‥って、痛いニャア。痛いのニャア。パパ、ア、アイアンクロウは痛いのニャア」
ガルドさんは昨日、初めて会った時のようにセシリアをアイアンクロウで空中へと持ち上げた。
「話の続きだがな。魔法中央国の連中は、エルフの国『セルビア』と。昔、戦争をしていたんだ。」
「戦争ですか?」
「あぁ、だから戦争の名残で未だに両国は中が悪くてな。魔法中央国の魔法使いが『セルビア』に入国する時は多額の通行料を払う事になっているから魔法使い連中は、用意には『セルビア』へは入国出来ないのさ」
「なるほど、だから。西へは進まず。北上するルートなんですね。納得しました」
「それから案内役には、引き続きセシリアを同行させると良い。エルフの王族の1人とセシリアは婚姻関係にあるからな。セシリアを連れていけばあっちでももてなしてくれるだろう」
「分かりました。こき使います」
セツナはそれが当たり前だと言わんばかりにハッキリと答えた。
それから旅路について色々と話し合い。気づけば夕方になっていた。
「おっと、気づけばもうこんな時間か、2人共。今日は下に降りて、里の者達と宴会だ。準備しておくから。頃合いになったらきてくれ」
ガルドさんはそう言うと自宅の円窓からセシリアをアイアンクロウで掴んだ状態で。外へと飛び出してしまった。
「猫族って!凄いのう」
「まぁ、勇者パーティーメンバーに選ばれる位の奴がいるしな。身体能力は『始まりの大森林』でも1、2位を争うこと間違い無いだろう。夜が楽しみだな」
セツナらそう言うと下へ降りる為のリフトに乗って。私と共に安全に下へと降りたった。
②遭遇
夜までの間暇になった私は、ガルドさんから逃げ出して来た。セシリアに連れられ猫族の里『キャッツアイ』の少し離れた場所で『始まりの大森林』にしか分布しない薬草を取りに来た。
「ンニャア!ンニャア!メイエス~!ここにもあったのニャア~!ブチノメス草~!」
「おぉ、まことか~!今行くのだ~!」
セツナはというと『始まりの大森林』で手に入れたレアな素材で新しい魔道具を作るとか言って、『キャッツアイ』に残った。
「ウニャア~!相変わらずの魔道具馬鹿だニャ~!セツニャさんは。こんな可愛い従者をほっぽいて魔道具作りに夢中とはニャア~!」
セシリアはそう言うと私に抱きついてきた。
「まぁ、しょうがなかろう。魔道具製作者という奴らはそんなのばかりじゃからな。珍しい素材が手に入れば新しいものを作りたくて仕方なくなるんじゃろう」
「そんな。もんかニャア~?」
その瞬間である。
「風魔法『鎌鼬乱舞』」
「避けろ!セシリア!!」
「ンニャア?何ニャア?!」
シュン、シュン、シュン、シュンと無数の風の刃が私とセシリアを襲ったのだった。
「‥‥‥‥おい、貴様。いきなり何の真似だ」
「嘘?全部、避けられちゃった~!結構、自信あった風魔法なのに」
「おい、質問にちゃんと答えろ。貴様は何者だ?」
「だから、言ったろう。ラニー!もう少し様子を見ようって!」
「でも、シーア君。そう言ってもう、2日目だよ。私が昔から我慢強く無いの知ってるでしょう?」
「だからって、カミナリ先輩の従者とその元仲間に攻撃するのは不味いだろう。後、後、大問題になりかねないよ」
「うぅぅ~ごめんなさい」
「ううん!分かってくれたならいいんだ」
シーア?とかいう男はラニーという女にそう言うと。女の頭を優しくポンポンし始めた。
「おい、貴様ら!いい加減、こっちの質問に答えろ!返答次第ではただではおかぬぞ。いきなり攻撃してきよって、いったい何を考えておる?」
「ンニャア~!いたたた、ニャア。お尻をぶつけたニャア」
セシリアがお尻を擦りながら起き上がった。良かった。魔法攻撃は当たっていないようだ。
「いったい何を考えているですか?そうですね。貴方達を人質にして。カミナリ先輩には魔法中央国『キャスパーリーク』へ来てもらおうと思います」
「何?中央魔法国だと?それに今、カミナリ先輩と言ったか?!」
「はい、言いましたよ。カミナリ先輩は昔、魔術院で学生だったんです。在籍中はカミナリシリーズというと独自のブランドを立ち上げて。数々の新しい魔道具をお作りになられました」
「それが今の状況と何の関係があるのにゃあ?」
「ありますよ。マーリン理事長‥‥‥いいえ、魔術院の生徒は皆。カミナリ先輩がもう一度我が魔術院に来ることを望んでいます。そう、あの独創的な魔道具の数々と極め細やかな装飾を誰もが学びたいと思っているのです」
「そうニャのか?これにそんな、価値があるのかニャア?」
セシリアは昨日、爆睡をこいて寝ていたセツナからパクったであろう魔道具をシーアとやらの前に見せた。
「そっその綺麗な装飾に独特なデザイン‥‥‥間違いない!カミナリ先輩の物だ。では、マーリン理事長が言っていたことは本当だったのか」
「どうするのシーア君?やっちゃう?!」
「いや、まだ。とりあえず、まずはカミナリ先輩。本人に会わないと。それにこの2人にラニーがいきなり攻撃したことを先ずは謝ろう」
「それって?また時間かかるんでしょう?」
「あ、ああ。だけど、これでカミナリ先輩と会うことが。」
「カミナリ先輩、カミナリ先輩って!マーリン先生からカミナリ先輩を連れてくるように言われた時からそればっかりだね?正直、ちょっとうざいよ!!」
「な、そんな言い方無いだろう?!それに先ずはあの人達にちゃんと謝るんだ」
「‥‥‥‥もう、いいや。とりあえず、あの2人を倒して。人達にすればカミナリ先輩も言うこと聞いてくれるんでしょう?」
「いや、君!!そうじゃなくて!!」
ら
最初の方はシーアとかいう男がヤバい奴かと思ったが、逆かラニーという女の方が頭のネジか飛んでいるようたな。
「ウニャアァ!どうするニャア?メイエス?セツニャを呼ぶかニャア?」
「いや、そんな隙をくれる者達でもなさそうだぞ。セシリア!こ奴ら、先程の魔法もなかなかのレベルだった。仮に背中を見せたら。私達の方が大ケガをするじゃろう」
「ニャア~!じゃあどうするのニャア?」
「セシリアはシーアとか言う男を見ていてくれ。私はあのイカれたラニーとか言う女をやる」
「ウニャア~!わかったニャア」
「もしも~し!誰がイカれた女なのかな?」
「貴様だ。鎌鼬女よ」
「つっ!!誰が鎌鼬女だと?!たかが、カミナリ先輩の腰つきの癖に」
「なんとでも、言うがいい。それよりもさっさとかかって来るが良い」
「あっそう!後悔しても知らないんだから~!!風魔法『風丮』」
「ふん、また、風魔法か!芸がないのう。緑魔法『花風・周縁』」
私がそう唱えると私の掌の回りから花びらが舞い。ラニーの『風丮』を受け止めた。
③魔王様 対 魔術院生ラニー ①本性
「緑魔法?!あなた、珍しい魔法を使うのね~!かなりレアな魔法属性だし。使っている人なんて見るのあなたが初めて」
そう言ってラニーとやらは相殺されたお互いの魔法をまじまじと観察している。
「貴様は、単純な風魔法を使うのだな。芸がないのう」
私は少しラニーとやらの本性が気になり。挑発してみることにした。
「‥‥‥‥ねぇ、あなた、‥‥もういいや、猫かぶりも。どうせ、森の中だしね。あんたさぁ、さっきから何なの?ねぇ!!いちいち、煽りやがって!!ムカつくんだよ。風魔法でバラバラにしてやるわ。風魔法「鎌鼬業・風」」
本性を晒すのが少し早すぎるのではないか?
普通、もう少しピンチになったら晒すのがお約束じゃろうに。
「また、懲りずに風魔法か本当に芸が無い。(だか、なんじゃ?あの風魔法の威力は普通の風魔法よりも数段威力が高いではないか。どうなっておる)」
「ほら、ほら。避けないと細切れになるよ!」
「く、言われなくとも分かっとるわ!(魔道具・発動『身体向上』)」
以前、セツナから渡された。身体向上の効果がある。魔道具を発動し。魔道具内に循環している魔力に私、自身の魔力を上乗せし。自身の身体能力を高め。奴の攻撃を躱していく。
(く、威力もそうだが、手数も多い。最初はただ、性格的な問題が短期で。攻撃を仕掛けてきたと思うたが。そうではない、私やセシリアに勝てる自身があったからこそ仕掛けてきたのか)
「ニャ、ニャンカ!押されてにゃいかニャ?!メイエスの奴!だ、大丈夫ニャのか?」
「‥‥‥‥あの方、メイエスと言うのですか?拳王姫・セシリア様」
「ンニャア?オニャエ。わっちのこと知ってるニャ?」
「知らない方を見つける方が難しいと思いますが(汗)。かの魔王を退け。このエウロペ大陸に平和をもたらした。カミナリ先輩。勇者の仲間なら誰でも知ってるものですよ」
「そうニャのか?!まぁ、わっちの事を誰がどう知ろうが興味にゃ行けどニャア。それよりオニャエら『始まりの大森林』にはセツニャに会いに来たとか言ってたけどどういう事だニャア?」
「‥‥‥‥ですから。それをご説明しようとしたかったのですが、うちのラニーが暴走してあなたのお連れと、ほら!」
「ンニャア!メイエスも案外、血の気が多くてビックリしたニャア~!オニャエ!あのイカれた女の相方ならさっさと止めろニャア」
「そうしたいのはヤマヤマなんですが、ラニーは、馬鹿にされると直ぐに切れる癖がありまして。セシリア殿のお連れのメイエスさんが最初の方でラニーに挑発したせいでもう、止めようがありません」
「‥‥‥‥困ったニャア。どうするかニャア」
「おら、おら!避けてるだけじゃ私に近づけないよ。金髪メイド!その可愛い顔に風穴開けてあげるわ」
そう言ってあの馬鹿女は更に攻撃の手数を増やした。
(武神鎧を出すか?‥‥‥いや、まだそれ程の相手ではないか)
「ねぇ、何?余裕ぶっこいてるのよ!ふんっ!!」
ラニー自身が持っていた先端に赤い魔石が埋め込まれていた杖で左腹部を叩かれた。
「がっは!な、に?!いつの間に間合いを!!くっ!『身体向上』」
私は急いで魔道具を発動させ。ラニーとの距離を取る。
「くっ、油断した」
「今度はその綺麗な顔を殴ってあげるわ」
(なぜじゃ?あやつは一瞬にして私の間合いに入って来た。あやつはどう見ても遠距離から強力な風魔法で戦う遠距型の魔法使いじゃろう?!)
「なに?静かになっているのよ!最初の威勢はどこに行ったのかしら。金髪メイドさん」
そしてラニーはもう一度。遠距離からの風魔法を私に向けてきた。
「芸が無いのう。単純と言うかなんと言うか。‥‥‥私も少し本気を見せてやろう」
「はぁ、何よ!少し本気を見せるですって?!あんたさぁ、この状況分かってないでしょう?どっからどう見ても追い込まれてるのはあんたじゃない?!」
「中央魔法国の魔法使いというのは、皆、品がなく、貴様の様なお喋りばかりなのか?少しはセシリアの様な可愛げも持った方が良いぞ。お主、ぶりっこで周りに敵ばかりのタイプじゃろう?」
「‥‥‥‥、本当にムカつくはあんた。初対面の癖にいちいち。私の心を苛立たせる。‥‥‥たく、マーリン理事長からの以来じゃなかったら、こんな『始まりの大森林』の森まで来ないってのに。皆、カミナリ先輩、カミナリ先輩ってあの人はもういなくなったんでしょう?!たく、やってらんないわよ」
「‥‥‥‥すまぬな」
「なに?!いきなり」
「いや、今、思えばお主達の話も真剣に聞くべきじゃったなと思っただけじゃ。お主達にも、お主達の事情がちゃんとあるのだろう?だから、焦って私達にも攻撃を仕掛けて来て人質にしようとも考えたのじゃな。‥‥‥今更ではあるが、お主の話を聞かせてくれぬか?」
「たく、何なのよ。いきなりもう遅いわよ。私、一度怒ると。その怒らせた相手を倒すまで怒りが収まらない質だから。私の話が聞きたいのなら。私に勝手から聞き出しなさい」
「‥‥‥そうか、では、そうさせてもらう。緑魔法『召喚術・ヒポグリフ』」
私が呪文を唱えると魔方陣が現れ。その中から私の使い魔のうちの1体を呼んだ。
「お久しぶりです。ユナ様。本日はどのようなご用件で?」
「目の前の女をぶちのめす手伝え。ラベルよ」
「魔王様の仰せのままに。」
『幻獣・ヒポグリフ(ラベル)』
④魔王様 対 魔術院生ラニー ②「ラニーちゃんのマッチ○」
私が、緑魔法の召喚術でヒポグリフを召喚したことを驚いている。シーアというものがセシリアに話しかけた。
「セシリア殿‥‥‥いえ、拳王姫様。あの方はいったいどの様な方なのですか?」
「ナンニャ?いきなり、改まって?‥‥‥まぁ、いいニャア。あの子はセツニャの従者のメイエスにニャア。セツニャに久しぶりに会ったら一緒に居たのにゃあ。それがどうかしたニャア?」
「どうかしたではありません。各属性魔法でも、使えるもが余りいない。召喚術を使ったのです。これが驚かずにはいられません」
「そ、そうニャのか?わっちにはいまいちわからにゃいがニャア」
「文献でも余り資料がないので、仕方がありません。僕の知る中でも、召喚術を使える方はマーリン理事長位です」
「ニャア。ニャンニャラ、メイエスは結構凄い。魔法使いってことにゃんだニャア」
「えぇ、間違いないです」
‥‥‥‥
「ラベルよ!いきなり呼び出してすまぬ」
「いえ、魔王様!このラベル。魔王様がお呼びとあらば、いつでも駆けつけますゆえ」
「うむ、感謝する。では、早速だが、目の前の魔法使い女を倒す。まずは私を乗せて上空へ飛んでくれ。上級者魔法を撃つ。その時間を稼いでくれ」
「畏まりました。魔王様」
私はそう言うと。私の使い魔の一体である。ヒポグリフのラベルへと股がり。上空へと飛んでいった。
「あっこら、空の上へ逃げるなんで卑怯じゃない!!それに何よ?!その使い魔?!」
「ふん、これも実力のうちの1つじゃ!悔しかったらお主も使い魔の一体でも出してみよ。出せるものならな」
「きぃぃ!ムカつくわねぇぇ!‥‥‥‥まぁ、いいや。上に逃げたのなら、逃げたたらでやり要はいくらでもあるのよ」
そう言ってラニーは詠唱を開始した。
「風さん、風さん、手伝って私の杖をあげるから。私の杖を針にして。私の言うこと聞いてよね」
ラニーが詠唱をいい終えると。先ほどまでラニーが持っていた。杖が鋭利な針状に変形し。杖の周りには風魔法が飛び交っている。
「名付けて『ラニーちゃんのマッチ○』。これでその使い魔もろとも穴だらけにしてあげるわ。じゃあな、従者あぁぁぁ!!」
ラニーがそう言うと風魔法を受けた針状の杖が、ラベルへと向かってきた。
「‥‥‥‥あの杖の相手はお前に任せるぞ。私は準備に入る」
「はっ!仰せのままに。『翼両斬羽』」
私がラベルに指示を出すと。ラベルは向かってくる針状の杖にたいして翼から真空の刃を飛ばした。
「はっ!そんなので私の『ラニーちゃんのマッチ○』が落とせるわけないでしょう。馬鹿な使い魔ね。ソレソレ、どんどん行くわよ。金髪メイド!!」
ラニーはそう言うと針状の杖の速度を徐々に上げていった。
「‥‥‥‥、魔王様、あの者の風魔法。なかなか見所がありますな」
「じゃろう?!あれで性格的な問題が無ければ。もっと良い風魔法の使い手になれるじゃろうに勿体無いんじゃがな」
「聞こえてるわよ!!金髪メイド!!何が性格的な問題が無ければよ!!喰らいなさい!!風魔法『風丮針』」
ラニーがそう唱えると。『風丮針』とやらが高速に回転し始め。、ラベルへと襲いかかる。
「魔王様。あの『風丮針』とやら喰らえば。私でも‥‥‥‥」
「安心せよ!ラベル。私の準備も整った。いくぞ!! 緑魔法『森羅・呼無』」
「今さら何をやろうとも遅いわ‥‥‥‥!?!かは?!(何これ?息が出来ない?)」
「‥‥‥‥貴様の空間一体だけ、酸素を無くし真空の状態にした。時期に貴様の意識も遠退くじゃろう。‥‥‥最早、こちらの声も聞こえぬか?!」
「がは、(くそ、意識がも、持たない。こ、こんな事でやられるなんて?!く、屈辱よ!!)か、ぎぁあ‥‥‥‥」
「とか思っとるだろうが、仕掛けて来たのはそちらからじゃ!意識が失った後はセツナにくれてやるから。覚悟しておけ。って、もう聞こえとらんか」
「ニャア!メイエスの勝ちなのニャア~!良かったニャア!」
「あ、あ!!ラニー!!しっかりしろ!!」
シーアがラニーに向かって走り出した。
「ンニャア!オニャエまだ動くニャヨ!!って、ウニャア!!」
「申し訳ない。拳王姫様。最初に仕掛けたのは僕達なのに。ですが、ラニーはあれでも僕の大切なパートナーです。目の前でパートナーが倒れていたら、心配して直ぐに駆け付けにいくのは当たり前ですよね?」
「‥‥‥‥。まぁ、そうニャが。少しは落ち着くニャア。メイエスの奴は、ちゃんと手加減してるニャア。ほれ、あれを見てみるニャア。」
「え?」
そこには呼吸が荒かった、先ほどのラニーとは違い。すやすやと穏やかに寝息をたてる彼女の姿があった。
「ほ、本当だ。よ、良かった」
「ウニャア~!それよりもオニャエ~!!さっきはなかなかの殺気だったのニャア~!」
「い、いえ、先ほどは慌てていただけでして!!」
「‥‥‥‥ウニャア!!メイエスの闘いを見ていたら。わっちも闘いたくなってきたニャア~!!」
「拳王姫様」
「丁度いいニャア~!!オニャエ、あのラニーとか言う女より強いニャロウ?かかってくるニャア!もしわっちに勝てたら、昨日の夜、セツニャからパクった。この魔道具をおおにゃえにプレゼントするニャア」
セシリアがそう言った瞬間。シーアの目が輝き出した。
「ほ、本当ですか?拳王姫様。ぜ、全力で闘います」
「ウニャア~!かかってくるニャアよ~!」
⑤試しの闘い
「では、参ります。拳王姫様」
「ウニャア~!よろしくニャア!!!」
セシリアの奴。私とラニーとの闘いが終わったばかりだというのに何をやっておるのだ?
いきなり、男の方とも闘いを始めおって。
「魔王様。このラニーとか言う者は、私の拘束魔法を何重にもかけて起きました。こちらが拘束魔法を解くための魔道具ですのでお渡ししておきます」
「おぉ、さすが、ラベルじゃ。仕事が早いのう。ありがとうのう。ほれ、お主が大好きなライノス牛の干し肉じゃ。持っていくがよい」
私はそう言うと。収納魔法の魔道具を発動しラベルへと渡した。
「ラ、ライノス牛の干し肉がこんなに大量に‥‥‥あ、ありがとうございます。魔王様」
「うむ、昨日の『キャッツアイ』の祭りで大量にもらってのう。ほれ、これも持っていけ。魔法族の里の連中とお主の群れの者達にも帰ったら分けるがよい」
「はっ!ありがとうございます。魔王様、私はしばらくの間。魔王様の護衛をしたいと思いますがよろしいでしょうか?」
「ん?あぁ。良いぞ。今日の夜はまた、『キャッツアイ』でお祭りがあるらしいからのう。それに参加してから変えれば良いぞ」
「は!では、しばらく小さい状態になり。魔王様の周辺に潜んでいます」
「よろしい頼む」
私とラベルがそんなやり取りをしている間にも。セシリアとシーアの闘いが始まっていた。
「発動。カミナリシーズン一式」
シーアとやらが、そう言葉を発するとシーアが背負っている鞄から何やら魔道具が出てきて。シーアの手足に装着された。
「な?なんニャア?いったい?!あの魔道具は?」
「ご存知無いですか?これはカミナリ先輩が魔術院時代に開発した魔力増加装着ですよ。使う魔法が初級クラスでも。これを装備して打てば火魔法「焔」」
シーアは火魔法の初級術である。「焔」をセシリアに向けて放った。
「ニャア?!なんか、普通の「焔」より威力がないかニャア~!!!あぶにゃいニャア!」
「と、このように、魔法の初級クラスでも、この魔道具を使えば中級クラスにまで威力を上げることができる優れものなんです」
昔のセツナの馬鹿は何故、あんなものを魔術院に残しておくのじゃ?まったく。
「ンニャア!!当たったらやべーニャア!!‥‥‥‥こっちも最初から本気で行くにゃあ。風魔法「鉤爪・風・神気」」
セシリアがそういい終えると。セシリアの周りに風が舞い。風元素が身体に定着し。セシリアの手には鉤爪状の武器か、あれ?具現化して表れた。
「以前のセツニャの時、見たいな油断はしないいニャア!!!行くニャア!!小僧!!」
「こちらも全力で行きます。拳王姫様。火魔法「火脚」」
ラニーの方は自身の脚に火魔法を定着させ、セシリアへ突っ込んで行く。セシリアは両手に纏った風の鉤爪を前に出し。応戦しようと前に出る。
お互いの技かぶつかり合い。ドゴーーンと凄まじい音が、『始まりの大森林』に響き渡る。
「そりゃ、そりゃ、そりゃ、そりゃ、ニャア~!!!どうしたニャア?小僧!!だんだん、技の切れが無くなってきたニャアヨ!!」
「く、さすが、拳王姫セシリア、肉弾戦はエウロペ大陸でも随一か!!!火魔法「火発」」
シーアが発動した火魔法はセシリアの目の前で花火の様に弾けとんだ。
「ウニャア~!!あ、熱いニャア。し、しっぽに火が着いたニャア~」
セシリアが地面にゴロゴロと身体を擦りつけ。しっぽに着いた火を必死に消している。
「しかし、魔王さま。あの、メーアと言う少年なかなかやりますな」
「む?!どういう事じゃ?ラベル」
「あれだけの火魔法を使っているのに、周囲の木々に燃え移っておりません。先ほどのラニーとやらは、周りに気にせず。好き勝手に風魔法を放っていた事を考えれば」
「ラニーよりもメーアの方が、技量は上か?」
「‥‥‥えぇ、恐らく」
「ふむ、そう考えると。セシリアの奴もうかうかしておれんかもな。それに以前のセツナとの闘いの代償で魔力も上手く練れなくなっておるしな」
「ンニャア~!!オニャエ、見た目によらず、結構やるのニャア~!!」
「拳王姫様に認められるとは。嬉しいです」
「‥‥‥‥‥そろそろ、本気で終わらせるにゃあ。○○○技・解放『風壁・展開』」
「先ほどとは比べようのない、プレッシャー!!拳王姫様の奥義が見れるのか?!」
「行くニャア~!!シーア!!これがわっちの奥義技!!」
「受けて立ちます」
そう言ってセシリアとラニーがぶつかり合う瞬間。
「雷魔法『雷霆飛来』」
「ギ、キニャアアアァァァ~!!!!!!痺れ、死ぬニャア~!!」
「ぎ、ぎゃあああああ!!!痺れるーーーー!!!」
空からいきなり。凄まじい威力の雷が降って来た。その雷を戦闘をしていた2人がモロに喰らった。
「おーい、なんか、騒がしいから。心配になってガルドさん達。『キャッツアイ』の兵士達と来たが、大丈夫か?って、おや?!何、寝てんだ。セシリア?」
「ま、また、このパターンなのニャア!もう、電撃は嫌なのニャア。ガクッ‥‥‥‥」
「カ、カミナリ先輩?!‥‥‥ガクッ」
そんな凄まじい威力の雷を喰らった2人は意識を失ったのだった。




