夜叉VS剣聖 No.2 龍種の教示
『天空闘技場』
この闘いが始まって3時間が経過し、龍族と剣聖の闘いは拮抗していた。
「くっ!なんたる頑丈さ。これが剣神の国の剣聖の力とは‥‥‥‥『真空』!!!」
「ワハハハ!お褒めに預かり光栄だな。龍族のお嬢様よう!『地曲剣』!!!」
ダシュン!ダシュン!ダシュン!
シュイン!
「クロさーん!どうですか?あのお二人の闘いは?」
「―女神―アテナの眷属か‥‥‥あのグレイ・オルタナティブという男。夜叉の『空間魔法』を自身の剣技のみで対抗している。奴は―女神―フレイヤの眷属と言っていたのだ。―女神―アテナの眷属よ‥‥‥‥」
「なんですって?あの剣聖さんがフレイヤ様の眷属?それは‥‥‥‥なんとも偶然にしてはできすぎていますね。まさか今回もご主人様に何かやらせるつもりでしょうか?」
「我はそっちの話は興味が無い。今は夜叉と剣聖の話だ。―女神―フレイヤの眷属ということは、夜叉巫女と同じ『女神の祝福』・特殊魔法をこの闘いで一度も使ってないのだ」
「「女神の祝福」を一度ですか?‥‥‥それはなんも‥‥‥使う為の制約でも設けているとか?」
「制約か‥‥‥いや、『女神の祝福』に制約の効果など無かろう?女神の祝福は女神の権能=ギフトだ。そもそも、我々、地上の者では天界人の力を好き勝手にはいじれん」
「そうですが‥‥‥では、あのグレイ・オルタナティブさんはどうして、特殊魔法を使わないのですか?使えば夜叉巫女嬢に勝てますのに」
「あえて使わないのだろう。闘い始めた最初の一刻で夜叉の実力を計り。後は、技を受け続けている。まるで指導だな‥‥‥だが、それで良い。夜叉はまだまだ若い。今は良いのだ。この一戦でかの剣聖に最高の一撃さえ浴びせ。奴を一瞬でも越えらればな」
「‥‥‥‥それが龍種の修行方法の一部ですか?」
「そのような者だ。勝てぬ相手でも一矢報いる。それが次の闘いの糧になる。あのスパイング山脈で闘ったの時のようにな」
「神獣の類いのウチには分からないですね。それでは負ける事も含まれている。この世は勝ち続けなければ摂取され続けられるだけでは?誇り高い龍種の方々にとっては屈辱なのでは?」
「それは違うぞ。龍種も色々いる。種族によって考え方も異なる。確かに龍種というのはプライドが固いがな。それに付随して知恵もある。野生の竜達は分からないが、龍人族や妖精竜の様な者達は柔軟な考えを持っている。だから、もし、闘って負けてしまってもそこから何か得られると考える者を多くいてだな‥‥‥‥」
タマキとクロがそんな問答を繰り広げていると‥‥‥‥
シュイン!
シュイン!
突然、近くから転移の音が聞こえてきた。
「信じられない!何で立たないのよ?」
「仕方ないだろう?地球に戻ってから、いざって時になると立たなくなっちまったんだから!」
「おや?何でしょう?」
「さ、さあな‥‥‥‥」
「き、昨日はアヤネの時はどうしてたわけ?」
「昨日や朝はアヤネに幻術魔法であれを体験させてただけだ。だから、こんなに精神的に疲れた顔をしてるんじゃないか」
「‥‥‥‥後でアヤネに謝っときなさいよ!この詐欺師!!」
「さ、詐欺師?な、何で詐欺師?!」
「‥‥‥‥だから、向こうだと鞭やら変な目指し時計やらを使ってたのね‥‥‥‥こんな、美少女二人が側にずっと居るのに!!!バカッ!!!!」
ブンッ!
「お、おい!こんな、空中で暴れるな!落ちるぞ!」
「五月蝿い!不能の女ったらし!それで。その不能はいつ治るのよ?」
「不能の女ったらし?なんじゃそりゃあ‥‥‥‥多分、これはセルビアの時に受けた『夢魔の加護』だと思うから。暫くすれば解除されると思う‥‥‥‥ヒスイが呪いみたいなのもかけてくれたしな。後はアルディスに会えたらもしかしたら直ぐにでも‥‥‥‥」
「何?夢魔?ヒスイ?アルディス?また、女の子?可愛い子?アヤネにも報告するから洗いざらい吐きなさい。今日の夜、3人で話し合うわよ!朝まで!」
「朝まで?!いや、明日から荒野越えをだな!」
「なら、宝物庫の中で話し合いましょう?あそこなら時間の経過も遅い場所もあるんでしょう?」
「な、何で君がそんなことまで知ってるんだ?」
「タマキちゃんから聞いてるわよ!‥‥‥‥神成君には‥‥‥ううん!セツナには私達をこんな、身体にした責任を取って貰わなくちゃいけないんだからね」
「お、おい!何処に手を当てさせてんだ!」
「分かる?これよ!もう、私達。貴方抜きじゃ満足できないの‥‥‥‥今夜、三人で話し合うわよ。分かった?」
「わ、分かったから!少し離れろ!委員長!」
「‥‥‥‥こっちでも相変わらずですか。ご主人様」
「変なおなごばかり関わるな。主は‥‥‥‥そんな事よりもあちらの勝負がそろそろ着きそうか?」
「‥‥‥‥みたいですね‥‥‥‥どちらもとても長い闘いですね。全く」




