剣聖『グレイ・オルタナティブ』
『イヤトスの町』・サウスの酒場
「ここが異世界の町?獣の耳にあれはエルフ?それに人が武装してるじゃない?!」
「色々と驚かれておりますね。神無月殿は‥‥‥セツナ殿」
「だな、それに比べてアヤネさんは移動中に疲れきっちまって‥‥‥」
「‥‥‥エヘヘ‥‥‥セツ君‥‥‥」
彼女は俺の膝の上に頭を乗せ、幸せそうな笑みを浮かべている。
「アヤネ、そろそろ、正気に戻ってくれ。ほら、君が来たがっていたアリーナの世界だぞ。魔法の世界だぞ!」
「‥‥‥はい、セツ君。今夜も私とランデブウを楽しんで‥‥‥もう逃げられませんよ‥‥‥エヘヘ‥‥」
「‥‥逃れるきはないよ‥‥たくっ!‥もういい、寝てろ!アヤネ。幻術魔法『幻魔の誘惑』」
俺はアヤネを落ち着かせる為に幻魔の誘惑で眠らせた。
「え?私の幻術魔法‥‥‥‥を?‥‥‥コクリッ‥‥スゥスゥ‥‥」
「やっと、寝てくれたな。良かった。良かった」
、
「いや、それ、寝てくれたじゃなくて。強制的に寝かせたんじゃないの!」
委員長が俺に話しかけてきた。
「はいはい。夜叉巫女」
「了解でーす!神無月殿。さぁ、夜叉と共にあちらの席でお食事を楽しみましょうね。行きましょう。セツナ殿の最新の情報誌や魔法新聞はここに置いておきますね」
「サンキュー!夜叉巫女。助かるよ」
「ちょ、ちょっと!夜叉さん?!」
「‥‥‥これで少しは落ち着いてエウロペ大陸の情勢を知れる。どれどれッと‥‥‥『アテナ地方』魔王領は魔王と『夜霧のヒスイ』の帰還により国家はより磐石になり、夜霧のヒスイの活躍によって『死の大地』の一部を魔神側から人類側に奪還する事に成功する。だと?凄いな!あいつ!そして、代わりにガリア帝国の国力は日に日に下がる一方か」
「どうやら、ヒスイさんはウチ達が帰った後、本当に死の大地に向かったようですね。しかも、死の大地の一部を攻略されるとは‥‥‥驚きです」
委員長から解放されたタマキが俺の近くに避難して来た。
「だな、それから?‥‥‥『ユグドラシル地方』『幻獣の楽園』は軍事国家になりつつあり。新たなる幻獣の女王は厳格な法律により。『幻獣の楽園』を堅牢な国に変える‥‥‥あのゴリラ聖女。一国の女王に成り上がったのか?‥‥‥‥より一層、近寄りがたくなったな。」
「一度、挨拶にいったらどうですか?ご主人様。ご主人様はあの方にだいぶ気に入られていたでしょうに」
「やだね。それにここから、ユグドラシル地方は遠すぎるだろう。物理的にも無理だ。えーと、他の地方はと‥‥‥‥ヘスティア地方は連日のように内乱ばかり。それを教国が間に入り。西側の均衡は保たれる‥‥‥‥相変わらず。きな臭いな教国は‥‥‥‥フレイヤ地方は剣聖が『剣神の国・オッタル』より逃亡?‥‥‥現在、行方を追っているだと?相変わらず、平和な所だな。フレイヤ地方は」
「どうします?今からでもフレイヤ地方を気ままに旅されるプランに変えてみては?アヤネ嬢と神無月嬢もそちらの方が安全なのでは?」
「いや、それも考えたんだけどな。やはり、麒麟やラファエル達の治療を優先する。あいつらは俺の大切なパートナー達だ。雷光鞭は特に急がないとだし‥‥‥それにこの記事を見てくれ!タマキ!」
「はい?何ですか?‥‥‥‥‥ヘファイストス地方。『オアシス』にて鍛冶師の行方不明者が急増中?‥‥‥『殺人鬼』を名乗るものが夜な夜なオアシスの都市を徘徊し。人を殺すですか‥‥‥これは‥‥‥不味いですね。色々と」
「あぁ、ルドルフ氏とカンナも心配だからな。アヤネと委員長には、黄金の宝物庫の中に暫く待機してもらっておいて、ヘファイストス地方の安全地帯に入ったら出てきてもらう事にする」
「‥‥‥成る程、ヘファイストス地方の荒野とガザード砂漠は夜叉巫女嬢とご主人様で越えるのですね」
「あぁ、そんな感じだな‥‥‥ヘファイストス地方には‥‥‥いや、オアシスにはなるべく早く行きたいんだ。何かイヤな予感がするしな‥‥‥ん?『中央魔法国』・魔術院にかの英雄拳王セシリアが訪れ。マーリン理事長。自らが魔法の指導を行っているもようかっ!‥‥‥セシリアの奴。あの後、俺の言った通り『魔術院』に行ったのか‥‥‥セルビアを救った。英雄なら優遇されるのは分かっていたが、まさか、本当にマーリン先生が魔法の指導をしてるのか‥‥‥」
「プププ!あのアホ猫さんが魔法の学校ですか?それに魔術院とは‥‥‥無理でしょう?問題を起こして退学が関の山では?プププ」
「‥‥‥いや、そうでも無いみたいだぞ。セシリア・アインズら魔術院。入学以来、メキメキと魔法の腕を上げ。来る。ヘファイス剣闘士大会に向けて着々と準備を進めているとの事だってよ!‥‥‥あいつ、『オアシス』で開かれるヘファイス剣闘士大会に出るのか?」
俺が魔法新聞の記事の感想を述べていると。
「ぬ?‥‥‥セシリア・アインズですと?もし、そこの少年よ!」
昔の日本の和服の様な出で立ちをした。青年が俺に話しかけてきた。
「はい?‥‥‥何ですか?お兄さん」
「うむ、貴殿は今、セシリア・アインズと申したかな?」
「ん?あぁ、お兄さんもセシリアの知り合いか何かで?」
「うむ!セシリア殿は運命の人だ!」
「運命の人?なんだそれ?あんたもセシリアを追う変態か?」
「誰が変態か!拙者はグレイ・オルタナティブ。『剣神の国・オッタル』の第一継承剣のものぞ‥‥‥っと。壮大に言ってしまったがな。単なるセシリア殿。追っかけだ!だからな!頼む!少年よ!セシリア殿を拙者に会わせてくれ!」
グレイ・オルタナティブと名乗る。青年は俺に頭を下げて頼んできた。なんだ、変態ではなく、礼儀の正しい変態だったか‥‥‥
「ご主人様!ご主人様!この方。此方の記事の!!」
「ん?此方の記事?‥‥‥剣聖‥‥グレイ・オルタナティブが行方不明中‥‥‥つうか?あんたが?グレイ・オルタナティブ?!」
「ん?そうだな!拙者がグレイだ!そうか、新聞の記事になってしまっていたか。これは面白い!ワハハハ!」
グレイ・オルタナティブはそう言うとお声で笑い始めた。
「ご主人様!ご主人様!この方を今回の旅に連れていきましょう!護衛として!」
「護衛?何で?俺は気ままな放浪の旅をだな‥‥‥」
「それはもう半分、諦めた方が宜しいかと。魔法新聞を読んで分かりましたが、今回の旅も何やら怪しい雰囲気が漂って来ました。今回はエスフィール嬢もヒスイさんもいないんですよ!分かってますか?ご主人様!」
タマキは俺の胸ぐらを掴んで騒ぎまくる。
「わ、分かった!分かった!交渉して見るからにちょっと待ってろ!グレイさん」
「うむ!なんだ。少年よ!」
「俺の名前はカミナリ・セツナと言います」
「おぉ、ではカミナリ殿だな!宜しく頼むぞ!ワハハハ」
なんとも豪快で愉快な人だな。この剣聖は。
「あの、セシリアの事についてなんですが、一つ提案がありまして‥‥‥」
「うむ!なんだろうか?カミナリ殿。拙者とセシリア殿を結婚させてくれるのかな?」
「ちげーよ!段階が飛び越えすぎだろう。おっさん‥‥‥俺達はこの後、ヘファイストス地方にある『オアシス』に向かうんだけど、セシリアもそのうちオアシスに来るだろうからそこで一緒にセシリアに会わないか?要は俺達の道中の護衛をしてくれないか?報酬はこの位出すし‥‥‥ちょっと待っててくれ」
俺は袋の中からガリア金貨を取り出す。
ジャラジャラ
「なんと!ガリア金貨がこんなに?‥‥‥拙者の小遣い何年分だ?‥‥‥それにセシリア殿に会わせてくれるとな?それはなんとも魅力的な」
「セツナ殿。惠殿もようやく落ち着かれましたよ?‥‥‥何方ですか?その剣士は?」
「ん?夜叉巫女か?お疲れ。いや、今回の旅の護衛をしてもらおうと交渉中の剣聖・グレイ・オルタナティブさんだ」
「ぬ?何だ!お主は?少女よ。今はカミナリ殿との交渉中だ!立ち去れ、立ち去れ!」
「少女?この夜叉巫女が?こんな、ナイスバディの乙女に対してなんたる屈辱。表に出なさい!はぐれ剣聖!尋常に勝負!」
「なんだと?!はぐれ剣聖?!‥‥‥ワハハハ!面白い!良いだろう。カミナリ殿にも拙者の力量を見ていただく良い機会だ。良いかな?カミナリ殿」
「ん?あぁ、グレイさんと夜叉巫女が良いならいいが‥‥‥」
「では、決まりです!‥‥‥空間魔法『天空』‥‥‥着いてきなさい。はぐれ剣聖」
「ほう!‥‥‥広大な結界魔法か?‥‥‥成る程、普通の少女では無いようだな。良かろうよ!行ってやろう!夜叉巫女とやら!尋常に勝負!ワハハハ」
イヤトスの町の空に突如として闘技場が出現し、1人の龍族と1人の剣聖が降り立ったのだった。




