降り立つは新天地
ガゴンッ!ギイィィ!
「‥‥‥着いたか?‥‥‥気持ちを切り替えないとな‥‥‥‥前、来た時よりも魔力総量が多いからか‥‥‥転移門の精度が上がってたな。タマキ」
「はい‥‥‥ご主人様‥‥‥ぐるぢい‥‥‥離して下さい‥‥‥神無月嬢‥‥」
「だ、駄目よ!初めての異世界なんだから!私には貴方が‥‥‥モフモフが居ないと不安になるわ」
哀れなタマキは委員長に力強く拘束それ、身動きが取れなくなっている。
「わ、私の拘束もそろそろ解いてください。だんだん恥ずかしくなってきました」
アヤネは顔を赤くしながら俺の手を振り払う。
「あ、あぁ、済まない。アヤネ‥‥‥っと!ここは何処だ?‥‥‥出てきてくれ!夜叉巫女!」
シュイン!
「はっ!セツナ殿。夜叉はここに」
俺が夜叉巫女の名を呼ぶと黄金の宝物庫から出てきてくれた。
「夜叉、ここがどの地方か分かるか?」
「恐らくですが‥‥‥ヘファイストス地方とフレイヤ地方の境い目辺りかと‥‥‥‥」
「境い目か‥‥‥‥夜叉、『クロ』に頼んで周辺の状況を見てきてもらうのは可能か?」
「それは大丈夫ですが。どうします?やはり、フレイヤ地方から向かわれますか?今回は異界のお二方もおりますし。フレイヤ地方なら気候を温暖で安全な国も多いですし‥‥‥‥」
「いや、ヘファイストス地方に先ず行こうと思ってる」
「ヘファイストス地方ですか?ですが地球のお二方をお連れしての『ストス荒野』と『ガザード砂漠』越えは厳しいと思われますが‥‥‥まぁ、それを超えてしまえば。オアシスや鍛冶屋の里にたどり着けば安全圏に入りますが」
「あぁ、そうだな。だから、その安全圏に入るまでの間。あの二人には黄金の宝物庫内で待機してもらおう。最初の旅は俺と夜叉巫女、クロとでの荒野と砂漠越えだな」
「そうですか‥‥‥本来でしたら。フレイヤ地方の南端にあるアトラス港を経由して海路でオアシスまで行けますのに‥‥‥やはり、お使いの武器達の修理を急がれますか?」
「‥‥‥まぁな、麒麟とラファエルは特にな。ラファエルなんて我慢にしているがそろそろ危ない所まで来てるし。『雷光鞭』はルドルフ氏にしか復元できないからな」
「そうですか‥‥‥‥分かりました。クロ!出てきて下さい!」
バサッ!
「我はここに‥‥‥ナルカミ殿。話しは聴いていた。今回はヘファイストス地方を目指すのだな?あの少女二人を連れて‥‥」
「あぁ、そうだ。それに理由もある」
「理由ですか?それは如何様な?」
フレイヤ地方はアテナ地方の南部に位置している。そしてガリア帝国にも近い。以前、エスフィールと地球に帰るか前にガリア帝国の事を魔王領の人達に聞いたが、余り良い噂を聞かなかったからな」
「悪い噂か‥‥‥確か、ガリアの姫が行方不明になったとかだな?」
「そうだ。だから、ガリア帝国に近いフレイヤ地方へはまだ行かない。ヘファイストス地方で時を待ってから行こうとは思っている」
そんな、俺達のやり取りを少女二人は少し離れた場所から観察していた。
「ケ、惠!あ、あれは誰ですか?先ほどまで、私達にセクハラの限りを尽くしていた変態さんとは思えない方が目の前にいますわ」
「そうね‥‥‥‥学校の中じゃあやる気のない彼が別人みたいね‥‥‥‥そして、ここが魔法の世界‥‥‥『焔』」
ポワン!
「凄い、外でもちゃんと魔法が使えるわよ!アヤネ。見て見て!」
「本当ですか?‥‥‥ではでは、幻術魔法『魅惑』」
「なっ?!アヤネ!貴女、いきなりな‥‥に‥‥を?」トロ~ン
私は惠に『魅惑』の魔法をかけてみました。
「本当ですね。ちゃんと幻術魔法も使えます。フフフ、惠‥‥‥先ほどの体育倉庫ではセツ君と良い雰囲気でしたわね‥‥‥あら?本当に履いて無いのですね?イヤらしい子」
そう言って、私は惠の服をたくしあげました。
「そ、そんなの貴女もでしょう~!や、止めなシャイ~!アヤネ!!」
「?!セツナ殿!アヤネ殿がまた、惠殿に悪戯をしております!」
「何?此方でもかよ!じゃあ、クロ!宜しく頼む。報酬は‥‥‥ストスサーペントの肉で良いか?」
「おぉ、なんという、高級肉を‥‥‥あぁ、それで良い!では、周辺を探索して来よう!明日の早朝には戻る。しばし、ここで待っていてくれ。主に夜叉よ!」
バサッ!バサッ!
「おう!」
「気をつけて下さいね~!クロ!」
「‥‥‥‥さてと」
「フフフ、下がこんな大変な事になっているなんて。本当に変態ですね。惠は!」
「う、うるしゃい!あ、貴女にだけは言われたくにゃい‥‥‥」
「あら?まだ、そんな事を言えるなんて。これは少しお仕置きが‥‥」
「しないで良い!ほら、外は危険だ!あっちから持ってきた家の中に入るぞ。アヤネ」
「なっ?!セツ君。いつの間に?」
「惠殿は夜叉が護衛致しますね。さぁ、一緒に寝ましょうね」
「うぅぅ、巫女ちゃん~」
「はいはい。もう大丈夫ですよ。怖かったですね~、いきなり、幻術魔法をかけられて。よしよし」
夜叉は委員長をあやしながら。家の中へと入っていた。
「‥‥‥‥このドSが!また、委員長に悪戯してたのか?」
「だ、誰がドSですか!誰が!それに悪戯ではありません!これは調教を行っていただけで‥‥‥」
「尚、悪いわ!ほら俺達も今日は寝るぞ」
「寝る?あの、それはいったい?」
私は訝しげに聞いてみると。
「ここはもう異世界だ。さっき、夜叉巫女と話し合った結果。俺と夜叉で君達を日替わり事に護衛する事にした。だから、今日の担当は俺だ。アヤネ」
「セ、セツ君が私の担当ですか?」
「あぁ、さぁ、家の後中に入ろう」
セツ君はそう言って私をお姫様抱っこしました。わ、私!これからセツ君と寝ますわ!お母様!!!
ギイィィ!ガチャン!
『神成邸・疑似新居』
「なっ?!こ、これは?!」
「どうだ、アヤネ。これなら安全だろう?ベッドは別々。俺の結界魔法でお互いの寝床には侵入できない。完璧だな。じゃあ、おやすみー」
「じゃあ、ありませんわ!私の期待を返して下さい!このお馬鹿さん!」
「うぉ?!何、いきなり切れてんだ?って!止めろ!来るな!アヤネ!!」
「黙りなさい!さっきの変な空間では私のお腹をプニプニしたくせに‥‥‥責任を取りなさい!責任を!ふんっ!」
私はセツ君に襲いかかります。
「ちょ、お前!なんでこっち来てんだ?!‥‥って止めろ!服を脱がすな!って!人の話を聞けーーー!!」
「‥‥‥こ、これがセツ君の?‥‥‥フフフ‥‥‥頂きますね‥‥‥では‥‥‥フフフ」
「な、何をしている?アヤネ!そんな事!止めろーー!」
その日の夜。セツ君の叫び声が周辺に響き渡しました。
‥‥‥‥‥次の日の朝
チュンチュンチュンチュン
「‥‥‥‥エヘヘ‥‥‥やりましたわ‥‥‥エヘヘ‥‥」
私はセツ君の身体に抱きつきながら。そんな一人言を言っておりました。
「‥‥‥異世界に来て、いきなりこれなんて‥‥‥どうなってんだ‥‥‥俺の‥‥‥あれが‥‥‥ガクリ‥‥‥」
セツ君はそう言うと、疲れてしまったのか眠りに落ちてしまいました。




