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契約と会話

①契約と会話



魔王討伐の旅・道中


(はははっ、また俺の勝ちだな。セシリア、もう諦めて一緒に雑用をやってくれないか?)


(嫌ニャア!負けてないニャ!勝負はこれからニャア!!そして、雑用は使用人のやることニャア)


(あっこら、逃げるな!セシリア)


負けて無いのニャ。

ムカつくのニャ。

雑用はやりたく無いのニャ。


セツニャだけには絶対に勝つのニャア!!!


「はっ?!ここはどこニャア?痛うぅ、全身が筋肉みたいになってるニャ!!それに上手く魔力が練れないニャ?!どうしてニャン?」


「おい!まだ、動くでない治療中じゃ」


「ニャア?オニャあは、誰ニャ?、もしかしてセツニャの女房かニャア?」


「セ、セツナのにょ、女房?いや、私は」


セシリアが、エスフィールに向かってそう尋ねるとエスフィールの顔がみるみる赤くなる。


「そうだ、その通りだ!セシリア!」


俺がそう言い放つと俺の左脇腹にエスフィールが手刀を喰らわせてきた。


「うおぉ!痛てぇぇぇ。何をする」


エスフィールの顔が今までで一番赤くなっている。


「ま、毎度、毎度。人をおちょくりおって!!馬鹿者が!この猫娘にちゃんと説明してやれ」


「わ、分かったから。闇魔法を撃とうとするのを止めてくれ」


「…………、ふん。全く!」


そんな、やり取りを終え、地べたに倒れているセシリアへと向き直る。


「改めて、久しぶりだな。セシリア?今回もお前の負けだ。残念だったな」


「まっ負けて無い!そんなことより身体が言うことを効かニャいし、魔力も上手く練れないニャア!!」


「あぁ、君が寝ている間に『契約の輪』を君の首にかけさせてもらったよ」


「『契約の輪』?………………、てっ!!オニャエ!この魔道具は誰かと主従を結ぶ時の魔道具ニャゾ」


「あぁ、これからよろしくな。ペットちゃん」


「馬鹿ニャのか?『契約の輪』は一度でも契約を結ぶと。結ばせた本人が契約を解除するまで、『契約の輪』を付けられた奴は一生涯、主従交わした奴の奴隷にニャるんニャゾ」


「あぁ、だから、君に着けさせてもらった。また、いつ襲われるかも分からないしな。それから、セシリアには今後、俺の全魔力のうちの1割を負担してもらうことになったからよろしく」


「オニャエの魔力の1割、負担?!オニャエ、自分の魔力量がどれだけあるか分かっとるニャロウ?」


「…………、全く、分からんわ」


「ウソつくニャヨ?…………、ま、まさかさっきからわっちの魔力が上手く練れにゃい原因は」


「ん?おぉ、どんどん。給油されて潤ってるぞ。助かる、助かる。」


「オ、オニャエエェェェェ!!!!ガクッ」


セシリアが物凄い大きな声で絶叫し、ショックの余り。意識を失った。


「この猫娘また意識を失ったぞ。しかし、お主も鬼じゃな。魔力の1割、負担とはいえお主の魔力量は他の者よりかなり多い。そうなると供給側の猫娘は、魔力コントロールが覚束無くなるのは明白じゃ」


「最初に殺気を出しながら仕掛けてきたのはセシリアの方だ。敵対して負けて、何もペナルティが無いのはおかしな話だろう?それにコイツにはこれくらいの足枷が丁度良いんだよ」


「まぁ、お主がさっきの闘いの勝者じゃ。私からは何も言えんからまぁ、よい。だが、さっきの雷魔法は今後、余り多用するなよ」


「ん?どうしてだ、エスフィール?」


「周りを見てみろ。森の木々がまる焦げじゃ!それにこの猫娘も。もう少し治療が遅れていたら死ぬ所じゃったぞ。だから今度、使うときは相手と場所を考え、使ってくれ。これじゃ、ただの破壊者じゃ」


エスフィールにそう言われ。俺は周りの状況を見渡した。確かにあの僅かな戦闘で木々は倒れて。岩などの岩盤にヒビが割れていた。


確かにこれは自然破壊で大変不味いな。


「エスフィール教えてくれてありがとう。今度から気をつけるよ」


俺は素直にお礼を言った。


「分かってくれればよい」


エスフィールそう言うとセシリアの方に向き直り。意識が飛んでいるセシリアの治療を再開した。


「ふう、俺も少し休むか。セシリアにやられた脇腹も回復しなくちゃな」


俺は魔法の袋から回復ポーションを取り出し。少しずつ飲み始めた。


ふと、顔を上に上げ。アリーナの空を見る。


「快晴か、転移魔法でアリーナに来て、いきなり戦闘とはな。セシリアみたいに襲って来る奴もまた現れるかもしれないな。今回のエスフィールの里帰りは思ってたより大変な旅になりそうだな」


俺は意識を失っている。セシリアの方を見た。


「セシリアが、意識を取り戻したら色々聞いてみよう。セシリアならアリーナの今の状況を少しは知っているだろうしな」


そう言いながらポーションを飲み干した。




②案内人




魔王討伐の旅の道中・回想


(セツニャ!オニャエは、どうして人族ニャのわっち達、獣人の様に力が強いのカニャ?)


(おぉ、ようやく戻って来たかセシリア。暇なら料理を手伝ってくれないか?)


(鍋が溶けたり。食材が爆発しても良いニャラ。やるけどニャア?)


(………………何もしないでくれ)


(分かったニャア)


(それで?さっきは逃げたくせになんで戻って来たんだ?一度、どっか行くと2、3日は戻って来ない君が)


(ニャから!セツニャは人族ニャのに。どうして獣人の様ニャ力が出せるのニャア?)


(……………自分でも分からん)


(ニャニィ?本当にかニャ?)


(あぁ、本当だとも)


(…………なんか、ウソ臭いニャ!本当は心当たりあるんニャろう?)


(いや、本当に分からん。ただ)


(ただ?)


(君の『神気』は他の人よりも『神気』の力が強すぎてコントロールが難しいんだろう?)


(ンニャ!そのせいで昔から力の入れ方に苦労してるニャア)


(だったら、まず、俺から力の出し方を聞き出す事に時間を使ってないで。まずは自分の『神気』のコントロールの練度を上げてみたらどうだ?そうすれば、セシリアの力も数段強くなると思うぞ)


(そ、それは本当かニャア?)


(あぁ、君なら出来るさ。もし君が、『神気』のコントロールが上手に出来るようになれば、俺より強くなれるさ)


(まじかニャ?もし、『神気』が上手く使える様ににゃったらまた闘ってくれるかニャア?)


(あぁ、必ず)



セツニャはそう言っていたが、魔王城での決戦後、セツニャの姿はどこにもなかった。


わっちはセツニャともう一度闘うためにアリーナ世界の大陸中を走り回りセツニャを探し回っていた。


そんな、旅を数ヶ月か続けたけど。どこを探しても見つからなかったので、故郷である始まりの大森林へと帰ってきたのだった。


まさか始まりの大森林へ帰って来て数日しか経っていないのに、始まりの大森林の奥地でセツニャの魔力を一瞬だけ感じ取り。気配がした場所へ行ってみると、本当にセツニャが居た時は、さすがのわっちもびっくりしたのだった。


始まりの大森林・現在


「んニャア?し、しニャった、また、寝てしみゃっていたニャア!」


「おぉ、起きたか、猫娘よ。身体の具合はどうじゃ?まだ、安静しておれよ。」


「んニャア?オニャアは、セツニャの女房の?」


この猫娘まだ寝ぼけておるのか?全く、勇者パーティーの奴等はドイツもコイツもアホなのかのう?


「女房ではない、私はまお、…………」


「まお?ニャア?」


ここで素直に正体を魔王ですと言ってしまうのもまた、めんどくさくなりそうなだと思い。セツナの方を一瞬見た。


(セシリアは騒がしいから黙っとこう)


(分かったのじゃ)


目と目でアイコンタクトを取り。私が、魔王であることを隠すことにした。


「わ、私はセツナの家に遣えるメイドじゃ。名前は…………メイエスだ。よろしく頼む」


「メイエス、メイエス、ニャア?良く見たらめちゃくちゃ可愛いニャア!オニャエ」


猫娘はそう言うと私の方へ顔を近づけ。猫特有の仕草でスリスリしてきた。

そして私は、猫娘…………改めて。セシリアの首元を優しく擦ってやった。


「ンニャアァァン!!気持ち良いニャア」


セシリアは気持ち良さそうにゴロゴロと音を鳴らしリラックスし始めた。


「ご主人様、ご主人様。今、戻りました」


「お、お帰り。周囲の様子はどうだった?」


今まで何処かへ行っておったのか。タマキの奴が戻って来た。


「特にこれといった怪しい人物や罠はありませんでした。それにアリーナに着いて直ぐ、魔力探知妨害の魔道具を結界として張ったので。魔力探知でウチ達の居場所を見つけられる事はないと思います」


「念の為、俺もさっき。そこら辺に自動索敵の魔道具トラップを仕掛けておいたんだ。魔物も狩れて素材も手に入るから一石二鳥だな」


少し離れたところでセツナとタマキは今後の事に着いて話し始めた。


「でも、これからどの様に動きましょうか?まさか着いて直ぐに戦闘になるとは思いませんでした」


「俺もそうだよ。だが、思わぬ戦利品も得られた。これから、この戦利品にこの始まりの大森林の案内をさせよう」


セツナは、私の懐でゴロゴロしているセシリアを指さし。そう告げたのだった。






③『始まりの大森林』の逃亡劇



『始まりの大森林』


太古の時代より草木が生い茂り。生命が始まる場所とも云われ伝えられている。多種多様な獣人や魔物が住む。大陸の南東部に位置する。密林地帯である。

この地方の獣人達は、女神ユグドラシルを信仰している関係か分からないが。


転移魔法でかの地『始まり大森林』に飛ばされた事が、どうにも偶然とは思えない。エスフィールが所有している7の秘宝『武神鎧』は女神ユグドラシルの眷属との事。


そのせいなのか、転移魔法で降りたった場所は『始まり大森林』だった。


その『始まり大森林』の中を今、俺達は歩いている。契約の輪で仲間にしたセシリアに道中の道案内を頼み。


森の中を進んでいる。


「セシリア!本当にこの道を進んであっているのか?」


「あってるニャ!この森はわっちの庭みたいニャものニャゾ。後、半分位歩けば。わっちの故郷『猫族の里』に着くニャ」


「セシリア、分かってるの思うが、途中で逃げようなんて事。考えないよな?」


「‥‥‥‥考えてニャいニャ」


「変な間が、あった気がしたが。まぁ、いいや」


「しかし、暑いのう!この密林地帯は、意識が飛びそうになるのう」


「今、俺達がいる。エウロペ大陸でも西国にあるガザート砂漠に次ぐ。暑い地域らしいぞ。だから、ほれ」


俺は魔法の袋から氷魔法の魔道具をエスフィールに渡した。


「これを使って涼しんでくれ」


「おぉ、助かるのじゃ。じゃが、もう少し早く出してほしかったのう。数時間歩いたから。着ているメイド服がビショビショじゃ」


エスフィールがスカートの両脇を持って抗議してきた。

すかさず。俺は魔法の袋から新しいメイド服を出して渡してあげた。


「そんなこともあろうと魔法の袋には予備で100着位ストックがあるから着替えたい時は、いつでも声をかけてくれ」


そう言い放つ俺に、エスフィールは氷のような冷たい視線を浴びせてきた。


「お主、前々から思っておったがこの際だから忠告するぞ。余り、女性に対して自分の願望をあまり押し付けるな。引かれるぞ」


エスフィールが冷静に俺の頭のおかしさについての感想を言ってくれた。


「‥‥‥‥以後、気をつけるよ」


俺は少し声のトーンを落とし黙ることにした。


「ん?そういえば、さっきから前を歩いていたセシリアの奴がおらぬが何処に行ったのじゃ?」


「なに?」


俺は慌てて周りを見渡した。だが、何処を見てもセシリアの奴が見当たらない。

その時である。頭上に生い茂る巨木の枝に立ったまま、俺達を見下ろすアホ猫がそこにいた。


「にゃあ~はっはっはっは。道案内はここまでにゃ!せいぜい、右も左も分からない。『始まりの大森林』をさ迷うのにゃあ!わっちは一足先に『猫族の里』で休ませてもらうにゃあ!去らばにゃあ」


セシリアは、そんな捨て台詞を言い放ち巨木の枝から枝へと移動して行った。


「セ、セツナ。セシリアの奴、行ってしまうぞ。セシリアの道案内がないと、この大密林からの脱出は不可能に近いぞ」


エスフィールがテンパり始めた。そんなエスフィールに俺は優しく語りかけた。


「なぁ、エスフィール。『契約の輪』をかけられた奴が主人の命令を無視して何処かへ逃げようとするとどうなると思う?」


俺はエスフィールに問いただした。


「分からぬ。どうなるのじゃ。」


「契約した主人が最も得意とする属性魔法が『契約の輪』を経由し、相手の身体全体に攻撃魔法が襲う」


ドガアォァン、バリバリ。「ギニャアアァァァ!!!」


俺が言い終わった、数秒後。数百メートル離れた場所で雷魔法の閃光とセシリアの絶叫が静かな密林に木霊した。


「‥‥‥‥そもそも『契約の輪』という魔道具があることすら知らなかったぞ。そして何故そんなアイテムをお主が所持しておるのかも気になるんじゃが」


ジーッとエスフィールに見られる。


「企業秘密だ、教えない」


「今度、何処かの街に着いたら。セツナが私に着てほしいメイド服を着てやろう」


「教会で洗礼を受けたとき隙を見て。教会の宝物庫からパックってきた。はっ!!」


エスフィールの甘い甘言に乗せられてしまい本当の事を行ってしまった。


「‥‥‥貴様、以前。大陸中の貴重なアイテムを盗んだとか言っておったが、まさか教会の宝物庫にまで手を出しておったとはな。もしそれが本当の事で、誰かの耳に入れば大陸中の奴等がお主を探し出すじゃろうな」


「いやいや、そもそも大陸中のアイテムを何処へ隠すんだ?隠し場所なんて何処にもないだろう」


すぅぅと、エスフィールがタマキの方へ指を指す。


「タマキの中に隠してあるのじゃろう?」


「‥‥‥‥セシリアを探しに行こう。行くぞタマキ!」


「はい、ご主人様」


「おい、まて!ちゃんと説明しろ」


タマキはタマキで先ほどまで居た場所に罠を仕掛け。引っ掛かった魔物の素材を整理していたようでずっと静かにしていた。

そして俺達は最後までエスフィールの質問には答えず。


まる焦げになったセシリアを見つけ。セシリアの身体に回復ポーションをぶっかけ起きるのを待った。


数十分後


「し、死ぬかと思ったニャア!」


「今度、また逃げたらその倍の雷魔法を喰らうか気をつけろよ」


「ふ、ふざけるニャア!!バカセツニャ!!」


セシリアはそう言いながら俺に向かってきたが、俺は余裕綽々と右手で指パッチンした。

するとセシリアの首元から雷魔法が発動し。またもセシリアの身体に流れた。


「ギニャアァアア!!!し、痺れるニャアァァ!!!」


「こ、こやつ、アホなのか?さっきと同じ様に電撃を浴びておるぞ。獣人とは皆こうなのか?」


「いや、セシリアが特別、頭がお花畑なだけだ。他の獣人達は、森の賢者「ドルイド」とも呼ばれる位賢い種族なんだ」


「セシリアを見ておると全くそうには見えぬが」


「だから、コイツは特別なんだよ。昔っからな」


数分後


「いや~!もう電撃は懲り懲りなのニャア。これからは素直にセツニャ様の言うことを聞くのニャ。だからこの『契約の輪』を外してほしいのニャア。(ウルウル)」


何がウルウルだ。このアホ猫わ。


「それは無理な相談だ。‥‥‥‥そうだな。条件次第では外してやらんこともない」


「条件件ニャ?!それは何なのニャア?」


「俺達の旅の最終目的地。魔王領にある。魔王様の屋敷まで一緒に来てもらいたい。それが叶えば、君との契約を解除する事も叶えよう」


「それ、本当かニャ?ウソつかないニャ?」


「あぁ、勇者。ウソつかない。、ウソきらい」


「何故、片言なのじゃ。お主、絶対。解除する気無いじゃろう?」


エスフィールが小声でツッコミを入れてきた。全く、静かにしてもらいたいものである。


そして俺達は数時間歩いては休み。たまに出くわす魔物を倒し。数時間歩いては休み。魔物を倒しを繰り返し。半日位歩いて、泥まみれになり疲れながらも。セシリアの故郷である『猫族の里』へとたどり着いた。

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