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逃しませんよ?貴女も此方側なるのです ④ あの時の私は歪んでました


私の名前は神無月 (ケイ)。聖豊中学に通い、クラスでは委員長を努めているわ。


そして、神無月家は昔から代々武家の家系で、現代になった現在は軍人や警察等の人材を世に輩出してきた名門の家系である。


そんな、私も実家にある神無月道場で幼少の頃から色々な武術を教え込まれてきた。


そして、お爺様いわく、現代では武術だけしていても飯は食って行けぬ。とのことで学術、スポーツ、美術、帝王学等のあらゆる分野を教え込まれて日々忙しい日々を送ってきたわ。


神無月家の英才教育のお陰で私が小学生に上がる頃には、同年代で私に(かな)う人は誰一人していなかった。その為か、私は他人の話を聞かず。自分が一番正しく強いと慢心していたの。あの子が現れるまでは‥‥‥‥


そして、私の慢心が終わる日が遂にやって来た。それは神無月道場にある一人の男の子が入門してきたからだ。


神成 刹那。神成財閥の分家の子で周りからは神童とか言われている。顔が女の子みたいな男の子。


(神成 刹那です。天王洲先生のご紹介で此方(こちら)の神無月道場で研さんを積むよう言われました。まだまだ、未熟者ですが宜しくお願い致します)


あぁ、なんて礼儀正しい子なんだろう。神成財閥の子だからもっとふんぞり返っている子かと思ったのに。


パチパチパチパチ


(あれが?神成財閥の分家の神童か?なんて礼儀正しいんだ)


(あぁ、それに天王洲道場から来ると言われた時はどんな奴が来るかと思ったが、まさか、あんなに小さいとはな)


(‥‥‥ちっ!猫被りが!ムカつくぜ!大人は騙せても俺達は騙されないぜ!おい!新入り!)


(はい!何でしょうか?安西さん)


(むっ!何故、俺の名前を知っている?新入り)


(はい、安西さんはとても優秀な武術家だと天王洲師範から聞き及んでいましたので。お会いする前から安西さんの事は存じ上げておりました)


(な、何?あの天王洲道場の師範がか?)


(は、はい!それから、そちらの古河さんと小早川さんも師範は高く評価していると‥‥‥‥)


(なに?)(ほ、本当か?)


(ええ、間違いありません!‥‥‥‥もし宜しければ。僕に先輩方の武術を教えてもらっても宜しいのですか?1日でも早く、僕も先輩達の様な立派な武術家に成りたいですので)


(俺達みたいに?)(立派な?)(武術家に?)


(はい!先輩方!宜しくお願いします)


(おお!良いぞ!良いぞ!なんだ!お前、話してみれば分を(わきま)えたできた野郎じゃねえか!ワハハハ)


(あっちに行こうぜ!神成!俺の神無月流を披露してやるよ)


(行こう!行こう!)


(は、はい!先輩方!)


‥‥‥‥あの神成 刹那君は馬鹿なのかしら?あの三人は神無月道場でも中堅クラスの実力しかない平凡な人達だというのに


(おーい!(ケイ)!ここにおったか!)


(お爺様?どうしたの?)


(いやー!のう、ほれ!今日はあの神成家から入門してきた子刹那君か?どうじゃ?お主の見立てでは)


(期待外れね。あんな平均以下の人達にヘコヘコしちゃって‥‥‥‥つまらない子だわ)


(‥‥‥‥そうか、お主にはそう映るのか成る程のう)


(ん?お爺様。それはどういう意味?)


(あ、あぁ、ワシからしたらあんな恐ろしい子は初めて見るのう)


(初めて見る?それはどういう‥‥‥‥)


(難癖を着けて来た安西達をものの数分の会話だけで味方につけ、更にはあ奴等の‥‥‥‥いや、神無月流の技を盗み見て覚えようとしておる。あの若さをそれをやるとは末恐ろしい怖い子じゃのう。神成の神童殿は)


(?私、お爺様が言っていることが分からないわ。何であんな、ペコペコしていると子が怖いのよ?本当に分からない)


((ケイ)には、まだ、分からぬか。そうか‥‥‥まぁ、あの子と惠は同い年。いずれ、何処(どこ)かの分野でぶつかり合うかもしれんな)


(そう!そんな、事になってもあの子は私には敵わないわよ、お爺様。だって私は神無月家の将来を背負(しょ)って立つ存在なんだから)


(‥‥‥‥‥そうか、ならば人一倍に努力して、頑張ってくれ。惠よ!応援しておるよ)


(ありがとう。お爺様!私、頑張るわ!そして、あの子と私の世代では私が一番だって事をあの子にも知らしめてあげるんだから)


(そうか、ならば今度の武術試合の時、あの子とやってみるといい!色々な勉強になるじゃろうからのう。では、ワシは家に戻るからのう。それじゃあ。修行頑張ってくれ!惠!)


お爺様はそう言うと大道場の方へと行ってしまった。


(色々な勉強?あの子でいったい何を学べというの?お爺様!)


そんな、やり取りから1ヶ月後。神無月道場の中で同い年同士での試合が組まれる事になった。


(なんだ!神成の相手は、あの神無月師範の生意気娘か)


(生意気娘?安西さん。それはどういう意味ですか?)


(俺達、道場生徒の中で一番強いからって、()かしてる小娘だよ!神成。まぁ、俺達の武術を吸収した神成ならワンチャンあるかもな)


(あぁ、神成は筋がかなり良いからな。それに人の話もちゃんと最後まで聞いてくれる)


(それに比べてあの生意気娘ときたら、俺達を見下した目で見てきたり、生意気な事言ってきたりな‥‥‥)


(ピクッ!‥‥‥‥安西さん達を見下している?ですか、それは聞き捨てならないですね)


(か、神成?どうした?いきなり、怖い顔をして?!)


スゥー!


(試合‥‥‥行ってきます。)


(お、おい!神成?!)


(あ、あいつ、俺達が生意気娘に馬鹿にされてるのに腹立てたのかな?)


(‥‥‥かもしれないな。あんな、表情、神成とつるむようになってからの1ヶ月で初めて見る顔だぜ)


(神成‥‥‥お前‥‥‥)


『道場・中央』


(作戦会議は終わったのかしら?神成君)


(‥‥‥君は安西先輩達に生意気な事を言ったりしているのか?神無月さん)


(能力が平均しかない人達に生意気な事を言って何が悪いのかしら?平均の人達とつるむ神成の神童さん)


(君、そのまま、大人に成長していったら人生詰むぞ。価値観が自分しか見ていない)


(‥‥‥何それ?説教のつもりかしら?神成君)


(説教ではないけどな‥‥‥そうだなもしこの試合で俺が君に勝ったから、安西先輩達に謝罪し。その性格を改めてくれ)


(貴方が私に勝てるの?それにもし、貴方が私に負けた時はどうするつもりかしら?)


(そうだな、俺の家の家宝『火龍刀』を君にあげるよ)


(はぁ?日本の伝説の刀『七原刀』の1つ火龍刀を貴方が私に?‥‥‥‥良いわ!その賭け乗るわ。私が勝ったら火龍刀を)


(僕が勝ったら、安西先輩達に謝罪。そして、君のその人を見下す態度を改めてもらうよ)


(ふん!良いわ!では‥‥‥‥いざ、尋常(じんじょう)に)


(勝負!!)


ダンダン!ドガーン!


(ガッ‥‥‥ハァ‥‥‥‥)バタリ‥‥‥


そして、私達は闘い。私は神成 刹那に圧倒的な強さで負けてしまった。


(ハァ‥‥‥ハァ‥‥ハァ‥何で‥‥こんなに強いの?‥‥ハァハァ)


(僕の勝ちだな。神無月 惠さん。約束通り。先輩達の謝罪と、その人を見下した性格を改めてもらうよ。それじゃあ、宜しく~)


神成君はそう言うと。安西さん達の入る方へと戻って言った。


(やったな!神成!スカッとしたぜ!)

((したぜ!したぜ!))


(ありがとうございます。先輩方)


彼に叩きのめされ、なす術なく道場の床に這いつくばる私は彼等のやり取りを見ていた。


(うぅぅ‥‥‥‥何で?私、負けたの?)


((ケイ)よ!大丈夫か?‥‥‥)


(お爺様?!‥‥‥‥私、あの子に勝てなかったの)


(あぁ、側で見ておったよ)


(彼は何であんなに強いの?)


(さぁ、ワシには分からぬ)


(それで強いのに安西さん達なんかとつるんでいるの)


(そうなのか、ワシには仲間達で研さんしあっている様にしか見えぬがな?)


(研さんしあっている?あの子と彼等が?あんなに力の差があるのに?)


(‥‥‥‥惠よ!じつはのう。神成 刹那君を神無月道場に呼んだのはお主の為だったんじゃ)


(はっ?私の為、何よ?それ‥‥‥)


(お主は神無月家に産まれ。幼少の頃から色々な事を学んだのう?)


(えぇ、そのおかげで私は他の子達よりも上に‥‥‥‥)


(その面識が間違っているとまだ分からぬのか?惠!)


(私の認識が間違っている?)


(そうじゃ!お主のその誤った認識と歪みつつあるお主の性格を正すために。天王洲道場の師範に頼んで彼に着てもらったんじゃ)


(‥‥‥‥私の認識はおかしいの?お爺様‥‥‥)


(それは彼とのやり取りと約束、彼との試合の中で闘いで答えは出せたのではないか?惠よ!)


(わ、私は‥‥‥私は‥‥‥)


泣きそうになる私。


(甘えるな!お主は試合前に賭けをし負けた。神成 刹那君に言われた通り。安西君達に今までの事をちゃんと謝罪し。歪み切る前のその性格をちゃんと正して行くのじゃぞ!惠よ!)


(私は‥‥‥‥最低でした‥‥‥‥ごめんなさい、お爺様‥‥‥うぅぅぅ)


‥‥‥‥お爺様はそう言うと道場から去っていく。

私は負けた。私は人を見下していた。私は性格が歪んでいた。最低の人間に育ちつつあった事に、神成君に負けた事によって気づかされた。


(うえぇぇぇん!!!)


そして、その日の私は、道場の中央で赤ん坊の様にずっと泣きじゃくったのだった。


数日後。


(‥‥‥今まで生意気な態度をとってしまい申し訳ありませんでした。安西先輩、西宮先輩、黒田先輩)


私は深々と頭を下げた。


(おぉ、俺達の方も色々と済まなかったな‥‥‥)


(あぁ、あの試合の後、神成に言われたよ。先輩達ももう少し真面目に稽古に精を出して下さいってな)


(ハハハ、あれを言われた時は目を丸くしたもんだ!ハハハ)


(神成君が先輩達にそんな、事を(おっしゃ)ったんですか?‥‥‥)


(まあな、なんだ!昨日、あんな試合を目の前で見せられたら自分自身の考え方も変わるってもんだしな!ワハハ)


(だなあ!だから、俺達もこれからは心を入れ換えて研さんを積んでいくぜ!神無月!)


(そうだ!そうだ!ハハハ)


(み、皆さん‥‥‥あ、あのそれで神成君は何処に?)


(ん?神成か?神成は今日で天王洲道場に戻るとかで、今は神無月師範の所にいってんだろう?)


(あぁ、今日にはここを立つって俺達に挨拶してくれたしな)


(あぁ‥‥‥全く寂しくなるよ。グスン)


(神成君が天王洲道場に戻る?‥‥‥‥ちょっと私、神無月師範の所に行ってきます)


(ん?あぁ、俺達は練習してるからよう!最後の挨拶ちゃんとしてこいよ!神無月)


(アイツはデカクなるぜ!ちゃんとキープしとけよ!未来の師範代殿)


(そうそう)


(つっ!失礼します!)


バタバタ!


道場の廊下を走る私。


(こらー!廊下は走るな!惠!)


(はい!ごめんなさい!お母様!でも今は急いでいるの!)


『神無月師範室』


(では、僕は天王洲道場へ戻りますね。神無月師範)


(おお!今回は協力ありがとうのう!神成君。どうじゃ?このまま、うちの道場に戻るというのは?)


(そう言って頂けるのは嬉しいんですがあっちの道場には待って居てくれる子も居ますので)


(ほう?もしかしてこれか?ん?)


(い、いえ、そういうのじゃないです。ハハハ‥‥)


(なんじゃ?その反応、怪しいのう!)


ガラガラ!!


(神成君!!)


(ん?惠?)


(神無月さん?何でここに?)


(安西先輩達から聞いたの!今日で天王洲道場に帰っちゃうって)


(あぁ、安西先輩達に‥‥‥‥仲直りはできたのかな?)


(‥‥‥うん!貴方のお陰で)


そうして私は彼を見つめる。


(そうか、それは良かった‥‥‥それにこの間の試合の時よりも心が穏やかだね。神無月さん)


(そ、そうかな?エヘヘ)


(‥‥‥‥あぁ‥‥‥じゃあ、もう行くよ!神無月師範。短い間でしたがお世話になりました)


(うむ!また、何時でも道場の門を潜ってくれ!神成 刹那君。今回は本当にありがとう)


(はい!‥‥‥‥神無月さんもありが‥‥‥)


(け‥‥だよ!)


(ん?神無月さん?今なんて?)


((ケイ)だよ!神成君!私の下の名前は(ケイ)!私達。二人っきりの時はそう呼ぶ事!分かった!神成!)


(ワシもいちをおるが‥‥‥‥まぁ、良いか。青春じゃし‥‥‥)


(いや、それじゃあ、君も俺の下の名前で)


(それは私が貴方に屈服した時に言ってあげるわ!神成!だから、今度、‥‥‥‥いいえ、他の分野でも貴方と勝負する時は必ず私が勝つから覚悟しておきなさい!神成!)


そして、私は右手を差し出した。


((ケイ)‥‥‥‥うん!あぁ、また、試合‥‥いいや、他の分野で勝負する時があったら宜しく頼む!(ケイ)だから。その時まで元気で!)


神成も私に右手を差し出し、私の右手を強く掴んだ。


(ええ!!また、会いましょう!待ってるから!それと私が変わる切っ掛けをくれてありがとう!)


私がそう答えると神成は優しく微笑み。神無月師範室から立ち去って行ったのだった。


あれから数年。私は彼を目標に頑張り続け。今でも耐えず研さんを積んでいる。


あの日、彼と会えて良かった。


あの日、彼との試合に負けて良かった。


そして、彼が去る最後の日、彼に私の変化を伝えられて良かった。


ああ、本当に感謝します。私を変えてくれた男の子。神成君。


だから、どんな関係の形に変化していても満足です。


だって貴方は私が目標に決めた。だって貴方は私を救ってくれた人だから。

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