天界と無闇
『天界門』
「‥‥‥‥何でこんな所に入るの?!オーディン」
「おぉ!これは、これは。アテナ様。お久しぶりですな」
「そうね!数百年ぶり位かしら?‥‥‥‥だから。そうじゃなくって!ヴァルハラに居る筈の貴方が何でこんな天界の辺境に居るのかしら?しかもそんな荷物まで抱え来て」
「むっ?これですかな?我が友に久方ぶりに会うゆえ。手土産ですぞ」
「オーディン殿。我々がいったい何をしたというのです?」「は、離してくれ。縄をほどいてくれ!」
「冥界の案内人達じゃない?何で彼等をこんな所に?」
「ええ!それがですな!アテナ様」
オーディンがこの二人を連れてきたことを説明しようとした時、天界門が開き始めた。
ガゴン!ギイイィィ!!!
「おっと!」
「来たか!我が盟友よ!!」
「‥‥‥‥ここが天界の入口か‥‥‥‥冥界とさほど変わらんな‥‥‥‥‥」
「ブレインズ!!!!待っておったぞーーー!ワハハハ!!」
「‥‥‥‥貴様は!オーディン?!何故ここに?‥‥‥‥」
オーディンは死神に近づき、死神の肩を叩き始めた。
「お前が天界に来ることをユグドラシル様から聞いてのう。ヴァルハラより飛んで来たんじゃあ!ワハハハ!お主は相変わらず。顔色悪いのう!ワハハハ!」
「‥‥‥貴様は相変わらず。五月蝿いな!‥‥‥ハハハ‥‥‥」
「そろそろ良いかしら?お二人共」
「おぉ!これは失礼をアテナ様」
「‥‥‥‥‥アテナ様‥‥‥」
「ゼロ・ブレインズ。久しぶりね」
「‥‥‥えぇ。アテナ様もお代わり無いようで‥‥安心しました‥‥‥‥」
「地上じゃあ。セツナにだいぶヤられたみたいね。どう?強かったでしょう?私の眷属は?私の元眷属としてどう感じたかしら?」
「‥‥‥‥あの少年はアテナ様の眷属だったのですか?‥‥‥成る程、それならばあの強さにも納得がいきます。それにアテナ様と同等の存在を味方に付けているとは思いませんでした‥‥‥‥」
「あの?『黒龍・八岐大蛇』の事?あれに関しては私も驚いたわよ。あんなのが黄金の宝物庫に入ってんるだもの。しかも、『列島・大陸』は今、七原龍達が狩られているって話だし。何で西側でのんきに酒何か飲んでるのかしらね?あの蛇は‥‥‥」
「‥‥‥‥それだけまだ余裕があるのでは?‥‥‥先ほどまで闘っていたから分かりましたが、あの大蛇の強さわ全くの別次元ですね。まるで七聖―女神―の天罰を目の前で見ていた時と同じプレッシャーを感じました‥‥‥‥」
「でしょうね。腐ってもそこは私やユグドラシルと同じ『始祖・神集九煌しんしゅうきゅうこう』の『アリーナ・四十九神』の一角。地上の者達では歯が立たないわね」
「‥‥‥‥そんな、存在をあの少年は従えているとは‥‥‥‥これでは私がヤられるのも納得がいきますな‥‥‥‥」
「あれでも昔はもっと強かったのよ。『世界の理』がそれを許すさなかったみたいで、セツナを若返らして。全盛期の強さを制限からね」
「‥‥‥‥『世界の理』ですか?‥‥‥それはなんとも‥‥‥‥それに先ほど闘った時よりも更に強かったとは、あの少年には驚かされてばかりです‥‥‥」
「まあね、ウフフフ」
そう言ってアテナは嬉しそうに微笑み始めた。
「コホン!お話は一段落着きましたかな?お二人共!」
先ほどまで静かだったオーディンが二人に話しかける。
「あら?ごめんなさい。オーディン、待たせちゃったわね」
「いえいえ!大丈夫ですぞ!アテナ様」
「‥‥‥‥オーディン‥‥‥久しぶりだな‥‥‥」
「ワハハハ!何を今さら畏まっておる!ブレインズ!‥‥‥長い間。冥界と奴等の監視。大義であったな!ブレインズ!!」
「‥‥‥‥あぁ、大変だったよ‥‥‥オーディン‥‥‥本当に大変だった‥‥‥」
死神はそう言うと顔を綻ばせながら。冥界や地上の今までの記憶を思い出していた。
「そんな、お主にお土産じゃ!受け取るがいいぞ!ほれ!」
「ぐへえ?!」「何で?俺達が?」
「‥‥‥ん?この者達は?‥‥‥スン、スン‥‥‥この匂いは?‥‥‥‥あぁ、成る程‥‥‥貴様らが例のエキドナを冥界に落とした者達か‥‥‥‥」
「エキドナ?!何の事だ?冥界の門番風情が何を偉そうに言ってやがる?いいから、とっとこの縄をほどけ」
「そうだ!そうだ!このガリガリ野郎が!助けて下さい。アテナ様!!!」
「エキドナ?‥‥‥‥成る程、そう言う事ね。それじゃあ。私は用事も済んだし帰るわね。ゼロ・ブレインズ!落ち着いたら私の所へ来なさい。『無闇の部屋』について聞きたい事ができたから。よろしくね~!‥‥‥少しはこっちで休みなさいよ。ゼロ!バイバイ!」
「‥‥‥‥はい!アテナ様‥‥‥‥っと!もう行ってしまったから。昔と変わらないな。人の話を全く聞かないお方だ‥‥‥‥」
「元眷属だから言える事だのう。ブレインズ」
「君が羨ましいよ!人の話をちゃんと聞いてくれる。―女神―ユグドラシル様の眷属だったんだから」
「おぉ!なんだか、懐かしいやり取りじゃな!ワハハハ!まぁ、それよりもコイツらはどうするんじゃあ?天界の神獣達を勝手な判断で冥界や奈落に落としていたとユグドラシル様聞いてのう。その中にブレインズと契約を交わした者も混ざっているから調査してほしいとお願いされたんじゃ!」
「‥‥‥‥そうか!やはり私がお仕えしていたアテナ様より。優秀だな。ユグドラシル様は‥‥‥‥‥感謝します‥‥‥」
死神はそう言うと自身の武器の大鎌を取り出す。
「なっ?何だ?それは?」
「それをどうするつもりだ?貴様!!!」
「‥‥‥‥こうするのだよ!!罪人共!神明魔法‥‥‥‥『冥界斬首・断頭』」
死神がそう唱えると。処刑台が現れ。縄に縛られている罪人達に装着されていく。
「ヒギッ?」
「く、首にギロチン?!」
「‥‥‥‥あちらの神々に可愛がられるがいい‥‥‥‥罪深き罪人共‥‥‥死刑」
「や、やめろ!!!」
「し、死にたくねえええ!!!」
嘆願する2人だが。
「‥‥‥‥執行!!!!」
ザシュン!ザシュン!
「ろろ!!スパンッ!‥‥‥‥」
「ええ!スパンッ!‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥契約は無事。完了した!エキドナよ!‥‥‥‥君の安らかな安寧を願う。ラグナログ(神々の黄昏)の我が同士よ!‥‥‥」
「‥‥‥‥あぁ、これであやつも少しばかりは浮かばれるだろう。良かったな!!『女王』よ!安らかに眠れ!!ワハハハ!!」
そうして死神は、エキドナとの約束を果たすことができたのであった。
ゴーン!ゴーン!
混沌の闇の中に一つの部屋の扉がある。
‥‥‥‥‥『無闇の部屋』
「‥‥‥‥‥今回は何人集まった?」
「はい!『代理人』様。我々も含めて4、5人かと!」
「そうか、少ないがまぁ、仕方あるまい」
「それで?緊急招集なんて、いったい何があったんだい?代理人さん」
「『淑女』か!久しぶりな。‥‥‥‥それに『月』殿も来ていたか」
「ええ。ここに」
「簡単に説明しよう。エウロペ大陸に現れた『大蛇』を連れてくる様に頼んでいた『死神』が返り討ちにあい倒されてしまったのだ」
「あの?『死神』さんが?」
「にわかには信じられませんが」
「事実だ。‥‥事実だが、ユグドラシルの手の者か分からないが、『大蛇』と『死神』の闘いの時、内側から何らかの結界を張り。こちら側からの干渉を阻んできてな」
「その結界のせいで。闘いの詳細が分からないということかしら?」
「あぁ、その通りだ。『淑女』よ」
「エキドナに続いて『死神』まで殺られてしまうとはな‥‥‥‥これから、どう動きますか?『代理人』様」
「‥‥‥‥『月』殿よ!ヘファイストス地方へと行ってくれないか?」
「ヘファイストス地方ですか?それは、構いませんが。彼処にはもう、『殺人鬼』さんが行っているのでは?」
「まぁ、そうなんだが。念には念を入れておきたい。エキドナ、死神と立て続けに倒されている。用心しておきたいのだよ」
「‥‥‥‥成る程。では、準備ができ次第直ぐに立ちます‥‥では、失礼致します」
シュン!
「あぁ、感謝する。『月』殿よ!」
「行っちゃったわね。‥‥‥しかし、ラグナログのメンバーが一気に2人も減るなんてね。ビックリだわ!」
「『代理人』様。もしや、我々の知らない何か、強力な存在が現れたのでしょうか?例えば行方不明になったエウロペ大陸の勇者や中央大陸の『カンナギ』の一族の様な?」
「分からぬ。分からぬが‥‥‥‥我々と同等の力を待ったものが現れたのは確かなのだろう。忌々(いまいま)しい事だ。全く」
『代理人』が言い終えた瞬間。
ピキッ!ピキッ!シュン!
次元が裂け。そこから一振の斬擊が入り込んで来た。
「‥‥‥‥ん?何だ?あれは?」
シュン!ズバン!!!
「くっ?!」
「?!『代理人』様?!」
「ちょっと!その腕?!」
「‥‥‥‥‥!」
次元の裂け目から現れた斬擊は『代理人』の腕を駒切れに切り刻んだ。
「‥‥‥成る程。ちょっかいをかけた報いという奴か?!‥‥‥‥七原龍の蛇めっ!ヤってくれるわ!」
『代理人』はそう言うと『無闇の部屋』にできた次元の裂け目を見つめたのだった。
捕捉です。『終焉決戦 No.11 エキドナ』の冒頭シーンの伏線を回収しました。




