大鎌の死神
初代魔王生誕の街『カマ』
「いらっしゃい!いらっしゃい!小型の鎌はどうだい?お客様!」
「『カマ』名物。スラッシュクッキーはいかが?」
「武器あるよー!武器ー!短剣、長剣、メイス、槍、盾何でもござれ!一番のオススメはこの大鎌だあぁ!」
「ソロモン山脈の鉱山で取れた『聖石』で造った鎌はいかが?今なら、なんと10万ギルだよー!」
「‥‥‥‥なんか、やたらと鎌を買うように勧められるのは、俺の気のせいだろうか?エスフィール」
「‥‥‥‥いや、気のせいではないぞ。セツナよ‥‥‥この、カマという街はのう。魔王領の初代魔王‥‥‥‥ゼロ・ブレインズ様が生まれ育った街なんじゃ」
「へー!そうなんだな」
一瞬、エスフィールが初代魔王の名前を言うのを、躊躇したのは気のせいではないだろう。
無理もない。俺達の旅の終着点。魔王城がある。オリエント・メイスまで、もう目と鼻の先まで来ている。来ているのに何もしてこないというのは、なんとも不気味で仕方がない。
「ん?産まれ育ったって事は、この街は神話~神代時代位にはもう存在してたって事か?」
「ん?そうじゃが。それがどうかしたのか?」
エスフィールは平然な顔をして答えた。
「いや、それって凄い事だぞ!昔、魔術院でエウロペ大陸の歴史を学んだが。セルビアやガリアの様な首都ならいざしらず。街レベルで一度も街の名前が変えられてないなんて驚くべき事だ!」
俺は興奮気味にエスフィールに話す。地球でも。人類の歴史が始まってから現代までに経って、名が変えずにそのままの状態で呼ばれ続ける人や物、土地、建物なんて数える位しか残ってないだろうと俺は思う。
「それだけ!俺達、魔族にとって初代魔王様って人は崇拝されているって事だ!カミナリ!」
「おっ!ヒスイ。セシリアとは上手くデートできたか?」
「ん?あぁ、『カマ』の特産品の黒水晶をプレゼントとしたら喜んでたがな!なんだか、上の空だったぞ?!カミナリ!お前、アインズさんに何か言ったか?!」
「上の空?‥‥‥‥いや、この度が終わったら、俺は地球に帰るから、俺が居なくなっても頑張ってくれとは言ったが?後は今回の旅のメンバーで旅ができて本当に楽しかったとも言ったな」
「‥‥‥‥そうか‥‥‥教えてくれてありがとよ!カミナリ!」
ヒスイは何処か納得したような顔をして俺に礼を言った。
「ヒスイ‥‥‥お主」
俺達のやり取りを見ていたエスフィールがヒスイに何か言いかけようとしたが。
「‥‥‥いや、今は言う時ではないな。旅はまだ終わっておらんしな!夜までには、まだ時間がある。二人共。もう少しだけ『カマ』の街を観光して行こうぞ!」
「おぉ!そうだな!魔王様の言うとおりだぜ!行こうぜ!カミナリ!」
二人はそう言うと『カマ』の露店屋が並ぶ市場に移動し始めた。
「お、おい!待ってくれよ。二人共!」
『カマの街』夜
‥シャキン!
‥‥シャキン!‥‥シャキン!
‥‥シャキン!‥‥シャキン!‥‥シャキン!
「時は来たか‥‥‥よもや、我が産まれ故郷の地に来るとは‥‥‥‥おもわなんだ‥‥‥」
‥‥‥シャキン!
‥‥シャキン!
‥シャキン!
『高級宿屋』・大鎌亭・庭園レストラン「スライス」
「今夜は満月かーー!星空が良く見えるな!流石が異世界。大気汚染も無しか」
「何を訳の分からん事を言っておる。ちゃんと食事に集中しろ。セツナ」
「魔王領名物。マオウハンバーガー!メチャクチャ旨いにゃあ~!モグモグ」
「ピヨピヨピヨピヨ(旨いにゃあ~)」
「この、魔牛ステーキもオススメだぜ!アインズさん!」
ヒスイはそう言うとセシリアの為にステーキを切り分け始めた。うーーん。言動は荒いが。細かい気遣いもできる男。流石は元、前魔王の側近。
そして、セシリアの方は数日前の落ち込んだ素振り成りを潜め。いつもの明るいセシリアに戻っていた。
そんな感じで各々が『カマ』の料理に舌つづみをうっていると。
‥シャキン!
‥‥シャキン!
‥‥‥シャキン!
「ん?何の音じゃ?」
最初に気づいたのはエスフィールだった。
「どうした?エスフィール?」
‥‥シャキン!
何かを研ぐ音が何処からともなく聴こえてくる。
‥‥‥‥シャキン!
「もし?」
大きな刃物を研ぐ音が鳴り止んだ瞬間。俺達の目の前に大鎌を持った、黒いローブを纏った痩身の大男が何処からともなくいきなり現れた。
「はぁ?」「誰じゃ?貴様!」「にゃあ?」「コイツは?!」
「いきなり、話しかけて済まないが‥‥‥この中で誰が『大蛇』を眷属としている?‥‥‥速やかに名乗り出て自分に渡せ‥‥‥さもなくば!‥‥‥」
シャキン!
「「「「?!!!!」」」」
ズバズバズバズバズバズバズバズバ!!!
一瞬にして俺達の目の前にある。ありとあらゆる物質が切り刻まれた。
「細切れになってもらう‥‥‥」
「‥‥‥‥‥死神か?」
俺が小さい声で聞いてみると。
「‥‥‥‥‥ご名答‥‥‥‥ラグナログ・アルカナNo.13‥‥‥『死』を司る者。以後、お見知り置きを!異世界の少年よ!」
大鎌の死神・ゼロ・ブレインズ顕現。
補足です。
エウロペ大陸の貨幣単位は全てギルで統一されています。
『カマ』の街はエウロペ大陸の中で最も、鎌の製産率が高く。鎌の最大製産地だったりします。