新しい労働力
『ラインバレル』軍部司令室
コンコンッ!
「?何方かな」
「朝早くすみません。マルクです。レイサイト将軍」
「マルクか。入りたまえ」
「はっ!失礼致します。レイサイト将軍」
某が、マルクに入室するように言うと。軍部司令室の扉が静かに開け放たれ。
マルクが入って来た。入って来たが、その後ろにはコレイストと全身を包帯で巻かれた状態のナイセスが付き従っていた。
「む?マルクだけではないのか?コレイストに‥‥‥‥ナイセスもか」
「はい。こんな、朝早くに申し訳ありません。レイサイト様」「‥‥‥‥‥すいません。将軍」
コレイストは普段通りだが、ナイセスの方は昨日のあの騒ぎのせいか、疲れきってた顔をしている。
「‥‥‥‥して?朝からなにようだ?」
「は、はい!昨日の被害の報告と。ナイセスの非礼を担い手様方に謝罪をしたいと思い。こうして参りました」
「報告と謝罪か」
「はい!」
「では、報告から聞こう。手短に話せ」
「はっ!昨日の大闘技場での被害者は1名のみです」
「1名のみ?」
「はい!私の隣でこのような状態。‥‥‥ヒスイ殿と戦闘を繰り広げた。ナイセス隊長のみです」
「ナイセスのみだと?確か、他の者はケガや骨折等をしていたと報告が昨晩あったが」
「はい!その筈だったのですが」
「だったのですが?」
「昨晩、遅くに。担い手様が突然、治療院へ来られまして。担い手様の高度な治癒魔法でナイセス隊長を除いた全ての兵士を完全治癒していただきました」
「なんと、担い手殿が‥‥‥‥‥担い手殿。貴方はまたしても、この魔王領の為に尽力してくださるのですか。おお、救いの担い手殿。感謝します」
某はそう言いながら。オリエント・メイスの方角に向かってお辞儀をしたのだ。
「レイサイト将軍。その、担い手様御一行はどちらに?」
マルクやコレイストが軍部司令室の中をキョロキョロし始めた。
「担い手殿は、太陽が明ける前の朝早くに、このラインバレルを出立された」
「はっ?早朝にですか?」
「そうだ!」
「まだ、一日しか滞在してないのにですか?」
「あぁ、某も。数日滞在したらどうかと頼んだが、お引き留めできなかった」
「‥‥‥‥あのクソガキ‥‥失礼‥‥‥ヒスイ殿
ですか?将軍」
「その通りだ。ナイセス。‥‥‥昨日はヒスイ殿にだいぶ、こっぴどくやられてようだな。騒ぎを起こしたお前は二階級降格を言い渡す‥‥‥‥そしてしばらく、療養するように」
「‥‥‥‥ええ、休ませて頂きます」
内心は不服そうだが、成る程、昨日はヒスイにこっぴどく説教でもされたのだろう。
心が折られておる。これで今後、ナイセスが精神的に成長してくれる事を祈るばかりである。
「レイサイト将軍!我々は直ぐに軍馬で担い手様方を追いかけますので。これにて失礼致します」
「‥‥‥‥いや、もう遅いだろうな。担い手殿達はもう通行管理所を超えて、オリエント・メイスの中心部へ入ってしまっているだろう。それにあそこを通るには某の通行許可申請が下りなければ。通ることも叶わぬからな」
「そ、そんな、では、我々に通行許可を下さい。レイサイト将軍」
「お願いします」
「‥‥‥ならぬ!お前達はこの『ラインバレル』の守護する義務がある。私事で動くなど笑止千万。軍人としての指名を全うするように!」
「「「はっ!失礼致しました!!!」」」
某が3人に向かって強い口調で言った。可哀想ではあるが。これ以上、担い手殿達にご迷惑をおかけるわけにはいかないのだ。
「‥‥‥‥あぁ、済まぬな」
某は3人に聞こえない小声で小さく謝った。
『魔王領内陸部』・魔森林『エンダ』
俺達はエスフィールの話を受け。通行管理所から少し進んだ魔森林。『エンダ』の森の中へ来ていた。
「えーっと!これか?‥‥‥いや、これじゃないな。‥‥‥‥うーん」
「まだ、見つかんにゃいのか?セツニャ」
「これでもない。‥‥‥魔法の袋の中は広大なんだよ。セシリア。この中の管理者である。タマキも今は袋の中の荷物整理で忙しいから。手伝いに来れないと、さっき伝達魔法で連絡が来た」
「肝心な所でいないとはにゃあ。契約者失格にゃあ」
「ピヨピヨピヨピヨ(この飯が食べかったのだ!!)モグモグモグモグ!ピヨーー!」
「セシリアよ!タマキの悪口を言っておると、多分‥‥‥‥」
「多分何にゃあ?メイエス」
「あれが来るぞ!」
「あれにゃあ?」
(‥‥‥ポチっとな!)ポチっ!
「ギニャアアア!!何にゃあ?いきなりにゃあ?!!!」
「いやー!ご主人様からご連絡を頂いてから、早急に整理作業を終わらせて。袋の中から出てきた途端にうちの悪口ですか?セシリア嬢」
「ぐにゃああ!おにゃえは腹黒狐!!!」
「タマキ?お前、中で荷物整理があるって言ってなかったか?」
「はい!ご主人様。昨日まではそうだったのですが、昨日、なんと新しい労働力を二人も得まして」
「新しい労働力?」
「はい!紹介します。出で来なさい!ウラさん、オン君」
「ウラさん?オンさん?」
タマキがそう叫ぶと魔法の袋が光だし。中から二人の男が現れた。
「ウラーー!」「オンーー!」
「?!セツナ、こやつら?」「昨日の奴等にゃあ?」
「ご紹介します。皆様。ウラさんとオンさんです」
タマキは嬉しそうに新たな。労働力を紹介し始めた。
「ウラーー!」「オンーー!」
「はい!良くできました。ウラさん、オン君」
「タマキ。コイツらに何をした?昨日までとはまるで別人みたいになってる気がするんだが?」
「はい、彼等は死霊なので。七聖水と『賢者の石』の雫を昨日から与え続け。浄化する一歩手前まで追い詰めた後に、服従の魔道具と聖霊鎧と聖者の腕輪を装着させ。ラファエルさんに精神浄化の魔法でウラさんとオン君の心を正常化後、契約の縛りでうちの新しい玩具‥‥‥労働力になってもらいました」
コイツさらっと。この二人を新しい玩具って、言わなかったか?
「ウラーー!」「オンーー!」
「いや、タマキ、どう見てもあの二人まともに話せなくなってるよな?」
「その事でしたら。ご心配なく。精神汚染解除!」
シュピーン!
ん?今、こいつ。精神汚染解除って言わなかったか?
「ウラーー!‥‥‥ん?俺はいったい?」
「オンーー!‥‥‥こ、ここはどこだ?」
「こうやって、オンとオフが可能です。ご主人様」
「‥‥‥‥‥あぁ、やっぱり、頼りになる。相棒だよ、タマキ」
「ご、ご主人様。あ、ありがとうございます!」スリスリスリスリ
「うおおおぉ!鼻水を服に擦り付けるな。ローブが汚れる」
何故か感動し泣き始める、タマキさん。そして、汚れる俺の服のローブ。
「ん?貴様ら!昨日の」「おお、本当だ!セシリアよ!昨日の最後の一撃素晴らしいかったぞ」
「何を勝手に喋っているんですか?ウラさん、オン君!パチンッ! (スカッ)」
「「ギャアアアアアーーー!!!タマキ様。申し訳ありません!!」」
「分かれば宜しいのです。では、ウラさん、オン君。君達がうち達の前に現れた理由をエスフィール嬢やヒスイさん達に話すのです」
ん?エスフィール嬢やヒスイさん達?何でご主人様達ではなく。エスフィールとヒスイの名前を強調して言ったんだ?
「「はい!!タマキ様!!」」
ウラさんとオン君はそう返事をすると今回の襲撃の件を話始めた。




