魔法記者と密偵の追手
通行管理所・『エンダイバー』
「はい。確かにレイサイト将軍の魔法残滓の結晶核が埋め込まれた魔道具ですね」
「いや、だから。それを何回も説明してるであろう」
「そうだぞ!監守!」
「ハイハイ!そうですね。ハイハイ!」
俺達は無事。通行管理所の詰所『エンダイバー』にたどり着く事ができた。
できたのだが、通行確認ということでかなりの時間待たされている。そして、それにイライラしながら、監守さんに詰め寄るのはエスフィールとヒスイだ。
「ハ~イ!では、その認証魔道具をあちらの扉の中央にある魔力核にかざして下さい~。さすれば、オリエント・メイス領側に入門できますので~」
どう見てもやる気の無さそうな。通行管理所の兵士がそう言いながら俺達を先導した。
ガコン!ギイイィィィ!!
「まるで中国の万里の長城だな。数百メートル単位で監視塔を作って、その間に魔力障壁の魔道具で民間人は入れなくしてるのか」
「‥‥‥ご苦労」
魔王様はぶちギレながら門を潜る。
「全ての事が終わったら!まず先にてめえに会いに来てやるぜ!監守!楽しみにしてな!」
ヒスイは額に青筋を立てながら門を潜る。
「長かったにゃあ~!待たせ過ぎにゃあ~」
そして、余り怒ってない。セシリアが通り。
「おお、成る程。この通行管理所の魔力結晶の核を媒介にしてこの魔力結界か?まぁ、よく分からないが。オリエント・メイスをぐるっと覆っているのか。成る程。成る程」
俺は魔王領でしか見れない防壁魔法技術に目を輝かせながら時間を待っていた為、ストレスは無く。とても有意義な時間を過ごせた。
「さいなら~!監守さ~ん!」
俺は呑気にあの監守に手を振る。
「はい!さようなら~!」
監守は賑やかに俺に手を振り返してくれた。多分なのだが。別に悪い人ではないのだろう。
あの門一つ潜れば、魔王領の中枢まで簡単に行けてしまうのだ。
確認の手続きや確認に、慎重になり時間がかかるのは当たり前なんじゃないだろうか。
「閉門~!閉門しま~す!」
ガゴン!
「お、おい!門が閉められるぞ!追いかけようぜ」
「いや、しかしだな、まだ確定てきな。証拠も無く」
ギイイ!!
「待てくれ!君達!取材を密着型取材をさせてくれ!俺達は魔法新聞者の者で」
イイ!!
「ガリア皇帝に伝えるか?」
「いや、それは総計な」
イイ!!
おお!出るは、出るは、魔法記者や各国密偵兵の皆々様。エスフィールとヒスイの予想が本当に当たるとは。
キィィ!
「待ちたまえ!我々は七聖教会の‥‥」「いや、俺達はガリア帝国の‥‥」「私達はエウロペ新聞です!セシリア・アインズ様。取材をお願いしたい」「いやいや、先ずはこの『影の国』の」「アインズ様!是非、豊穣の地・フレイヤ地方にお招きしたく」
いったい何人入るんだ?コイツら。俺達が門を潜った後。ワラワラ出て来はじめたぞ。
「下がれ!下がれ!貴様ら!怪しい奴等め!全員、引っ捕らえら!牢屋にぶちこみ。尋問する」
「「「はっ!!!」」」
「は、離せ!我々をなんだと思っている。我々は‥‥‥」「そうだ!離せ!」「私達はただ、純粋に取材を‥‥‥離して!」
「怪しい不審者集団だ!全員。来てもらうぞ。所属国と目的を離すまで魔王領での自由は無いと心得よ」
先ほどまで、腑抜けに見えたあの兵士が怒鳴り声にも聞こえる声で。勝手に門を潜ろうとした奴等を取り締まり始めた。
やはり、俺達に接していた時の態度は演技だったようだ。
「バイバイにゃあ~!」
セシリアは呑気に、突然、現れた奴等に手を振っている。
ガコン!‥‥‥‥
「ビックリした!思った以上に人が多かったな」
「そうじゃのう!私が予測した数よりも遥かに多かった‥‥‥まぁ、歩く広告塔が一緒に旅に同行しているのだから、嫌でも目立ってしまうか」
「だが、通行管理所の内側に入っちまえば!こっちのもんだ!数年前の人魔戦争の頃とは違い。オリエント・メイスの内側は入国手続きと本人証明の検査を受けなければ。ここから、先の行動は比較的制約されちまうからな!」
「‥‥‥にゃんで黒騎士がそんなこと、知ってるのにゃあ?」
「あぁ、昨日の夜にサイレントのオッサンに詳しく聞いてたんだ!それから、ほれ!あんたらにこれを渡しとくぜ!」
ヒスイはそう言うと俺、エスフィール、セシリアに小型の魔道具を渡してきた。
「何にゃあ?これ?」
「魔王領内陸部での行動の自由を認める!証明魔道具だ!肌身離さず持っときな!そいつを持ってりゃあ!オリエント・メイスで好きな所に行けるからよう」
「マジかにゃあ!サンキューにゃあ!黒騎士」
「ありがとう。ヒスイよ」「流石が相棒。ありがとう」
俺達はそれぞれ、ヒスイにお礼の言葉を述べた。
「では、追手も無事、振り払えた。ここからは少しゆっくりとオリエント・メイスに進んでいこうぞ!皆の者」
「あぁ」「おう!」「にゃん!」
「‥‥‥おっと、忘れる所であった。セツナよ」
「なんじゃ?エスフィールよ!」
俺は冗談で久しぶりにエスフィールの物真似をして返事をした。
「むっ!‥‥お主、その声」
「メイエス。そっくりにゃあ!」
「声帯返の魔道具を使っておる。‥‥‥んー!んー!‥‥‥わっちはお馬鹿なアホネコだにゃあ」
続いてセシリアの声真似をしてみる。
「今度はセシリアの声か‥‥‥‥」
「わっちはお馬鹿なアホネコじゃ、無いにゃあ!フシャアーーー!」
「落ち着け。セシリア。また、ビリビリを喰らうぞ」
「ギニャア?‥‥‥‥そ、そういえばそうだったにゃあ‥‥‥‥アブにゃい!アブにゃい!」
「おい!セツナ!余りセシリアで遊ぶな。セシリアはまだ精神は未熟なのじゃから、もっと優しく接してやれ!」
エスフィールはそう言うと俺の頭を小突いた。
「済まん!悪ふざけが過ぎた」
「‥‥‥あぁ、気をつけよ」
「はい‥‥‥セシリア。馬鹿にして済まんかった」
俺はそう言うとセシリアに深く頭を下げた。
「うにゃあ?‥‥‥‥謝ってくれんにゃら、許してやるにゃよ」
どうやら、許してくれたようだ。
「オッホン!セツナの横やりが入ったが。話の続きをするぞ。このまま、少し進むと魔森林がある。先ずはそこに入り。昨日の戦闘で捕まえたあ奴等‥‥‥‥ウラミとオンネンとやらを尋問し。新しい情報を吐き出させ、魔王領に来た目的を吐かせようぞ」
エスフィールはそう話すと魔森林の方角を指差した。
そんなわけで俺達はエスフィールが指し示す場所。魔森林に向かって出発する事になった。




