追手
『ラインズ国道』車内
俺達。魔王様親衛隊は魔王領の中心都市・帝都『オリエント・メイス』に向かう為。俺が地球から持参した車で移動中なのであった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!ガタン!
「にゃあ!にゃあ!セツニャ!」
「なんだい、セシリアさん」
「にゃんでこんなに早く、ラインバレルを離れたのにゃあ?昔、来た時はもっと長く居た筈にゃぞ」
「ピヨピヨ(観光させよ)」
セシリアがそう言いながら、俺を見た。
「仕方ないだろう。俺の隣に座ってる。魔王様の命令なんだから」
俺はそう言いながら。エスフィールを一瞬だけ、チラッと見た。
「メイエスの命令にゃあ?」
「ぬ?あぁ、そうなのだ!セシリア。済まぬな。ラインバレルでは、ゆっくりさせてあげられず」
「うにゃあ~!メイエスのお願いなら仕方ないにゃあ。これがセツニャだったら許さなかったがにゃあ」
「なんだと!アホネコ。契約者の俺に向かってなんて口の言い方してやがる」
「五月蝿いにゃあ。いつも、いつも、電力を供給してるンにゃから多少の暴言は水に流すのにゃあ」
くっそ!このアホネコ。こっちの世界に戻って来てから、俺とエスフィールなんかと一緒に居たせいか。昔よりも人語が流暢になってきて。以前よりも俺に対する反論が明朗になってきてやがる。
「‥‥‥そんな事より。そろそろ、そのヒヨコみたいな鳥について説明しろよ。セシリア、そいつはいったい何なんだ?」
「にゃあ?ヘカテスの事かにゃあ?昨日のオンネンとかいう奴との闘いの時に風魔法召喚でこっちに喚んだのにゃあ」
「ピヨピヨピヨピヨピヨピヨ(その通りだ。久しぶりだな。カミナリよ!)」
「はぁ?そのヒヨコがヘカテス?始まりの大森林の?嘘だろう?ヘカテスはもっとデカかっただろうが!」
「『顕現簡易化』にゃあ。あの腹黒狐もやってるにゃろう?」
「あぁ、そう言うことか。‥‥‥それで?ヘカテスへの報酬は何にしたんだ?君の魔法残滓か?」
「セツニャのご飯にゃあ」「ピヨピヨピヨ(早く、寄越しなさい)」
「はっ?」
俺は一瞬だけ、フリーズした。
「セツニャのご飯がヘカテスへの報酬にゃあ」
そしてセシリアはそれが当たり前だと、ばかりに俺に言ってくる。
「貴様、契約召喚に他人の俺を巻き込んだのか?このアホネコ!」
「他人じゃないにゃあ。旅の仲間であり、上司様であり。わっちの契約者の契りを結んだセツニャ様にゃあ」
「貴様、こんな時だけ、契約者の契りを持ち出す気か?」
「うにゃあ!うにゃあ!部下の責任は上司の責任でも、あるってメイエスもこの前言ってたのにゃあ」
「ピヨピヨピヨピヨ(飯を寄越せ)」
「なんだと?!エスフィール。そうなのか?」
「‥‥‥‥済まぬ、セツナ。確かに以前、セシリアにそう説明してしまった」
「‥‥‥‥そうか、分かった。それなら仕方ないな。よし、セシリア。後でヘカテスには俺の料理を振る舞ってあげよう」
「ピヨピヨピーーヨ(よっしゃあーーー!)」
「ぎにゃあーー!!にゃんでメイエスが出てくると素直になるのにゃあ?おにゃえは!フシャアーーー!!ムカつくにゃあ!!」
セシリアはそう言いながら、車を運転する俺に襲いかかって来るが。
「人語をちゃんと話せるようになってきたのは、凄いと思ったが。こっちの方はまだ、学習しないか。セシリア パチンっ!(指パチン)」
「ギニャアアアアア!!痺れるのにゃあ!!」
「安心しろ。セシリア。俺もこっちに戻って来てから、ずっと雷魔法ばかり使ってたから、熟練度がかなり上がったお陰で放出系統と圧縮系統の魔法の操作を親密にできるようになった。そして、今、君に使っているのが圧縮系の雷魔法『雷針縛り』。攻撃対象の相手の身体に直接。電撃を流し込む魔法なんだ」
「ギニャアアアアア!!」
「‥‥‥‥セツナよ!セシリアは痺れるのに忙しくて。お主の話を聞いておらんぞ」
「‥‥‥‥そうか。‥‥‥それで、エスフィール。何でラインバレルに着いてから、たった一晩泊まっただけで出てきたんだ?」
「うむ!それはのう。セツナよ‥‥‥」
エスフィールが説明しようとした時。
「魔法新聞やらの記者共や各国の密偵に追い付かれない為だろう?!魔王様よう?」
後ろの後部座席のソファーに座りながら。本を読んでいた。ヒスイが会話に割り込んできた。
「記者に密偵だと?」
「う、うむ!ヒスイの言う通りじゃ!セツナ。セルビアの入国門を出国してからセシリアの新聞記事のせいもあってか。私達に対して、魔法記者や各国の密偵達が私達を追い初めて来ていたのだ」
「マジか?全然、気づかなかったぞ!俺」
「お主は探知系の魔法は得意ではないのか?」
「いや、いちを使えるが。そもそも、普段は簡易転移で移動してたから。探知魔法なんか使って無かったんだよ」
「なんと。それは失念しておった。‥‥‥‥まぁ、追ってについては全員の責任だから仕方がない。それでのう、セツナ。セルビアの内乱の後に、今度は『スパイング山脈』の大蛇事件あったじゃろう?」
「あぁ、つうか、その騒動の原因。俺だしな」
「あの大蛇事件の時も我々は近くにおっただろう」
「そうだが、それがその追手とどう関係が‥‥‥‥あっ!なるほど、そういう事か」
「そうだ!俺達は大事件がある度にその近くに居た。それを怪しまねえ奴なんてまずいねえだろう?」
「そして、魔王領の『ショックビル』からは魔法索敵を使って私達を監視する者達が其処らじゅうに居たのじゃよ。それが原因でラインバレルの滞在を1日だけにしたんじゃよ」
「‥‥‥なるほど。そして、ラインバレルを越えて通行管理所をも超えてしまえば、安全圏って事か」
「ラインバレルからオリエント・メイスからの魔王領地帯は他国の魔法記者や密偵は容易に入って来れなくなる。オリエント・メイス周辺は魔王領の心臓部。レイサイト殿がくれたその魔道具でも所持していなければ容易には通してはくれまい」
「なら、尚更、早く魔王領の内側に向かおう。追手に追いつかれる前に」
俺は通行管理所に急ぐ為に車の走るスピードを少し上げた。




