魔王領の新世代
数年前・魔王領南東部
(‥‥‥これは‥‥‥酷い)
(セ、セツナ!ここは‥‥‥いや、魔王領の全土に渡って疫病と飢饉が蔓延仕切っていて。最早、手遅れだ)
(五月蝿い。そんなの分かっているよ!ランスロット)
(魔王領で安全な場所は帝都『オリエント・メイス』位でして。勇者様)
(それも分かってる。ゴリ‥‥‥‥エリス殿)
(また、その呼び方で!)
(‥‥‥‥エリス!‥‥‥今は冗談言ってる場合じゃない‥‥‥)
(つっ!サーシャ‥‥‥‥わ、分かってますよ。そんな事)
(それで?どうするにゃあ?セツニャ。どうにかするんにゃろう?)
セシリアがそう言いながら俺に笑いかける。
(‥‥‥兄弟子!‥‥指示して‥‥‥)
サーシャもセシリアと同じ様に俺に笑いかける。
あぁ、君達はあの二人と同じ様に途中までは嫌々言うくせに。最後の最後には、俺に賛同してくれるんだ。
(君達‥‥‥‥あぁ‥‥あぁ、先ずは俺の治療魔法と正魔法で疫病患者をなるべく、治療を施す。その後は、魔法の袋に入っている備蓄食糧をこの村を中心に配っていき、それを各村や町でも同じ様に繰り返す)
(うにゃあ~!にゃら、機動力がある。わっちが収納魔道具にしまって配り歩いてやるにゃよ!)
(‥‥‥私は‥‥‥土地の修復と土地環境を調べる‥‥‥)
(よし!それで頼む!では!)
((解散!!))
(ゆ、勇者様!私も何かお手伝いします!)
(お、俺だってサーシャの為に働くとも!!)
そんな、やり取りの後、俺達は魔王領の疫病と飢饉を解決するために一年以上。魔王領の中を奔走したのだった。その奔走の間にも、魔王軍や他の人族とのトラブルもあったが、それはまた別のお話である。
『ラインバレル』軍部・報告室
私の名前をはソアレと言います。『ラインバレル』軍部秘書を担当している者です。今日も今日とてラインバレルの入国門前で騒ぎが起こり。その事後処理を淡々とこなしております。
そんな、忙しい中、いつもの五月蝿い方々が、集まってバカ騒ぎを始めるのでしょね。‥‥‥噂をすればなんとやら。早速、騒がし方が報告室の扉を‥‥‥
ドガアンン!!
『紅蓮のナイセス』
「おいおい!何なんだあ?!いきなり!軍事都市の道端で騒ぎを起こったかと思ったらよう!騒ぎを起こした奴等をラインバレルの軍部に入れるなんざ。かの闘将・朝幻のレイサイト・テレサイト殿ももう歳か?」
軍部室の扉を勢い良く開けた方は、魔王軍の特攻隊隊長。ナイセス・エルドレッド様。齢二十代前半で、魔王領南東部の守備を任されている猛将です。
『彗星のアルセレト』
「‥‥‥滅多な事を言うもんじゃないぞ!ナイセス」
ナイセス隊長を睨みながら見つめるのは、『ラインバレル』レイサイト・テレサイト様の右腕とも称される。マルク・アルセレト副司令官殿です。
「とか言っといて。自分だって『朝』の次の座と魔王軍半分の実権を狙っているんじゃないのですか?マルク副司令殿よう?!」
「なに?!貴様!冗談もたいがにしろ」
ナイセス隊長はそう言いながら。マルク副司令を睨みあいを始めてしまいました。怖い。怖い。
『緻密のエバンス』
「‥‥‥貴方達、静かにして下さい。ナイセス!今は魔王様も行方不明になり。魔王代理様のお陰でやっと落ち着いてきたんですから」
バチバチの御二人を諌めたのが、私の上司でもある。コレイスト・エバンス事務官様。この方はお優しい方なのです。
「おっと!コレイスト事務官殿。‥‥‥とかいうお前が一番。権力に執着してんだろうが、魔王城に勤めている時は、いつも、あの美少女魔王にお熱だったもんな?嫁にしたい。嫁にしたいとか言ってたしよう」
優しい方なのですが、一つだけ欠点があり。重度の年下好きです。
このお三方を含めた魔王領の若き方達を魔王領新世代と言われています。
「‥‥‥‥それは昔の話です。それに今は、魔王様は不在。‥‥‥全てはあの憎き勇者のせいですから」
「おお、恨んでる。恨んでるなぁ!あの憎き行方不明勇者様をよう!コレイストさんは」
「おい!その辺にしておけよ!ナイセス。誰でも彼でも噛みつくな」
「へい!へい!だがよう!何で、あんな、騒ぎを起こした奴等をこの神聖なラインバレルの中枢に入れたりしたんだ?ええ?おい?」
「‥‥‥それはあの連中の中に先代魔王の側近・夜霧のヒスイと担い手殿が居たからだろう」
「なに?あの救世主様が戻ってきてんのかよ?俺の故郷はあの救世主様に救われてんだ!」
「それは、皆、同じだ!‥‥‥‥数年前の魔王領の疫病蔓延と大飢饉を自らの大魔法と私財を擲って救ってくれた。我等の救世主」
「おお!その通りだ!こうしちゃあ、いられねえ!早く行こうぜ!マルク!」
「待って下さい!ナイセスさん。それよりも、マルク副司令。その夜霧のヒスイとは?」
「あぁ、そうか、コレイストは軍部でも事務担当だったから。夜霧のヒスイについては知らないか」
「は、はい‥‥‥」
「ヒスイは!夜霧のヒスイは先代魔王の懐刀と呼ばれた男だ。彼は何故か、表向きの軍部の記録には一切載っていない。だが、この魔王領と人族の最前線でもある。『ラインバレル』を始めとした軍部施設を名や鎧を変え、渡り歩き。所属を幾度に渡りに変えていった。」
「変えていった?‥‥‥軍部の兵士に自分の存在を知られないためですか?」
「‥‥‥そうだ。そして、所属を変えたどんな部署や悪辣な環境でも一番の戦果を上げ続けたきた男。そして、その武功を持って先代魔王の第一の側近にまで登り詰めたのが夜霧のヒスイだ」
「そんな、方がいらっしゃるとは知りませんでした」
「夜霧のヒスイの存在は魔王領でも、極一部の軍部の者しか知らないまま、魔王領を去ったからな」
「そんな、奴がこのラインバレルに来たのかあ?!‥‥‥先代魔王の側近か!そりゃあ、俺達よりもよっぽど老けた野郎なんだろうな?‥‥‥‥どれ、そのご尊顔見てやろうじゃねえか!行ってくるぜ!!!おい!」
ドガン!!
「ま、待て!ナイセス!」「ちょっ!ナイセス隊長?」
ナイセス隊長は再び。軍部室の扉を蹴り破って出ていってしまいました。
軍部『レイサイトの部屋』
『ラインバレル』入国門でのウラミとオンネンとの闘いに勝利した俺達はその後、魔王軍と鉢合わせになったが、その軍を指揮していたのが俺の昔の知り合い。レイさんだった。
レイさんとは昔、南東部で知り合い。共に魔王領の疫病と飢饉を共に解決し。魔王領の復興を手伝った事があった。
「いやー、本当にあの時はお世話になりましたな。担い手殿。あの時の我等は村やその周辺の町を含め。未曾有の疫病蔓延や大飢饉に見回れ、どうすることもできず。それを貴方は治癒の大魔法と私財を擲って助けて頂‥‥‥」
「レイさん、もう昔の事ですから」
レイさんは俺の両手を掴み。涙を流している。
「レイサイト殿。久しぶりじゃのう‥‥‥‥」
入国門からラインバレルに入ってからエスフィールはあの様に思考が停止している。
ツン!ツン!ツン!
「メイエス。大丈夫かにゃあ?さっきからおにゃじ事しか喋ってにゃいにゃぞ!」
「ピヨピヨピヨピヨ!(フリーズしているな)」
「ヘカテスもそう思うかにゃあ?」
「ピヨピヨ(ああ!)」
「‥‥‥昔と余り変わってねえな!この部屋はよう!」
ヒスイがそう言いながら、レイさんの部屋を見渡している。
「おっと!そうだった!ヒー坊‥‥‥いや、ヒスイよ!お主、今まで何処で何をしていた?先代様が亡くなって。魔王軍を止めたのは聞いていたが。その後、行方不明になったと聞いて心配しとったんじゃぞ!」
レイさんはそう言いながら。ヒスイに話しかけた。
「修行だよ!修行!レイサイトのオッサン!」
「修行だと?!‥‥‥では、お主がここにいる理由は魔王軍に復帰するからか?」
「‥‥‥何で俺が魔王軍に復帰するんだよ!俺はただ、カミナ‥‥‥担い手殿に付き従って魔王領に来ただけだぜ」
「なに?担い手様の従者じゃと?それはいったい?」
「あー!話せば長くなるがな‥‥‥魔王様よ‥‥‥メイエスさんよう‥‥‥この事は?」
フルフルフルフル!
エスフィールが首を数回、横に振るった。
「あぁ、そうかい‥‥‥担い手殿とは、修行の旅で仲良くなってな!それからは担い手殿の用心棒として同行してんだよ!オッサン!」
「ほう!あの利かん坊のヒスイを用心棒とは、流石が担い手殿。流石です」
レイさんはそう言いながら、また、俺の両手を掴んできた。
「い、いえ!別にそんな」
ドドドドドドドドドドドド!!!!
?!なんだろう?レイさんの部屋に向かって。物凄い勢いで近づいてくる音が聞こえてくるような?
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!
近づいてくる。ドドドド!!!近づいて‥‥‥ドドドドドドドドドガアン!!
「失礼するぜ!レイサイト将軍様!!!夜霧のヒスイって奴と俺の恩人。担い手様は何処に居るんだ?」
「ナイセス!貴様!!!何しに来おった!」
激昂するレイさん。
「‥‥‥おい!くそ、軍人!直ぐにレイサイトのオッサンの部屋から出ていけ!」
ナイセスとか言う奴を睨みながら。ナイセスに話しかけるヒスイ。
「あん?誰だてめえは?黒いの」
「俺か?俺はな?くそ、軍人!!」
シュン!
ヒスイが闇霧を掴んで瞬時にナイセスに近づき。
ガキイィィンン!!!
お互いの武器と武器が打ち付けられる音がレイさんの部屋に響き渡った。
「大先輩だぜ!!!クソヤロウ?!」
「あんだと!ゴラアアア!!!クソガキ!!!」
『ラインバレル』の軍部に2人の男の声が響き渡った。




