魔王領・ラインバレル軍
『ラインバレル』都市内部
「うわあぁ!報告します!ラインバレル、入国門入り口に樹海の様な大樹がいきなり出現しました」
「急報!急報!国道に大嵐の様な竜巻が突然現れました!」
「お伝えします。ラインバレル近くに強大な魔力が幾つも現れ」
‥‥‥‥某の名は、レイサイト・テレサイトと申す。この魔王領・軍事都市『ラインバレル』及び。北東部と南東部の魔王軍の部門統括の地位に着いている者である。
某は現在、ラインバレル内にある。軍事司令部には、絶え間無く緊急時の連絡が伝えられてくる。
「数日前の『スパイング山脈』の大蛇事件に続き。今度は『ラインバレル』入国門の前で大樹に大竜巻とは‥‥‥」
「どうしますか?レイサイト様」
「入国門の正門前に精鋭を集めよ!指揮は某自ら行う。この事は、魔王城にいらっしゃる。魔王代理様に直ぐに報せてくれ」
「は、はい!了解しました。レイサイト様」
「あぁ、某も準備ができたら直ぐに向かう。それから、他の軍の若造達には余計な事はするなと念を押して伝えてくれ」
「はっ!必ず伝えます」
『ラインバレル』入国門
「あの方角‥‥‥‥嵐みたいな竜巻だと?セシリアの奴。あんな、大技持ってたか?」
「アインズさんは風魔法を極めてんだろう?何か召喚したんじゃねえのか?」
ヒスイが俺に向かって話しかけてくる。
「いや、その召喚魔法にしても。セシリアの今のレベルじゃあ、召喚できても霊獣級しか喚べないぞ?アイツはガルドさんの教育から逃げていたから。魔法の知識が同い年よりも遅れているんだ」
「‥‥‥‥それは前にも言ったがよう!カミナリ!アインズさんは俺達よりも幼く、若いんだぞ。アインズさんには、アインズさんの成長速度があってだな」
どうやら、俺の説明の仕方が悪かったようだ。ヒスイの奴が感情剥き出しでセシリアの成長について語ってきた。
「そ、そうだったな。済まん!ヒスイ。セシリアの気持ちと成長を考慮せず、自分語りでセシリアについて話してしまった。済まない」
「お、おう!分かってくれりゃあ!良いんだ!カミナリ!!」
「あ、ああ!」
そんな会話を終えた瞬間。
「開門!開門!せよ!!!!」
「「「「「はっ!!!!!」」」」」
『ラインバレル』入国門前
ガコン!ギギギギギギ!!!!!
「ラインバレルの正門が」
「開いてくるのう!」「開いてくるにゃあ!」
ドサリ!「ぐっ!くぅ‥‥‥」バタリ!「ウ、ウラミ‥‥‥‥」
「君達?いつの間に!」
「セツナよ!ラインバレルの門が完全に開く前にウラミと青色騎士に契約の輪を付けよ。後で幻術魔法でこ奴等の目的を喋らせる」
「な、なに?いきなり何を?」
「それと付け終わったら。一時的にお主の魔法の袋の中に隠せ。こ奴等は、そのうちで出てくるであろう黒幕の取引材料に使う」
「いや、君、そんなに色々一辺に言われてもだな」
「済まぬ!セツナ。だが、やってくれ!これは私達の為でもあるし。魔王領の未来に関わることなんじゃ」
深刻な顔をしながら。エスフィールが俺を見つめてくる。
「き、君?!あ、あぁ、分かった!直ぐにやる」
俺はエスフィールの異変に気づき。エスフィールに言われたことを速やかにこなしていった。
「開門!!!」
「‥‥‥‥さぁ、何が某に牙を剥く?」
『ラインバレル』の入国門が完全に開く。
「ヒスイ!構えろ!」
「任せな!カミナリ!‥‥‥心配すんな!数年前までなら魔王軍。最強は俺様だったんだからな」
「‥‥‥‥フラグを立てないでくれよ。ヒスイ」
そう言っている間に入国門から続々とラインバレルの精鋭部隊と思われる。軍人達が列を成して出てきた。
「控えよ!貴殿ら!軍事都市『ラインバレル』統括者。レイサイト様である」
「‥‥‥‥某、レイサイト・テレサイトと申す」
「なんじゃと?レイサイト?」
「あん?レイサイトだあ?」
魔王領と縁が深い。エスフィールとヒスイがレイサイト・テレサイトという男に反応した。‥‥‥つうか、俺もどっかで会ったことがあるような、
「貴殿らはいったい?‥‥‥‥ん?」
「おぉ、レイサイトよ!久しぶり‥‥‥」
「これは、これは、救いの担い手殿!お久しぶりでございます!!!」
レイサイト・テレサイトさんが物凄い勢いで俺に近づいてきた。
「はい?‥‥‥‥ん?その顔‥‥‥もしかして、レイさんですか?ヨルド村の?」
「おぉ!やはり!やはり!あの時の!我が故郷、ヨルドが荒廃していた時に資材の提供や、疫病の治療等をしてくれた。担い手のナルカミ殿!お久しゅう!お久しゅう!ごさいますなぁ!」
レイさんはそう言うと俺の両手を力強く掴み。鼻水を滴しながら、泣いていた。‥‥‥‥久しぶりに会ったレイさんの顔は少し痩せこけ。手はシワが目立っていた。
「レイさんは‥‥‥少し痩せましたか?ちゃんとした食事は取って‥‥‥‥」
「はい、はい!勿論です。担い手殿‥‥‥勿論です」
「‥‥‥‥‥感動の再開で悪いがよう。レイサイトのオッサン久し振りだな!俺だぜ!」
「ん?その声は?‥‥‥‥ヒー坊?ヒスイか?」
「あ、あぁ、そのヒスイだ!レイサイトのオッサン!」
「おぉ、ヒー坊!お主今まで何処をほつき歩いておったんだ?」
「いや、俺は、魔王軍をもう止めてだな!」
「まぁ、積もる話も多々ある。さささ、担い手殿。こちらへ、この軍事都市を案内致します」
レイさんはそう言うと俺とヒスイを連れだって率いてきた軍と共にラインバレルの中へと入って行く。
「‥‥‥ひ、久しぶりじゃな!レイサイト殿」
「にゃあ?早く来ないと。入国門閉まるにゃぞ!メイエス~」「ピヨピヨピヨピヨ」
そして、レイさんに存在すら無視されたエスフィールは入国門前で固まっていたのだった。
まぁ、無理もないエスフィールは、人相替えの魔道具と認識阻害の魔法で自身が魔王だと気づかれないように変装をしているのだから。
レイさんに気づかれないのは当然の結果なのである。




