魔王エスフィール対朝来のウラミ No.2 朝来の結界
「私の事は詮索するな。ウラミ殿!‥‥‥それに勝負等、セツナのあの治癒で全ては最初から決まっているであろうに‥‥‥」
「成る程、現代になっても尚。魔法族は秘密主義を貫抜くか」
「我々、エスフィール一族はユグドラシル様に御使いする身。エウロペ大陸の歴史とその秘密を守る守護者。それを過去の者であろうと、詮索はさせぬよ。神煌具『緑樹・霊剣』」
「ぬ?魔法族が剣を使うのか?これは珍しい」
「『緑樹・霊剣』は魔法の力を増幅させる力を持つ。そして、この剣は霊剣。お主の様な死霊には、致命的じゃろう?」
「我々の弱点もお見通しか。ならば、近寄らせぬ!朝来流・『朝雨の流麗』」
ウラミは『朝雨玉の流麗』を唱え。二本の長剣を私に向かって突き立て、水の丸い塊を次々に作り出した。
「朝来流は神代の(青)魔法を剣に宿し自在に操る。魔族の秘技なり」
「そんなことは知っておる。それに私はお主に近づかぬぞ!お主のその剣の錆びになりたくないのでな!『緑樹・霊剣』・『森羅万樹海』」
「また、広範囲攻撃か!やらせぬ!朝雨玉よ!奴の動きを奪え!」
「お主は何を言って‥‥‥‥」
「?!気をつけろ!エス‥‥‥‥メイエス!」
セツナが突然!私に声をかける。
「な、なんじゃ?セツナ、今、戦闘中で」
「この、結界のせいか?!君の立っている地面に異常な魔力の乱れが‥‥‥‥」
「‥‥‥気づくのが遅いぞ!メイエス殿!『朝来の束縛』」
ゴボッ!ボコッ!ボコッ!ボコッ!ボコッ!
ズズズズズズズズズズズズ!!!
「こ、これは?ガボッ!ゴボッ!」
「朝来流は朝、昼、夜の流派の中でも、結界と束縛魔法に長けた。流派だ!それを忘れていたかな?メイエス殿よ!」
「ゴボッ?!(くっ!油断した!)」
「メイエス!」
「おい!マジかよ!魔王様よう!」
セツナとヒスイが焦りながら私を見つめる。
「俺が鉄の魔獣の初激とあの特殊魔法『治癒』の使い手の治癒魔法を受けて余り動けないと踏んで油断したか?メイエス殿」
「ガボッ!ゴボッ!(くっ!動けん!)」
「確かに我々、死霊にとって、治癒魔法や聖魔法は毒に等しいだろう。だが、それは否!否である!我々、ウラミとオンネン!死神様!‥‥‥ゼロ様への忠誠心はそれすら凌駕する力なり!」
「(ゼロ?!)」
ウラミが二本の長剣で何かの印を空中に書いた。そして、書き終えた瞬間。
「済まぬが!君が我が犠牲の一人目になったくれ。‥‥‥‥朝来流・『朝雷の目覚め』‥‥‥閃き」
ドドドドドドドドドドドド!!!バリバリバリバリバリバリバリバリ!!!
「ガボッ!ゴボッ!?あああああああああ!!!!!」
「エスフィール!!!!」
「おい!おい!直撃じゃねえか!不味いぞ!おい!」
『朝の幃』内
「『朝雷の目覚め』は数刻続く。俺が生身の肉体ではなく、死霊だからといって手を抜いたな。君は!‥‥‥‥やはり、まだまだ若いのだ。これが現代の新世代とは‥‥‥‥わざわざ、死神様や殺人鬼殿が出てくる相手では無かったのでは?」
「アアアアアアア!!!グウウウウ!!」
「苦しいか?メイエス殿よ!だが、これが神代の時代の力。我々が編み出した。魔王領最初の軍事力の源。朝来流の力なり」
「ゴボッ!グアウアウ!!!『緑竜・降誕樹』」
私は息ができない苦しみと、永遠と続く雷の雷撃の衝撃に耐え『緑竜・降誕樹』を発動させた。
「ん?地面から震動?」
「オオオオオ!!!!!」
「竜の姿をした木々だと?何を今さら」
「(其奴を空高く打ち上げよ!『緑竜・降誕樹』)ゴボッ!」
「グオオオオオオオオアオオ!!!!」
「なんという!魔力濃度の塊!凄まじく!大きく、力強き魔法攻撃か!」
「(!よし!ウラミと距離が離れたことで、束縛魔法の効力が弱まった!‥‥‥緑魔法『救いの蔓橋』)」
私は地面の草木や木々に魔法をかけた。そして、その草木や木々が成長し、私の方へと伸びてくる。
「(よし!私を引っ張り上げよ!魔王領の木々達よ!)」
ズル、ズルズルズルズル
「ゴボッ!ガボッ!」スポンッ!
「がはぁ!ハァッ!ハァッ!ハァッ!ハァッ!死ぬかと思ったぞ!ハァッ!ハァッ!ハァッ!ハァッ!」
『朝の幃』外
「よ、良かった!エスフィールの奴。自力で抜け出せたか」
「あぁ、しっかしよう!この朝来流の結界魔法!俺達の魔法攻撃に微動だにしなかったな!おい!」
そうなのである、私がウラミの束縛魔法で捕まっている間。セツナとヒスイは結界の外側から幾度となく、結界への攻撃をしてくれていたのだが。
「それは、無駄だぞ!若き新世代達よ!朝来流の結界は死神様との契約の契りで決して破れぬ。我等の誓い!」
空高く打ち上げられた筈のウラミがそう言いながら、結界内へと戻っていた。




