赤鎧と青色騎士
軍事都市『ラインバレル』入館門前
「ひ、引いちまった!」
目の前の光景を見て、俺は首から一筋の汗を流す。
「‥‥‥‥そうじゃな」
(そうじゃなじゃねえよ!なんで、案外冷静なんだよ。エスフィール!)
「鉄の魔獣の前に入るのが悪いにゃあ!」
「だなぁ!」
くそ、地球とアリーナの世界とじゃあ、価値観の違いなのか、俺との反応が違いすぎないか?
「ぐっ!くそ!先制攻撃を受けるとは‥‥‥」
「おおぉぉ!痛でえええ!」
前の二人もメチャクチャダメージを喰らってるな。それもそのはずか、俺達が乗っているこの車。硬質付与の魔道具と俺、自身が車に掛けた硬質化の魔法により。車之町強度はあの、オリハルコンに匹敵するだろう。
「く、車を降りるぞ。皆、目の前の2人の容態を確かめないと」
「心配するなセツナ。見た所、彼等は魔族。それもかなりの上位の位の者だ。対したダメージはなかろう」
(そういう訳にはいかないんだよ。エスフィール)
「‥‥‥‥黒騎士。目の前のあいつらにゃあ‥‥‥」
「‥‥‥あぁ、相当つえーな!‥‥‥二人共な!」
俺達はそんな、やり取りをしながら車から降り。
「御二人共。大丈夫です~?!」
俺は目の前の2人に心配そうに話しかける。
「ぐっ!身体が上手く動かぬ」
「お、俺もだ。『ウラミ』」
2人はそう言いながら身体をプルプルさせ、立立てないようだ。
「おぉ、すみません。直ぐに治療魔法で回復をしますね」
俺がそう言うと。
「「ん?治療魔法?」」
二人がそう言いながら、俺を見つめる。
「治療魔法『聖者の癒し』」
「「癒し?‥‥‥ギャアアアアアア!!!」」
俺が治療魔法を二人に放つと。目の前の二人は断末魔の叫びを発しながら苦しみ始めた。
「はっ?治癒魔法を掛けたのに苦しみ始めただと?」
「‥‥‥‥気をつけよ。セツナ、この者達‥‥‥」
「冥界の奴等だぜ」ニタア!!!
ヒスイが不気味な笑みを浮かべ。
「片方貰うぜ!!カミナリ!!」
「待つにゃあ!!黒騎士!」
セシリアはそう言いながら。ヒスイの前に立った。
「あん?アインズさん?!」
「わっちが片方貰うにゃあ!」
セシリアはそう答えるとダッシュで前に出た。
「グオオオオ!!?!ウラミ!目の前から獣族が」
「何?」
「そこの青色鎧!わっちとあっちに移動するにゃぞ!セツニャ!」
「あ、ああ、分かった。簡易転移魔法『転廊』」
「サンキューにゃあ!」ブオン!シュン!
「グオ?!なんだ?貴様は?!」ブオン!シュン!
「オンネン!!!貴様ら!!いきなり、我等にぶつかり、死霊の我等に治癒魔法等かけおって!!」
メチャクチャ切れ出す、赤鎧の男。
「ふん!まぁ、良い!残った方を貰うぜ!!カミナリ!!」
ヒスイがそう言って闇霧を構える。
だが‥‥‥‥
「済まぬが。ヒスイ!残りの其奴は私が貰う。‥‥‥‥其奴には聞きたいことが余多にあるからな」
「何だと?!」
「それに貴様、『スパイング山脈』での傷はまだ、完全に癒えてなかろう?」
エスフィールはヒスイを見つめながら言うと。
「‥‥‥‥‥そうない。なんなら、負けんじゃねえぞ魔王様よう」
そう言うと俺の近くへと向かって来た。
「‥‥‥良く素直にエスフィールに従ったな。ヒスイ」
俺がそう聞くと。
「カミナリよう!ここはもう魔王領だ!魔王領では、魔王の発言は何よりも優先される」
「そうなのか?」
「あぁ、それに数ヵ月前の魔王失踪後、新たな魔王は即位していねえ。俺達が元魔王様とか、言っていたがな。そうじゃあ、無かったらしい。メイエスさんは、いや、ユナ・エスフィール皇は‥‥‥‥」
「現役の現魔王だってことか。 (ん?皇?)」
「その通りだ。カミナリさんよう!」
『ラインバレル』入館門前
「済まぬが、神代の冥界死霊よ!貴殿が知ってる事を全て話してもらうぞ」
「貴様ら、我々の話しも聞かず。よくも!‥‥‥覚悟しろ!魔法族の女!!!」
‥‥‥突然ではあったが、エスフィールと赤鎧、セシリアと青色騎士の闘いが始まるのだった。




