呪(まじな)い
『スパイン街道』近くの町『ショット』
俺達、エウロペ大陸の新しい英雄様。英拳王姫セシリア・アインズ。一行は『スパイング山脈』近くにある。町『ショット』の食堂で昼食を取っていた。
「しかし、改めて見ると『スパイング山脈』はとてもない大きさの山々じゃなあ~!モグモグ」
エスフィールが俺の隣でホブゴブバーガーを頬張りながら。そんな、感想を述べた。
「あぁ、あれの山脈があるせいで人族や死の大地の奴等が、容易にユグドラシル地方に戦争を仕掛けられないからな!」
「ましゃに天然の要塞にゃあ!」
「まぁ、のう。だが、そのせいでヒスイがさっき言った。奴等に『魔王領』は長年に渡り。戦争を吹っ掛けられておる」
「‥‥‥だな! だが、『魔王領』がその犠牲になるのを見かねた。ユグドラシル様がアテナ様と交わした約束があるじゃねえか!」
「‥‥‥‥―女神―の誓いか!アテナ地方は戦争を引き受け。ユグドラシル地方は豊作でアテナ地方の民に作物等の生きる為の力を貸すと」
「確か、―女神―の中でもその二人が特に仲が良いんだろ?文献やおとぎ話にも。ちょいちょい書かれてるし」
「うむ!先日の『セルビア』の件でセシリアや私達を遣えに出したのも。あの、お二人で考えた結果かもしれぬな。」
「親友の為に俺達を使ったてか?」
「‥‥‥‥まぁ、それは仕方があるまい。―女神―の契約者である。私やセツナが近くに居て。動かないわけにはいかないしのう。知らぬ存ぜぬでは、いかん状況だったしな」
「良いようにこき使われた様な気がするが‥‥‥‥っ!痛てぇ!」
俺がそう、言いかけた瞬間。右目に凄い衝撃が走った。
「ぬ?大丈夫か?セツナ」
「あ、あぁ、一瞬。右目に痛みが走っただけだから。大丈夫だ」
「そ、そうか、何かあれば言え。緑魔法の治癒の方で痛みを和らげてやるからな。まぁ、お主には治癒魔法があるから入らぬ心配だろうが‥‥‥」
「そうさせてもらうよ。ありがとう。エスフィール。」
「‥‥‥‥あん?おかしいな?魔除けの呪いは最初の奴等に会った時に俺が済ませといたんだがな!おい! カミナリ! 右手見せてみろ!」
「ん?って! おい! なんだよ。いきなり」
ヒスイはそう言うと、俺の右手を強引に引っ張られ。右手の内側を凝縮される。
「‥‥‥‥呪いはねえな。そもそも、てめえは聖魔法を使えるから自力で解呪はできるしな。‥‥‥‥その周りの奴等にも害が及ぶこともねえか。厄災の『呪残香』でもねえな‥‥‥」
ヒスイはブツブツと他人事を言い始めた。
「なんにゃ?黒騎士! なに変な事。ブツブツと言ってるにゃ?また、セツニャと二人で。宿を勝手に抜け出す気かにゃあ?」
「‥‥‥‥うむ、これも彩音とアル先輩に報告しておくぞ。セツナ。早速、『セルビア』に向けて手紙を送ろう‥‥‥‥」
「何を勘違いしてんだ! アホネコ! 拷問好きメイド!」
「誰がアホにゃあ!」「誰が拷問好きじゃあ!」
「‥‥‥静かにしてろ! アホ二人! 今、占い中だぜ!」
「占い?! ヒスイ、お主、星方術でも使えるのか?」
「ん?あぁ、昔、カシア様に習った。他にも呪いのかける方と守る方とか色々な!」
「‥‥‥‥先代の星方術をお主がか‥‥‥だから、セツナの今の現状を?」
「あぁ、見てるところだ!」
「星方術?」
「あん?気になるか?‥‥‥まぁ、今度、暇な時にでも説明してやんよ! カミナリ!‥‥‥でだ、カミナリよう!」
ヒスイが真剣な顔で俺に何かを伝えようとしている。
「ん? あぁ、ヒスイ」
「俺がお前に隠れて施した守護の呪いは今も続いてやがるから安心しな」
「守護の呪い?お前、いつの間にそんな事。やってたんだ?」
「あん?そりゃあ、お前、『セルビア』に来たばかりの頃に『影の国』の‥‥‥まぁ、言っても覚えてねえか。でだ、こっちでのお前の厄はもう去った。安心だ! 良かったな!‥‥‥だが、あっちに帰った後は気をつけな!‥‥‥‥数人の女達に半殺しにされるかもしれねえからな!」
‥‥‥‥こいつ。最後にとんでもなく恐ろしい事を言わなかったか?
「‥‥‥分かった」
「‥‥‥‥‥証拠はいっぱい撮ってあります。エスフィール嬢」
「うむ! 良くやった! タマキ監督」
「タマキ?お前、疲れたからって言ってずっと魔法の袋の中にいたんじゃ?」
「はい! ようやく元気になりました。ご主人様」
「そうか、それは良かった‥‥じゃなくてっ!証拠はいっぱい撮ってあります?だと?」
「はい! バッチリ」
「なんでそんな事をした?」
「私が頼んだのだ! 今後の為にもな。安心せい。私はまだ証拠の写真や動画をどうするか決めておらん。保険じゃ!保険」
「保険です。ご主人様」
「‥‥‥‥まぁ、あれだな!俺も一応はカミナリの契約者だからよう!いちを心配するが!‥‥‥まぁ、あっちに帰ってもよう!女関係には気を付ける事だな!色々と!‥‥‥頑張れや!」
「こんなの確定の未来じゃねえか。何で俺が未来で半殺しにされないといけないんだ!!!」
「昔から手癖が悪からなのにゃあ~!中途半端にモテるのも大変だにゃあ!セツニャ!おにゃえは昔から変なおんにゃに好かれるからにゃあ~!ゴリラ聖女にお転婆姫かにゃあ?にゃ、にゃ、にゃ、にゃ、ブフゥ!!!」
セシリアは笑いを堪えられずに吹き出した。
「ほう! その変なのには私やアル先輩も含まれるのか?セシリア」
「にゃ? メイエス?! ち、違うにゃあ。おにゃえは別にゃあ。‥‥‥アルもにゃあ!!」
「うむ! それならば良い!」
「‥‥‥‥あ、危なかったにゃあ!危うく、半殺しに合うところだったのにゃあれ」
そんな、やり取りをしながら。俺達、4人は野生の竜種が飛び交かう。スパイング山脈へと足を進めるのであった。




