神々の黄昏(ラグナログ)
ここは無の世界。
奈落とも違う。
魔窟とも違う。
天界や冥界とも違う闇の世界。
『無闇の部屋』
シャキン、シャキン、シャキン、シャキン、シャキン‥‥‥
1人の黒いフードを被った男がいた。その男は自慢の大鎌を熱心に研いでいた。
シャキン、シャキン、シャキン、シャキン‥‥‥‥
「相変わらず。シャキン、シャキンっと!五月蝿いな。君は。死神」
「む?‥‥‥お主は‥‥‥ロキか? 久しいな。なに用で現れた?」
「なに用で現れただって? ボスから聞いていないのかい? 君!」
「む? 何をだ?」
「エウロペ大陸に行っていた。『エキドナ』が殺られたんだよ。何者かにね。確か、あれは数日前だったか」
「そうか。あの臭き者は死んだか。無念だな」
「それの何処が無念そうにしてるんだい?」
「気分だ」
「あぁ、そう!」
「ギャオオオオ!‥‥‥お早いお着きで御二人とも」
「おや、君も呼ばれたのかい? 太陽」
「ええ、我等の主様に」
「フフフフフフフフフフフフフフフ! 私も呼ばれたわ」
「‥‥‥‥魔女さんもか‥‥‥久しぶりだね」
「フフフフフフフフフ! お久しぶりでロキ様! 皆さん!」
「‥‥‥ええ、お久しぶり」
「‥‥‥‥‥あぁ、」シャキン、シャキン、シャキン、シャキン
「‥‥‥ふん!」
魔女がその場に現れた瞬間。『無闇の部屋』はイヤな、雰囲気に包まれた。
ガチャリ!
そして、何もない筈の空間からドアが開く音が聞こえた。
「やあやあ、皆の衆。お集まりで! お久しぶりです! 節操でございます!!」
「おぉ!」
「僧侶殿! お久しぶり」
「‥‥‥久しぶりだな!」
「ハイハイ、死神殿もロキ殿も太陽殿もお元気そうで!‥‥‥‥貴女? 新顔ですな! 以後お見知りおきを」
「フフフフフフフフフ! よろしく」
「ハイハイ! 変わっておりますな。ハハハ。まぁ、それも一つの個性」
「いやー、良かった。僧侶が来てくれて。さっきまで部屋の雰囲気が最悪くでさー」
「フフフフフフフフフ! 何でかしらね」
「‥‥‥‥だね。魔女さん」
「フフフ‥‥‥さぁ、ねえ?」
「‥‥‥‥」シャキン、シャキン、シャキン!
「‥‥‥‥‥っち!」
ガゴン、ガゴン、ガゴン
ドスン!
「久しいな。皆、集まっておるか?」
「おや、これはこれは!我等が主の代理人殿」
「久しぶり!」「シャキン、シャキン、シャキン」
「‥‥‥‥お久しぶりで」「フフフフフフフフフ」
「ふむ、皆、元気そうで何より‥‥‥皆に集まってもらった理由は」
「はい! 代理人様」
「うむ! ロキよ。なんだ?」
「『エキドナ』が殺られた事ですね?」
「‥‥‥あぁ、その通りだ。エキドナにはユグドラシルを殺す用頼んでおいたのだかな。返り討ちあってしまったようだ‥‥‥‥」
「なんと。あのエキドナ殿が‥‥‥エキドナ殿を倒した相手の情報等は?代理人様」
「うむ。それが余り無くてだな。‥‥‥‥噂だけだが、エウロペ大陸の勇者の元旅仲間がエキドナとヴォーディガンを倒したらしい」
「らしいとは、また、曖昧ですな」
「‥‥‥仕方あるまい。ユグドラシル地方。それもセルビアの国には防壁魔法がある。あれでは、こちらからは観る事ができんからな」
「まぁ、そうだね」「‥‥‥そうですな」
「‥‥‥シャキン、シャキン」
「僧侶よ。列島大陸の方はどうなっている?」
「はい。七原竜のうち。二柱は封印を終え。現在は内乱状態まで持っていっております」
「うむ! 上々だな。ロキと太陽は」
「まだ様子見か? 『エキドナ』が殺られたせいで黙示録の竜と獣が解放されて手が出しづらくなったし」
「俺も少し様子を見たい」
「うむ。では、そちらは少し様子を見よう。‥‥‥魔女殿の方は」
「フフフフフフフフフ! 沢山殺すわ」
「‥‥‥うむ、ほとんどにな」
「‥‥‥シャキン、シャキン!」「‥‥‥最悪だね」「しっ!聞こえるぞ」「そうですぞ。お静かに」
「我等の仲間が殺られたのは、五百年前にカンナギの姫に殺られた。『アルゴン』以来である。『エキドナ』は実に長いこと働いてくれた。黙祷を捧げる」
「「「「はっ!!!!」」」」「フフフフフフフフフ」
「‥‥‥おい!魔女!」
「フフフフフフ?何?殺すわよ!」
「‥‥‥止めよ。二人共。仲良くするなとまでは言わん。しかしトラブルは起こすな」
「はい!」
「フフフフフフ、フン!」
「代理人様? 地球への対応は?」
「うむ。何とかしたいがな。あちらには魔力が一切無い。というか概念が無い。」
「概念ですか?」
「恐らく、我々が地球に降り立てば直ぐに死ぬことになるだろう。魔道具その物にならんかぎりな」
「神煌具化してもですかな?」
「あぁ、恐らくな。‥‥‥‥エウロペ大陸の七聖―女神―や氷の大陸に住む『氷帝』でも無理だろう」
「‥‥‥そのレベルか」
「最近では中央大陸のアルゴンを殺した。カンナギも復活したと奴に聞いた。‥‥‥‥皆、しばらくは気を付ける様に」
「「「「了解!」」」」「フフフフフフ」
「うむ。何人かは欠席だったが、今回の議会はこれにて終了とする。」
「そう言えば? 『殺人鬼』の姿が無かったけど。どうしたの?あいつ、議会には毎回参加してたのに?」
「あやつはエウロペ大陸のオアシスに向かってもらった。奴等に神煌具をこれ以上作られない為にな」
「なるほど。流石、代理人様。頭がいいね」
「ありがとう。ロキよ……では今回の議会は解散とする。では最後に‥‥‥‥」
「「「「「「我等は我等の主人の為に!我等は我等の世界の為に!そして彼らに終末を!全ては我等、『神々の黄昏』の為に!!!!!!」」」」」」
シュイン!
キィィィィ!!!
ガゴン!!
そして『無闇の世界』の扉は静かに閉じたのだった。




