また会える日まで
エルフと妖精の国『セルビア』を出国を明日に控えた。セルビア滞在最後の夜。
明日は何やら、俺達御一行の為に出国式典を国を上げて行ってくれるとの事。
そして、表向きは拳王姫セシリア・アインズ様御一行の為。何故か出国式典の挨拶はセシリアが担当することになった。
何でもユグドラシル地方を代表するものが『ヴォーデイガン』と『エキドナ』を討伐した者と広めた方がユグドラシル地方の権威を高められるとからしい。
余り目立ちたくない俺にとっては有り難いことこの上ない。世間では英拳王姫セシリアや騎士の中の騎士ギャラハット卿等と連日のように大陸中から魔法新聞や魔法報道のマスコミ達が来ているとか。
これらのニュースは数日後には交流のある幾つかの大陸に伝わるだとか。その対応にセシリアも巻き込まれ。アルやギャラ先生はとても忙しく動き回っていた。
流石は大国『セルビア』その影響力を表すが如く。連日。観光客や報道人が来ること来ることグルコサミンである。
そんな状態で俺は、『セルビア』の来賓として客室で優雅にお茶を飲んでいた。
コンコン!
「ん? はい。どうぞ!」
また数日前の様に扉のノックがしたが。返事がない。
スゥ……ポトリ……
「んー? 扉の隙間から手紙? 誰からだ?」
ガチャリ!
念の為。扉の向こう側の通路に誰かいないか確認したが。
「誰もいない‥‥‥」
俺は部屋へと戻り。先ほどの手紙を開け。読んで見た。
そこにはアルディスからの感謝の手紙が丁寧に書かれていた。
『拝啓。カミナリ・セツナ様へ
この度はこの国を‥‥‥セルビア国を救ってくれてありがとうございました。本当に感謝しても仕切れません。‥‥‥‥『妖精国』の旅では色々な事があったね。‥‥‥‥本当に色々あったけど。セツナ君と一緒に入れて僕は‥‥本当に楽しかったです。君との大切な思い出を沢山、沢山貰いました。感謝します。‥‥‥しばらく‥‥‥セルビアは忙しくなるし、セツナ君はそのうち地球に帰ってしまうから、当分は会えなくなるけど。僕の事は絶対に忘れないで欲しい。‥‥‥‥だって君は僕にとっての初めての人なんだから。‥‥‥‥‥』
ここで筆記の所に涙の後があった。どうやらアルは泣きながらこの手紙を書いたらしい。
『あぁ、ごめんなさい。文字が汚くなっゃったよ。‥‥‥最後に一言書きます。‥‥‥‥大好きです。セツナ君。‥‥‥また、いつか『セルビア』に。僕に会いに来てくれる事を心から願っています。‥‥アルディス・セルビアより』
‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥
「アル‥‥‥‥」
ガタン! 俺は勢いよく立ち上がった。
シュン! ブオン!
転移魔法でアルのいる場所へと一瞬で移動した。
シュン!
「うわぁ! なに、誰?」
「いや、俺」
「なっ! セツナ君! 何でいきなり?」
アルは自室の王子の部屋にいた。‥‥‥凄い可愛い物が置かれたファンシーな部屋である。
「ちょっと! 余り人の部屋をじろじろ見ないでよ!」
「いや、可愛い部屋だなと思って」
「当たり前でしょう。僕、女の子なんだから!」
「‥‥‥俺はアルのある部分を見て頷いた」
「なっ! 変態!」
「あぁ、変態だ!」
「開き直るな! 変態」
「それで結構。でっ? この手紙はなんだ?」
俺は先ほど読んだ。アルの手紙をアルに見せる。
「そ、それは!‥‥‥‥ぐぅ! 君に対する感謝の手紙だよ。悪い? 面と向かってじゃあ、恥ずかしくて伝えられないから。手紙にして扉に挟んでさ?」
顔を赤らめながら。恥ずかしそうに言うアル。
「いや、悪くないが‥‥‥とりあえず。ほれ!」
俺は七色に光る魔道具をアルに渡した。
「ちょっと! いきなり投げないで! ほっと!‥‥‥なに? これ?」
「最上級の転移魔道具。昔、奈落の地下深くにある迷宮で見つけた。その魔道具に俺の魔力残滓を登録しておいた。それでいつでも俺の入る地球へ来れるし。来ても直ぐ近くに俺が入る様にタマキに操作してもらったから」
「これを僕に?」
「あぁ、その転移魔道具に使われる魔力は全て俺からの供給で済むから安心していいよ。アルはそれを発動するだけで‥‥‥?」
アルに転移魔道具の説明をしていると。アルは転移魔道具をずっと見つめている。
「セツナ君の所に好きな時に行けるの?」
嬉しそうな表情し涙を浮かべるアル。
「あぁ、だから。しばらくお別れとか言わないでくれ。寂しくなるからさ。‥‥‥それを伝えに君の所に来たんだし」
「うん、うん、うん、わかった。‥‥ありがとう。セツナ君‥‥‥」
「あぁ、どういたしまして。アルディス!」
『セルビア』滞在の最後の夜の日はアルの部屋でこれまでの旅の思い出を夜遅くまで語り合ったのだった。気づけいた時には外は明るくなっていた。
翌日。首都『オーディン』西地区『アルフォズル』
『セルビア』出国の朝が来た。
その日はエウロペ大陸中から観光客や報道陣。多種族が集まりお祭り騒ぎであった。
そして、『セルビア』側では地上と地下の2つの国を代表する。両国の女王達が立ち。その周りを上位妖精や円卓の騎士達がきらびやかな服装や鎧を着て。整然と凛々しく並んでいた。
「‥‥‥やっぱり。ああやって見ると凄まじい戦力だよな。大国『セルビア』っていう国は」
「何を今さら言っとる。セツナ。そんなこと分かりきっておるわ。もし、今、人族が戦争を仕掛けて来たら。間違いなく負けるのは人族だろうのう」
「だよな。しかし、地上の上位妖精と円卓の騎士達が並ぶとあそこまで威圧的というか。凄みがあるよな」
「それを他国に見せるための出国式典でもあるんだぜ?カミナリ!」
久しぶりに黒鎧を纏った。ヒスイが俺の隣で答えた。
「そうなのか?」
「そうだぜ! 内戦でボロボロです! なんて言えねえからな。ユグドラシル地方を狙ってる奴等なんてまだまだ嫌がる。ガリア帝国に死の大地に住む奴等なんかはそうだな!」
「‥‥‥内戦で。弱ってる今がチャンスってことか‥‥」
「だがそうはさせぬ。同盟関係の『魔王領』やユグドラシル地方の多種族がそれを絶対に認めん。だから、安心してこの国を去れるんじゃ」
「あぁ、そうだな! メイエスさんよう!」
「うむ。そうじゃな! ヒスイ」
‥‥‥コイツらも以前よりも。だいぶ、仲良くなったよな。
「んで? セシリアは何処に言った?」
「セシリアなら。あそこじゃ!」
エスフィールは『セルビア』を代表する者達が集まる式典会場を指さした。
「うにゃあ~、『セルビア』の飯はメチャクチャ美味しかったにゃあ!」
「はっ?!」
「『妖精国』の貝料理はメチャクチャ美味かったのにゃあ~!」
「あん?」
「『セルビア』は飯がメチャクチャ美味いのにゃあ~」
「おい! あのお馬鹿のスピーチを誰か止めろ!」
「‥‥‥‥もう遅いぜ! カミナリ!」
「うむ。、この発言はエウロペ大陸中に伝わり。海を渡り。他の大陸にも伝わることになるのう。‥‥‥私じゃなくて本当に良かったぞ」
「何、安心仕切ってんの? エスフィール。あのバカ猫は元々、俺の旅の仲間で」
「うむ、過去にあんな事を式典で喋る猫を仲間にしていたと世間に思われるのう。可哀想に。、セツナ」
「同情するぜ! カミナリ!」
うんうんっと! 首を縦に降るう二人。
「くそっ! ちゃっと止めてくる‥‥‥」
ガシッ!
両肩を二人に捕まれる俺。
「止めておけ、セツナ。身バレするぞ!」
「あぁ、そうだな! 行方不明中の勇者が見つかったら大騒ぎになるぜ。カミナリ!」
「いや、でも! 俺の過去の名誉がああああ!あのアホ猫に!」
「『セルビア』の焼き菓子は美味いのにゃあ~!!」
そして、それから1時間程。セシリアの『セルビア』グルメポエムは続いたのだった。
首都『オーディン』西口
「では、アル先輩また会いましょう!」
「バイバイにゃあ~! アル~!」
エスフィール、アル、セシリアは三人で握手をしながら別れの挨拶をしていた。
「セツナ! よくも式典なんてセコい真似を!!」
ギャラ先生が怒りながら俺に近づいて来るが。
「はい。そこまでだよ! 騎士の中の騎士ギャラハット卿」
「はい! そこまでです」
「フローレンス?! サグラモール! 止めないでくれるかい? 彼は私と一緒に『幻獣の楽園』に‥‥‥」
何処かへ連れ去られていく。ギャラ先生。
「さようなら! ギャラ先生! 永遠に」
「セツナ!!!」
「バイバイ! ご主人様ーー! また、会おうね!!」
「主殿。じばしのお別れです。何かあれば召喚を」
「はい! 御二人共! お元気でーー!」
「‥‥‥何をあんなに騒いでるのかしら? ギャラハットは?」
「さぁ? 色々あるんじゃない?」
「セシリア様は何処にいらっしゃるんだ?」
「‥‥‥‥ユーウェンさん。ガチ恋中なの?」
「あんなに、腹黒猫。ほっときなさい!ユーウェン!‥‥‥あぁ、いた! ナルカミ! ちょっと!」
俺がメリュジーヌ卿とイフリート様に別れの挨拶を叫んで入ると。次々と『妖精国』で関わった。円卓の騎士達が集まって来た。
「ベディヴィアちゃんに、エロパーシヴァル卿、その後ろにはアグラヴェイン卿とユーウェン卿でしたっけ?」
「そんな、感じよ‥‥‥まぁ、色々あったけど世話になったわ!ナルカミ!達者でね」
「ええ、ベディヴィアちゃんも」
「呪いから解放してくれてありがとうございました。ナルカミさん」「‥‥‥守ってくれてありがとう」「ケイ殿と私を救ってくれてありがとうございます。ナルカミ殿」
『エキドナ』の呪いから解放してあげた人達から次々にお礼を言われた。
「いいえ。とんでもない。俺は何も‥‥‥皆さんが無事で助かって良かったです。また、何処かでお会いしましょう。」
「「「「必ず!!!!」」」」
4人はそう言って。自分の持ち場へと戻って行った。その後は、ガウェイン卿やトリスタン卿、何故かボロボロのぺリノア卿と地上の『セルビア』を守護する。四大都市の上位妖精の市長達が俺に挨拶に来てくれた。
そして、最後に
「ナルカミ君」「ナルカミさん」
『セルビア』と『妖精国』の二人の女王が俺の元へ近衛兵に囲まれながらやって来た。
「モルガン様に‥‥‥セルフィーユ女王‥‥‥こんにちわ‥‥」
モルガン様は良い。セルフィーユ女王には申し訳ない気持ちで胃がキリキリする。
「「今回は我が『セルビア』を救って頂きありがとうございました」」
おぉ、流石は姉妹女王。シンクロしている。
「あら? お姉さま。ごめんなさい。」
「フフフ、良いのですよ。セルフィーユ」
仲良いな。おい。うちの星奈にも見習ってほしいものだ。本当の兄妹とはこのようなものだと。
「いえ。俺もこの国の人達には色々。助けて貰いましたから。特にアルディス王子には」
「ん? アルと何か?」
モルガン様はニヤニヤしている。
セルフィーユ女王は不思議そうな顔をしている。
「まぁ、あれですよ。セルフィーユ。アルディスにも。その‥‥‥春が来たというか‥‥‥フフフ」
「春が来た。‥‥‥!」
何かに気づいてしまったらしい。
「イケメン、元勇者、7の秘宝の所有者、転移魔法に治癒魔法、召喚魔法に聖魔法‥‥‥合格です。セツナ君」
何故か俺の呼び方がナルカミさんからセツナ君にクラスチェンジしたぞ。
「は、はぁ、では、これにて失礼します‥‥‥」
そうして、俺はこの場を去ろうとした瞬間。
「ちょっと待って! セツナ君!」
誰かに呼び止められた。
「‥‥アル?」
そこには式典用のドレスを着た美しい金髪の女性エルフが立っていた。
「アルディス? その格好?」「フフフ!」
驚くセルフィーユ女王とその隣で微笑むモルガン様。
「アル。その格好」
「うん! 昨日の夜決めたんだ。もう女性であることを隠すのを。だから、だからね‥‥‥セツナ君」
「‥‥‥うん」
「だから、いつか、必ず僕を迎えに来てね。何年、何十年でも君を待つから僕を迎えに来て。セツナ!」
そう言いながら。アルは俺に右手を差し出した。
あぁ、この場所では、それが限界なんだね。アルディス
そして、俺も静かに右手を差し出し。アルの華奢な手を優しく握る。
「あぁ、必ず迎えに行くよ。アル。約束する。俺の大切な人」
「‥‥‥うん! ずっと待ってるから。セツナ君。また、会おう!」
「‥‥‥あぁ、必ず。ユグドラシル様に‥‥‥オーディン様に誓って!迎えに行くよ」
「‥‥‥うん!」
そうして、俺とアルはお互いの右手の握手をほどいた。
「よし! 行こう皆。今度の目的地はアテナ地方にある『魔王領』だ!」
「あぁ、気をつけて行こう!」
「久しぶりの魔王領だぜ!」
「美味い物沢山あると嬉しいにゃあ」
そして、俺達四人は首都『オーディン』をの西門を潜り。次の目的地である。『魔王領』へと歩み出したのだった。
‥‥‥‥エルフと妖精の国『セルビア』よ
沢山の出会いと思い出をありがとう。
決してこの地の事は忘れない。
そして、君の事も絶対に必ず会いに行くよ。
沢山の思い出をありがとう。
君との出会いに感謝します。
本当にありがとう。思い出の国『セルビア』よ!
エルフと妖精の国『セルビア』編
完結。
これにて長編。『セルビア』編。終了です。
長い間。この章を読んで頂ありがとうございました。
しばらくは道中の物語が続きますのでよろしくお願いいたします。




