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『セルビア』城内
現在、俺、エスフィール、セシリア、ヒスイ、アルディスは王座の間へと来ている。
そして、目の前には、アルディスの母親であり。この国のトップ。セルフィーユ女王が玉座に座り俺達と向かい合っている。
うぅぅ‥‥‥‥すみません。ちゃんと責任取ります。本当にすみません。
俺は心の中で何度も繰り返し謝罪の言葉を思い浮かべる。
「皆様、『妖精国』の『厄災』を取り払って頂きありがとうございました」
「い、いいえ、こちらこそ。本当にすみません」
「すみません?」
セルフィーユ女王が不思議そうな顔で俺を見ている。
(バカモン! 黙っておれ。セツナが喋らなければ。アル先輩はあの事は誰にも言わんと言っただろうが)
(そうだよ! お母様はあれで感が凄いんだから余計な事は言っちゃ駄目)
(モガモガ)
アルとエスフィールに口を抑えられながら。そう言われた。
「‥‥‥‥随分と3人は仲が良いのですね。アルディスがここまで男性に心を開くとは」
セルフィーユ女王が俺達の関係を疑い初めている。
「そ、そりゃあ、『妖精国』で1ヶ月位一緒に旅をしていれば‥‥‥仲良くもなるよ‥‥‥お母様‥‥‥ねぇ?セツナ君?」
(モガモガ?モガモガ!)……胸当たってんだよ!
「そうです! そうですとも!」
今、気づいた。エスフィールよりもアルディスの方が大きい、何がとは言わないが。
「そうですか! アルディスにもようやく親しい『男の子』のお友達ができましたか、これからもよろしくお願いしますね。ナルカミさん」
何故か俺の名前だけ、呼ばれた。
「は、はい! お母様」
「お母様? 何故、私が貴方のお母様なんでしょう?」
「黙れ! 貴様!」
「口を閉じなよー!」
(モガモガ、モガモガすみません)
「‥‥‥‥何やってるにゃあ?コイツら」
「さぁな、わかんねえ‥‥‥‥」
俺達のやり取りをセシリアとヒスイが少し離れた所から見ていた。
その後、『妖精国』での旅の経緯、(言えない部分は省いた)や戦後処理等を事細かにセルフィール女王及び大臣達に報告し解散となった。
『セルビア城』・来賓室・夜
俺、エスフィール、セシリア、ヒスイはそれぞれ一人一人に来賓用の客室をあてがわれ。自由な時間を過ごしていた。俺はというと部屋のベッドに寝そべりボーッと過ごしていた。
コンコン!
そして、唐突に来賓室の入り口扉がノックされた。
「ん? はい、どうぞ!」
「お邪魔しま~す。エヘヘ」
入ってきた人物はスーツを着た。アルディスだった。
「なに? その格好? アルは男にTSするのか?」
「なるわけないでしょう。それにTSってなに?」
ポコリ!
軽く背中を叩かれた。
「祝勝会だよ。祝勝会。セツナ君が絶対出たくないって言った。『セルビア』の祝勝会!」
「‥‥‥‥祝勝会は『妖精国』で散々やったからもういいや」
「僕はそう言うわけにはいかないの」
「王族だもんな‥‥‥‥仕方ない、仕方ない」
「‥‥‥‥何? 他人事みたいに言ってるの?バラすよ?全てお母様にバラして、僕と同じ土場似たって貰うよ?セツナ君?」
「‥‥‥‥アル? 今なんと?」
「そうだね。あっちの世界でもかなり裕福な家みたいだったし。教養も王族並‥‥‥いや、それ以上にある事が分かったしね。‥‥‥それに実績もある。元勇者に、数々の魔法も使えて」
「いや、あの?」
「今回の『ヴォーデイガン』、『エキドナ』撃破の立役者だもんね。こんな、優々物件。お母様がほっとくわけないしね? 僕達の関係。全部バラして結婚しちゃう? そうすれば。忙しい日々がセツナ君を待っているよ。強制的に祝勝会に参加させられたりとかね」
彼女は今、とんでもない事をさらっと言った。
「いや済まなかった。アル。バラすのはまだ先にしてくれ。俺はまだ死にたくない」
「うんうん、謝ってくれればそれで良いよ……隣、座っても良い?」
「ああ……」
「‥‥‥‥‥全部。終わったね!『セルビア』の厄災」
ベッドに腰かけたアルは神妙な顔をして俺に言った。
「あぁ、これで『セルビア』は元の平和な国に戻るな」
「‥‥‥‥うん。セツナ君達もあと少しで『魔王領』への旅を再開するんだよね?」
「あぁ、そのつもりだ。世話になった人達に挨拶をしたら。西の『入国門』から魔王領を目指す。」
「そう‥‥‥‥」
アルは何処か寂しそうな表情を浮かべる。
「アルも一緒に行くかい? メリュジーヌ卿と一緒に?」
「‥‥‥‥それは無理だよ。セツナ君。内戦で気づいたこの国を一刻も早く建て直さなくちゃいけない。『妖精国』のメリュジーヌ卿もそうだけどね。今回の戦いでの被害は僕達が思っていたよりもかなり大きかったし」
「そうかじゃあ、アルとメリュジーヌ卿との冒険も後、数日で終わりなのか」
「‥‥‥‥うん。そう」
素っ気ないアル。
「じゃあ、地球に来るかい? 興味津々だっただろう?」
「‥‥‥‥‥それも今は無理かな。やることが多すぎるもん。僕はこの国の王子様だからね。役目をちゃんと果たさないと」
来賓室の壁の一点を見つめながら。そう話すアル。
「あぁ、そうか。会いたくなったら。さっき、渡した転移魔道具を使っていつでも‥‥‥‥」
「呼べないよ。呼べる訳ないじゃん。君には‥‥‥セツナ君にはセツナ君の暮らしや時間があるんだよ?それ生活をこの魔道具を使って何時でも君を呼び出してたら君が大変になるじゃないか」
アルが俺に向かって話し始める。
「アル‥‥‥‥」
「うん! セツナ君もきっと分かってて渡してくれたんだよね?君は凄く優しい人だから‥‥‥‥離れたくないよ」
アルが俺の腰に手を伸ばし抱きついて来た。
「アル‥‥‥‥」
「離れたくない。本当はもっと一緒に君と居たい。冒険したいよ! 一緒にいて甘えたい、沢山、沢山、セツナとの思い出をもっと作りたい。こんな、気持ちになったのセツナが初めてなんだよ?初めての気持ちなんだよ!」
「うん……」
「もっと一緒に居たい。居たいけど。僕は、僕はこの国の王族だもん。皆がちゃんと生きていけるようしていかないといけないんだ!!」
涙を浮かべながら。叫び続けるアルディス。
「分かってる。分かってるよ。アル」
「‥‥‥‥もっと、セツナと一緒に居たい」
「うん‥‥‥」
「地球でもっと色んな所に行きたかった」
「うん‥‥‥」
「セツナに‥‥‥セツナ君に会えて僕は幸せでした‥‥大切な思い出を沢山くれてありがとう」
「‥‥‥‥うん」
‥‥‥‥‥‥
「俺も君に‥‥‥‥アルにアルディスに会えて本当に良かった!‥‥‥‥この国で‥‥‥『セルビア』で俺を支え続けてくれてありがとう。アル‥‥‥‥」
「‥‥‥‥うん‥‥‥セツナ君」
そして、暫くの間。アルとの大切な時間を過ごしたのだった。
今回の旅で一番良かった事はと聞かれたら俺はこう答えるだろう。目の前にいる大切な人。アルディスにアルに出会えた事だと。
‥‥‥‥‥‥君との同じ道筋は今回はここまでだけど。
また、別の道で必ず交わる事だろうと俺は確信している。
俺の命の恩人。俺の心の支え。
君との想い出は消して忘れやしない。
暫くの間のお別れです。
だから、だから、少しだけ、本当の少しだけ、我慢していてほしい。
俺も我慢して待っているから。
君との道がまた交わる時を永遠に。
だからしばしのお別れです。
俺の心の支えであり大切な人。
アルディス・セルビア様‥‥‥‥‥‥




