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魔道具をプレゼント~『神気(しんき)』とは


①魔道具のプレゼント



神成 星奈です。


昨日は色々会っだけど楽しかった。


特にお風呂場での女子トークは長々となり。そのトークの中心だった兄をよぶはめになるとは思わなかった。


兄に介抱され自室のベッドに寝かされれ。少し経った後、眠りについた。


今日のお昼頃まで寝てしまっていたのはびっくりしたけど。まさか昼まで寝ていたなんて………テスト疲れもあったんだろうけど。失敗したなぁ。


そう思いながらリビングへと向かうと兄と天王洲先輩がキッチンでギャアギャア痴話喧嘩していた。

昨日までは有り得ない光景だったけど。


私とユナさんが寝た後。あの2人で何かしら話し合ったんだろうか?

気になったけど2人の中ので関係だし下手に他人が入り込むのは良くないと思い。その場では聞かないことにした。(天王洲先輩には後で尋問しよう)


「おはようございます。兄さん、天王洲先輩」


「わかっ、分かったから。お詫びに今度、2人で出掛けよう」


「全く、ではそれで今回は手を打ちます。あっおはようございます。星奈さん」


「おっ!おはよう」


私の存在に気づいた2人が声をかけてきた。


「おはようございます。二人共。お早いですね」


「お早いとは?もう昼過ぎだぞ」


「まだ昼過ぎでしょ?変な所で細かいんだから。あれ?ユナさんは?」


「あのアホメイドはまだ寝てるぞ。いつもの事だ気にするな。昼飯できてるからテーブルで待っていてくれ」


いちを家では役職メイドさんなんだけど。それで良いの?

私はそう思いながら天王洲先輩と一緒にテーブルに着いた。


「星奈さん。昨日は色々ありがとうございます」


ありがとうございます?あーっやっぱり兄と何かしらあったらしい。


「その感じだと兄と仲直りできた感じですか?」


「えっ。はっはい!もうセツ君とは何のわだかまりもありません。今後は前みたいに仲良くしていこうと言われましたし」


天王洲先輩は何かを思い出したらしく。顔が赤くなっていた。あの兄の事だ。女の子と二人っきりの同じ空間にいさせるだけで何かしらのイベントを量産したのだろ。

というか、あからさまに天王洲先輩はデレデレだった。


「もしかして寄りを戻すとかですか?」


「へぁっ?!いいえそうではないですよ。今は良き友人です。今は」


『今は』を二回言ッた時の天王洲先輩はどこか覇気があり怖かった。


「そうなんですね。天王洲先輩と兄が昔、みたいな仲良くなれてホッとしました」



「この度は星奈さんにもご協力していただいて感謝の使用がありません。なんと御礼を言ったら」


それを聞いた私自身は特に何もしていないので慌ててしまった。


「いっいえ。私はそんなたいした事してないのでお気になさらず」


「そうですか。でも何かありましたらご相談下さいね」


「分かりました。その時はよろしくお願いします」


昼食を取りつつそんなやり取りをしていると眠そうなユナさんが起きてきた。


「おはようなのじゃ~」


「おい、メイド。君が最後だぞ。メイドなのに」


「眠いのじゃ~!いただきます」


ユナさんはそう言うと眠そうに目を擦りながら昼食を食べ始めた。


「たく~、毎日、毎日!君はもっとシャキッとしてくれよ」


「努力してみるのじゃ~」


「おう、頑張ってくれ」


そう言うと空いた皿を片付け始めた。

ユナさんとのやり取りは毎回の事らしく。慣れたものという感じだった。


「あっそうだ。3人ともこれ渡しとくから受け取ってくれ」


兄はテーブルに昨日の魔道具と似たようなアクセサリーを数個置いた。


「昨日君たち、魔道具を欲しがっていただろう?だから、その中から好きな魔道具をプレゼントするから選んでくれ」


私と天王洲先輩は同時に持っていた箸を落とした。


「ごくり、この中のどれかをいただけるのですか?」


「なんでも?」


「?。ああ!好きなのをどうぞ」


そう言い終えた瞬間。私と天王洲先輩は魔道具へ手に伸ばしどれが良いか物色し始めた。

兄はドン引きしていた。


「一個だけだからなぁ~」


私達の行動に呆れたのか。キッチンの方へと消えて行った。


「やはりどれも綺麗ですね。1つだけとはもどかしいです」


「兄が作った物とはいえ。こうも綺麗だと女心がウズきますよねぇ~!くうぅ!」


「私からすればどれも似たような物に見えるからなんとも言えぬなぁ。おっ私はこれを貰うぞ」


そう言ってユナさんが選んだ魔道具は、他の魔道具よりも大分地味な物だった。


「ユナさんはそれにするんですか?」


「うむ、この魔道具の効果は、身体強化の魔道具じゃ。何かあった時に便利じゃと思ってな」


そうして手に取ったブレスレットを右手の方へと着けた。


「では、わたくしはこれを」


天王洲先輩が手に取ったのはペンダント型のブローチだった。


「その魔道具は相手の思考を読める魔道具じゃな。まぁしかし魔力の概要が無い地球じゃ深層心理まで見れんと思うぞ。見れて今の相手の気持ち位じゃな」


ユナさんからそう説明を、受けた天王洲先輩は一瞬凄いにやけた顔になり。さっそく魔道具を首元に着けた。


「じゃあ、私はこれで」


「それは思考強化の魔道具じゃな。アリーナでは良く裁判や議会の時に使われておったのう。まぁ、使い方次第じゃな」


綺麗だから良いもん。魔道具の効果なんて二の次よ。

説明を聞きながら私はそう思った。


「まぁ、魔道具なぞ。使い手次第じゃな。良くも悪くもなるのも。セツナのやつも昨日の反応で、お主達にも魔道具を持たせると決めたんじゃろう。護身用の意味も含めてのう」


「そうなのですか?」


「うむ、普通ならこんなどれも高価な魔道具を人にホイホイあげる物などおらんぞ」


「昨日もそんな事言ってましたね?そんな価値かある魔道具何ですか?」


「そうじゃぞ。特に神成シリーズの魔道具はどれも貴重なんじゃ」


「神成シリーズって(笑)」


「本当じゃぞ。アリーナでも滅多に市場に出回ることの無い魔道具じゃ。それをタダで貰えるとは幸運なことじゃぞ」


ユナさんに説明されても。いまいち兄の凄さが実感出来ないのは小さい頃から変態な兄と一緒にいる為なんだろうなぁとか考えしまう。義妹の神成 星奈でした。






『日頃の恨みじゃ~!覚悟せい!』



私は元魔王である。 今はメイドじゃ。


今は昼食も食べ終え。魔道具選びも一段落らくし皆、各々の時間を過ごしている。


しかしまぁ。あのセツナのやつが私達に気前良くタダで高価な魔道具をプレゼントするとは思わなかった。


昨日、私達が寝ている間に何か心境の変化でもあったんだろうか?うむ、分からんのう。

とりあえず今度。暇なとき聞いてやろう。


しかし今はセツナからもらった魔道具の使い心地を確かめる事の方が重要事項。


さっそく使ってみよう。

昨日の夜。星奈には体の一部だけ力を入れよ。と言ったが。私、程の魔法技術があった者が魔道具を使えばその魔道具の能力を100%に近い状態で使いこなすことが出来る。


では、さっそく………頭から足の爪先まで力が充実していく感じを脳内でイメージする。

うむ、良い感じ、良い感じ。今ならあのセツナにも勝てるやも知れぬ。


ん?…………あのセツナに勝てる?

あやつは今、魔道具を着けていない。いわば、無防備。それに対して私は身体強化されたブースト状態じゃ。


勝てる、勝てるぞいつも、いつも。冷静で余裕ぶりおって!!そんなセツナに勝てるのじゃ。

そう考えた私はリビングで読書をしているセツナを発見して勢いよく突っ込んでいった。


「日頃の恨みじゃあぁぁ!覚悟せいセツナァア!」


「ん?」


私が襲いかかってきたのを慌てることなく見ている。そんな余裕そうにしているのも今のうちじゃ。


私はセツナを投げ飛ばそうとしたが、その瞬間、電流が走り抜ける感覚が身体全体に行き来した。


「がっはっ!なんだこれは。」


「君?何してるんだ?日頃の恨み?覚悟せい?」


「そんな、事よりなんじゃこれは?!というか身体の下半身が痒い?!変な感覚は」


「君?もしかして俺に攻撃しようとしたのか?もしそうならアホな事をしたな。君にあげた魔道具はもし製作者に攻撃しようとした場合。魔道具の効果が反転して。使用者を蝕む様に細工しているんだぞ。確かその魔道具だと身体強化だから反転して痒み効果の魔法にかかったんじゃないか?」


「くっ!、おのれなんという魔道具を私に与えとるんじゃ。んっ!というかしたが痒い!」


「いや君が勝手にそれを選んだろう。俺は悪くないぞ。後、その痒み効果も3時間位すれば解けるから我慢してくれ。」


「さっ3時間?!フッふざけるでない。こんな状態を3時間も耐えられるか!!」


「俺も君も浄化魔法もう使えないんだから耐えるしかないだろう?それに君が魔道具の契約を破ったのが悪いし。諦めてくれ」


セツナはそう言うと読書に戻った。

彩音と星奈は貰った魔道具を色々な角度から眺め干渉していて部屋に籠っている。あやつら魔道具を気に入りすぎじゃ。くそう。


「くぅぅ。まさかこんな事になるとわ。とにかくお腹の下部が熱いし。痒い。変になる」


「まぁ、痒みの魔法だからな」


「何でお主はそんなに冷静なのじゃ」


「君の自業自得だからだよ。俺に非はないよ」


「貴様それでもアリーナを救った勇者かぁ?1人のメイドも救わんとわ」


「いや、君がアリーナを危機に追いやった現況」


そうして読書に戻る。


そんなやり取りを何回かやっていて。唐突に私の限界が来た。

「ヤバいのじゃ!体が痒い、痒いのじゃ」


そうになった時、セツナが私の頭の額に手を置いた。


「おっと!そろそろ限界だな。」


そう言うとさっきまであったかゆみや熱さがなくなり体が軽くなった。


「こっちの世界じゃ魔法は使えなくなったがやっぱり『神気』は使えるみたいだ。エスフィールのお陰だ。ありがとう。」


「そんな事より今はトイレに行ってくるのじゃ。お腹が痛い。色々と覚えておれよぅ!」


そう言って私はトイレへと直行した。


数時間、トイレに引きこもり。熱くて痒い何かと戦っていたのだ。下半身がとにかく痒い。おのれ、セツナめぇ、覚えておのれぇぃー!


「では、わたくしはこれでお暇させて頂きます。皆、色々とありがとうございます」


玄関先で彩音は皆に深々と御礼を言っていた。

今日の夜から用事があるらしく、帰るとの事。


金持ちのお嬢様とやらは忙しいらしい。


「また学校でな」


「またいつでも遊びにきてくださいね。天王洲先輩」


「うむ、またいつでも遊びに来るのだぞ」


そう言って見送る私を彩音はジーッと見ている。


「なッなんじゃ?ジーッと私の顔など見て!」


彩音にそう言うと私に近づいて来て耳打ちした。


「わたくしも結構。エッチですけど。ユナさんも負けておりませんね」


「なんじゃ?!いきなり」


「トイレでの声、もれていましたよ(笑)


そう言われた私は恥ずかしくなり彩音との距離を少し取った。

「いッ、言い振らすでないぞ?」


「はい2人だけの秘密です。また、時間がある時、お会いしましょう」


そう言って彩音は帰っていった。


星奈は不思議そうにこちらを見ていたが私はそんな事気づかないくらい同様していた。


もしや一番知られたら不味い者に。あの事が知られたのかもしれぬ。

いったい、これからの地球での生活はどうなってしまうんじゃ~


っと思いながら私は残りの休みを過ごした。





『帰る』



「じゃあ、私も学校の寮に戻るからまたね。兄さん」


「気をつけて帰れよ。言うても父さんが寮までの帰りの車を手配してたみたいだな」


「全く相変わらずの親バカよ」


そうは言っていたが顔は凄く嬉しそうだった。


彩音が帰った翌日の朝、義妹の星奈がそう言って学校の寮に帰っていった。


俺の今の現状を詳しく知れて満足したのか。

思ったよりもすんなり帰って行ったな。


聖豊中学は成績が良いもの程。優遇される学校だ。

まぁ、現実の社会でも優秀な能力や技術を持っているものが出世したり高い給料が与えられるので当たり前の事なのだが。

聖豊中学でも星奈は最初こそ。成績が振るわなかったがここ最近は成績の上位に食い込む程の勢いがあるらしい。

その為。本当は結構、高い入金料を腹はないと行けない寮も無償で貸し出されているだとか。


寮の生活は一般的な学生よりも充実した設備を使え寮にはなんと勉強をサポートしてくれる教師も数人常時在籍している。


進学校である聖豊中学でこれ程のサポートを受けられる場所は無いため。わざわざ高い入金料を払ってでも聖豊寮に入りたい生徒は沢山いるらしい。

休みの土日祝は家等の帰宅を許されているのだが寮に入居している人達は寮の生活が便利で余り帰らないと聞く。

そんな星奈もその一人で聖豊寮に入ってからは滅多に家には帰って来なくなった。


なんでも寮の暮らしは刺激的で楽しいらしい。勉強も家よりも捗るとかなんとか。


家の両親もそれで星奈の成績が上がるならとかなり協力的である。

とういうか星奈はかなり家の両親から溺愛されている。


年相応に育つ星奈は両親にとってとても新鮮だったとかで星奈を泣かせたら許さないと散々言われて育ってきた。


星奈の事は大事に思っているがそれは家族としてである。

ゲームや漫画みたいに血が繋がっていない義妹に恋をするなんて事は全く無く普通に二人仲良く育った。


まぁ星奈との関係はこのた辺りにして問題なのはエスフィールのやつだ。

昨日から様子がおかしい。魔道具のペナルティで苛め過ぎたからだろう。ちょっと様子を見に行く事にして、俺はエスフィールがいるエスフィールの部屋まで向かった。



コンコンっとドアを軽くノックした。


…………返事が無い。いないのか?


数秒経っても返答が無いので俺はその場から離れようとした。


「なんじゃ」


小さかったがエスフィールの声が中から聞こえた。


「少し話がしたいんだ?部屋に入っても大丈夫か?」


「好きにせい」


そう言われたので扉を開け部屋の中へと入る。

結構、大雑把な、性格の癖に部屋は綺麗に片付けられている。


「何のようじゃ?」


「いや、昨日はすまなかった。俺もやり過ぎたよ」


そう言うとエスフィールの顔が少し赤くなる。


「今さらなんじゃぁ!昨日、私がどれだけ痒かったと思うておる」


「だから、ごめん。俺もあれはやり過ぎたと後で反省したよ。


「全く謝ればなんでも許すと思っておるのかお主は?」


「いや思ってないよ。だからどうすれば許してくれるんだ?」


「アリーナに帰らせてくれ。それだけじゃ」


声が一段低くなりエスフィールが答えた。


「…………アリーナにか。」


「そうじゃあアリーナに帰れば魔法も使えるし。メイドもしなくてすむ。それからお母さまにも会えるのじゃ」


エスフィールは少し涙ぐんでいた。

それを見た俺は、やっと、今のエスフィールの本当の心の叫びを聞いているんだと感じた。


彼女が地球に飛ばされて来てから。俺の判断やペースで物事を決め手いた。それはエスフィールも承諾していたが、目に見えない形でストレスが貯まっていき。

今まさに爆発する寸前なのだ。


「アリーナへ帰るか………。そうだな。一度今のアリーナの現状を確かめに行ってみるか」


「えっ?」


1度はもう2度と戻らないと決めた。異世界だが、エスフィールのこの状態は見てもいられなくなった。

怖いもの見たさも有り1度アリーナに帰還しようか昨日辺りから迷っていた。


「帰れるのかアリーナに?」


「まぁ、まだ分からんが魔法の袋の中に何かしらの時空間転移魔法位入っているだろう」


「お主。そう言う類いは封印したとか言うておったろう」


「あーあ!あれは嘘だ。」


「なんじゃとぉ?!この!バカにしよって!」


そう言ってエスフィールは俺めがけて突撃してきた。

俺も油断していたため2人で倒れる。


数秒経って唇に柔らかく、暖かい感触が伝わってきた。

目を開けると俺はエスフィールと唇と唇を合わせ、キスしていた。


「んー~!何すんじゃ!バカたれぇ!」


ものすごい勢いで離れていくエスフィール。


「きっ君のせいだろう?いきなり突っ込んできて!」


「なんじゃとぉ?!この変態そう!そうじゃ!彩音から聞いたぞ。昔から彩音と二人っきりの時はやたら身体を触って来たとか言うておったのう」


「彩音のやつなんて事をバラしてんだ」


「ほれ見ろ。やはり変態じゃな。」


「君も昨日はトイレで長々何をしていたんだ?あぁー答えなくて良いぞ。聞きたく無いからな」


「きぃー!元はと言えばお主が魔道具に変な痒みの魔法をかけたからじゃろうが」


そんな言い合いが続き日曜日は過ぎていった。


今週中にでも一度。魔法の袋の中に入り。転移魔法の魔道具があるか確かめよう。(何かしらは絶対にあるはず)


ホームシックになっているエスフィールの為にも必ず見つけようと。俺は決めたのだった。







『神気』とは


現在の時刻は夕方の5:00を過ぎようとしている。


明日からまた学校が始まる。始まるが。その前に確認することができた。


………。


今回の連休は色々な出来事があった。


半年の間ギクシャクしていた。彩音との関係が前の様に良好になったこと。


彩音と星奈に俺が異世界に行っていた事がバレ。その説明をさせられたこと。


魔道具の譲渡やエスフィールのホームシックもそうだ。


この短い2日という連休でも日夜色々な事が起こる。


特に彩音との仲直りは自分がまだまだ幼く。相手を思いやりったりするという当たり前の考えが欠場していた。


彩音があそこまでして行動してくれたお陰でまた一つ人間として大切な事を学べたと思う。


その御礼と言うわけでは無いが彩音と星奈に魔道具をお守代わりにプレゼントした。


どさくさに紛れて1名。勝手に拝借していたがその後に仕返しができたのでとりあえず。

許すことにした。


あの時、エスフィールがなっていた痒みの状態。本来あんな症状にはならない筈だった。


痒み(反転)魔法とか言っても身体の発汗作用を少し高め運動をスムーズに行う為のふざけたレベルの魔法だ。


たぶんだが魔法族であるエスフィールが魔道具を使うと魔道具の性能を100%以上に引き出す為。あの様な変な状態になったんだと考えられる。


最後まであのままにしておいたら不味かったので、一か八か『神気』(しんき)が人に対して。こちらの地球でも使えるか試してみたところ。………なんとこちらでも普通に使えることがわかった。


ちなみに『神気』とはこちらでいう『気』、『チャクラ』、など。様々な言い方で昔から達人等が修行等でたまたま身に付け無意識に使っている力だ。


この力は全ての生き物が潜在的には取得可能な力だがだいだいの生き物はこの力に気づかないで将来を終えるという。


とかいう俺、自信もアリーナにいる時に教会の人達に教えてもらわなければ一生気づかないまま過ごしてしていただろう。


アリーナでも『神気』というものは極秘で。ごく一部の教会の人間や辺境の部族などしか知られていない力らしい。


あの時は確かアリーナの聖女の代わりに洗礼受けさせてしまった。お詫びとして『神気』を教えてもらったんだった。


アリーナの魔法とは違い物質に魔法を付与等はできないが『神気』は『神気』で極めれば色々な事に応用ができるらしく。


身体能力の向上や五感を鋭くしたり。相手の身体に触れて魔力の循環を外に逃がす(エスフィールに行ったもの。)、自信が持っている魔力と『神気』を複合させて普段の倍以上の力を出せたりできる。


勇者であった。俺が飛び抜けて戦闘に有利だったのも複合の効果を内緒で使っていた為である。

協会の人達にも注意されたが『神気』という技術は協会でもかなりのシークレットらしく。


『神気』を教えてもらっている時も教会のどこかの司祭が『神気』の全てを教えるから聖女である孫を嫁に貰ってくれとか言ってきた。


俺はまた司祭のいつもの冗談だと勝手に思い。適当にその場では了解了解と言いながら。『神気』について学んだのだった。(どのみち地球に帰ってきてしまって連絡がしようが無い。アリーナに戻れたら一度、協会の方にも顔を出してみようと思う。)


最初の頃は魔力と一緒で『神気』も失ってしまったと思っていたが暇な時に遊び半分で『神気』を使用してみたら。なんとあっさり出来てしまい。びっくり仰天であった。

それからは家にある書斎で『神気』について調べた結果。言葉は違うがそれに似た力というものが幾つかの本に書かれていた。


日本だと忍術。中国では仙人の話。インドでは仏教関係で類にした話が出てくる。


もしかしたらアリーナよりも地球の方が『神気』についての研究が昔から盛んにされてきたのではないかと俺は考えた。


アリーナは魔法が全てみたいな所がある。

だいたい事は魔法で片付けられる為。『神気』さえ使えれば魔力と共に使い混合することでアリーナのだいたいの相手には勝てるのだ。


だからなのかアリーナでも無双できた。


もう一度アリーナに行くと決めたし。あちらに戻ったら何が待ち受けているか分からない。


魔力を失った分を補うためにも暇な時に『神気』の鍛練を再開していこうと思う。


そう思いながら俺は身体全体に「神気」を流すイメージを脳内で作る。

これは魔道具を使う感覚と似ている。

魔法はアリーナの世界では様々な場所に魔力があり。それらを吸収し。何かしらの力やエネルギーに変換する。その為。アリーナではだいだいの人がある程度。魔法を使うことができる。しかしアリーナと違って地球にはそこらかしこに魔力はない。俺もエスフィールも魔法が使えなくなったともいえる。


『神気』の場合は内側にある自信の力を練り身体の隅から隅まで行き渡らせる感覚だ。


久しぶりなので難しい。

そうして久しぶりの『神気』の為。なかなか上手くいかない。気分転換と思いリビングで鍛練の続きをしようとリビングへと向かう。


リビングの扉を開けると洗濯物を畳んでいる。エスフィールがいた。


「おっ!偉いなちゃんと働いている」


「そりゃそうじゃろう。この家のメイドなんじゃから」


それで良いのか?元魔王様。


「なんだかんだ。君がこっちに来てからそろそろ1ヶ月位経つな?そりや、ホームシックにもなるな」


「…………誰がホームシックじゃ………。のう」


「なんだ?」


「………もし。もしもの話じゃが」


「もしもな」


「うむ、もし本当に上手くアリーナに帰れたとしてじゃ。私が、私がアリーナに戻りそのままアリーナに居続けたいと言ったらセツナはどうするのじゃ?」


少し試すような目で見つめてくる。


「……そうだな。………君がもしアリーナに帰ったら寂しくなるなぁ」


「………寂しくか」


「うん。………君はうるさいしアホな行動が時たまあるが」


「おい」


俺は、無視して続ける。


「君と会って君と暮らしてきたこの約1ヶ月はとても楽しかったよ。君は今まで出会った人の中でも特別に俺に色々な景色を見せてくれる。そんな人だな」


「色々な景色?」


「あぁ!!そうだ!まぁ、要は君と出会えて毎日が楽しく充実していると言うことだよ。それだけ、君が魅力的とも言えるだろうな」


「魅力的?………そうなのか?」


「うん。だから。もしエスフィールがアリーナに帰ったら多分おれはものすごく寂しくなると思うが。だが、君にもアリーナで待っている人達がいるだろう?」


「………そうじゃな」


「だから地球に残ってくれなんて俺からでは言えないかな。アドバイスは出来るが最後に決めるのはエスフィール。、自身さ」


「そうか、………分かった」


エスフィールはそう言うと洗濯物を畳むのに戻った。1人でやらせるのも気が引けたので俺も手伝った。その後は2人で話すこともなく淡々と洗濯物を畳終え。エスフィールは自分の洗濯物を持ってリビングから去ろうとしていた。


「のう、セツナ」


「なに?」


「…………質問に答えてくれてありがとう」


エスフィールはそう言うとリビングの扉を静かに閉めた。



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