新たな関係
『キャメロット城』来賓部屋
『魔獣神・エキドナ』を討ち滅ぼされた。
キャメロット城内と城下町では、祝勝会が連日の用に開かれていた。
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
そんな、『妖精国』の国民達が勝利の余韻に浸っている中、俺、カミナリとエスフィール、アルディス王子の3人は、『キャメロット城』の来賓室にあるテーブルに鎮座し。ある大切な話し合いをする為である。
そう! 今後の3人の関係が決まる。大切な話し合いが
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥それで?」
エスフィールが重たい空気の中、最初に発言した。
「はい‥‥‥‥」
俺は小さく返事をした。
「セツナはアル先輩に‥‥‥‥アルディス王子と何があったのだ?」
「‥‥‥‥それはね。ユナちゃん」
アルディスが発言しようとした瞬間。エスフィールが告げる。
「アルディス王子。私はセツナに聞いております。‥‥‥‥貴女は私に謝り、泣き、苦しみました。何故ですか?」
「え? だから、それはね‥‥‥‥」
アルディスが言葉を詰まらせ。顔を曇らせる。
するとエスフィールが優しく、アルディスの両手を握る。
「アル先輩‥‥‥‥私はその理由を直接、セツナの口から聞きたいのですよ。ちゃんと彼から一から聞いて。そして、貴女が何故、涙をながしたのか?その理由を知りたいのです。私は貴女が大切だから」
「‥‥‥‥‥はい‥‥‥‥」
アルディス王子はそう言うと、静かにセツナを見つめた。
「‥‥‥‥あぁ、言うよ。ちゃんと説明するアルディスとアルと何かあったのか。君にちゃんと説明するよ。エスフィール‥‥‥‥」
「そうか‥‥‥‥」
エスフィールは優しく微笑む。
「ぺリノア領地でケイ卿とユーウェン卿との闘いの後に俺達は無事。合流できただろう?」
「そうじゃな」
「その後、レッドドラゴンに全員で乗ってメリュジーヌ卿と合流しようとした時に、俺とアルディスは同時に転移して事は憶えているかい?」
「‥‥‥‥勿論、憶えておるよ」
「その後、なんだ。その後に俺に異変が起きたのは」
「異変? あぁ、アルディス王子が言っていたな。魔力暴走を起こしたのじゃったな?」
「あぁ、その魔力暴走の時、俺は意識が無くて。そのままだと死ぬかも知れなかったんだ」
「あぁ‥‥‥‥」
「それを見かねたアルディスが魔力暴走を治す為に俺を介抱してくれたんだ。それから」
俺はあの時の事をエスフィールに包み隠さず全て話した。
「‥‥‥‥あぁ、そうか‥‥‥‥‥」
エスフィールは俺の話を聞いて部屋の天井の一点を見つめている。
「そうか。なるほど‥‥だから、アルディス王子は私に泣きながら謝罪したのだな」
「‥‥‥はい‥‥‥」
俺は小さい声で頷いた。
「‥‥‥‥‥あい分かった‥‥‥‥セツナ、ちょっと、私の前に来てくれぬか?」
エスフィールがそう言いながら。手招きした。
「‥‥‥はい‥‥‥‥」
俺は静かに立ち上がり。エスフィールに言われた通り。彼女の前に背筋を伸ばしてたった。
「まぁ‥‥‥‥なんだ‥‥‥‥セツナには地球でも世話になっておる。‥‥‥‥‥こちらに戻って来ることができたのもセツナのおかげじゃ。‥‥‥‥私の事を大事に思ってくれていることも理解しておるんじゃ‥‥‥」
「‥‥‥はい‥‥‥」
俺はそれしか言えなかった。
「まだ私とお主は仲の良い男女というだけで付き合っておらぬ。」
「‥‥‥‥そうですね‥‥‥‥」
「それから、今回の魔力暴走の件は、私がお主に質問し詰めよったせいも大きいじゃろう」
「いや、そんなことは‥‥‥‥」
「そのせいで魔力暴走を起こし死にそうになった。そして、その魔力暴走を抑えるには、魔力放出が一番効率が良く。一番の薬なのも昔から知っておる。‥‥‥‥そして、アル先輩がその処置をしてくれたのは私も感謝しよう。実際、私が同じ場面に出くわしたら。アル先輩と同じ様にセツナを助けただろうしのう」
「‥‥‥‥‥」「‥‥‥‥‥」
エスフィールは俺とアルディスを交互に見つめる。
「まぁ、なんじゃ‥‥‥‥今回の件は3人共のミスじゃから、これ以上。私から言うことはない。ないが!‥‥‥‥セツナ」
「‥‥‥‥はい‥‥‥」
「アル先輩と今後。どうして行くつもりなんじゃ?」
エスフィールが真剣に俺に質問する。
「それは‥‥‥‥責任を取るつもりだ! ちゃんと。魔力暴走が原因とはいえ。アルディスの心を傷つけてしまった責任を俺はちゃん取りたい」
「セツナ君‥‥‥‥」
「‥‥‥‥責任か‥‥‥‥セツナ。アルディス王子はこれでも。後々の大国『セルビア』の王になるお方。軽々しく責任を取るなどと申すでないぞ!」
「いや、しかし」
「‥‥‥‥と! まぁ、言いたくもなるがな‥‥‥その他にも私は言いたい事が沢山あるが」
エスフィールはアルディスをジーッと見る。
「私もアルディス王子の気持ちには気づいておった‥‥‥‥セツナに惹かれていく過程ものう」
「いや、ユナちゃん! それは‥‥‥ゴホ、ゴホ、」
アルディスは顔を真っ赤にして咳き込む。
「‥‥‥セツナよ!」
「‥‥‥はい‥‥エスフィール」
「セツナにとって私は大切な存在じゃったな?」
「勿論です」
「今でもか」
「今でもです。それは今でも変わらない!絶対に」
「‥‥‥そうか‥‥‥‥ふん!!」
バチン!!!!
エスフィールが自身の右手に力を込め。俺の左頬をおもいっきりひっぱたいた。
どがあぁぁぁあ!!
「ぐっ!‥‥‥‥」
「セ、セツナ君!!」
魔力の乗ったエスフィールの渾身のビンタは相当な威力があり。俺は軽く数メートル中を飛び。来賓室の壁へと身体をぶつけた。
「‥‥‥‥‥まぁ、なんだ! ごちゃごちゃ、言い訳はするな。男なら私もアル先輩もどっちも大切にして見ろ。大馬鹿者!ぐちぐちぐちぐちと言い訳ばかりしおってからに。してしまったモノはしてしまった!それは分かった。アル先輩もアル先輩です。ぐちぐちぐちぐちと泣きじゃくるばかりで!」
「いや、でもね」
「いや、それでも」
俺とアルディスが困惑していると。
「五月蝿い! 黙れ! 大馬鹿者共! これからは私達3人で幸せになる。今回の責任とやらも皆で取る。セツナはアル先輩と私、両方を大切にして。両方に気を配る。それで良いな。二人共。魔王命令じゃ! はいとだけ答えよ! 貴様ら!」
エスフィールが凄い剣幕で言い続ける。
「はい!」
「アルディス?」
「おい! セツナ」
「はい!」
「‥‥‥‥よし!とりあえずそれで良い! この件はこれで終わりじゃ! セツナ。もう一度言う。これからは私の他にアル先輩も大事にせよ。以上! 終わりじゃ。」
「‥‥‥はい‥‥‥‥」
「ふぅーー! 話し合いも無事に終わったな」
終わったか?
「‥‥‥はい‥‥‥」
俺はそれしか言えなかった。
「フゥー、話し合いも終わったのう。セツナよ。アル先輩に対しての罪滅ぼしとして地球へアル先輩を連れて行ってこい。今のお主なら行けるじゃろう?幸いにもここは魔力濃度が高い。『妖精国』。奈落や冥界め近い故、次元も安定しておる。『妖精国』の兵士達の魔力め手に入り。お主は魔力だけなら全盛期並みに戻っておるな?
この『妖精国』の中ならば、あちらの世界へ迎えるじゃろう」
「‥‥‥はい、戻ってます。エスフィール」
「よし! ならば直ぐに行け」
「了解です。行こう、アル」
「え? 何処にそれになんでさっきからユナちゃんに敬語なの」
「いいんですよ。アル先輩。なぁ、セツナよ」
「はい! エスフィール。行ってきます。神代・回帰・転移門『生還の転移陣』」
タマキの転移門を一度見ていたので同じものを作り出した。
「あぁ、気をつけて行ってこい」
「了解。行こう! アル」
「だから、何処に?ねぇ、セツナ君!!」
グニャン、グニャン、グニャン、グニャン
‥‥‥‥‥
転移門をぐくり次元の間をくぐり抜け。一時的に地球‥‥‥‥俺の住む家に戻って来た。
『神成家邸宅』
「へっ?ここは何処?」
突然、居た場所が変わり。困惑するアルディス。
「ここは地球で。今いる場所は俺の家だよ。アル」
「セツナ君の家?」
「‥‥‥時間が惜しいな。タクシーを使って行こうか。アル」
「タクシー? 何それ?」
「着るものは‥‥‥星奈の部屋や彩音やエスフィールの部屋に勝手に入るのも不味いしな。かといって俺のメイド服コレクションを着させるのも不味い‥‥‥‥」
「ん?星奈?彩音?‥‥‥‥メイド服コレクション?」
アルディスが訝しげに俺の顔を見る。
「ねぇ?セツナ君。ユナちゃんの他にこの家には別の女の子が?‥‥‥‥」
「しょうがない。俺の服を着てくれ」
俺は自身の部屋から急いで、自分の普段着を見繕ってアルディスに渡した。
「何? この服? 見たことない形をしてるね。セツナ君」
「あぁ、地球の服だよ。あそこの部屋で着替えておいでアル‥‥‥もしもしタクシーですか? 車1台お願いしたんですが……」
「き、着替え終わったよ!セツナ君。エヘヘ、ブカブカ」
何故か嬉しそうな。アルディス。男装すると金髪のイケメンにしか見えないな。
「アルのエルフ耳は‥‥‥識別変化の魔道具のアクセサリーを着けてもらって。これあげるよ。アル」
俺は装飾が綺麗になされた魔道具を渡した。
「わぁ、綺麗。ありがとう。セツナ君」
「よし!行こう」
俺はそう言うと。アルと一緒に玄関を出た。
アルが不思議そうな顔をしていた。
そして、俺とアルディスはタクシーに乗り。ショッピングモールへと向かった。
都内某所『神成ホテル・最上階レストラン・雷霆』
「わぁ! 凄い! 建物! 首都『オーディン』とは全然。違う所だね。セツナ君」
アルが子供みたいに大はしゃぎしている。
「あぁ、文化も歴史も全然違うんだ」
少し離れたテーブル。
「あ、彩音様! あれ!」
「? 何ですか? 芽愛さ‥‥‥ん?」
ガチャン! ゴシャーーン!
持っていた。フォークを皿に落とす。誰かとメイド
場所変わり。
都内某所『ショッピングモール』
「わぁ! わあ! わぁ! 凄い広い! 凄い可愛い物ばっかりだね。セツナ君」
「あぁ、好きなの買ってあげるよ。さぁ、行こう。」
俺はアルの手を握り。ショッピングモールを案内した。
そして。しばらくアルと二人で買い物をしながら歩いていると。知った顔が目の前に3人現れた。
『ショッピングモール通路』
「おい!天馬!佐助!あれを見てみろ?」
「なんだい!清太郎?」
「何で?ござるかな?」
ゴリラとイケメンと忍者が居た。まずい。
「んんん?! 神成と男装をした? 美少女?」
「んんん?」
「んんん?」
「え? 誰? この人達? セツナ君?」
「知らない人だ! じゃあな! お前ら」
俺はアルをお姫様抱っこして。その場をダッシュで立ち去った。
「「「待てや! ごらあ!!」」」
「貴方達!! また! こんな、場所で騒ぎを起こして‥‥‥‥神成君と金髪のイケメン‥‥‥‥? 誰?」
「へ? 何ですか? 神無月さん? へぁ? 金髪のイケメン様?」
俺が逃げる方向に同じクラスの委員長と可憐ちゃんが現れた。
‥‥‥‥色々。不味い状況だが、食事もした。買い物も済ませ。お土産も大量に買い。魔法の袋に詰めた。
「悪いがアル。知り合いに出くわして不味い状況に陥った。あっちに戻っていいかな?」
「う、うん! いいよ!また、連れてきてね」
「あぁ、約束する。タマキーーー!!」
「はい! ご主人様!!!転移門・展開!!!」
「待たぬか? 神成! その美少女を」
「紹介するでござる!!!」
「ハハハ、面白い状況だね~!!」
「待ちなさい! その金髪イケメンはどなた?」
「神成君! 紹、紹介してください!!」
「しめたぞ! あそこは行き止まりに!‥‥いない?」
「嘘?」
「いないでござるな!」
「金髪イケメン‥‥‥」
「ハハハ、手品かな?」
迫り来る。しつこい、クラスメイトを振り払い。
俺とアルは人気の無い。ショッピングモールの角を曲がり。‥‥‥‥タマキが作ってくれた。転移門へと素早く入り。地球を後にしたのだった。
『キャメロット城』来賓部屋
「‥‥‥お帰り。それで? 二人で楽しんで来れましたか? アル先輩」
「うん! 楽しかったよ。凄いね。あっちの世界って!」
「そうですか……それは良かったです」
「うん。ありがとう。ユナちゃん」
エスフィールとアルディスはそう言い合いながら。お互いを優しく抱き締め合っていた。




