終焉決戦 No.11 エキドナ
神話時代・初期
ボトリ‥‥‥‥‥‥‥!
腐敗し、名を無くした。無名の神から無名の肉塊が零れ落ちた。
(あ、あ、あーー、ああああ?)
その肉塊には意志が宿っていた。
(おお、心配で戻って来てみれば。なんという醜き肉塊を産み出したのだ。○○○○○)
(なんと不気味か!‥‥‥‥これをどうしようか? 何処かに隠すか?)
(どうしようかだと? こんな、おぞましい者。この天界に置いておけると思っているのか?君は?)
(‥‥‥‥‥あぁ、済まない。無理な話だな。異臭を放ち。これ程、目立つ異形の肉塊。七聖―女神―に見つかれば我々の命も危うい)
(そうだ! その通りだ! ‥‥‥‥下へ落とそう)
(下? 地上にか? しかし、こんな者。地上に落としたら何が起こるか‥‥‥‥)
(いや、もっとしただ! 奈落でもいい。冥界でも。‥‥‥‥最悪、魔窟へと)
(まてまてまて。奈落と冥界はまずい。双方の神々に喧嘩を売る気か? 君は!)
(‥‥‥‥‥あぁ、済まない。そうだな、奈落や冥界は流石にまずかったな。では魔窟か?)
(あぁ、それが一番。我々にも被害は無いだろう。‥‥‥‥では、去らばだ、醜き肉塊よ。もう二度と我々の前に現れないことを祈る)
(ああああ?ああああああああああああ)
生まれ落ちたばかりの肉塊は、生まれて直ぐに魑魅魍魎が跋扈する魔窟へと落とされたのだった。
神話時代・中期
(さぁ、どんどん魔獣を作りな。化物!)
(ああああああああ! 何で?こんなひどいことを‥‥‥)
(あん? それはお前が醜い化物だからだよ!)
(醜い)
(いいから、お前の魔法でどんどん魔獣を作るんだよ! 化物! さっさとしろ!)
ドガン!
喋る肉塊は鉄の杭で串刺しにされる。
(ああああ! 許さない。許さない。お前達を許さない。天界の奴らも、地上の奴らも、魔窟の貴様達も許さない。絶対に許さない!!)
神話時代・終期
(あら?貴方、弱っているわね?)
(な、なんだ! 貴様は?うっ‥‥‥‥なんだ?この異臭は?)
あら? 失礼な人。いいわ! 貴方を私の力に加えてあげる。光栄に思いなさい。フフフフフフ)
(な? や、止めろ! 俺様に触るな! 気持ち悪い。お、俺を飲み込むなああああ!!!)
ゴクリ。
(あら? 私の容姿も更に美しくなったわ。フフフ、これは嬉しい拾い物だったわ)
その数百年後
(ドラゴ!! 助けて!!)
(ロマ! ロマ!)
(フフフ、静かにしなさい。黙示録の獣達。またまた、良い拾い物だわ。‥‥‥‥‥なんだか誰かにプレゼントされているみたいね。‥‥‥‥‥まぁ、いいわ! これで、また、力が増す。そして、いつか、天界、地上、魔窟の奴らに復讐を‥‥‥‥‥)
神代時代・終期
(くそ! 何故、俺が負ける?! 何故だああ!!!)
(フフフフフフ、貴方がヴォーディカンね?)
(うっ! なんだ?この臭い‥‥‥誰だ!貴様?)
(私? 私はエキドナ。貴方と同じ。厄災の火を持つ。いつか、神になる者よ)
(神?‥‥‥‥まぁ、奴に勝てるなら何でもいい。‥‥‥‥それで?俺は何をすればいいんだ?‥‥‥エキドナとやら?)
(フフフ、貴方は賢い人なのね。力の差がちゃんと分かる人)
(そりゃあどうも。黙示録の者達を二人も従える化物様よ!)
(あら?気づいたの?‥‥‥‥そうね。まず、最初に『唸る獣』を解放して‥‥‥‥‥)
????『妖精国』
(つまらない! つまらない! 毎日が本当につまらないわ。エキドナ!)
(ええ! そうね。ギネヴィア)
(皆、ただ、私の言うことを聞いて。(はい! お嬢様は素晴らしいお方)としか、言わないのよ!エキドナ)
(ええ! そうね。ギネヴィア。あの人達は上っ面しか、ギネヴィアを見ていないわ)
(そうなの! 私の気持ちを分かってくれるのは、貴女だけだわ。エキドナ!)
(ええ、そうよ!ギネヴィア)
(‥‥‥‥‥エキドナ)
(何かしら? 私の大切なギネヴィア)
(もし。私がいなくなったら。この身体、あげるは好きに使いなさい)
(あら? どうして?)
(‥‥‥‥‥だって、貴女ってとても辛そうに生きているんですもの)
(‥‥‥‥なんでそう思うのかしら?ギネヴィア)
(分かるからよ。貴女の気持ちが‥‥‥‥私も貴女と同じ醜い心を持っているんですもの)
(‥‥‥そうなの‥‥‥)
(だからね。エキドナ。私がいなくなったら私の身体を使って。好きに生きない。貴方が思うがままにね)
(ギネヴィア。貴女‥‥‥‥)
(フフフ、大好きよ! エキドナ。いつも、私の話し相手になってくれてありがとう)
(‥‥‥ギネヴィア。‥‥‥ええ、こちらこそ本当にありがとう。ギネヴィア)
『世界樹の根』
「‥‥‥‥‥ギネヴィア‥‥‥‥私は‥‥‥‥貴女の為にも‥‥‥‥貴女のお陰でここまでこれたのよ‥‥‥」
『魔獣神・エキドナ』の身体は半壊し醜い肉塊へと変貌していた。
「最早、外側を取り繕う力も持ち合わせておらぬか」
「あぁ、ここまで来るのに。途方もない時間を使ったわ‥‥‥ヴォーディカン、ギネヴィア、‥‥‥‥二人だけが私の話を真剣に聞いてくれたわね」
「何をブツブツと」
「もう、二人もいないわ。ランスロットも‥‥‥‥‥こんな場所に未練も。もう、無いわね。黙示録の獣達?!」
薄気味悪く笑う。『魔獣神・エキドナ』
「何を笑うか? エキドナ?」
「うんうん‥‥‥‥」
「私の最後の力でこの『妖精国』の四方に張られた結界を破壊してあげるは‥‥‥‥」
「なっ?! 貴様!」
「そんな事をしたら地下世界がメチャクチャになるね」
ドラゴとギャラハット卿はエキドナを見ながら叫ぶ。
「そうでしょうね。その混乱は、魔窟を超えて暗黒大陸へと流れ。また、その余波はかの地へと続いて行く」
「地上が滅ぼせないと分かれば。今度は地下を混沌に落とそうと目論むか。あしきエキドナ!」
「どうとでも言いなさい。黙示録の獣『ドラゴ』。現代の闘いは貴方達の勝ちでいいわ。おめでとう。でも、未来の闘いは私達の勝ちよ。‥‥‥バハハハバハハハバハハハバハハハバハハハバハハハバハハハバハハハバハハハ」
何が嬉しいのか。『魔獣神・エキドナ』は狂ったように笑い始めた。
「‥‥‥‥これが真の終わりね。『洗礼者』『黙示録の獣達』『大天使』達。」
不気味な笑みを浮かべ。『魔獣神・エキドナ』は肥大化していく。
「では、来世でまた、会いましょう。醜き者達。‥‥‥フフフフフフ。私達の勝ち。勝ち勝ちよ。‥‥‥神話・崩壊‥‥‥‥『蝮の女の終焉』!!!」
『魔獣神・エキドナ』は肥大化する。肥大化する。
そして、黒き漆黒を放ち。静かに崩壊の力を解き放った。




