終焉決戦 No.1 白い場所
『世界樹の迷宮』近くの高原。
「‥‥‥‥‥なんとか間に合ったか?‥‥‥タマキ?」
「‥‥はい! なんとか黒いベール‥‥‥いいえ。神話結界内に居た人達は皆。ご主人様の腰に巻いている。うちの本体の中に避難させられました。‥‥‥‥ですが、ご主人様」
「あぁ、この神話結界内に広がる黒い霧か?さっきの『女王』の魔法攻撃に残った魔力残滓が‥‥‥消えない」
「ご主人様。ご主人様が乗っている幻影馬君の様子が‥‥‥‥」
「ブ、ブルル‥‥‥‥」
「弱ってきてる? さっきまであんなに元気だったのに?」
「雷よ。この者を直ぐに空飛ぶ狐殿の中に避難させるのだ」
「鳴神様? どうしたんですか?突然」
カムラン高原の戦いの序盤で呼んだ。『和国』の3人の神獣の1人『雷龍・鳴神』様が突然、話しかけてきた。
さっきまでは、自身の身体を神煌具の状態(腕輪)にして、俺の右手に填めていた。そして、俺達の会話にひ一切参加してこなかったが。ここにきて重たい口を開いたのである。
ちなみに俺が本名を知られたくない時によく使うナルカミは、この鳴神様が由来だったりする。
「この黒い霧は毒だ。神話級の神竜、神獣、女神と契約している者でなければたちどころに魔力を吸われて死に至る毒。それも人ならば、こちらの大陸の言い方で言うと『洗礼者』か? その者で無ければ直ぐに死ぬ事になる」
「死ぬ? では現在、魔法の袋‥‥‥‥『黄金の宝物庫』に避難させた。『妖精国』の兵士や俺の仲間達が今、一歩でも外に出たら‥‥‥‥‥」
「その幻影馬か? その者の様に弱り死ぬ。だから、早く『黄金の宝物庫』とやらに入れてやれ。雷殿」
「は、はい! 入ってくれ。幻影馬」
「ギ、バ、バルル‥‥‥」
幻影馬はスゥーーウと光の光球になり。静かに魔法の袋へと入って行った。
『黄金の宝物庫』白き場所
「お、おい! 何か光の球が飛んで来たぞ!」
「つうか、ここは何処だ? さっきまで『カムラン高原』に居たよな? 俺達?」
「ああ、それによう。このだだっ広い。白い空間は何なんだろうな? 上には外の様子が映し出されてるしよう」
『妖精国』の一般兵士があちらこちらで立ち話をしている。しかし、広い場所だそれに避難(‥‥‥)させられた人数も軽く万は入るのではないか?
「ユナちゃん? おーい! ユナちゃーん」
タマキの中(黄金の宝物庫)の中についで考えていると。近くから聞き知ったアル先輩の声が聞こえてきた。
「アル先輩? 良かった! 無事だったのですね‥‥‥‥」
ガシッ!
アル先輩に近づいてゆっくりと別れてからの話を聞こうとした瞬間。アル先輩に凄い勢いで抱きつかれた。
「ごめん! ごめんねれユナちゃん。本当にごめん! 僕、僕、ユナちゃんに沢山謝らないといけないんだ。本当にごめん。うぅぅぅ‥‥‥‥ごめんなさい。ユナちゃん」
「アル先輩? いったい、何を言って‥‥‥?!」
私に抱きついた後のアル先輩は大粒の涙を流し私に謝罪の言葉ばかり伝えてくる。
「うぅぅぅ!! 本当にごめんなさい。ごめんなさい。ユナちゃんの方が、セツナ君と先に会ってるのに、それなのに。僕は、僕は、魔力暴走があったとはいえ。ごめんなさい。ごめんなさい。ユナちゃん」
セツナ?魔力暴走? 気になる単語が幾つかあったが。
「と、とりあえず。今は落ち着いて下さい。それに今は緊急時、『セルビア』の命運がかかった一大事です。その魔力暴走の事は後でセツナも交えて3人でちゃんと話し合いましょう?ねぇ?アル先輩?」
「う、うん! ごめんなさい。ごめんなさい。ユナちゃん‥‥‥ごめんなさい。‥‥‥‥うぅぅぅ。うん。わがづだ。今の事が全部片付いたら3人でじづがり話し合おう。うぅぅぅ! 本当にごめんなさい。うぅぅぅ」
アル先輩はそう言うと。また、私に抱きついて泣き出したのだった。
(‥‥‥‥いったい、セツナとアル先輩の間に何があったというのだ? 魔力暴走?‥‥‥‥だが、今は緊急時、この件は後でだ!後で!‥‥‥‥‥話し次第では。セツナ。貴様を絶体に許さん。大切な私の先輩。アル先輩をこんなに泣かせおって!‥‥‥‥はぁ)
白き場所・トリスタン・ガウェイン軍
「どうやら我々はナルカミ殿に助けられたみたいですね。ガウェイン卿」
「そのようですな。先ほど、光球となって現れた幻影馬‥‥‥‥外の様子を上の映像で見ていましたが‥‥‥‥」
「もう少しで死ぬ所でしたね。お二人共」
「ん? 貴方達は? ぺリノア卿にパーシヴァル卿、フローレンス卿まで?」
「私もいますよ。トリスタン」
「あぁ、無事で良かった。ギャラハット。貴方がここに入るということは‥‥‥」
「‥‥‥‥ええ、なんとかランスロット卿に勝てました。苦戦しましたがね。‥‥‥その怪我の様子だとそちらもなかなか、苦戦したみたいですね。トリスタン、ガウェイン」
「はい! 我が友。モードレッドは最後まで強く。勇ましかったです。」
「‥‥‥‥はい」
「父様。何でここにいるの?何で裏切ったの?馬鹿なの?」
「‥‥‥‥‥」
「おい! 答えろや? 娘のパーシヴァルちゃんが聞いてんだよ! 裏切りの父よ」
「‥‥‥‥すまん。これはアーサー王と‥‥‥‥」
「あん? 聞こえねえよ! 裏切りの父よ!来い! 説教の時間だ」
「‥‥‥はい! パーちゃん‥‥‥」
「パーシヴァルちゃんな? 行くぞ!」
「はい!」
ぺリノア卿とパーシヴァル卿は一般兵士が円を作る中央に行き。なにやら親子会議が始まった。
ドガン、バキン、ゴキン!
「ぎゃあ!!」
ぺリノア卿の絶叫が白き場所、全体に聴こえていた。
「やべえ、にゃあ。パーシヴァルのにゃつめちゃくちゃ切れて。人格まで変わってるにゃあ」ガクガク。
「まぁ、実の父親が最大にやらかしてるからね。実の娘ならあれぐらい怒って当然だと此方は思うよ」
「しかし、これから、どうするにゃあ?メリュジーニャ。さっきのヤバそうにゃ攻撃も止んだし一回外に出てみるかにゃあ?」
「‥‥‥‥それは、止めとこう。セシリア先輩。」
「んにゃあ? にゃんでにゃあ? メリュジーニャ」
「あれ見てみてよ」
「何にゃあ? 何がある‥‥‥‥」
メリュジーヌ卿が指差す方に目を向ける。セシリア。
「ブルル‥‥‥‥ウゥ‥‥‥ヒ、」
そこには先ほどまで外に居た。死にかけの幻影馬の姿があった。
「魔力総量がかなり多い筈の幻影馬が、少し外に居ただけであんなに死にかけている。『覚醒者』‥‥‥‥今回は無意味かな。『洗礼者』じゃないと外での活動は最早無理な空間が外で形成されているみたいだね」
「‥‥‥‥やべーにゃあ! 『洗礼者』って。セツニャかゴリラ聖女だにゃあ。にゃら、今、外で動けるのは」
「ご主人様か。‥‥‥‥そこの円卓の騎士・ギャラハット卿しか。今の『妖精国』には居ないことになるね。ただ、ギャラハット卿はさっきまでランスロットと戦っていたから。少し休ませてあげないと無理だね」
「マジかにゃあ。にゃら、今回はセツニャ頼りかにゃあ!‥‥‥頑張ってにゃあ!セツニャ!」
「‥‥‥そだね‥‥‥‥ごめんね。ご主人様。頼りない。新米メイドの此方で‥‥‥‥」
『世界樹の迷宮』深部・祭壇
「‥‥‥‥あら? そう! 1人で来るの? 部外者さん」
ブオン!
『世界樹の迷宮』の深部の部屋の中央に1つの転移魔法陣が表れた。
スゥーーウ
その中から現れたのは、三匹の神獣級を従えた。
『洗礼者』カミナリ・セツナだった。
「‥‥‥‥ここが?『世界樹の迷宮』の中?」
「おい! 目の前を見てみろ! 雷様!」
「え?」
「目の前のどす黒い魔力の塊の化け物だよ!」
神煌具状態の蓬莱様が大きな声で俺に言ってくる。
「フフフフフフフフフフフフ! そう! やっと来たのね。部外者さん。‥‥‥‥いいえ、今回の女神が派遣した『洗礼者』さん。そう!今回は『洗礼者』なのね。ユグドラシル。以前の彼の時は『原点者』だったのにね。‥‥‥‥色々入るのね。「覚醒者」にも。フフフフフフフフフ」
何か分からん事を言っているが。
「君が? 黒幕の『女王』様か?」
「さぁ? どうかしら。フフフフフフ! 私と闘ってみれば分かるんじゃないかしら?『洗礼者』さん! 神話魔法(終)『極嫚』」
莫大な魔力を纏った黒い炎が俺に襲いかかる。
「ぐっ! 何でいきなりそんな大技を!」
「雷様よう! さっさと俺を振り下ろせ! じゃないとこれで終わる!」
「はい! 雷霤剣・蓬莱『雷獣行軍』」
凄まじい数の雷鼬が『女王』の極嫚に群がって行く。
「‥‥‥あら、そう。少しは楽しめそうね。洗礼者」
ドシャアアアアアンンン!!!!
黒嫚と雷鼬が凄まじい轟音を鳴らし最後の闘いのゴングとなった。




