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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

バレンタインデーには“N°5 ロー”は居ない  ミスディオさんの“毒吐く”     <期間限定公開>

作者: 黒楓

『勝手に華ちゃん祭り』の第2弾


今回は華ちゃんの“恋人” ミスディオさんの独白です。


挿絵(By みてみん)






バレンタインデーの夜。


私は仕事をしない。


やっと逢えた華ちゃんと


こうしてドンペ●を飲み交わして


幸せなはずなのに…


私はいつの間にか

“毒”を吐いていた。




「義理チョコはまだいいのよ、他愛がないから。でも義理でするエッチはどうなのかな」


突然、誰に振るともなく発した私の言葉に華ちゃんは少しばかり引いた。


「えっ??!!」



でも私は自分の暴走を止められない。


「私の仕事は、さ。女性史上最初のお仕事なんだって、

そしてその仕事は…

開闢(かいびゃく)以来、女性たちからは蔑みの対象となった。


それは分かる。


でもね、だったらね!


カレやダンナとのエッチを…


『アイドルやイケメンのあの人を思い浮かべてする』とか

『耐え忍んだ自分に…後であげるご褒美の事を考えながらする』とか

『行為自体がそもそも修行』とか言うの、

止めて欲しい。


そんなエッチだったらウチらが仕事でやるのと変わんないじゃん! 


そうね!

アンタたちは

ごはん作ってあげたり、洗濯してあげたり、二人の間にできた子供たちの世話を焼いたりと

色んな事もしてあげてるんだよね。

でもね!

ウチらだって色んな事してるよ。お金と引きかえに。

アンタたちのダンナやカレがアンタたちには絶対しないしやらせないような事、してるよ


ここまでまくしたてたら…華ちゃんが私の手をぎゅっと握ってくれて


私は少し落ち着いて…グイっ!とグラスを空け

ため息をついた。


もったいない飲み方してるね。 せっかく醸し出ているシャンパンの香りを踏みにじってるね。

でも、それとおんなじ!! アンタたちがしてる事も!


私は器。


“オトコ”や“オス“が吐き出す色々なものを


ただ、受け止めることしかできない


でもアンタたちは、パートナーと

愛ってものでつながったのでしょ?

愛って

そんなにも寄るすべのないものなの?

私は愛がわからないから

教えて欲しい。


私にとっての愛は…


『愛』って言葉を聞いた時に、頭によぎる思い出…


その思い出は、あるバレンタインデーの夜の事…



こうして私は華ちゃんに


なぜ私が


『バレンタインデーには“N°5 ロー”にならない』のかを

話し始めた。



--------------------------------------------------------------------


窓の外にライトアップされた観覧車の見えるそのスイートルームは、セミダブルのベッドが離れて置かれていた。


その頃の私は、まだ“最後”まではしないお店で働いていたので…


ホテルに一晩同衾(うわっ!古!)の仕事をマネージャーから打診されて…


嫌な予感しかしなかった。


でもお金は欲しいし必要だったので、そのオファーを受けた。


「ああ…契約外でヤられちゃうんだろうな」


でも、ヤッたのはお互いの合意で…

店の女の子が勝手にやった事と

店からケツまくられるような結果にはなりたくない…


とにかく肚くくって、

自分が暴力とか窃盗とかの危険な目には合わないように


あと、ヤられるとしたら…

『絶対に使わせなきゃ!!』と…


6連につながったキャンデーのような()()を…

まるっとバッグの中に突っ込んた。


そんな状況だったので、

この部屋なら…

ヤられた後は、枕を一つ抱えて隣のベッドに逃げこめるかもと考えていた。


で、肝心のその客は、窓際の白いテーブル(そこはルームサービスでオーダーされたであろう物で溢れかえっていたのだが)の前で蹲っている半ば呆けた酔っ払いだった。


最低だ!!


歳は若い。

多分、私より少し上


でも、何だろうこのオトコ…

およそこのスイートルームには似つかわしくない“くたびれ感”があった。


とにかくこの客に…お決まりの“説明”をしなければ…


「あの、お呼びいただきありがとうございます。初めに説明しておきますが、私どもは風営法の規制があって性行為類似サービスしか提供できません。」


「は?」


客は一瞬ポカンとしてから力なく笑った。

「ああ、そうなんだ。うん まあ いいよ うん 別に」


こんな客の反応に私がいよいよヤバさを感じた時、スマホが鳴った。


マネージャーからだ。


私は客の前を大急ぎで横切り、バスルーム側へ駈け込んで電話をとった。


マネージャーの能天気な声が話し始める。


『ホテル着いたか?、客居るか? そうか、オトコか? うん、いや、女からの電話だったからよ! 予約がさあ。

オンナとヤる場合はまた違った話になるからよ、うん更に上乗せできる 

んーなに?? おうっ! 目いっぱいカモってっからよ 

その代わり 皆まで言わせんな 

お前向きだろ? カネの匂いのする話は 

まあ、シッカリとヤんな』


ブツリと電話が切れて…

ちょっと肩を竦めて戻ってくると

いきなり客に言われた。


「帰っていいよ。その封筒にカネ入ってるから。もう事務所?と連絡取れたんだよね。オレ、()()()()要らないから。封筒の中の現金持って、帰っていいよ。これからシャワー浴びて来るから、その間に消えてくれたらありがたい」


ヨタヨタとバスルームへ歩いて行く客を見送って、ナンダコイツ と思う。

でも、テーブルの隅の白い封筒を手に取ったら、バカにされたように軽い。

腹立ちまぎれに確かめると、中身は綺麗な女文字の手紙だった。


『匠さんへ 

すべては紗英の遺言に沿って用意しました。 

あの子との思い出の場所で、

貴方にはお辛いでしょうが、

私が貴方から奪い取った指輪の代金として、愚かな親がやってしまった事として、

どうか全てをお受け取り下さい』


私が封筒を間違えてしまったのだ。

“私向け”の封筒は

オードブルの皿の脇に

無造作に投げ置かれていた。

中身を確かめると“法外な”金額だった。


「これはいったい!!!」


この二つの封筒の意味するものは…


「まだ居たのか?」

しばらく動けないでいた私は

背中から声を掛けられ、二つの封筒を握りしめたままの手元を見られた。


「なんだ、その手紙も見たのか…」


オトコは軽くため息をついて言葉を継いだ。


「そう、すべては演出だよ。こうやってそれらしい手紙を読ませれば“女のコ”が同情して…類似じゃない、()()()()()()()を受けられるかもと言う下心」


私はキッ!と男を睨んだ。

「ひと、なめんなよ! わざわざこんなスイートルームをリザーブして、法外な金額を支払わなくても、ヤらせるオンナはごまんといるし私もそうだ!」


「ふん! だからどうだっていうんだ!」

そう吐き捨てて…

だらしなくソファーに身を投げたカレに向かって私は怒鳴った。


「シャワー浴びてくるから!

首洗って待ってろ!」



バスルームに飛び込んでシャワーのレバーを目一杯に回し体にブチ当てる。


ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!

なんで私なんだ!


なんで!

なんで!!!


シャワーを止め、バスローブを羽織ってドレッサーの前に立つ。


うっかり髪にかかった水滴と涙をバスタオルでギュッ!と絞って


鏡の中の私に


私は言い含めた。

私は器、私は器、

私は

ただの



。。。。。。。。。


最初は無理やりカレのくちびるを奪って

耳元で

匠さんって囁いた


それから

出来る限り

私の

ココロの全てを砕いて、()()()()()()注ぎ込もうとした。


長い時間を掛けて

手の中の()()

ようやく形を成して来たので…


片手しか空けられない私は

例の“キャンデー”のパッケージを嚙み破いて

中身を口に含み


手の中の()()

覆いかぶさった。



それから私は

傷付いた子猫を舐める母猫に戻って

カレを隈なく舐めた。



やがてカレが

「紗英!!」

と叫んでくれて


私を抱きしめ

()()()()()来た。


私は!

私は…


いっぱい

感じてしまった…



。。。。。。。。。


寄り添ってバスルームへ行き

きれいに洗ってあげたカレが

寝入った後に


私は隣のベッドから抜け出して

そっと着替えて


部屋を逃げ出した。


もうこれ以上は居られなかった



とうに終電も過ぎた真夜中の道を

私は鬼のようにズンズン歩いた。


そう

“鬼”は外

なのだ。


もう中途半端はイヤだ!!


私は店を移る決心をした。


“全てを受け入れる”サービスの店に

移る決心を



--------------------------------------------------------------------


こういう事があってから

私はバレンタインデーに仕事はしないの。

心も体も

“紗英”さんに持って行かれそうな気がして…


わかるでしょ?

今の私の源氏名のわけ


カノジョと同じ名前にして


色んな事から


私自身を

守っている…


そして

こんな話をできるのは…

華ちゃんだけ


ほら、


私の左手は


華ちゃんを()()()()

カノジョのパンツの内ももをカリカリと引っ掻くし…


右手の人差し指”はカノジョの手の甲を緩やかに愛撫している。


そして華ちゃんへの想いでいっぱいになったアタマを

ゆっくりとカノジョの髪に埋め

顔を擦り付け

髪を分け入って

カノジョの耳に唇を這わせ

吐息の一言を流し込む。

「ウチに来て…」



バレンタインデーのその夜


私は初めて


華ちゃんを“お持ち帰り”した。



いつもは逞しいミスディオさん(華ちゃんにとっては年下のお姉さん的存在)の優しさと切なさを表現できたらと思い、イラストも白のドレスで…マッターホルン級の胸も強調しない感じでトリミングしてみました。

乙πを愛でる方々には申し訳ございませんが…(^^;)




ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!<m(__)m>




ちなみに…

このお話を最初からご覧いただけるのはこちらからです。

            ↓

『喪女 華恵さん バレンタインデーには“N°5 ロー”は居ない ① 』 https://ncode.syosetu.com/n2084hh/7/


どうぞよろしくお願いいたします。<m(__)m>


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― 新着の感想 ―
[良い点] あー、うぼあー…………まぁ、好きなんですけれどね!こーゆーの♡wwwwww わたくすとしては匠さんの事情心情に共感しちゃって辛かったです♡…………orz [気になる点] いや、ぢつは、…
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