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36 バレート、夢を語る

 ゼスヌムシル邸を辞した俺たちは徒歩でゾーフラユの中心にあたる大広場まで戻った。


 そのあたりは賑やかで、店や人で溢れている。城の近くの街路はどこも同じようだった。


 もはや夕刻なので、俺たちは早々に宿をとった。ゼスヌムシル家の礼金もあり、俺たちは一時的にしろ裕福だったので、すぐに上等の宿屋に落ち着いたのである。


 一階はやはり酒場になっていた。が、安宿の酒場と違い、かなり店内は広く、どことなく客も上品そうである。


 裕福な商人たちが客のほとんどなのだろう。俺たちのような風体の客はあまりいなかった。


「最初の依頼としちゃあ大成功だったよな」


 水のはいったグラスで乾杯してから、バレートがいった。ひどく満足そうだ。


「ゴブリンを全滅させて、おまけに伯爵令嬢の護衛だぜ。我ながらたいしたもんだと思うぜ。懐もあったまったしよ」


「フォシアとハルトのおかげでしょ。バレートはほとんど役に立ってないわよ」


 ポリメシアがバレートをじとりと横目で見やった。バレートは頭をかくと、


「ま、まあ、それは認めるけどよ。でもさ、このまま順調にいったら、俺たち、すぐに金級のバンサーになれるんじゃないか?」


「そうは上手くいきませんよ。フォシアとハルトに頼っていたら。わたしたちももっと強くならないと」


 ちらとミカナが俺を見た。


 俺は苦笑した。ゼスヌムシル邸での時もそうだったが、本当のことをいえる雰囲気ではなかった。


「ともかくだ。次はもっと大きな依頼を受けようぜ」


 勢い込んでバレートがいった。


「大きな依頼、か」


 俺は心中でため息を零した。


 まだゴブリンをたおしただけである。いや、俺たちには、まだゴブリンすらたおせるほどの力はない。実際のところ、ゴブリンをたおし、襲撃者を撃退したのはフォシアの力だ。


 もし、フォシアがいなくなったら。


 考えるだけでぞっとするが、その可能性がないわけではなかった。


 そもそもフォシアが仲間になってくれた理由がわからない。偶然出会っただけの間柄なのだ。


 いつフォシアの気が変わるかしれたものではなかった。もしフォシアがそうしようとしたなら、俺たちにとめる術はない。


 だから準備しなければならない。いつか来るかもしれないその日に備えて。


「金級どころか白金級……いや、聖鋼級になったりして。聖鋼級バンサーっていやあ、一国の国王ですら対等に遇するらしいぜ。王女様と結ばれたこともあるって聞いたことがある。もし俺が王女様とそんなことになったらどうしよう」


 わくわくしながらバレートは妄想にふけっている。それをポリメシアがじとりと睨んでいた。


 楽しそうでよかった。俺は思った。

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