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27 よろしく

 俺はふりかえった。宿からもれる光をあびてバレートの姿が見える。ポリメシアやミカナの姿もあった。


「どうかしたのか?」


 俺は訊いた。するとバレートは頭をかきながらこたえた。


「いやあ、明日、アメンドにむかって発つだろ。その前に聞いておきたいことがあってさ」


「聞いておきたいこと?」


 怪訝に思って俺は訊いた。


「ああ。これからのことさ。おまえたちはどうするつもりなんだ?」


「どうするって……」


 俺はフォシアと顔を見合わせた。


 バンサーとしての最初の依頼をこなす。そのことに懸命になっていたので、その後のことは考えていなかったのだ。


「フォシアはどうするんだ?」


 俺は訊いた。怯えのような響きがにじんでいたかもしれない。


 フォシアとは数日前に偶然知り合った。それだけの関係だ。


 これからフォシアがどうするつもりなのかはわからなかった。仲間としての関係を解消するといわれてもどうしようもないのだ。


 そして、その可能性は高いと俺は危惧している。不様なところを見せてしまったからだ。


 フォシアはきっと失望しているだろう。美人で強いフォシアなら、もっと相応しいパートナーがいるはずだった。


 けれど、フォシアの返答は予想外で、あっさりとしたものだった。


「ハルトと一緒にいる。決まってるでしょ」


「えっ」


 驚いて、俺は息をひいた。フォシアが一緒にバンサーを続けてくれるとは思わなかったからだ。


「あ、あの……いいのか、俺とバンサーを続けて?」


 俺は訊いた。フォシアは当然だといわんばかりの顔でうなずいた。


「いいに決まってるでしょ。それとも何? ハルトはわたしと一緒じゃ嫌なの?」


「嫌なわけないだろ!」


 俺は叫んでいた。嬉しくてたまらない。


「聞いた通りだ。俺はフォシアと一緒にバンサーを続けるつもりだよ」


 バレートにむかって俺はいった。内心ほっとしながら。にやつきそうになるのを必死になって抑えつけた。


 するとフォシアが満足そうにうなずいた。どこかフォシアもほっとしているように見えた。


「そうか」


 バレートがうなずいた。それからポリメシアたちを一度見やり、再び口を開いた。


「だったらさ、このまま俺たちと一緒にやらないか?」


「バレートたちと?」


 俺はフォシアと顔を見合わせた。バレートたちと仲間になるのは今回だけと思っていたからだ。


 正直いうと、俺に否やなはい。バレートは良い奴だし、ミカナは優しい。ポリメシアは気が強いけど、しっかりしている。仲間になれるなら、願ったり叶ったりというところであった。


「そうだ。ポリメシアとミカナと話し合ったんだけどさ、せっかく仲間になったんだから、これからも一緒にやれたらいいなって。よかったら、このまま仲間を続けてくれないかな? ミカナもハルトと別れるのは寂しいみたいなんだ」


「バ、バレート。何いってるんですか。わ、わたしは何も」


 顔を熟れたトマトみたいに赤らめ、ミカナが慌てた。するとバレートがニヤニヤした。


「照れなくてもいいたろ。ハルトのこと、気になってるくせして」


「そ、そんなこと」


 恥ずかしそうにミカナが顔を伏せた。頭から湯気があがっているようだ。


 俺もなんだか照れてしまって声をなくしていた。


 その時だ。針のような視線を感じた。驚いて横を見ると、フォシアがむっつりしていた。


 どうやら怒っているようだ。何に対して怒っているのか、よくわからないが。


 咳払いをすると、俺はいった。


「俺はいいよ。初級バンサーは仲間を組まないと依頼をこなすのは難しいって今回のことでよくわかったから。仲間ができるのはありがたい。フォシアは?」


「ハルトがいいなら、いいわ」


 むすっとしたままフォシアは同意した。


 真夏の夜。俺たちは仲間になったのだった。


 しかし、神ならぬ身の俺は知らなかった。この中の一人と別れてしまう。そんな恐ろしい運命が待っていることを。

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