第2回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞 への投稿作品
そのお札、偽物
骨董品の売買は、ニコニコ現金払いが常だった。
ゆいこは、客から渡されたお札を見て、愕然とした。
お札が透けて見えたのは、始めてだったからだ。
ゆいこ『お客さん、このお札は、受け取れません。』
お札を客に返しつつ
ゆいこ『偽札かと思われますので、銀行で確認して来られることをお薦めします。』
決して偽物を仕入れないと噂の店だけに、
店主は、小娘ながら、あながち嘘でもないのかもしれない。
と、おとなしく客は、帰っていった。
後日、警察を連れて、始めて見る客が現れた。
客『お巡りさん!こいつです。こいつに偽札を摑まされたんです!』
ゆいこは、突然なんのこっちゃ?
あっけにとられているうちに、警察署に連行されたのだった。
取り調べ室で
何も話すことが無い ゆいこは、必然的に黙秘しているのと同じ状況が続いていた。
いつの間にか、見覚えのある刑事が、対面に座っていた。
美術品の窃盗事件専門の刑事『仕返しされた。って、とこかな。』
(以降、刑事と表記)
ゆいこ『仕返し?』
刑事『身に覚えがあるハズだろ。』
刑事『盗んでない美術品を盗んだ事にされて、偽札で買った本物の美術品を取り上げられたら、何とかして、仕返ししたくなるものだょなぁ〜』
ゆいこの表情を伺う刑事。
動じない ゆいこ。
刑事『なんの証拠も無い。冤罪。どうしたものか。』
刑事『たぶんな。これは、警告じゃないのかなぁ?』
刑事『どうしたらいいのか、しばらく、考えて。』
そう言って、取り調べ室から出て行った。
ゆいこ『どうしろって言うの。。。』