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2.旅立つ

「なぁ…それって、どういう意味なんだ?」


警戒することも忘れて、騎士に近づき尋ねる。

騎士は声のした方を向き、言葉を続けた。


「火を取り戻す者は…この世界を救う者と言われて…いる。」


騎士は苦しげに言葉を途切れさせながらでも、説明してくれた。


……………………………



この世界は、世界を照らす火と四人の王が統治していた。

小さな争いこそあるが、世界はとても穏やかだった。


突然、その世界に影が生まれた。


その影がどこから現れたかはわからない。

影は瞬く間に勢いを増し、世界を照らす火を奪い去ってしまった。

四人の王達は光を取り戻すために力を合わせ戦った。

だが、影は圧倒的だった。

王達の軍勢は徐々に力を失い、王もまたそれと同じく力を失っていった。

1人…また1人と王達は倒れた。

今世界を支配しているのは、影なのだ。


王達を倒した影の事は何もわかっていない。

その影の王を見たものはいない。


それらの理由から、影は今、「無貌の王」と呼ばれている


世界は影に支配された。


しかし、火を忘れない人々もいた。

その者たちは「使命」を背負い、自らの「為すべき事」をする

そんな者を人々は…


「火を取り戻す者」


と呼ぶ。


……………………………



「…私も「使命」を以てやって来たがこの様だ。」


自嘲気味に咳き込みながら騎士は言う。

言葉から力が消えてきている。命の火が終わる。


「顔も見せられない私を許してほしい…。…最後に、頼みがある…」


弱々しい。だが、しっかりとした騎士の視線を感じる


「無関係の…君に、頼るしかない…情けない騎士を許してほしい。……どうか…どうか、お願いだ。

私の…「使命」を継いでほしい…」



背筋がゾクリとした。

言葉がなく、どう表現していいかもわからない感情や感覚が体を走る。


棒切れを騎士との間に突き立て、糸の切れた人形のような騎士の手を持ち上げ両手で握りしめ、言う。


「…その使命を、受け…継ぐ…。貴方は情けなくも恥じる必要もありません。貴方は…使命を全うしようとした、「立派な騎士」です」


風前の灯火。そんな相手にかける言葉はこんなものでいいのだろうか。

そんな経験した事はない。

どう何を伝えていいかわからなかった。

だがら、考えられる精一杯を伝えるしかなかった。


騎士と目があった。…そんな感覚がした。

フルフェイスの兜で瞳などほとんど見えない。



「ありがとう」



吹けば消えてしまう。そんな微かな声だった。

弱々しく聞き逃してしまいそうな小さな声。

だが、しっかりと耳は聞いていた。


安らかな、安心した声を。


次の瞬間。騎士の手はずるりと滑り落ち自らが作ったであろう血溜まりに落ちた。


「騎士…さん…。」


震える手で騎士の鎧に触れる。

すると鎧の隙間のいたる所から灰のような真っ白な粉が溢れ出してきた。

その粉は風に流れ、周囲に消えていく。


少しすると金属音をたてて鎧が目の前で崩れ落ちた。

さっきまであったはずの騎士の姿はどこにもなく、目の前にあるのは金属の鎧と騎士が持っていたであろう剣。


「…どう安らかに…」



そんな言葉しかその時は出てこなかった。

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