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MANA & DREAM 白狐の願い  作者: 広瀬直樹
飛翔
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もう夢の住人とは深く関わるなあ

「初めてにしてはようやったなあ。だけど、おかげで美味な悪夢を食べ損なったあ」


 バクは舌打ちを鳴らした。


「な、んで、そん、な、ことを、言う?」


 仰向けになってゼエゼエと息を切らす伊武輝は、言葉をちょっとずつ切らしながらバクに言った。一方マナは、何食わぬ顔で座って丸くなり、自分で尻尾を舐めて毛づくろいをしていた。


「お前さんたちには理解できないと思うけど、たまらんのよ、悪夢を食べることが。とても美味なんだあ。マナが来るまで、それはもう贅沢三昧だったあ」


「マナが、来たって、元から、いたんじゃ?」


「そうさあ。もうどれだけの時間が過ぎたかわからんけど、マナが来てからというもの、いつの間にかおいらは後処理係になってしまったあ。少しは分けてほしいんだけどなあ」


 伊武輝は暴走して乱れている呼吸を落ち着かせるために、何度も深呼吸をした。少し心臓が落ち着き、普段通り喋れるようになった。


「なあ、誰がマナって名前を付けたんだ?」


「それは長が付けた。未知なるちから、という意味があるらしい。マナがおいらたちの目の前でちからを披露した途端、思いついたんだそうだあ。未知なるちからを秘めた存在、それがマナだあ」


 未知なるちからを秘めた存在。


 ゲームで知られるマナというのは、魔力という言葉一つで片付けられているけど、魔力もまた秘めたちからのことを指しているんだよな。確かに、マナはぴったりの名前だ。


「ところでおいら、外から夢の様子を見ていたけどなあ、お前さんはできるだけ、夢の住人と関わりは持つなあ」


 伊武輝はハッとなった。


「バク、あれは仮想世界じゃなかったのか?」


「どうやら夢、だったようだあ」


 バクは地中に眠るゴザムの夢を見下ろした。


「例の、人の作ったウイルスもそこにいたぞ」


「だからなんだあ?」


 伊武輝は少し苛立ちながらゴザムの夢をピッと指差した。


「だから、仮想世界しかいないウイルスが、人の夢にいたって言ってるんだ」


「よくわからんけど、あれはウイルスじゃなくて悪夢そのものだったんじゃないのかあ?」


「おれとマナのことを知っていたぞ?」


 バクはしばし考えを巡らせた。


「あくまでもおいらの考えだけど、夢同士で連絡を取り合った結果が表れたんだと思うんだあ」


 バクは少し先の浮遊している夢を指差した。


「夢は守りを強固にするため、地中や地上で互いに知恵を振り絞って伝えあい、弱点を自ら克服する。でもなあ、それには限度がある。自分で克服できない場合は、できる範囲で夢同士で助け合っている。今回会ったその悪夢もまた、それと似たように夢から夢へと移っているのかもしれないなあ」


 つまり、誰かが見た悪夢が夢伝えで移っているだけであって、ウイルスではないということか? ウイルスと酷似していたのはたまたまだろうか?


「それよりも」とバクは話を元に戻した。「もう夢の住人とは深く関わるなあ」


 バクの言う住人とは、夢の中にいる人たちのことだ。


「なんで?」


「なんでって、本来、お前さんのことなんか誰も覚えていないんよ。知名度が最も高い人でも、全員に記憶してもらうことは不可能。人間が作り出した道具を使って広めようとしても、それを受け取れない人がいる。それか時間に追われて、覚える時間すらないんのかもなあ。なにが言いたいのかって言うと、あの筋肉の騎士に、お前さんのことなんて遭ったこともなければ話したこともない。その人の記憶にお前さんはいないんだあ。夢は欲や記憶から作り出す世界。だから、本来ならお前さんもマナも入ってはいけない存在だあ」


 伊武輝は腕を前に出した。手のひらや甲、腕の表裏に何の異変もないことを確認すると、バクに問いただし始めた。


「別に夢の中に入っても、とくに何も起こらなかったじゃないか。それに禁止されてたら、マナだってなにもできないじゃないか」


「夢はある程度のことは許してもらえる。予期しない悪夢が生まれれば、夢もパニック状態になる。だから夢は、お前さんたちを迎い入れて退治をお願いしている。でもなあ、度が過ぎるとお前たちを破滅者とみなして攻撃してくるんよ。お前さんも体感しただろう? 筋肉バカが夢から覚めるとき、夢は主を守るためにお前さんたちを襲った。あともう一歩遅かったら、お前さん、消えてなくなってたぞ」


 伊武輝は背中から悪寒が走るのを感じた。


 夢って、そんなに恐ろしいところだったのか? 現実ではできないことを、夢では叶えてくれる。そういうものだと思っていた。


 だけど、そうだよな。勝手に押しかけてきて荒らすことと変わりない。そりゃあ追い出したくもなるよな。


 伊武輝は顎を撫でながら決まり悪そうに言った。


「関わるなあって言われても、もう約束しちゃったよ。また来るって」


「それも知ってる。そんな親切心が夢を脆くする。どうするんだあ?」


 伊武輝はあぐらをかき、腕を組んでうーんと唸った。


 バクの話す感じだと、もう夢の住人と関係を作るなと言いたいようだけど、そんなの無理だ。また黒鳥はやってくる。それもちからをつけて強くなった状態で。ゴザムが率いる軍隊だけで退治するのは無理だ。必然とおれたちが必要になってくる。


 そもそもの話、バクの推察通りだとすると、黒鳥は他の夢が送りつけた悪夢っていうことになる。だったら、二度と侵入されないように、夢の世界から施すことはできないのだろうか。

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