7:久しぶりにヒトに会えます
まもなく二人は、稼働可能な昇降機を見つけた。
外壁にせり出した床が上下するだけの、簡素なリフトだった。トーテムやレシーバーの運搬用なのか、オシラサマでも操作のできる入力パネルがある。オシラサマが操作すると、ガタゴトと壊れたような音をたてながら、リフトは速めの速度で降下を始める。
上へと流れていく塔の骨格の隙間から、やがて二人の進む路が見下ろせるようになった。
塔と塔とを繋ぐ長い橋。橋脚は無く、代わりに重力鋲が数キロおきに打ち込まれている。
その橋を中心に、幾つかの空中都市が発展を遂げている。
最も規模の大きい都市を支える重力鋲の姿を認めた天海は、呆けるように言った。
「タキオン減速炉だ……あんなに大きいのは初めて見た……」
『ムセイオン空中都市廃棄区画。今はフェリブリージュ人たちの巣窟だって話ですよ』
「あそこを通っていくの?」
『ええ、久しぶりにヒトに会えます。今から楽しみです』
「北ルナリア文字の復権を目論む秘密結社国家だっけ。結局自分たちにコロニーを作ってしまえば、それに越したことはないってことだけど……オシラサマは北ルナリアも話せるの? どんなに文化的な人たちが相手でも、言葉が通じなきゃコミュニケーションは取れないよ?」
『北ルナリアはなあ……一番近いのだと正当ルナリア帝国語は喋れるけど……』
喋りながらもオシラサマは自身のデータベースを検索し続けたが、旗色はよろしくなかった。
「彼らにその言葉で話しかけるのは、いっそ宣戦布告に近いと思う」
『そうなんだよね……どうしよう……』
わざわざ自分たちの言葉を守るために国を興した人々のこと。どう転ぶかは分からない。
結局、行ってみなければ分からないという結論で一致した。
半日ほどかけて、リフトは件の連絡橋まで到達した。
連絡橋の幅は二百メートルほどだった。一直線に伸びていく。
『ここからは、あの塔に向かってこの連絡橋を歩いていきます』
「遠いね」
『遠いですね。でも、これが初めてのことでもないですし』
それから天海は後方を振り返って、自分たちが旅してきた柱を見上げた。
「あの塔ともお別れか……」
『いろいろありましたね』
「うん、いろいろあった。さよなら、〈情熱のモーガン〉」




