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Dear my world.  作者: 神無桂花
世界に色をつける話。
21/21

第蛇足話 陽菜√another end

 どうも、専業主夫日暮相馬です。こんにちは。朝、仕事に行く自分より早起きな妻のために弁当を作ます。そしてトレーニングに行きます。二十代から老化が始まると聞いたことがあるので、体力を落としたくないのです。

 そして帰ってくるころには妻が朝食を用意してくれているのです。おい専業主夫。


「ありがとう。陽菜」

「いえ、弁当ありがとうございます」

 そして二人でいただきますをする。まだ朝は早い。朝食食べ終わっても陽菜の出勤時間まで時間はある。

「ほい、こっちは丸つけ終わったよ」

「ありがとうございます。すいません。私の仕事なのに」

「良いさ。そろそろ学校行くの?」

「はい。早めに」

「いってらっしゃい」

「いってきます」


 しばらく、車のエンジンがかかる音ともに、車が動き出す。

 陽菜は教師になった。僕は家で家事をする。




 「せんぱーい。おはようございまーす。お手伝いに来ましたー」

「乃安、別に大丈夫だよ。ゆっくりしてな」

「あはは、先輩も慣れたものですね。七年間も私たちのご奉仕を受けながら、よくもまぁ、ここまで自活力がついたものです。じゃあ、昼食作っちゃいますね」


 乃安の背中には莉々が背負われている。徹夜明けだな。

 乃安はレストランを開いている。一人だから基本予約必須のディナー中心。儲かるのかと思うけど、生活にも営業にも苦慮してないらしい。

 その理由は君島さんにある。

 フリーランスのプラグラマーにして、フリーゲームの広告収入。僕もやってみたけど、出来はかなり良かった。


「莉々、できましたよ。ご飯」

「ん、起きる、おき、る。乃安のご飯、食べたい」

「先輩が作りました」

「えっ、たべ、いらない」

「乃安、からかわないであげて」

「可愛いですもん」


 まぁ、確かに、ほっこりするけど。うん。 


「陽菜先輩、今頃どうしているでしょうね」

「授業じゃない?」

「……相馬先輩、少し柔らかい雰囲気になりましたね」

「そう?」

「はい。先輩、自分のこと、好きになれました?」

「……どうかな、前ほど、嫌いじゃないかも」


 陽菜を家で待つ毎日は、結構、充実している。その日何があったのかを聞くのは楽しいし、家事をするのもわりと楽しい。


「天職かもしれませんね、主夫」

「かもね」



 「はい。その通りです。なので、この問題はそこまで難しい計算を必要としないのです。発想の転換です。最初に言いましたね、高校数学は中学の基礎からなっていると。そういうことです」


 私の担当教科は数学。チョークを手元でくるりと回す。

 教科書を見るのが億劫になって閉じる。この前のテストの結果を見る分に、この教室にいる生徒は発想力が足りない。基礎は本当に完璧なのに。最後の問題だけ、真面目にやると計算量は多いけど、実はあまり計算が必要無い、そんな問題だった。

 教科書暗記してるだけじゃ駄目ですよというメッセージを込めたつもりだ。


「チャイムが鳴りましたね。それでは、終わります」


 教室を出ると、隣のクラスで授業をしていた夏樹さんと遭遇する。英語担当の夏樹さんも苦笑いしているのを見るに、テストの結果が思わしくなかったのだろう。


「お疲れ様です。お昼、一緒にどうですか?」

「そうですね。そうしよう!」


 夏樹さんは相変わらず朗らかで明るく、生徒人気が高い。


「いひひ~」


 そして相変わらず、今年二十六にもなるのに、スキンシップが激しい。いい加減彼氏でも作って大人しくなれば良いと思う。


「あっ。メイド長。ご無沙汰しております」

「昨日会っただろうが。あと、ここでは校長と呼べ」

「はい。メイド長」

「おい」

「メイド長をからかうのはそれくらいにしておけ、元ロリ」

「世の中の女子は元々ロリですよ。教師になっても脳筋ですか? 真城」

「てめぇ」


 まさかこの人が経営する学校の先生になるとは思わなかった。でも、悪くない日々を送っている。充実している。生徒も愛着を持って育てている。天職なのかもしれないとすら思う。

 相馬君に家にいてもらう事に躊躇いはあったけど、後押ししてもらった。だから、私は相馬君に家で待ってもらう。今までとは逆の立場になる事を、決心できたのだ。 


「夏樹さん、今日、うちに来ませんか?」

「……! 行きます!」





 「それでは先輩、私たちは店に戻りますね」

「うん。ありがとうね」


 そろそろ洗濯物を取り込んで買い出しもしなくちゃな。


「あれ? おかえり」

「ただいま戻りました。夏樹さんもいます。連絡すれば良かったですね。この時間はまだ買い出しに出てないのはわかっていましたけど。買い出しはしてきました」

「早いね」

「今日は部活が無いので」


 なるほどなるほど。


「やほー、相馬くん」

「やほー」

「それでは、私は夕飯作りますので、ゆっくりしていてください」

 


 明日は土日というわけでアルコール解禁した二人。陽菜はそこまで強くないからあまり飲まない。僕はそこそこ。夏樹はかなり強い。


「いやー。美味しいねぇ。やっぱりお酒は良いなぁ。焼き鳥も美味しい!」

「ありがとうございます」


 僕はポリポリとポテトを食べている。陽菜はちびちびとジンジャーエールを飲んでいる。


「相馬君は、今の生活、どう思いますか?」

「楽しいよ。もちろん」

「そうですか。支えてもらうのは慣れなくて、少し、不安になってしまいました」

「支え切れてるのかな?」

「それはもう。とても」

「なら、良かったよ」


 目を閉じる。この生活を決意したのは、何でだったのかな。陽菜の性格に一番合っているものを探したら、先生だったのだ。それは覚えている。

 陽菜は教えるという事をずっとやってきたからというのもある。

 でも、それよりも、何よりも。

 ずっと、陽菜を傍で見ていた。傍で支えてもらっていた。でも、その中で思ったんだ。


「僕は、陽菜にもっと世の中で存分に力を発揮して欲しい、そう思ったんだ」


 それが、僕の得た答えだったのだ。

 

 


このendは、そうですね、平和な陽菜√を歩んだ場合のendです。相馬君は自己犠牲and陽菜依存をそこまでしなくなり、陽菜も相馬君全力の度合いが少し緩くなります。歪さが薄まった、そんなanother endです。

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