双子星
8章 「双子星」
『よし、よーし。
瞬ちゃん。大丈夫だよぅ。』
お兄ちゃんが待ってるよ。
学校のグラウンドがいつもの待ち合わせ場所。
サッカークラブの彼は練習のある火曜と木曜は瞬のお迎えに行けない。
大姉ちゃんは仕事に行ってるし、小姉ちゃんは学校に行ってる。
だから、火曜と木曜はあたしが瞬をグラウンドに連れていく。
そうすれば、彼と一緒に帰れるから。
『捺、ごめんな。
いつも、瞬のこと頼んで。』
光はあたしとは同い年の幼なじみ。
同じ病院で一日違いで生まれて、以来10年を共に過ごす仲。
まさか、同じ養護施設で暮らすと思わなかったけど。
光が、あたしと彼等の親戚が遺産を巡って金勘定しているところへあたしたちは自活すると言ってくれなかったら今の生活はない。
それに、…あたしは彼のことが好きだ。
瞬ちゃんのことも彼の弟はあたしの弟だから、かわいい。
瞬ちゃん、お眠かな?
ぐらぐらしている瞬に声をかけると、咄嗟に光が瞬を抱き上げる。
『捺、マザーバックお願い。』
でも、光は練習で…。
鍛えてっからさ、丁度いいから。
あたしが言おうとしていることを遮って言う。
いつもは不器用でぶっきらぼう、愛想なんてないくせに。
この、たまに見せる優しさに惹かれた。
光はあたしが光のことを好きだと気づいていないよね?
あたしのこの想いは1年と半年前に封印した。
あたしは彼への想いを語らずに、彼の側で彼が瞬を育てるのを助けようと決めた。
願掛け、みたいなものだ。
あたしが想いを封印することでみんなが幸せになれるように願う。
『次は、この子達です。』
三人まとめてか?
いいえ、女の子一人と男の子二人を引き取れる二組の夫婦。
条件は上の二人が幼なじみで尚且つ、将来的に恋人、夫婦になっても許される関係であること。
えっと、どこから突っ込んでいいのかわからない。
『光が赤ん坊を抱いた姿がとても似合い、寄り添っている捺が年齢を間違えた夫婦に見えたそうです。』
そこから、父は二人を引き離されないように引き取った。
今はまだ、二人が片想いだと思っているから、双子星。
だけどいつかその関係性も変わっていくでしょう。
そのときに困らないようにしてあげたいの。
『二人が戸籍上はいとこになってしまうが、ちょうどいい候補がいる。』
次の休みに奴等のところに行くか。
双子で隣同士で暮らしてる二組の夫婦だ。
子供はいない。
双子には双子でしょ。
笑顔で言う先生に上総さんの面影を見た――――。