愛すべき人
3章 「愛すべき人」
『はぁっ?赤ん坊?
なんの話だか?』
酷いわっ。あたしの大切な妹に手をつけておいて、言い逃れなんて。
あたしが育ててもいい教育はしてあげられないかもしれない。
だったら、彼のお兄さんだとか言う人にこの子を任せた方が。
意を決して連絡したのに、こんな酷い仕打ち。
だから、あたしがこの子を世界一幸せな子供にして見せる。
そう決めて、あたしの養子に迎え入れた。
『最初の子は一番上の幸です。』
どの子に限ったことはないですが、選ぶ人は彼等を無条件で愛し、守り抜いてくれる人です。
例え、彼等を害するものが実の親でも守ってくれる人。
幸の条件は、幸の進路に口を出さないこと。
それと、彼女が幸せな結婚をできるように相手をきちんと見極めてくれること。
幸の生育環境ははっきり言って最悪です。
幸の両親は幸が生まれてすぐに離婚しています。
当時、住んでいた部屋に生後間もない幸だけを残して。
隣家の人が見つけてくれたときには泣かない赤ん坊だったそうです。
泣かない、意思を示そうとしない子供は普通の施設では引き取れない。
だから、父は彼女を引き取ってきた。
今では彼女に当時の面影を見ることはないです。
もしかしたら、幸の実の両親は幸が働けるようになるのを待っているのかもしれないです。
『どう言うことだ?』
俺の問に少し、言いにくそうにする彼女。
あの、養えとかそう言うことです。
この業界、よくある話です。
赤ん坊の頃に捨てておいて、中学出る頃に引き取りに来るんです。
働かせれば、お金を搾り取れますからね。
子供にしたら、進学の機会は減るし、親への不信感でしかないから自身が親になったとき同じことをしてしまう。
でも、幸なら幸せな家庭を築ける。
幸は施設の子供たちにも実の子供や弟妹に接するように自然に接していた。
だから、子供を虐待なんてできないこと知っている。
『希望に添える所が1ヶ所だけある。
幸には兄ができても平気か?』
幸は聡い子ですから、兄となる人の人生の邪魔は致しません。
また、学費などは今まで特待生制度を使って進学していましたので、心配はありません。
上の学校へ行けば、働きに出るでしょう。
顔合わせさせてください。
幸に合うと思えば、あたしの死後に幸を引き取っていただきます。
ただ、幸は最後まで残ると言い張るでしょう。
年少の弟妹達がきちんと引き取られるまでは。
彼女はそう言う人間だとあちらの家族に伝えてください。
でなければ、このお話はなかったことに。
愛すべき人に愛されるように。
そう望まれて生まれたのだと皆に教えたい――――。