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ANGER/ANGER - Part 5

 ◆ ◆ ◆

 

 アルカインテールの地下居住区は、通称"ホール"と呼ばれている。地下に円筒状にくり抜かれた巨大な(ホール)に設立されていることと、バカデカい広間(ホール)であることを掛けた呼び名である。

 この"ホール"を眼にした星撒部の一同は、歓声を上げたり、眼を丸くしたりすることを禁じ得なかった。

 何故ならばそこは、オフィス街然とした地上部――今は瓦礫の山となっているが――に比べて、穏やかな山野の自然が呈する優しい緑や青といった色彩が広がっていたからだ。

 頭上には、ここは地下だというのに、深い青色の中に(まば)らな白雲の混じる天空が広がっている。地上には瑞々しい緑色を呈する田畑や山林が広がっており、住宅地はその光景の中に点々と配置されている。住宅地は1つ1つがさほど大きくない集落のようで、集落ごとに建物の規格はほぼ統一されていて、長閑(のどか)ながらも非常に整然とした印象を見る者に与える。

 この光景の中には、歓楽街もしくは商店街のような地域も見て取れる。そこは地上のオフィス街に比べると、ずいぶんと階層の低いビルで構成されており、文明色があまり強調されていない。

 「どうだ、結構いい眺めだろ?」

 胡座(あぐら)をかいて座った蘇芳は、ケラケラと笑いながら星撒部の誰ともなしに、自慢げな言葉を掛ける。

 「"ホール"は大抵、難民たちの居住区になってるんだがな、この光景を見ているとこの都市国家(まち)が『難民の楽園』って呼ばれる理由が実感出来るってモンだろ?

 彼らは職務中はずっと狭っ苦しい坑道の中だからな、プライベートな時間は心身を保養してもらうために、こんな風に自然美が満喫できる空間を作り出しているのさ。

 空は3Dホログラム画像で作り出した人工のものだが、結構精度が良いだろ? 時間帯に合わせて空の色や光が変わるのは勿論、状況に合わせて天気だって変わるんだぜ。

 ただ、雪の再現だけは住民からの賛否両論があってな、実現されていないんだ」

 「いや…雪が無くても、これだけ再現されていれば十分ですよ。

 むしろ僕は雪は何かと不便なので、不要派に一票を投じますね」

 蒼治がそう返すと、蘇芳は「そっか、そっか」とケラケラ笑う。

 「あの…」

 おずおずと声を上げて、蘇芳らの会話に割り込んだのは、ノーラである。彼女の傷はまだ完治してはいないが、紫の懸命な治療魔術のお陰で炭化していた右腕は随分と見れる有様へ変じていた。

 「ここは、地上のように破壊された痕が全く見受けられませんけど…。今回のように後をつけられるようなことさえなければ、癌様獣(キャンサー)を始めとした勢力は、積極的な襲撃はしてこないんですか…?

 トンネルに設置してる迷彩用魔化の効果はてきめん、と言うことでしょうか…?」

 「いや…残念ながら、そうじゃない」

 蘇芳は笑みを消して、(かぶり)を振る。

 「地球圏治安監視集団(エグリゴリ)以外の連中は、結構地下に侵入してくるぜ。オレ達の頭ン中に、"バベル"の所在だの理論だの情報が詰まってると思っていてな、捕獲しようと躍起になってるのさ。

 幾つかのホールは、地上と同じように完全にブッ壊されちまった所もある。

 オレ達も何度か襲撃にあっては、"ホール"を移動して来たけどな、今の"ホール"はかなり長く使ってるな。

 その辺りは(ひとえ)に、レナが来てくれたお陰だな。レナの迷彩用魔術はかなり優秀でな、ヤツらはなかなか突破できないようなんだ」

 己の好評を耳にしたレナは、ロイの治療に使う術符を作る手を止め、得意げに腕を組むとフフンと荒い鼻息を吐く。

 「あたしったら、かなり優秀だかンねー。だからこそ、単身で空間汚染地域に乗り込める自信もあったってモンよ。

 だから"暴走君"は、あたしのことをもっと敬えよ!」

 「…確かに、レナが方術に対して良いセンスをしているのは、僕も認めるよ」

 レナに思いっきり肩を叩かれたロイが非難めいた言葉を口にするより早く、蒼治が肩を(すく)めながら小さく笑って同意する。

 …しかし、その蒼治の態度は、レナの眼には小馬鹿にしたように映ったようだ。

 「…ンだよ、蒼治。いかにも"でも、ボクの方が優秀なんでーす"って言いたそうな態度だな」

 ギロリとした半眼を作って睨みつけるレナに、蒼治は慌てて両手を振って否定する。

 「いや、いやいや、そんな、僕の言葉に他意なんてないって!」

 その一方で、レナに叩かれた肩をさすりながら、ロイがボソリと漏らす。

 「…そんなガサツな態度取ってるから、優秀さの欠片も感じられねーンだろ…」

 「…おい、"暴走君"。何か言ったか?」

 蒼治に向けていた鋭い視線をロイに向け直したレナだが、ロイは怖じ気付くことなく、それどころか彼もまた金色の瞳を怒らせてレナと睨み合う。

 そんな光景を(はた)から見ていた紫が、フッと鼻で笑いながら、ヤレヤレと言った様子で両手を肩の高さまで上げて首を左右に振る。

 「類を類を呼ぶって言うけど、正にこのことねー」

 「なんだとぉっ!?」

 対して、レナとロイは見事に怒声をハモらせて、紫を睨みつけるのだった。

 一気に賑やかになった雰囲気を、純粋に和やかな微笑みを浮かべて傍観していた蘇芳であったが、ふと進路前方を指差して声を上げた。

 「おっと、そろそろだな。

 ようこそ、ユーテリアの学生諸君! 我が街へ!」

 

 ロイ達が会話している間、装甲車は比較的ゆったりとしたスピードで"ホール"の中の道路を進み続けていた。

 "ホール"の道路は地上のようにアスファルトで構成されたものではなく、煉瓦(レンガ)に似たタイルが敷き詰められて出来た、風情のある路面で構築されている。後に蘇芳らが言及するには、これも"ホール"の景観に彩りを添えるためのアルカインテールの方針なのだそうだ。

 風情のある道路の両隣には、野菜が整然と栽培されている畑が広がっていた。作業をしている人の姿もチラホラと見える。こんな時勢でも畑の手入れをしているのは、純粋に食料の確保のためとのことだ。

 畑の光景はやがて、街路樹によって遮られる。そして前方には、旧時代地球の中世の西洋様式とモダンな造詣が融合した、彩り豊かにして穏やかな街並が見えてくる。この"ホール"でも最も栄えていた商店街の1つなのだそうだ。

 「今、俺達はあの街の中で固まって暮らしてるのさ。

 いざ何か問題が起きた時――つまりは、敵が攻めてきた時に――素早い集団行動が出来るように、ってな。

 避難してきたヤツらは、そこら辺の店やビルの中により集まって暮らしてる。一応、家庭間のプライバシーを守るために、街ン中にあったダンボールだのボードだの使って生活スペースは区切った上で防音だのの魔化(エンチャント)は掛けてるんだけどよ、やっぱり狭い空間に1ヶ月以上も詰め込まれてると、ストレスが溜まっちまうもんさ。それでしょっちゅうトラブルが起きてるんだよ。

 まぁ、"ホール"にゃ見ての通り、キレイなまま放棄された家がゴロゴロしてはいるんだけどな、他人の家に勝手に転がり込むのはさすがに気が退けるみたいだし、さっき言った通り、いざと言う時の対応もあるから、文句は言えどもここから離れるヤツは居ないんだ」

 蘇芳がそんな解説をしているうちに、装甲車は商店街の名前が愉快なフォントで刻まれたアーチを潜り、町中へと進入する。

 美しくも機能的な景観の街並みの中には、チラホラと人の姿が見える。遊び回っている子供たち、立ち話をしている成人たち、ゆったりと散歩をしている老人たち、などだ。彼らは装甲車の車影を認めると、すぐにこちらに振り向いては――上半分がすっかりなくなった装甲車の姿を見てギョッとするのであった。

 驚いた後の人々は、その後車上の蘇芳に視線を向けてくる。中には、手を挙げて振りながら、彼に声をかける者も居る。

 「うっわ、倉縞隊長さん、なんだいこの有様はっ!?

 "きゃんさー"とか言うバケモノにでもかじりつかれたのかい!?」

 「そうそう、癌様獣(キャンサー)のヤツに派手にやられちまったよ! まぁ、かじりつかれちゃいないが、もっとヒデェ目に遭ったよ」

 「ひえぇ、やっぱ地上はおっかねぇなぁ!

 あのバケモノだのユーレイだのが、こっちまで攻めてこないのを祈るばかりだよ!」

 蘇芳に声をかけてくるのは大半が成人だが、中には子供もいる。今も、ボールを抱えて装甲車と並んで歩く、獣の耳がピンと生えた小学生低学年程度の男の子が声を掛ける。

 「ねー、倉縞のおじさん! 今日はどんなのと戦ってきたのー!?」

 「ああーもう、お祭り騒ぎみたいに色んなヤツらとやりあったぜー!

 飛行船だろ、機械の鎧を来たオッサンどもだろ、機械じかけの空飛ぶ魚だろ、それにユーレイと、癌様獣(キャンサー)どもだな!

 特に、ガイコツの顔をした侍のじーさんが面倒だったな! 枯れ木になるまで年食ってンだからよ、もうちょっと大人しく…そうだな、テレビにでもかじりついてお茶でも飲んでてほしかったなー。

 …てぇか、こうやって振り返ると、俺たちよく帰ってこれたなぁ…」

 「倉縞のおじさん、スゲーつえーじゃん! だからだよ、ユーレイも"きゃんさー"も、デッカいロボットも、みんなブっ倒せて当然じゃんか!」

 英雄でも見るような羨望と興奮の混じった眼差しをキラキラさせながら男の子が語ると、蘇芳はアッハッハ、と豪快に笑う。

 「いやー、そんな絶対無敵のヒーローみたいに言ってくれると、小っ恥ずかしいけど、嬉しいねぇ!

 でも、今回の功労者はオレじゃねーんだ。こっちいるお兄さんとお姉さんたちさ」

 蘇芳は親指で星撒部一同を指し示してから、視線をチラリとロイとノーラにそれぞれ向けつつ、更に語る。

 「特に、あっちの髪の赤いお兄さんと、小麦色の肌のお姉さん! あの2人が、『十一時』のヤローと亞吏簾零壱(アリス・ゼロワン)のヤバ姫様を迎撃してくれたんだぜ。拍手するなら、あの2人にしてやりな」

 「マジで!? スッゲー! 強過ぎーっ!」

 男の子は目を丸くして、更に輝きを増した羨望の瞳をロイとノーラに向ける。子供たちの間にも、『十一時』や亞吏簾零壱(アリス・ゼロワン)と云った、脅威度の高い敵個体の知名度は高いらしい。

 男の子の反応に対し、ロイは術符だらけの腕で力こぶをモリッと作りながら、ニカッとヒマワリのような笑みを浮かべて見せる。

 「まぁー、倒し切ったワケじゃねーけどさ。思いっきり、ブッ叩いてやったぜ! お前らを怖がらせた分を上乗せしてな!」

 ロイは"オレンジコート"の難民キャンプでもそうであったが、本当に子供の扱いに慣れているようだ。心底、子供の事が好きなのだろう。

 そんなロイの態度に感心しながらも、ノーラはなかなか子供への接し方が分からず、男の子の羨望の眼差しには薄い微笑みを浮かべて小さく手を振ってみせるだけで精一杯であった。

 男の子と分かれてからも後、蘇芳は何人かの人々から声を掛けられていた。この街の中では、彼らは相当知名度があるらしい。

 

 =====

 

 一方で装甲車は、風情のある美しい街並みの中を、タイルで出来た道路をゆっくりと走りながら、どんどん奥の方へと進んでゆく。

 やがて、一際背の大きなビル――といっても、地上6階ほどだ――に見下ろされた、広い公園に辿り着く。

 公園はほぼ正方形の敷地を持ち、周囲を広葉樹でグルリと囲んでいる。この木々は、花期が長くなるように品種改良されたサクラの木とのことだ。残念ながらこの時期は花期が終わってしまい、代わりに若々しい新緑と小さなサクランボ状の果実に彩られている。

 公園の中は大部分が芝生に覆われており、所々には大理石に似た模様のタイルで覆われた箇所が見える。タイル張りの箇所には岩石製の彫刻があったり、噴水があったりする。中でも、公園の中央に位置するタイル張りの箇所の造詣は立派で、花盛りのツツジの植え込みに囲まれた、一際大きな噴水が見る者の目を引いた。

 平時ならば、この公園は子連れの親や、学校帰りの学生たちが遊ぶ穏やかで賑やかな光景が広がっていたことだろう。

 しかし、この戦時下では、公園の光景は全く印象を変えていた。

 芝生の上には幾つもの無機質な大型テントが配置され、ゴツい外観の装甲車や輸送車の姿が駐車している有様もチラホラと見える。その合間には、制服を着込んだ軍警察官の姿があり、立ったまままとまって何らかのミーティングをしたり、物資を運んだり、職務か日課かは判断できないが筋力トレーニングに所為を入れたりと、キビキビした雰囲気が漂っている。

 運転手のルッゾは、車両進入禁止柵が撤去された入り口から公園の中へと徐行で進入し、軍警察官の元へと向かう。

 「ここは、この"ホール"の地域役所前に作られた公園さ。オレ達、市軍警察はここを拠点にさせてもらってる。

 さすがに、商店街内部の道路に、車幅の広い装甲車を並べて駐車したりするのは、邪魔臭いからな」

 蘇芳が星撒部の一同に説明しているうちに、装甲車は拠点の受付事務所と云わんばかりに設置されている、横長の直方体の形状をしたテントの前に停車する。すぐにテントの中から3人の軍警察官が飛び出してくると、上半分が吹き飛んだ装甲車の姿を見てギョッとする。

 それから3人は、運転手のルッゾの方に目を向ける。視線を受けたルッゾは、ちょっと外に出て遊んで帰ってました、と言わんばかりの軽い態度で手を挙げる。

 「よおっ、なんとか帰ってきたぜ。

 車はこのザマだが、全員五体満足だ。

 それと、客を連れてきた。詳しいことは…」

 ルッゾが話している最中のこと。突如、横合いから次々に歓声にも似た騒ぎ声が投げかけられる。

 「倉縞中佐、おかえりなさい!」

 「倉縞中佐、うっわ、なんですかこの車の有様はっ!」

 「倉縞中佐、お怪我があるようですが、大丈夫ですか!?」

 小走りでゾロゾロと集まってくる軍警察官が、次々に「倉縞中佐!」「倉島中佐!」と答えを待たずに言葉の雨(あられ)をぶつけてくる。

 「んんー…まぁー、その、なんだー…」

 蘇芳が困ったように苦笑いを浮かべて頬を掻いていると。轟雷のような絶叫が、賑やかに浮ついた場の雰囲気を抑え込む。

 「コォラッ、お前たち! 倉縞中佐がお困りだっ!

 文民が平静を保てなくなる有事にこそ冷静さを発揮するのが、我ら軍警察官だぞ! お前のこの有様は、正にその名折れだな!」

 鋭く語りながら、人山の中をかき分けてくるのは、これまた制服に身を包んだ、女性の軍警察官だ。頭に乗せた青色のベレー帽とは対照的な、くすんだ赤色のセミロングヘアを持ち、張り上げた大声や男性隊員をも恐れぬ気概に見合わぬ小柄な背丈をしている。だが、ナチュラルなメイクが施された顔には男勝りな勝ち気な性格が見て取れる。

 女性軍人は停車した車の前まで進み出ると、ビシッとした敬礼を蘇芳にして見せてから、スクッと身を屈めて立て膝を付く。これに倣って他の軍警察官たちも、慌ててバラバラに敬礼をとっては、即座に立て膝を付いた。このスタイルが、アルカインテールの軍警察の上官に対する正式な敬礼作法のようだ。

 「ようこそご無事で帰還下さいました、倉縞中佐。

 御自らの偵察任務、ご苦労様でした」

 堅苦しい態度の中に、(かたく)なな敬意をふんだんに匂わせて語る、女性軍警察官。その態度に蘇芳は困り果てたような苦笑を浮かべて、頬をポリポリと掻く。

 「いやー、珠姫(たまき)大尉、そんなに改まンなって、いっつも言ってるじゃねーか。息苦しいっての。

 他のヤツらもみんな、そんなポーズ止めて、楽な姿勢を取ってくれよ」

 「それが倉縞中佐のお望みなのでしたら…。

 全員、"休め"の姿勢を取れ!」

 女性軍警察官が雷鳴のようにキビキビした号令を掛けると、軍警察官たちは今度はタイミングを揃えてザッと立ち上がり、肩幅に両足を開いて腰の後ろで腕を組む。

 そんな一連の動作から、珠姫(たまき)大尉と呼ばれた女性軍警察官は、この"ホール"の駐在部隊では上等な地位を持っていることが容易に想像できる。

 蘇芳は軍警察官たちへ早速言葉をかけようと口を動かしたが、ハッと星撒部たちのことを思い返すと、彼らの方に視線を向けると、女性軍警察官に(てのひら)を向けて紹介する。

 「彼女は、竹囃(たけばやし)珠姫(たまき)。ルッゾと同じく、この都市国家(まち)で衛戦部に所属していて、中隊長をやってたんだ。

 今は、不肖なオレの副官みたいな役を買って出てくれてな、色々助かってるんだ」

 「倉縞中佐は、不肖なんかじゃありません!」

 珠姫(たまき)がズイッと車上の星撒部一同に顔を寄せ、眉根を寄せた険しい顔立ちで鋭い抗議を吐く。

 「倉縞中佐こそ、類い希なる素晴らしい上官です!

 先日の"バベル"事件発生時に、真っ先に現場から離脱した、我々の元上官とは比べものにならなりません!」

 珠姫(たまき)の瞳は非常に真摯な光をたたえていたが、その中には先に声をかけてきた男の子ような尊敬の煌めきが(まぶ)しいほどに見て取れた。

 蘇芳はその眼差しに気づき、恥ずかしそうな苦笑を浮かべたが、敢えて言及はせずに別の話を振る。――下手に刺激すると、珠姫(たまき)は必死になって蘇芳を担ぎ上げようとムキになることが分かり切っていたからだ。

 「オレ達が留守の間、変わったことはなかったか?」

 「大きなトラブルはありませんでした。避難民同士のいざこざが3件あり、一部の隊員が仲裁のために出動しましたが、すべて話し合いによる解決済です。

 今は、予定通り定刻のメンテナンスや状況確認の周知などを行っていました。また、本日の炊事当番の部隊が、夕餉(ゆうげ)の支度を始めています」

 「メシ!?」

 屋根の吹き飛んだ人員収納スペースで胡座(あぐら)をかいて座り込んでいたロイが跳ねるように立ち上がって身を乗り出す。

 「献立は何なんだ!? カレーライスか!? 軍隊っていやぁ、カレーライスだよな? な!?」

 いきなりの質問に珠姫は"なんなんだ、この人は?"といった怪訝と驚愕を交えた表情で、思わず身を退ける。そこへ更にロイが食い下がろうと言うかのようにズズイッと体を乗り出して――その真紅の頭の上に、ゴチンッ! と鈍い音を立てて堅く握りしめた拳が落ちる。拳の主は、紫だ。

 「いってぇっ! な、なにすんだよ!」

 「飢えたケダモノみたいにガッついてんじゃないわよ。

 …すみません、こいつったら、本能の勢いだけで生きてるようなヤツなんで…気にしないで下さい」

 コロリと表情を変えて余所(よそ)向きの笑みを浮かべた紫は、ロイの制服の襟をグッと掴んで引き戻す。その滑稽な様子に、珠姫はキョトンとした表情を浮かべる。

 「は、はぁ…。

 ちなみに、今日の夕餉の献立は、残念ながらカレーライスではなく、肉じゃがだ」

 キョトンとしつつも、律儀に質問に答える珠姫。その回答を聞いたロイは紫の腕を振り払って、再び身を乗り出す。

 「肉じゃが!? それでも全然問題ねーや! 腹減って仕方ねーんだ!

 早く喰わせて…」

 そこへすかさず再び落ちる、紫の拳。前回よりも勢いのある一撃は、更に痛々しいゴギンッ! という音を立てる。ロイはたまらず頭を両手で押さえて、その場にうずくまる。

 「はいはい、大人しくしましょーねー、ケダモノくーん」

 紫は再びロイの襟首をギリリと引っ張って、今度は珠姫よりかなり離れた所まで引っ張っていった。

 珠姫は再びキョトンとして、パチクリと瞬きを1つ。そして蘇芳に向き直ると、頭上の浮かべた疑問符を言葉にして投げかけた。

 「あの…彼らは?

 制服は、ユーテリアのもののようですけど…。ひょっとして、レナ氏のお友達か何かですか?」

 「いやいや、こんな暴走生物どもとあたしを一緒にしないでくれよーっ!」

 レナが両手を挙げるどころか、素早く立ち上がって抗議する。そんな様子を目の端で認めた蘇芳は、苦笑を浮かべっぱなしのまま説明する。

 「彼らは、ユーテリアの星撒部っていう部活動グループの部員たちだそうだ。レナとは同じ学園の生徒って共通点はあるものの、出自は全く違うそうだ。

 今回の地上偵察で、4勢力全部から追いかけ回されてた所を見つけてな、救助したんだ。

 ――まぁ、その後、帰還する途中では逆に助けられたがね。『十一時』と亞吏簾零壱(アリス・ゼロワン)率いる愉快な仲間たちを相手にして、撃退してくれたんだ」

 「…!?

 それはそれは…私たちの中佐を助けて頂き、ありがとうございます」

 素直に深々と礼をする珠姫に反応したのは、蒼治だ。パタパタと両手を振って、珠姫の態度を止めてくれるように訴える。

 「いや…この都市国家の事情をろくに調べもせずに入都して、状況を掻き回してしまったからこそ、蘇芳さんたちの手を煩わせてしまったんです。

 非難されることはあっても、決して感謝されるようなことしてませんよ」

 「いやいや、マジで助かったって。

 地上に出りゃ、4勢力のうちのバケモノクラスの実力者に当たる可能性はいつでもつきまとうからな。

 オレ達は、君たちを拾えてホントに幸いだったよ」

 そんな謙遜の応酬をひとしきり終えた直後。珠姫は表情を引き締めて尋ねる。

 「ところで、地球圏治安監視集団(エグリゴリ)の通信を傍受して掴んだあの情報――入都予定の"パープルコート"補給部隊は、見つけることができましたか?

 通信班によれば、結果的にはサヴェッジ・エレクトロン・インダストリーの連中が彼らを捕獲したようですけど…。倉縞中佐は、彼らの同行調査をある程度でも行えたのでしょうか?」

 「いいや。全っ然、影も発見出来ずに終わっちまった。

 "インダストリー"の連中が彼らを捕縛したってのも、今が初耳だ」

 蘇芳は装甲車から飛び降りると、珠姫の周りに集まって待機しているままの隊員たちに手振りで解散を伝える。それを受けてキビキビと踵を返し、それぞれの持ち場へと戻ってゆく隊員たちの背中を見ながら、蘇芳は太い腕を組んだ。

 「地上に出てみたら、戦闘が始まってたからな。だからてっきり、"パープルコート"の補給部隊が他勢力に補足されたのかと思ったんだが…。結果は、この通り、ユーテリアの学生諸君だったワケだ。

 本命の補給部隊は、学生諸君が状況を掻き回してる間に、別の入り口から入都しちまったんだろうな」

 蘇芳の推測に、珠姫は(うなづ)

 「"インダストリー"どもの通信内容からすると、そのようでした。

 更に、彼らが"パープルコート"の補給部隊を捕縛したようです」

 「ふーむ、"インダストリー"の奴ら、冷静だと言うか、頭が回るというか…ともかく、うまいことやったな。

 そういやぁ、癌様獣(キャンサー)や『冥骸』の連中の姿はやたらと見かけたが、"インダストリー"の連中の姿は比較的少なかったな。プロテウスの奴も姿を見かけなかったしな。

 本命が別にあると早期に判断して、学生諸君の起こした騒ぎには最低限の戦力だけ投入して様子見した上で、本命の探索に力を入れてたワケか」

 「あの…横合いから失礼しますが、質問良いですか?」

 装甲車上の蒼治が身を乗り出して手を挙げて質問を口にすると、蘇芳と珠姫の2人は首を巡らして彼に注目する。

 「ああ、良いぜ。何だい?」

 「蘇芳さん達は何故、今回の騒ぎで地上に進出したんですか?

 騒ぎを起こしているのは僕たちではなく、外部から入都した"パープルコート"の補給部隊だと思っていたんですよね? 彼らと接触して、何かするつもりだったんですか?」

 「勿論さ」

 蘇芳は頷いて答えた直後、バツの悪い苦笑を浮かべて頬をポリポリと掻く。

 「あんまり誉められた話じゃないんだがさ…。実は、補給部隊の奴らをオレ達で捕縛して、彼らを人質にした上でアルカインテールからの脱出を"パープルコート"に交渉しようと思ってたんだよ。

 "パープルコート"の連中は、"バベル"の目撃者であるオレたちが外部に情報を漏らすのを嫌って、ここに足止めしてやがるからな。

 だがオレたちとしては、"バベル"なんて気味悪いモノは、欲しい奴らだけで喧嘩して奪い合ってもらいたいんだよ。事情も実現理論もよく知らねーオレたちまで巻き込まないでよ、さっさと解放して欲しいワケさ。どうせ"バベル"の話を外部に語ったところで、戦中のPTSDか何かを(わずら)っての妄想的な絵空事としか思われないだろうしよ」

 「なるほど…。

 でも、実際に補給部隊を捕縛していたとしても、"パープルコート"の駐留部隊が蘇芳さんたちの要求を飲むとは思えないですけどね…。

 『握天計画』のためには人民の命を部品として扱うような連中です。補給部隊を見捨てる可能性は高いんじゃないですかね…」

 「うーん、それはオレ達も想定はしてたんだがね…。何もやらないよりはやってみるか、って感じのダメ元でチャレンジして見たんだがね。

 補給部隊が"インダストリー"の手の内に落ちたってのに、"パープルコート"が大した動きを見せていないことを鑑みると、オレ達が捕縛したところで、君が懸念してる通り、あんまり意味なかったかも知れないな」

 蘇芳が首の付け根をトントンと叩きながら、さぞ無念そうに語る。そんな様子を見ていた珠姫は、彼を気遣うような悲哀に満ちた表情を浮かべると…直後、蒼治に向けてナイフのような剣呑な視線をギロリと向ける。

 「貴様、世間知らずの学生の身の上だからと言って、中佐に失礼なことをズケズケと言うな!

 ならばお前は、中佐よりも余程優れた案を捻り出せるとでも言うのか!」

 火を吹くような珠姫の発言に対し、蒼治はビビるよりも、眼鏡をクイッと直して顎に手を置き、真剣に考え込み始める。

 この姿は予想外だった珠姫は、思わずポカンとして蒼治を見つめるばかりだ。

 そんな最中、グゥ~ッ! と緊張感の欠片もない間抜けな音が響く。

 ロイの、腹の音である。…そういえば彼は、激闘が終わってすぐに空腹を訴えていた。

 「反省会で反省するような内容は、もうねーだろぉ!? 補給部隊は捕まえられませんでした、他の方法をみんなで考えようぜ、で結論出てるじゃねーか!

 そんな事よりよぉっ! 何か喰うもの! 喰うものねーのかぁ!? さっきから腹減って仕方ねーんだよ!」

 ロイの子供のような喚きに、隣に座っていた紫がヤレヤレといった様子で両手を挙げて首を振る。

 「あんたは、ホーント、脳天気でいいわねー。

 …まぁ、確かに、クタクタの頭と体で知恵を絞ろうとしたところで、成果なんて期待出来ないってのは確かだろうけど」

 「まっ、確かにそうだな。

 オレも実は、直ぐにでもへたり込みたいぐらいにクッタクタだよ!」

 蘇芳がケラケラと豪快に笑いながら反応する。

 「珠姫、学生諸君に休憩場所と、食べ物を提供してやってくれ。

 …っと、夕飯の肉じゃが作ってる最中だったんだっけか? まぁ、肉じゃが出来るまでの間、多少腹に入るもの…缶詰とか、菓子とか、ふるまってやってくれ。

 あと、怪我が直りきってないのも居ると思うから、手当も忘れずにお願いな」

 珠姫は承諾すると、まるで先導の教師のようにキビキビした態度を取って星撒部一同、加えてレナの方を見やると、降車してついてくるようにと手を振る。

 「中佐の温情を噛み締めて、深く感謝するんだな!

 さあ、こっちだ! 着いてこい!」

 珠姫のかけ声に突き動かされたユーテリアの学生たちは、軽々と装甲車から飛び降りると、崩れた直列を作って珠姫の後ろをついてゆく。

 …その途中。最後尾に位置したノーラは、蘇芳の真横に着くと、「…あ…」と小さく声を挙げて足を止めた。

 ノーラは、間近な蘇芳の顔をまじまじと見やる。彼女の澄んだ翠色の瞳に映った自分の顔を認めた蘇芳は、キョトンとした声を挙げる。

 「ん? どうしたんだ、お嬢ちゃん? オレの顔に、何かついてンのか?」

 「いえ…そうではないんですけど…今更になって、気付いたことがあって…」

 ノーラはまじまじと蘇芳を見つめたまま答える。

 ――先刻までノーラは、蘇芳やロイたちとの会話にあまり混ざっていなかった。それは話すことがなかったワケではなく、胸中にひっかかった疑問――というか、好奇心に近い疑念が気になって仕方がなかったからだ。

 アレコレと会話を続けていた蘇芳が一段落した今、ノーラはその疑問符をぶつけずにはいられない。

 一方で、早くも数メートル先まで歩き出していた珠姫が、足を止めているノーラに気付くと、不機嫌そうに眉根にしわを寄せ、銃撃のように鋭い声を投げかけてくる。

 「そこ、何してる! 早くこっちに来ないか!

 私は、いつまでもお前たちの相手をしてる暇はないんだからな!」

 「まぁ、そうカッカすんなよ、珠姫大尉。せっかくの美人顔が台無しだぜ」

 「え…、び、びじ…!」

 蘇芳にからかい半分の世辞を口にすると、珠姫は(おだ)てられた少女のように、今にも火を吹きそうなほどに顔を真っ赤にして、ぎこちなくはにかむ。

 どうやら珠姫は蘇芳のことを、職務上の上官としてだけでなく、個人的にも気を寄せているようだ。

 そんな顔を真っ赤にした珠姫をケラケラ笑いながら、蘇芳は付け加える。

 「そっか、大尉は今日は炊事当番だもんな。得意の料理の手を抜いちまうことになるのが悔しいのかも知れないが、なーに心配ねーって。当番はお前だけじゃないんだからよ。

 大丈夫、お前のレシピの肉じゃがは最高の出来になるさ」

 「は、はぁ…。あの…その…中佐がそこまで言って下さるなら…はい、少し、落ち着きます…」

 登場時と比べて随分としおらしくなった態度に、毒袋持ちの紫やレナはニマニマと意地の悪い笑みを浮かべていた。

 それはともかくと、蘇芳はノーラに向き直って、言葉の続きを促す。

 「んで、気付いたことってのは? 何か、オレに関係することなのか?」

 「はい…。あの…蘇芳さんって、苗字を"倉縞"って云うんですよね…?」

 「ああ、そうだが…それがどうしたんだ?」

 「あの…栞ちゃんって名前の娘さんが、居ませんか?」

 ノーラがこの疑問を口にした途端、ロイがほぼ同時に「あっ!」と声を上げた。

 「そういや、あの()の名前、倉縞栞だったよな!

 ってぇと、まさか、あの()の親父って…」

 ロイが視線を蘇芳に向けた、その時。蘇芳は目の前のノーラの両肩をガバッと掴み、興奮で震わせながら、熱の籠もった声を上げる。

 「栞の事、知ってるのか!?

 アイツと会ったのか!? 今、どこに居るんだ!? 無事なのか!?」

 ガクガクと揺らされてノーラは若干目が回って気持ち悪くなったが、なるべく穏やかな笑みを浮かべて答える。

 「は、はい…。"オレンジコート"の部隊が運営してるキャンプで、他のアルカインテールからの避難民の子供たちと一緒に過ごしてました。無事でしたよ…ただ、お父さんと離れてしまって、少し元気を失ってましたけど…」

 「そうか、そうか…!

 栞、無事だったんだな…!

 あの状況で、栞だけを救助車両に乗せちまったのが、ずっと心残りでな…。あの時、"パープルコート"と癌様獣(キャンサー)の交戦に巻き込まれて、大破しちまった車両がいくつもあったからな…。無事に脱出出来たのか、心配してたんだが…。

 これで、一安心ってモンだぜ!」

 それから蘇芳はノーラの両肩を解放したかと思いきや、即座に両手で彼女の右手をガッチリと握ると、ブンブンと上下に振り、激しい握手を交わす。

 「ありがとうな、ユーテリアの学生さんよ! 栞のこと、教えてくれて!」

 「い、いえ…」

 腕が痛くなるほどの勢いに晒されて、ノーラの笑みには苦しそうな表情がジワリとにじみ出てしまう。

 が、なんとかそれを噛み殺すと、ノーラは栞と今回の入都の関係について言及する。

 「今回…私たち、星撒部がこのアルカインテールを訪問したのは、栞ちゃんからの依頼があったからなんですよ。

 避難する時に無くしてしまった、お父さん手製のクマのヌイグルミを見つけて欲しい、とお願いされたものですから…」

 「おいおい、あいつ、そんなモンのことを気にかけてやがったのか。

 あんなの、ただの物じゃねーか。自分の命の方をよっぽど気にかけろってんだよ…」

 蘇芳は語気強く、離れたところにいる娘に叱るような調子で語ってはいたが、その目尻には安堵の涙が光っていた。

 思わず鼻をすすってしまった蘇芳は、自分の涙に気付くと慌ててグシグシと目尻を擦って家族愛溢れる父親の表情を打ち消すと。

 「しっかしなぁ、学生さんよ。アンタら、無茶な依頼を引き受けたモンだなぁ」

 苦笑いと共にそう語りながら、頭をボリボリと掻きむしる。

 「それは、わたしも激しく同意なんだよね」

 ちょっと離れたところから紫が影のある笑いと共に語りながら、嫌みをふんだんに含んだ視線をノーラに向ける。それに気付いたノーラは、一瞬ハッと姿勢を正した直後、モジモジと身をすくめてしまう。

 入都直前から無茶を指摘されていた上に、入都後には命を落としかねない状況に巻き込んでしまったのだ。優等生にして生真面目な気質のノーラは、その責任感を無視するなど、とても出来るものではない。

 そんなノーラの態度を更に萎縮させかねない懸念を抱いた蘇芳は、苦笑いを更に大きくさせながらも、軍人らしく現実を突きつける。

 「こーんなバカ広い都市国家の中で、子供が脇に抱えられるようなサイズのヌイグルミを探すってのも無茶だけどよ。

 栞と別れた辺りは、かなり戦闘が激しい地域だったからな。建物もなにもかも原型を留めていないような状態だ。きっと、ヌイグルミも消し炭になってるだろうぜ。

 栞の願いは、残念ながら、叶わねーだろうな」

 「…そ、そうですよね…。こんな状況じゃ、どうにもならないですよね…」

 しゅん、としてノーラは頭を垂れる。強く約束を交わしてしまった栞にも申し訳ないが、星撒部の実績にも泥を塗ってしまうことにも大いに責任を感じずにはいられない。

 

 しかし、そんなノーラの失意を軽々と吹き飛ばすような勢いを持つ、楽天的な声が滑り込んでくる。

 声の主は――今回の作業のもう1人の発起人である、ロイだ。

 

 「いやいや、あの()の願い、もう叶う寸前じゃねーかよ」

 「はぁ? 何言ってンのよ、あんた? とうとう脳まで暴走しちゃったワケ?」

 紫が嫌みと呆れをたっぷり含んだ流し目でロイを睨むが、ロイは全く動じない。

 どころか、真夏の太陽のような得意げな笑みをニカッと浮かべると、蘇芳を指差す。

 「ホラ、そこにあるじゃねーか。

 デッカいクマのヌイグルミが、よ!」

 その言葉の意図を計りかねた一同は皆、キョトンとして言葉を失ったが。いち早く、ノーラはその意図を理解すると、厚い雲から姿を現した太陽のように笑みを浮かべた。

 「…うん、うん! そうだね!

 これ以上ないほどに大きくて、立派な、クマのヌイグルミだね!」

 ――そう、今回の依頼は、単に物を揃えることが重要なのではない。

 真に重要なのは、栞の曇ってしまった眼に、再び輝きを灯すことだ。

 それに必要なキーを"クマのヌイグルミ"と称するのならば、キーはとっくにここに揃っている! しかも、ヌイグルミ以上に効果てきめんなキーが!

 しかし、ロイとノーラの2人からの視線を受ける蘇芳は、未だに意図を理解できず、それどころか頭上の疑問符を大きくして、自分のことを指差して言う。

 「…オレ、そんなにクマに似てるか?

 まぁ、確かに、ヒトよりゃ図体はデカいかも知れねーが…」

 そんな的外れな指摘をロイとノーラは愉快げに受け止めると、ケラケラ、クスクスと小さく声を上げて笑うのだった。

 

- To Be Continued -

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