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虚空の天使【完結】  作者: 木口なん
裏世界編

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EP556 文明神の願うこと


 文明神アカシックという超越神は、生まれながらにして神であった。

 いや、種を超越した存在であったというのが正しい。その絶大な権能によって世界を創造し、巨人族を創造し、信仰を得て神となった。

 一部の完全な魂が、多くの不完全な魂を運営する。

 その完全な魂というのが神に相当する。

 漂う不完全な魂を保護し、世界で育てる。その方法は世界によって異なる。生と死を繰り返させ、その中で強い魂を選別する方法。不死の特性を与え、永劫の時の中で成長に期待する方法。階層世界の間を行き来させることで強者を順に上げていく方法。それは神それぞれといったところだろう。

 そして文明神アカシックは、知性と文明こそが魂を成長させると考えた。



(知恵の実を与えよう。しかし生命の実は決して与えない。知識を継承させ、受け継ぐ意思がなければ文明の発展はない)



 技術のブレイクスルーは天才の閃きによって引き起こされる。

 故にこの世に天才が残り続けるならば、急速な発展を望めるかもしれない。しかし、死という終わりのない生命は停滞を生む。限界がないゆえに、考えることを止めてしまう。与えた知性の種を無駄にしてしまう。

 アカシックは生命力の強い巨人という種に、大きな知性を与えた。

 その方針は当たり、巨人族は科学力で異世界を見つけ出し侵略するほどになる。このことにアカシックは喜んだ。



(知性と理性が、野蛮な思想を支配しなければならない。知恵で凌駕する存在が統治しなければならない)



 本来は禁止されている無許可での異世界侵略を黙認した。

 その果てに封印されてしまうことは分かっていたが、運命の分岐点を操ることでいずれ復活できることも分かっていた。二千年にも満たない僅かな期間の封印を受け入れるのは容易いことだった。



(私は尤も未来を見通し、運命を支配する。私が上に立ち、管理しなければならない)



 この時点でのアカシックは中位神格だった。神としての位階はそれなりといったところ。とても君臨できるだけの力はない。

 高位、あるいは最高位神格の力は絶大だ。アカシックとは別格である。

 特に巨人たちが攻め入ったエヴァンという世界は虚空神ゼノネイア、魔法神アルファウという最高位神格が存在する。神の権能すら虚数化によって封じてしまうゼノネイアは勿論、魔法システムの祖であるアルファウも厄介である。どれだけ未来を読もうともゼノネイアは強制封印してしまうし、アルファウは法則構築能力によってシステムを書き換えてしまう。そうでなくとも他の四神が高位と中位の神格なのだ。まともに相対して勝てる道理がない。



(新しい力を取り込む必要がある)



 神は信仰の力を受け、また魂を運営することでその力を増す。

 しかしそれは何千、何万、何億年という長い時間のかかる方法だ。手っ取り早いのは超越者の魂の力をそのまま喰らうことである。他の魂をそのまま取り込むことができないという欠点は存在するが、それは自身の力を分け与え、馴染ませることで解決する。

 そういった経緯で光神シンは誕生した。

 予定通り、使えなくなった光神シンの力を奪って一つ大きな力を得た。権能の強化も達成した。



(未来は読める。私の勝ちは揺るがない。そのように振る舞ってきた)



 運命は幾つも分岐する。

 しかし読み切ってしまえば未来の予測も難しくない。カグラ・アカシックとなった今はより精度の高い未来予測が可能となっていた。

 裏世界に設置した神界で思いを巡らせる。

 この世界を奪い取り、全ての魂へと力を侵食させ、食い尽くすことで素早く最高位の神に匹敵する。それがカグラ=アカシックの目的だ。



「……来たようだね」


「倒しに来た」



 カグラ=アカシックにとって天使との戦いは前菜に過ぎない。

 勝利の確定した遊びでしかない。



「天使クウ、ユナ、リア、ミレイナ、それと勇者セイジだったか。しかし私の敵ではないよ」



 笑みを浮かべる超越神は、その余裕からか挑発するように手招きする。

 裏世界の最後の戦いが始まった。






 ◆◆◆






 表世界の戦いでは、天使メギドエルを回廊迷宮に捕らえることができていた。リグレットの世界侵食イクセーザは脱出不可能な迷宮である。混沌を司るメギドエルですら、力づくでの脱出は不可能であった。



「ふむ」



 もう一通りのことは試したが、迷宮を抜けることはできていない。

 この真っ白な世界に浮かぶ無数の鏡は情報次元を反射させる役目がある。これが鏡の回廊の厄介なところである。

 メギドエルは鏡の一つの前に立ち、混沌の力でベクトルを分散させる。物体を構築する要素のベクトルがランダムで分散され、飛び散るようにして鏡が砕けた。

 だが同時にメギドエルの肉体も爆散する。

 鏡属性が発動し、そのままメギドエルへと反射されてしまったのだ。

 ただメギドエルも超越者であるため、即座に再生して復活する。



「やはり無理か」



 メギドエルにとって厄介なのは、この迷宮に閉じ込められてから相手が何もしてこないことである。混沌という攻撃にも防御にも使える汎用性の高い能力を備えているが、それを使う相手がいなければ意味がない。また迷宮そのものに混沌を与え、崩壊させようとしても鏡が全てを反射してしまう。全力の混沌ならば鏡だけでも破壊可能だが、やはり反射される。

 強制的な長期戦を強いられるこの空間において、取るべき手段はただ一つだ。

 何もしない。

 カウンター特化能力であることを考えれば妥当である。



「なるほど。ではこれはどうだ?」



 しかし敢えて彼は権能を強めて鏡に触れた。

 すると鏡は破壊される。同時にメギドエルの霊力体も一部弾けた。

 先は全身が乱数化によって弾け飛んでしまったが、今回は肉体の一部。具体的には各所をまばらにだ。反射してきた乱数化攻撃をさらに乱数化したのである。あくまでも乱数であるため幾つかはメギドエルの肉体を分散させてしまったが、ダメージを減らすことには成功している。



「そういうことか」



 何度か攻撃を繰り返すことで、メギドエルもこの鏡の世界《消失鏡界ロスト・ミラー・ワールド》を理解しつつあった。簡単には死なない超越者だからこその、身を挺した探りの入れ方である。

 権能の力はその性質さえ理解してしまえば大抵は対処できるようになる。

 この面倒な世界侵食イクセーザも突破できる可能性はあると考えていた。

 メギドエルが理解したこの世界の性質は全部で三つだ。

 一つ目は、空間的に閉じ込められているということ。

 二つ目は、自身の放った術を鏡が反射すること。

 三つ目は、反射された術にも干渉できるということ。

 これらの情報だけで突破口を見つけることはできていない。脱出しようと何かをすれば、それがそのまま返ってくるのだ。強く干渉すれば鏡の一枚程度を破壊することもできるが、どちらにせよ反射されるので意味がない。空間に浮かぶ数百もの鏡が一斉に術を反射してくるのだから、どうしようもない。

 超越者すら完璧に閉じ込める。

 メギドエルは逆に感心した。

 なるほどやはり何もしないことが一番だ、という結論に至ってしまう。だがそれはあまりにも安易だ。もしも術の時間切れを狙えば、向こうから何かの攻撃をしてくると考えた方がいい。超越者としてはリグレットよりも長く生きるメギドエルには簡単に予想できた。



(知恵比べ、ということである)



 知恵の実を与えられた巨人族の天使、メギドエル。

 彼に備わった知性は、元は同じ巨人族を管理するほどのものである。これまでの情報を整理し、自身の権能によって突破が可能であるか検証する。

 結果は一瞬にして弾き出された。



(不可能なり)



 この迷宮では彷徨うことを強いられる。

 壊して脱出するという手段は許されない。

 周囲に乱数化を強いるという権能は強力だが、この場においては全て自分に返ってくる。メギドエルは対処を早々に諦め、耐えるという方向で覚悟を決める。巧い切り抜け方がない場合は、幾度もの消滅を覚悟で超越者らしい不死性で戦うのみ。

 メギドエルは消耗を承知で権能を乱発し始めた。





 ◆◆◆





 リグレットの世界侵食イクセーザ消失鏡界ロスト・ミラー・ワールド》は管理室と呼称している空間で迷宮の全てを観察できる。今もリグレットはアリア、メロ、テスタを管理室へと招待して高みの見物をしていた。



「どうやら僕の能力を確かめているみたいだけど……」


「リグレットの世界侵食イクセーザが破られるとは思えんがな。奴の能力はこの迷宮では全て自分に返ってくる。それに奴の力の蓄積も済んだのだろう?」


「収集はしているよ。コピーも含めれば幾らでもぶつけることができるね」



 《消失鏡界ロスト・ミラー・ワールド》は鏡属性をメインとして迷宮という領域を生み出す。この閉鎖空間は幾層にも重ねられており、空間転移を使っても脱出は不可能なように構築されている。そもそも何かしようとした時点で何百と配置された鏡に反射され、全て自分に返ってくる。

 これほど凶悪な術も少ないだろう。

 クウの《月界眼》や《熾神時間セラフィック・タイム》、アリアの《無限連鎖反応アンリミテッド・チェイン》や《背理法ゼヴィラ》も能力としては強すぎる部類だ。その攻撃性能において並ぶものは数えるほどだろう。

 一方で《消失鏡界ロスト・ミラー・ワールド》はただ閉じ込めるということだけに特化している。鏡の回廊に閉じ込め、決して逃さない。何かしようとすれば鏡が禁じる。術としては消極的だ。どちらかと言えば時間稼ぎ専用にすら思える。

 だが、実はこの術にも攻撃性能は備えてある。

 それは閉じ込められた超越者が使った術式を鏡属性でコピーして迷宮の回廊に蓄積し、無限に増殖するというものだ。更には回廊構築に使っているエネルギーを消費することで、リグレットにこれ以上の消耗を強いることなく取り込んだ術を一斉掃射することができる。



「僕も今回は見ているだけで終わるつもりがないからね。そろそろ《災禍顕回廊ディザスター・クロイスター》を解放しようか」



 メギドエルからは乱数化という霊力消費の少ない効率的な術式をコピーすることができている。リグレットは軽い調子で指先を動かし、《災禍顕回廊ディザスター・クロイスター》発動の命令コマンドを発した。







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― 新着の感想 ―
[気になる点] 半神化は突然変異みたいなもので徐々に成長して至るものではないと過去の質問の回答であったんですけど、ここの話に出た魂の成長ってどういう段階を想定したものなんでしょうか?半神化(魂の突然変…
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