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虚空の天使【完結】  作者: 木口なん
魔王の真臓編

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EP435 悪魔の王


 ウォーミングアップが終わったところで、ミレイナは戦いへと備えた。相手は最後の六王カースド・デーモンなのだ。今回はリアの力を借りることも出来ないので、いつもより気を張らなくてはならない。ミレイナの両手にも力が入っている。

 しかし緊張しているわけではないようだ。



「準備は良いか?」


「ああ」



 浮遊島の上で最後の確認を取ると、ミレイナは即答で頷いた。

 全く問題はないらしい。

 クウとユナは目を合わせ、大丈夫だと確信した。



「それなら行くぞ。まずは悪魔系魔物の殲滅だ。カースド・デーモンは中々出てこないだろうからな。それまでは俺とユナも参戦してデーモン共を消していく」


「余裕だね」


「問題ないな」


「作戦開始だ」



 クウ、ユナ、ミレイナは一斉に飛び降り、それぞれ天使翼を広げた。そして天使翼を羽ばたかせると、一気に加速して地表まで到達する。そのまま、近くにいた三体のデーモンを一撃で切り裂いた。

 クウは両手に幻剣を顕現させ、顔が二つあるデュアルヘッド・デビルの首を同時に落とす。ユナは神魔刀・緋那汰を使い、闇属性を得意とするダーク・デーモンを真っ二つにする。そしてミレイナは竜爪で鉱石のような体を持つガーゴイルを破壊する。



「まずは蹂躙の時間だ」



 そう呟いたクウは、全方位へと《無幻剣ファントムソード》を飛ばした。そして《因果逆転トリック》で連続して跳び、次々と幻剣を振るってデーモンを始末する。

 その中には人族基準でSランクにもなる悪魔すらいたのだが、クウにとっては雑魚も同然だった。《因果逆転トリック》は飛ばした幻剣を使って対象を切り裂いたという結果を引きずり出すことで、その過程である距離的問題を強制的に排除するというものだ。

 一見すると空間操作を行っているようにも見えるが、実際は全く関係のない能力である。



(こいつらを殲滅する程度なら、連続使用しても大丈夫そうだな)



 既に対象を斬っているという因果を操る《因果逆転トリック》は、一度の発動でもそれなりに負担がかかっている。連続使用した場合、数分ほどで限界が訪れるのだ。

 しかし、デーモン系の魔物程度なら数分で抹殺できる。

 特に悲観はしていなかった。



(次!)



 デーモン・ナイトという悪魔系の中でも物理に特化した相手ですら、クウの幻剣で一撃だ。大抵は首を斬り飛ばされ、倒された悪魔たちですら気付かない内に倒されている。

 一秒の間に数十の悪魔が首を飛ばされ、次々と反応をロストさせていた。

 そしてユナも激しい動きで地表を蠢く悪魔を滅ぼしていた。



「《緋の羽衣》」



 太陽を纏うかのような、超高温のエネルギーを宿してユナは暴れまわる。近付くだけで悪魔たちは焼かれ、動きを鈍らせてしまう。その間に、ユナの斬撃を受けて即死しているのだ。

 中にはユナに直接触れてしまい、蒸発した悪魔もいる。



「それそれ!」



 更に陽属性によるプラズマの刃を連続で飛ばし、遠距離にいる悪魔も余裕で屠っていた。更にユナの周囲では雷が連続して落ち、悪魔の苦手とする光が乱舞し、全てを燃やし尽くす炎が地表から噴き出している。ユナが「陽」の特性を解放しているのが原因だ。

 ユナはまさに歩く災害。

 悪魔たちからすれば、通り過ぎるのを待つしかない。

 これに加えてミレイナまでいるのだ。もはや悪魔たちの平安は失われていた。



「喰らえ。《爆竜息吹ドラグ・ノヴァ》!」



 超新星爆発を思わせる深紅の光が輝く。

 そして大量の悪魔を巻き込み、山脈ごと削る勢いで破壊を撒き散らす。更に《源塞邪龍ヴリトラ・アニマ》も初めから全開で使用しているため、ミレイナを止めることは出来ない。

 悪魔たちは体を砕かれ、消し飛ばされ、あっという間に数を減らされていた。

 だから、王であるカースド・デーモンよりこの周辺の統治を任されていたデーモン・ロードは焦る。このままでは、王の怒りを買ってしまうと分かっていたからだ。

 このままでは拙いと考え、デーモン・ロード自らがミレイナの前に現れる。



「グオオオオオオオオオオオオオオ!」


「ふん。遅いぞ」



 ヤギの頭部で咆哮を上げるデーモン・ロード。

 しかし、ミレイナは落ち着いた様子でデーモン・ロードから繰り出された一撃を受け止めた。岩すら破壊するような威力であっても、ミレイナはオーラで相殺する。激しい衝撃が周囲にまで伝わったが、ミレイナには傷一つなかった。



「お返しなのだ」



 そしてミレイナは回し蹴りを放ち、《源塞邪龍ヴリトラ・アニマ》を込めた。すると、悪魔系の中では強い力を持つデーモン・ロードも一瞬で頭部が消し飛ばされる。

 そこに慈悲はなく、赤い血が噴水のように飛び散った。

 これで周囲の支配を任されているデーモン・ロードを撃破完了である。

 すると、デーモン・ロードがやられたからだろう。他の悪魔系魔物は蜘蛛の子を散らすようにして一目散に逃げ始めた。悪魔とは賢い魔物だ。自分より高位のデーモン・ロードが負けたのだから、自分たちでは勝てないと悟ったのである。

 しかし、クウとユナは逃がすつもりがない。



「《崩閃シヴァ》!」


「私も《崩閃シヴァ》!」



 魔素とオーラを込め、クウは白銀のエネルギー体を、ユナは黄金のエネルギー体を指先に溜めた。そして指向性を与えて解放し、凄まじい威力の光線を放つ。

 白銀と黄金の破壊光線が飛び、逃げ惑う悪魔系の魔物を消し飛ばす。超越者の濃密な魔力とオーラが圧縮されて放たれたのだ。耐えきれるはずがない。

 圧倒的な力を浴びた悪魔たちは塵となって消失した。



「やるぞユナ」


「わかってるよくーちゃん!」



 二人は目を合わせ、互いに月属性と陽属性を使用する。この二属性に共通している光の力を発動させて、悪魔系の魔物に多大なダメージを与えようとしたのだ。



『《熾天星域祝福セラフ・ブレス》』



 二人は同時に光属性によって発動する浄化魔法《熾天星域祝福セラフ・ブレス》を使用する。悪魔に対して光属性はよく効くので、逃げ惑う悪魔たちは体を分解され、その場で消失した。

 クウが感知すると、周辺の悪魔は全て消え去ったことが分かった。



「まだ別の場所には悪魔が残っている。いつもの洞窟も注意しないといけない。カースド・デーモンが出てくるまで悪魔を倒し続ける。二人は待機だ」


「うん。分かったよ」


「任せたのだぞ!」



 そしてクウは《死神葬列デス・パレード》を発動し、幻術生物である死神を大量に出す。ボロボロのローブで身体を隠し、大鎌を手に持った恐ろしい姿だ。大鎌で攻撃されると、感染型幻術によって一撃で生命活動を停止させられる。

 強い死のイメージによって肉体が生きることを諦め、心臓が停止するのだ。



「行け」



 クウの指示に従い、死神たちは山脈中に散っていった。

 死神は幻術生物であり、物理的な障碍に妨げられない。よって山脈内部も透過して突き進み、悪魔を見つけては大鎌を振るって仕留めた。殆どレベル最大のミレイナであったとしても、山脈の悪魔ですら相手にならない。まともな戦闘になるのはカースド・デーモンだけだ。

 なので、容赦なく悪魔たちを処分していった。

 クウはその一帯に意識を乗せ、「魔眼」によって視覚を共有する。そして山脈内部へと透過し、ターゲットであるカースド・デーモンを捜索した。

 意識すれば周囲数キロの感知は容易いので、それを元にカースド・デーモンの居場所へと死神を向かわせた。



(……こっちか)



 透過能力を持つ死神なら、壁も無視して直線移動できる。

 複雑な洞窟ですら、迷路としての意味をなさない。



(いるな)



 暗い洞窟の奥で、淡い光が輝いている。恐らく創魔結晶だろう。そして、その側で巨大な威容を放っている一体の魔物が目を輝かせていた。



(カースド・デーモン。見つけたぞ)



 両肩は大きく盛り上がっており、頭部からは大量の毛髪が垂れている。血の気がない顔には幾つも紋様が入っており、額には第三の眼が輝いている。爪は大きく、鉄すら引き裂けるような鋭さだった。全体的に体格が大きいので、妙な威圧感がある。

 だが、クウにとってはそよ風のようなもの。

 すぐに死神を通して情報次元へと干渉し、《真理の瞳》を発動した。






―――――――――――――――――――

イーベル        1639歳

種族 神種カースド・デーモン  ♂

Lv200


HP:47,282/47,282

MP:39,281/39,281


力 :37,382

体力 :41,938

魔力 :42,839

精神 :40,383

俊敏 :38,491

器用 :38,191

運 :59


【魂源能力】

嫉妬大罪レヴィアタン


【通常能力】

《魔闘体術 Lv8》

《闇魔法 Lv10》

《魔力支配》

《気力支配》

《自己再生 Lv10》

《HP吸収 Lv10》

《MP吸収 Lv10》


【称号】

《大悪魔》《山脈の支配者》《嫉妬の王》

《天の因子を受け入れし者》《到達者》

《封印解放》《極めし者》

―――――――――――――――――――





嫉妬大罪レヴィアタン

何よりも自身こそ至上であることを望む。

そのために高めることを諦め、他者を蹴落

とすことに全てを注ぎ込んだ。誰もこの力

の前では誇ることなど出来ない。

嫉妬し、他を貶める悪意の力。








 これまでの六王と比べてもバランスの良いステータス値だ。そしてスキル構成はどんな状況にでも対応できるようになっていた。

 そして問題は《嫉妬大罪レヴィアタン》。

 説明を見ただけではよく分からないのは相変わらずである。基本的に【魂源能力】は半分ほど『世界の情報レコード』から逸脱しているので、その本質を読み取ることは難しい。



”フゥゥゥゥ……”



 大きく息を吐いたカースド・デーモンは死神の方を見つめた。

 そして逆に息を吸い込み、胸を膨らませる。空気の擦れる音が洞窟内で木霊し、その口元には莫大な魔力が集まる。《魔力支配》による魔力の圧縮と放出だろう。疑似的な《竜息吹ドラゴンブレス》にも近い技だと予想できた。



”ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアア!”



 大咆哮と共に大悪魔から青白い閃光が放たれる。

 その光に死神は包まれ、視界はホワイトアウトする。

 離れたところにいたクウたちは、そのブレスによる轟音を聞いたのだった。














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