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虚空の天使【完結】  作者: 木口なん
魔王の真臓編

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EP434 リアの武器


 ミレイナが眠りから覚めた後、リアは軽く別れの挨拶をして【レム・クリフィト】へと空間転移した。転移先は【クリフィト】にある自室である。

 この自室は元々ユナの家にあったゲストルームで、クウとリアが引っ越して来たとき模様替えしたのだ。そして家から出たリアは、魔王軍基地にあるリグレットの研究室へと向かう。普通ならば一般人立ち入り禁止の基地も、リアならばフリーパスだ。ただ、リアはまだ慣れていないのか、偶に迷いながら目的の部屋を目指して歩く。



「確か……この辺りでしたね」



 記憶を探り、ようやく目的地を見つけた。

 部屋には第七部隊特別研究室という札が下げられており、厳重なロックがかけられている。間違っても関係者以外が入れないようになっているのだ。

 しかし、リアは関係者なので問題なく入れる。

 顔、魔力パターン、指紋、静脈認証を組み合わせて登録者を認識し、自動でロックが解除される。開かれた扉の向こう側へとリアは踏み込んだ。

 中は様々な資料や機材が揃っており、如何にも研究室といった様相を見せている。

 その奥で、二つの強い気配があった。



「来たなリア」


「はい。戻りましたアリア様」


「何度も言っているがアリアでいい。私たちは同格だぞ?」


「わかりました。アリアさん」



 そんなやり取りをした後、今度はリグレットが口を開く。



「やぁ、本当に超越化してきたんだね。驚いたよ」



 銀色の髪を掻き上げ、抑揚な態度を取った。

 そして少し離れた場所にある机を指さした。リアの事情を聞いて即座に用意したのか、既に形が出来上がっている。元から使っていた錫杖と見た目は同じであり、以前と変わった様子はない。しかし、これはリグレットが用意した神魔杖だ。通常の武装とは一線を画する。



「念のためにそれを握ってくれるかな。すぐに調整するよ」


「分かりました。握っているだけで構いませんか?」


「ああ。魔力やオーラは必要ないよ」



 リアは言われた通り、机に置いてある錫杖を両手に握る。すると、すぐにリグレットが左手を伸ばして錫杖に翳し、右手は人差し指で何かの文字を書き始めた。

 権能【理創具象ヘルメス】による情報次元の書き換えである。これによってリア専用の武装へと調整し、リア以外には使えないよう呪いを付与するのだ。その呪いが杖自体の能力を阻害しないよう、微調整することも忘れない。

 そしてリグレットは調整の間、リアに杖の力を説明し始めた。



「この杖は神魔杖・白魔鏡しろまきょうという名前だよ。僕の権能を込めた武器だね」


「リグレット様……さんの権能を込めた武器ですか?」


「そうだよ。主な力は浮遊させて操ること。これは前の錫杖と変わりないね。でも、それに加えて僕の鏡属性を一部組み込んでいるのさ」



 リグレットの持つユニーク属性「鏡」

 特性は「転写」「反転」「境界」となる。情報次元をコピーして「転写」したり、運動量を「反転」させて攻撃を防いだり、物質の「境界」を操ることで状態変化させたりと多様な能力を持っている。

 その一部が組み込まれているのだ。



「神魔杖・白魔鏡……」



 リアは握るだけでも前の錫杖とはまるで違うことが理解できた。試していないので正確には不明だが、かなりの魔力やオーラを流しても崩壊することはないだろう。それに、武装自体の強度も以前とは比べ物にならない。

 これでまだ神装ではないのかと驚いたほどだ。

 とは言え、実を言うと神装と神魔装は大きな違いがあるわけではない。神装は神が作ったが故に不壊というだけであり、神魔装も同じく権能によって作られた武装なのだ。内包する能力は大差がなかったりする。



「調整はすぐに終わるよ。その後、アリアと戦って権能を確認するといい」


「あの、既にユナ姉様とはやったのですが」


「まぁ、色んな相手で経験を積むことも大切だからね。アリアは遠距離から中距離を得意とする能力者だから、また違った経験が出来るんじゃないかな?」


「そういうことだ。それに、メロに頼めば【百鬼夜行】で的になりやすい瘴魔を生成してくれる。練習には事欠かないぞ?」


「なるほど。ではお願いします」



 リアは頷き、二人の申し出に納得するのだった。











 ◆ ◆ ◆











 ミレイナが起きてきた後、リアは【レム・クリフィト】へと一時帰還した。超越化を果たしたリアに倣い、ミレイナもやる気を出してカースド・デーモン討伐に向かおうとするも、流石にそれはクウが止める。天使化しているとは言え、身体を酷使し過ぎていたからだ。

 《超回復》のスキルがあるとしても限界はある。

 精神面では必ず休息が必要だからだ。

 そういうわけで、クウが幻術で強制的に眠らせたのである。



「そろそろ起きてくるかもな」


「んー? ミレイナちゃんのこと?」


「ああ。十五時間ほど眠らせる設定で幻術を組んだからな。起きてきたら朝ご飯を出してやならないと。昨日の夕食を逃しているからお腹を空かしているだろうな」



 昨日の昼過ぎに強制睡眠させたので、十五時間後は丁度朝となる。クウの言葉を聞いてユナは立ちあがり、キッチンへと行って朝食を作り始めた。

 トントンコトコトと順調に良い匂いも漂ってきた頃、扉を開けてミレイナが出て来た。右手で目を擦っており、どことなくボーっとしている。



「起きたかミレイナ」


「うー? クウか?」


「顔洗ってこい」


「うー……」



 普段は寝起きもはっきりしているミレイナだが、今日に限っては眠そうだ。長く寝すぎたせいで意識がハッキリしないのだろう。

 そしてミレイナが洗面所へ行っている間に、ユナが朝食を並べ始めた。メニューはパン、野菜スープ、ベーコンと卵の炒め物、野菜サラダである。最後に果物を絞ったジュースを用意したところで、ミレイナも戻ってきた。



「む。美味しそうなのだ」


「ミレイナちゃんも早く座って」


「うむ」



 ミレイナはいつもの席に座り、ユナも自分の場所へと着席する。

 一応、クウがこの家の主のような立ち位置であるため、食事の音頭を取った。



「じゃあ、食べるか」


「はーい」


「お腹すいたのだー」



 一食抜いているので、ミレイナが勢いよく食べ始める。あっという間に皿は空になっていき、ジュースの入ったコップも底をついた。その間、ユナがジュースを注いだり追加のパンを持ってきたりと世話をする。

 普段のユナを知っていると驚いてしまうような光景だが、これでもユナは面倒見がいい。

 こちらの世界で一年以上も一人暮らしをしていたので、家事も一通りは出来るのだ。



「さてと」



 ミレイナがある程度食べたところで、クウが話を切り出す。



「今日は大悪魔カースド・デーモンを倒すわけだが……問題はないかミレイナ? リアがいない分、ミレイナ一人で戦うことになるからな」


「問題ないぞ。やる気は充分なのだ!」



 悪魔系の魔物はとにかく耐久力が高い。耐性スキルを所持していることが多く、その上《HP吸収》や《MP吸収》のような地味に面倒なスキルを有してる。

 他にも《闇魔法》による幻覚攻撃もあったりするので、ひたすら面倒なのだ。



「前に戦ったアラクネ・クイーンみたいに、嵌め殺しの能力を持った奴だっているからな。慎重に戦うことを忘れるな」


「悪魔系は上下関係が強いからねー。多分、カースド・デーモンと戦う前に雑魚がいっぱい出てくると思うよ。体力配分も忘れずにね」


「うむ」



 パクパクモグモグと口を動かすばかりで話を聞いているのかは不明だが、この調子なら気にする必要はないだろう。それに、ミレイナは戦いの最中で考え事をするタイプではない。勘に任せ、正面から打ち砕く戦いをする。

 あまり固まった作戦を与えても無駄だ。

 それよりも適度な情報を与え、勘が働くように無意識へと刷り込ませる方が良い。



「あとでウォーミングアップに付き合ってやる。準備しておけよ」


「本当か! 分かったのだ」



 食い気味で反応したミレイナに対し、クウは真顔で頷く。

 こんなミレイナにも慣れてきた。いちいちツッコミを入れては持たなくなる。



「私が朝ご飯の片づけをしておくねー」


「頼むユナ」



 そのまま、三人は朝食を終えるまで他愛のない話を続けるのだった。












 ◆ ◆ ◆












 家を出て浮遊島の一角までやってきたクウとミレイナは、少し距離を取って対峙していた。しっかり構えているミレイナに対し、クウは自然体のまま武器も装備せず待つ。

 実力差があるのだから当然だが。



「いつでもいい。来い」


「分かったのだ!」



 ミレイナはその言葉と共に飛び出す。ウォーミングアップのはずだが、そんなものは関係ないとばかりに全力を出した。



「はあああああ!」



 両手にオーラを集め、爪の形状へと変えて攻撃する。この竜爪はミレイナが良く使うオーラの応用技であり、《魔闘体術》のスキルで運用している。

 しかし、この程度でクウは驚きもしない。

 魔素の障壁で受け止めた。



「そんなものか?」


「まだまだ!」



 ミレイナは続けて竜爪を振るうが、クウはその全てを魔素障壁で防ぐ。そして左指をミレイナの方に向け、一瞬で魔素とオーラを収束させた。

 銀霊珠を形成し、それに指向性を与えて一気に解き放つ。



「《崩閃シヴァ》」


「っ!?」



 ミレイナは転がりながら回避する。超越者だけあって、クウの魔素制御とオーラ制御は恐ろしく早い。そのため、殆ど反射で回避しなければならないのだ。



「アアアアアアアアアアアアアッ!」



 回避直後のミレイナは、咄嗟に高い叫び声を上げて《源塞邪龍ヴリトラ・アニマ》を乗せた。これで破壊の力を音波として飛ばし、クウを攻撃しようとする。

 だが、そのクウは幻影でしかなかった。

 音波を受けた瞬間、揺らいで姿が消失する。



(どこだ……後ろ!)



 即座に気配を感じ取り、背後へと裏拳を放った。当然《源塞邪龍ヴリトラ・アニマ》を付与しており、その一撃は恐ろしい衝撃波を伴って放たれる。

 しかし、クウは魔素とオーラのみで相殺し、ミレイナの裏拳を片手で受け止めた。

 メキリ……と怪しい音を立てて地面だけが割れる。



「その程度か?」


「ふん。そんなわけない!」



 そう言いつつ、ミレイナは口元に魔素とオーラを圧縮する。それが深紅の輝きを放ち、咆哮と共に解き放たれた。



「《爆竜息吹ドラグ・ノヴァ》!」


「《崩閃シヴァ》」



 クウも相殺するべく、即座に《崩閃シヴァ》を放つ。

 白銀と深紅の大爆発が生じ、周囲は土煙に包まれた。その土煙の中で、何度か打ち合う音がする。硬い音が連続して響き、その直後に一際大きな音がした。

 同時に土煙は吹き飛ばされ、そこから拳をぶつけあったまま動かないクウとミレイナが現れる。

 そしてそこでクウは構えを解き、気配を抑え込んだ。



「この辺りでいいだろ」


「うむ。丁度良い運動になったのだぞ!」


「ユナがやってきたらカースド・デーモンの討伐に移ろう。それまでは休んでおけ」


「わかったのだ」



 クウは虚空リングから水の入った水筒を取り出し、ミレイナに与える。

 そして今も言った通り、ユナが来るまで休憩しつつ待つのだった。













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― 新着の感想 ―
銀色の髪を掻き上げ、抑揚な態度を取った。:何をとったって?
2025/05/01 10:23 よくわからなかった
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